パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ピラニア(1978)】一番悪いのはピラニアじゃない!お前らだ!

ジョーズ」(1975)の大ヒットにより、70年代後半から「動物パニック映画」が流行りました。

襲ってくるのが熊だったり、シャチだったり、タコだったり、無人の車だったり、と色々登場。

その中で本家「ジョーズ」のスピルバーグ監督も認めたと言われてるのが、ジョー・ダンテ監督の「ピラニア」(1978)。

評判は前から知っていたのですが、実は見たことがありませんでした。

昭和の妖しい映画ファンとして、今回意を決して(?)調査します!

 

(あらすじ)

行方不明になったカップルを探しに来た探偵と案内人。二人は山奥で謎の施設を発見し、そこにあるプールが怪しいと睨んだ。勝手に施設に入った二人は、研究員の制止を振り切り、プールの水を抜く。しかし抜かれた水と一緒にプールで飼われていた軍事用に強化されたピラニアの群れも川に流れ出てしまった・・・

 


www.youtube.com

 

動物パニック映画のフォーマットって決まってますよね。

 

主人公だけが凶暴な生物に気づく → 警告しても信じない → 大きなイベントが予定されてる → もう一度警告 → 実力者がイベントを優先させ、主人公を恫喝 → イベントが大惨事 → 実力者死亡 → 主人公たちが倒す

 

この映画もこの鉄板フォーマットの上で進んでいきます。

 

川上で主人公たちがピラニアを逃がした後、まず人気のないところでポツポツと犠牲者が出ます。

ラニアは人の多い川下にどんどん進んでいきます。

川下で行われている子供たちのサマーキャンプのハイライトの水泳大会とリゾート地のオープニング祭りというお約束のイベント中。

秘密を隠したい軍やリゾート地の開発者(具の司令官も出資)はオープニングを強行させたようとします。(これもお約束)

 

まさに「ジョーズ」で作られたフォーマットの焼き直しです。

 

まずはオープニング。

入ってはいけないプールに忍び込んだカップルが、裸でドボン。ここでサービスオッパイが出たら、ピラニアが寄ってきてThe END。

 

これも「ジョーズ」の焼き直しでしたね。

(本家はカップルで泳ごうとするんだけど、男の方は服が脱げなくて、女の子だけスッポンポンで先に泳ぎにいって食べられちゃう)

 

あれ、これ別の映画でも見たなぁ、と思ったら、「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」(1981)でした(笑)

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

目新しいのは、主人公たちがピラニアを追いかけて川下りするところ。

ジョーズ」のように固定のビーチで物語が展開していくのではなく、場所がどんどん変わっていきます。

寂れた川下から、ダムを経て、キャンプ場、そしてリゾート地と徐々に人が多い場所になっていく仕掛けは「早く止めなきゃ」っていう緊張感を高めてました。

それも車もボートも使えないので、手製の筏で川下りをしているので、なかなかピラニアに追いついたり、川下の人たちに連絡出来ない、というもどかしい状況設定はナイスでした。

 

ハイライトのイベントも一つじゃなくて、子供たちのサマーキャンプとリゾートのオープニング祭りと二段構えだったり、軍が独自に退治しようとしたり、と独自性があります。

 

また他のジョーズモドキが、「巨大生物」なのに対し、小さな魚が群れで襲ってくる方がリアルっぽさがあったと思います。

少なくとも乳母車を海中に引きずりこんじゃうような巨大なタコよりも、何十倍もリアルです。(「テンタクルズ」ファンの方、ごめんなさい)

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

その上、襲われても一気に死ぬわけではなく、食いつくされるところが怖い。あと複数が同時に襲いかかるのも怖いですね。

 

確かにこの映画、面白いです。

ジョーズ」の亜流の中では一番というのも頷けます。

B級映画だけど、手を抜かずに、出来るだけ丁寧に作ろうという姿勢があるので、安物っぽさもないです。

 

でもね、何かスッキリしないですよ。

 

それは何故か。

 

それはこのラニア事件の元凶が主人公たちだからです。

百歩譲って、ピラニアを逃がしちゃったのは勘違いだから仕方ないとしましょう。

でもこの二人、自分のやったことは完全に棚に上げて、「悪いのは軍だ!」と責任転嫁を連呼。

 

これって日本人からすると「え?」ってなりますよね。

これがアメリカ流の自己主張ってやつなんですか???。

西洋流の、謝ったら負けっていうやつですか???

 

だから、僕としてはどうしても主人公たちを応援しきれないんですよ。

最後はピラニアを退治して、二人で微笑み合うんですが、やっぱり「お前ら、その前にすることがあるだろう?まずはごめんなさいじゃないのか?」って画面に向かって言いたくなりました。

 

この映画、アメリカでも評価が高かったようで、続編(殺人魚フライングキラー)が出来ただけでなく、21世紀に入ってリメイク(ピラニア3D / 2010)とその続編の「ピラニア・リターンズ」(2012)が作られています。

 

ちなみに「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」は、軍の秘密兵器第二弾ということ以外、この映画と全くつながりはありません。

(繰り返しになりますが、製作者は一緒です)

 

監督のジョー・ダンテは、この後に「ハウリング」と「グレムリン」を撮って出世していきます。

この映画では、軍の研究施設で人形アニメーションによる変な生物を(本編に関係なく)出したり、劇中のTVで白黒の古いSF映画が流すなど、生粋のB級SF/ホラー映画ヲタクぶりを垣間見せてます。

 

最後に低予算映画の割に「おや?」というスタッフが参加していたので紹介しておきます。

 

音楽はピノ・ドナッジオ

「キャリー」や「殺しのドレス」等一連のブライアン・デ・パルマ作品を担当していることで有名です。甘いメロディが特徴的で、この映画でもピノ・ドナッジオらしい音楽が聴けます。

しかし明らかに彼の作品ではなさそうな安っぽい音楽も多数使われてます。

 

特撮はロブ・ボッティンフィル・ティペットロブ・ボッティンは「ハウリング」の狼男の変身シーンで一躍有名になった人です。

ラニアに襲われるシーン等特撮や死体の特殊メイクが一定のクオリティを保ってたのは、この人たちが担当してたからかー、と納得しました。

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

この映画はAMAZON PRIMEとNetflixのサブスクにはありませんでしたが、U-nextにはあったので、そちらで見ました。

新品のBlu-rayは手に入るようですが、ちょっと値段は高めです。

 

【バニシング in 60】70年代のスーパーカーブームの定番と言えばこれ

小学校の時に「スーパーカーブーム」がやってきました。

70年代後半のことです。

本当に鮮烈な体験でした。

勿論サーキットの狼は読んでましたし、スーパーカー消しゴムも集めてました。

 

その頃、定期的にTVで放送されていた映画が「バニシング in 60」(1974製作/1975日本公開)

スーパーカーがいっぱい出てきて、カーチェイスしまくる・・・そんな痺れる番宣でした。

 

(あらすじ)

盗難車の保険調査を担当する主人公は、実は裏では車窃盗のプロ。彼の元に週末までにリストにある50台を集めて欲しいという高額の依頼が来る。チームで着々と集めるが、黄色のマスタング「エレノア」だけが、どうしても手に入らないのだった・・・


www.youtube.com

 

正直に言います。

最初に見た時は、ちょっとガッカリしました。

 

だってスーパーカーブームの主役はヨーロッパ車

でもね、この映画にはそういう車はほとんど出てこないんですよ。

ヨーロッパのスポーツカーは、ポルシェとデトマソ、マクラーレン・マンタ、ランボルギーニミウラぐらいでしょうか。

あとはロールスロイスとか、リムジンとか、普通の高級車がメイン。

 

更にカーチェイスアメリカ車同士。

元々、スーパーカーファンの子供たちの間では、どことなくアメリカ車スーパーカーではない」っていう風潮があったので、これも減点ポイント。

 

だからガッカリしましたね。

 

だけどやる度に見ちゃうんですよ。

スーパーカー総出演」っていう番宣が釣りだってわかってるのに。

それは結局、映画として面白いから。

スーパーカーが出なくても面白いんです。

 

話は至ってシンプル。

期限内に50台の車を請け負ったプロの自動車窃盗団が、あの手この手で盗んでいく話。

原題は「Gone in 60 minutes」。

60秒で消える、っていうのは「60秒あれば自動車泥棒に盗まれる」という意味です。

「バニシング in 60」という邦題になったのは、「バニンシング・ポイント」(1971)っていう車で逃走する傑作映画にあやかったんじゃないでしょうか。

 

主人公は保険が掛かった車しか盗まない(盗まれた人が保険で買い直せるように、ってことでしょうね)というポリシー。時々失敗もしながらも、次々と盗んでいく様を無駄なくサクサクと見せていきます。

正直、鍵付きで路駐した車をそのまま乗り逃げしたり、持ち主に成りすまして車を持ち出したり、とプロっていうより、チンピラの仕事

「確かに変装してるけど、それでも姿見られていいの?」っていうのもあり、「ハイテクなプロの技で盗む」って感じではありません

ここはもうちょっとプロっぽいのにして欲しかったです。

 

さて、この映画の肝は「エレノア」と呼ばれる黄色の1971年型フォード・マスタング・マッハ1。

この映画と言えばエレノアです!

 


www.youtube.com

 

この映画の中で、どうしても盗めない車、つまりプリマドンナで、ファムファタル(魔性の女)という位置付け。

結局、50台の最後の一台となったエレノアを盗んだところで、警察に見つかり大カーチェイス

これでもか、っていうぐらいカーチェイスが堪能できます。時間にして30分。さすがスタントマン出身の監督だけあって見応え十分です。

 

ラストのオチ(最後に逃げ込んだ洗車場で、新品のエレノアを、カーチェイスでぼこぼこになったエレノアと入れ替える)も洒落ていて、僕は好きです。

 

今回見直して感動したのが、冒頭に出てくる出演者クレジット。

一番最初で唯一のクレジットが「エレノア」

そして、他の出演クレジットはないんですよ。

まさに「エレノア」を見せる映画なんですね。

 

この映画のリメイク60セカンズ(2000年)でも、やっぱり主人公が「どうしても盗めない車」と呼んでたのが、フォード・マスタング。通称「エレノア」

勿論、最後はエレノアでのカーチェイス

(ただし71年型マッハ1ではなく、67年型のシェルビータイプでした)

 

これでエレノアが好きになりました。

 

今ではゲーム「グランツーリスモ」では、黄色のフォードマッハ1を使っています。

(上手く使いこなせないけど。誰かドリフトのやり方を教えて下さい)

 

しかし、リメイクの話を聞いた時は正直、ビックリしました。

だって、子供の時に、「スタントマン出身のH.B.ハリッキー(製作・監督・脚本・スタント・主演)が趣味で作った映画で、スーパーカーブームだから日本でもてはやされたけど、アメリカでは無名なんだろうなぁ」と勝手思ってたからです。

それが当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのニコラス・ケイジ主演でリメイクされるなんて夢にも思いませんでした。

アメリカでも人気があったんですね。

 

最初にTVで見た時の話。多分、小学6年生ぐらいの頃。

放送翌日に友達と、「画面でチラっと出てきたランボルギーニミウラか、イオタか?」ということで議論になりました。

僕はミウラ、彼はイオタと主張。

スーパーカーブームの真っただ中の子供たちにとっては、ミウラかイオタかはとっても重要なポイントだったんです。

 

彼の家には販売が始まったばかりの家庭用ビデオデッキ(ベータマックスでした)があり、この映画を録画していたので、早速学校帰りに確認したのを覚えています。

 

正解はミウラ。

 

僕も友達も今だにこのネタは忘れません。

こんな思い出があることも、この映画が「忘れられない一本」になってるのかもしれません。

 

本当にスーパーカーブームの洗礼は強烈でした。

今でも当時のスーパーカーは全部言えるし、ミニカーを見つけると欲しくなります。

(お気に入りはランチャストラトス


www.youtube.com

 

そして、実はまだ当時のスーパーカーカードを持ってます(笑)

 

スーパーカーカード①

スーパーカーカード②

そして今でも大金持ちになったら、ランチャストラトス」という夢も変わってません。

(なかなかならないけど)

 

こういうのを三つ子の魂百までも、って言うんでしょうね。

 

この映画はAMAZON PRIME、Netflix、U-nextのサブスクにはなく、近所のDVDレンタル屋にもなかったので、またもやTSUTAYA宅配を利用しました。

 

ただし新品のDVDは普通に手に入るようです。

 

バニシング IN 60 [DVD]

バニシング IN 60 [DVD]

  • H.B.ハリッキー
Amazon

【ハンガー(1983)】デヴィッド・ボウイとドヌーヴの吸血鬼が最高

吸血鬼映画って、90年代ぐらいから貴族色が強くなった気がします。

元々、ドラキュラ伯爵=貴族でしたが、家族はいなし、手下は妖怪みたいな吸血鬼でした。

でも「インタビュー・ウイズ・バンパイア」(1994)や「アンダーワールド」(2003)「ブレイド」(1998)辺りから、吸血鬼=闇の貴族社会を作る一族となってきました。

そんな貴族吸血鬼の先駆けとして思い出深い「ハンガー」(1983製作/1984日本公開)を今回レビューします。

 

(あらすじ)

ニューヨークの豪邸に住み、上流階級の生活をするミリアムとジョン。彼らは何世紀も生きる吸血鬼。夜になるとクラブで犠牲者となる若者を誘う生活をしている。しかしジョンには吸血鬼としての寿命が近づいていた。ミリアムは新たなパートナーとして医師のサラに目を付ける・・・


www.youtube.com

 

監督は「トップガン」(1986)「ビバリーヒルズコップ2」(1987)「クリムゾンタイド」(1995)のトニー・スコット。この映画が監督デビュー作になります。ちなみに彼のお兄さんは「エイリアン」(1979)「ブラックレイン」(1989)のリドリー・スコットです。凄い兄弟です。

 

勿論、監督の手腕に疑うところはありません。

この映画でもスタイリッシュ、且つテンポよくまとめています。

でもこの映画は主演の二人が全てといっても過言じゃありません。

 

ミリアムとジョンを演じるのは、フランスの大女優で、超美人のカトリーヌ・ドヌーブと、中世的な魅力の美男子でロックスターのデヴィッド・ボウイ

とにかく二人の美貌とミステリアスな雰囲気が、最高に「吸血鬼貴族」なんですよ。

この二人じゃなかったら、この映画は間違いなく平凡な映画になっていたと思います。

 

超豪華な、「焼却機」付の豪邸で、いろいろな美術品に囲まれて、チェロを弾く、静かで神々しい姿と、クラブに貴族的な出で立ちで今風の若者を誘う姿のどっちも違和感なく演じられるのは、この二人ぐらいじゃないでしょうかね。

(焼却機は犠牲者を燃やすためです。そんな家ってあるんですかね?)

 

カトリーヌ・ドヌーブ(仏)の欧州的な正統美人も見事に吸血鬼貴族のイメージにマッチしてますが、デヴィッド・ボウイの元々ミュージシャンとして持ってた中性的な美貌や、どことなく人間離れした存在感(宇宙人っぽさ?)が見事に吸血鬼としてツボです。

元々、演技力が高いことで評価されていた人なので、演技面でも問題ありません。っていうか、上手いです。

 

このキャスティングした人、神です。

 

ちなみにこの映画では、デヴィッド・ボウイは主題歌の提供はしていません。

 

カトリーヌ・ドヌーブデヴィッド・ボウイは対等の関係ではなく、ドヌーブが主でボイが従。

 

要はドヌーブはオリジナルの吸血鬼で、自分のパートナーとしてボウイを選んで、彼を吸血鬼にして何百年も一緒にいるわけです。

でもどうやらボウイはオリジナルの吸血鬼じゃないんで、期限があるんですよ。

ある日突然、急激な老化が始まる。

一日でおじいちゃんになっていく。

そして動けなくなるんだけど、実は死ねない。

そこは吸血鬼だから。

ドヌーブは、そんな彼を屋根裏部屋の棺に入れるんですよ。

そこには彼女の歴代のパートナーが何人も棺に入ったまま「保管」されていてる。

ボウイもその棺桶の中で永遠に生き続けるわけなんです。(汗)

 

ドヌーブは他の棺桶に向かって、「彼はジョンっていうのよ。仲良くしてあげて」って優しく話しかけるんです。

 

こえー-。

吸血鬼になった代償がこれかよー。

吸血鬼に殺されるより、こっちの方がいやだー。

吸血鬼になりたくないよー。

 

さて「ボウイはもう賞味期限切れ。新しいパートナーを見つけなきゃ」とカトリーヌ・ドヌーブが女医(スーザン・サランドン)に目を付けて、パートナーにするのが後半。

(ドヌーブはバイセクシャルって設定)

 

ここから映画のボルテージがちょいと下がります。

何故か。

それはスーザン・サランドンめっちゃ普通の女性だから。

ボウイのようなミステリアスさも、気品もない。

貴族社会の中に庶民が入ってきちゃった?みたいな違和感。

 

貴族趣味が好きな僕としては、もうちょっと貴族っぽさがある女性にしてほしかったですねー。

 

あそこまで神キャスティングしているのに、詰めが甘いのが残念。

 

ドヌーブが「貴族っぽいボウイと数百年も一緒にいてちょっと飽きてたから、今度は庶民っぽい人で」って味変みたいな感覚なんでしょうか。

 

映画全体としては、当時は吸血鬼=貴族社会を全面に出しているのが目新しかったですね。

また主人公たちは蝙蝠にもならないし、姿を消すといった超自然的なパワーは使いません。(目を見つめて人を魅了する力はあるようですが)

本当に、血を吸うだけで、あとはただの金持ち、なんです。

 

そんな超自然的なパワーも使わないので、吸血鬼モノには珍しい、人間とのバトルもないです。っていうか、そもそも吸血鬼が存在すると思っている人間が出てきません

 

そんなワケで、吸血鬼映画なのにとっても静かで、ホラー度は低いです。

 

まさに貴族吸血鬼が好きな人にはお勧めの映画。

ラストのオチがちょっと腑に落ちないところはありますが、時間も長くないし、さらっと見るのはいいんじゃないでしょうか。

 

小ネタとして、無名の頃のウィレム・デフォーが主人公に絡むチンピラ役で1分ぐらい出てきます。

デビッド・ボウイがどんどん老人になっていく特殊メイクは大御所のディック・スミス(「狼男アメリカン」(1981)でアカデミー・メイクアップ賞を受賞)でした。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

この映画は当時、岐阜では上映されなかったはずです。

だから吉祥寺の名画座で見ました。

併映はテリー・ギリアム監督の「バロン」(1988)だったような気がします。

どっちも初見で面白かったので、とても満足して映画館を出た記憶があります。

 

今回はAMAZON PRIMEとNexflixのサブスクにはありませんでしたが、U-Nextにはあったのでそっちで見ました。

ちなみに近所のレンタル屋さんにはなかったです。

 

新品のDVDは普通に手に入ります。

【プライベート・ベンジャミン】ゴールディ・ホーンのドジっ子を堪能する映画

最近、殺伐とした映画のレビューが多かったので、ここでちょっと軽めの映画。

ゴールディ・ホーン主演の「プライベート・ベンジャミン」(1980製作/1981日本公開)

 

70~80年代までよく作られてた軽めのラブコメです。

見終わって「あー、面白かった。ところで何食べに行く?」という流れにぴったりの映画。

大半の人は5年もすれば忘れちゃうようなやつですが、僕は好きです。

 

この作品は、「主演女優のゴールディ・ホーンを見る映画」。

僕みたいに彼女のことが気に入れば、楽しめる作品です。

 

(あらすじ)

今度こそ幸せになれると期待して再婚した主人公。しかし新郎は新婚初夜に突然死。悲しみに暮れる彼女は、陸軍の徴兵担当に騙されて入隊。実際の軍隊は彼女が聞かされていたバラ色の生活とは全然別の、厳しい世界だった・・・


www.youtube.com

 

ゴールディ・ホーンに出会ったのは「ファールプレイ」(1978)。

めっちゃキュートで、もう「一目惚れ」でした。

当時、彼女が載っている記事やチラシを集めまくって、スクラップブックを作ったぐらいです。

後にも先にも一人の女優さんに熱狂したのはあの時だけでした。

ゴールディ・ホーン スクラップ①

ゴールディ・ホーン スクラップブック②

 

確か、この映画は封切の時に見れなくて、あとで名画座で見ました。

 

ゴールディ・ホーンの魅力と言えば、ドジっこキャラ

正確にはドジっこお姉さんかな?

美人じゃないけど、たれ目&あひる口の愛嬌のある顔で、元々キュート系のキャラ。、更にこの頃は「性格が素直過ぎて、ドジなせいでトラブルに巻き込まれる」というどハマりキャラを連発してました。

日本人は好きですよね、こういうキャラ。

僕もそんなキャラに萌えた一人です。

 

この映画でも「世間知らずで疑うことを知らない性格に付け込まれて、軍隊に入っちゃうお嬢さん」がハマってます。

ちなみに製作総指揮はゴールディ・ホーン自身。

自分の売れるキャラをよく分かっています。

プライベートベンジャミン パンフレット表紙

この写真からして、自分のどうしたらキュートなドジっ子に映るか分かってますよねw

 

映画は至ってシンプル。

間違って軍隊に入っちゃって、最初はイジメもあって嫌で嫌で仕方ないんだけど、最後は仲間の信頼を得て、出世。フランス人の男と結婚するために除隊したが、そいつはダメ男と分かって、彼を振って去っていく、というお話。

 

ちょこちょこ小さめのエピソードが次々と出て、テンポよくサクサク進んでいきます。

109分とちょっと長めですが、飽きません。

 

ただ個人的には軍隊のエピソードがもっとあっても良かったなぁ、と思います。

プライベート・ベンジャミン(ベンジャミン二等兵)というタイトルの割には、軍隊のシーンは全体の半分ちょっとしかない印象です。

いろんなエピソードがあるんですが、やっぱり一番面白いのって軍隊でのエピソードなんですよ。特に演習で一発逆転するところは、スカっと爽快です。

きっと軍隊という設定が、彼女のキュートな魅力を引き立てるんじゃないでしょうか。

厳しい訓練なのに、ドジっ子ぶりで更にトラブルを抱えちゃう姿がポイント高いです。

 

反対に軍隊以外のシーンでは、彼女の魅力を引き立てる役がいなくてパンチ不足。

 

アーマンド・アサンテが演じるフランス人のダメ男は、前の恋人に未練タラタラで、時に暴言を吐くDV系。

ゴールディ・ホーンとの、軽妙な掛け合いもなく、1ミリも笑えない「悪役」キャラです。

だから彼とのシーンは、コメディではなく、シリアスなサスペンス映画っぽい

ここは脚本の失敗じゃないですかね。もっと彼を笑えるキャラにした方が、一層ゴールディ・ホーンが引き立ったと思います。

 

とにかく「プライベート・ベンジャミン」はゴールディ・ホーンを楽しむ映画なのは間違いありません。

そういう意味では以前レビューしたナスターシャ・キンスキーを楽しむ「キャットピープル」と同じですね。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

ただ彼女の魅力を100%引き出してるかと言えば、70~80%ぐらいですかねー。

もし初めて彼女の映画を見るなら、「ファールプレイ」(1978)をお勧めします。

「ファールプレイ」にはチェビーチェイスっていうドジキャラを演じるのがめちゃめちゃ上手い相手役がいるんです。

彼とのドジドジコンビの軽妙な掛け合いが、お互いの魅力(ドジぶり)を最大限引き出してます。

(そのコンビがあまりに良かったのか、「昔みたい」(1980)という映画で再共演してます)

 

しかし、こういう俳優ありきのライトタッチな映画って、今はニーズがないんでしょうか・・・

 

今回はU-Nextのサブスクで見ました。

AMAZON PRIMEにもNetflixのサブスクにはなし)

また新品のDVDは結構お手頃で入手できるようです。

 

【ローラーボール (1975)】中二病の夢を外す、格調高いディストピアムービー

ローラーボール(1975)。

近未来、管理社会となった世界では、合法的に殺人ゲームが行われていた・・・

もうこれだけで中二病を熱くさせるものがありますよね。

僕もそんな設定に熱くなった一人です。(当時は小学生でしたが)

劇場では見れなかったので、サントラを買って、家で想像を膨らませてました。

 

(あらすじ)

近未来、世界は大企業群に統治されていた。その世界で人気を集めているのは超暴力的なゲーム「ローラーボール」。エネルギー企業が支配するヒューストンチームに所属するジョナサンは、得点王であり、世界的なスーパースター。しかし彼の人気を危険視する企業により引退を迫られるが、それを拒否。企業はジョナサンが試合中に死亡するように、ルールをどんどん暴力的に変えていくが・・・


www.youtube.com

 

円形状のトラックの上、ローラースケートを履いた選手は高速打ち出される重さ6キロの鉄球を奪い、ゴールに叩き込む。

選手はアメフトのようなヘルメットとプロテクター、鉄鋲が付いた手袋に身を包み、相手をなぎ倒していく。

 

このビジュアル、痺れますよね?(あ、僕ら中二病だけ?)

 

ローラーボール」は世界を支配する企業連合が、大衆のガス抜きに行っているんです。

要は、「ローラーボール」の目的は大衆管理。

殴る蹴るの暴力OK。スコアボードには選手のライフステイタス(HPですね)が表示され、全部消えると赤ランプ(死亡)がつくという、バイオレンス度満載のゲーム。

 

だから同じ中二病のハートを熱くする「デスレース2000年」(公道レース中に観客を殺すとポイントになる/71975)みたいな、痛快娯楽作(?)を期待するじゃないですか。

 

でも、大人になってレンタルビデオで見た時、

 

面白いけど、ちょっとイメージと違うなぁ、

 

って思ったんです。

 

そして今回見直して、ああ、なるほどって思いました。

魂を燃えたぎらせる熱い映画ではなく、終始、ちょっとヒンヤリするような雰囲気

 

ローラーボールのゲームのシーンは熱く盛り上がるし、長さも十分にあります。

 

でもやっぱり見ている僕は熱くなりません。

やっぱりヒンヤリ。

 

あの当時の感想は間違ってませんでした。

 

まず主人公。

ローラーボール界のスーパースター。

そんな設定から想像するのは「友情に熱く、ゲームでも率先してみんなを引っ張っていく親分肌。何事にも全力投球、ネバーギブアップ精神の塊」じゃないですか。

 

でもこの映画の主人公は全然イケイケじゃないんです。

寧ろ、淡々。

 

政治的理由から引退を強要されても、熱く犯行し過ぎず、淡々と「俺は背中で答えるぜ」みたいにゲームに出続け、エースの役割を果たすタイプ。

ゲームがヒートアップしても、どこか冷静で、チームメイトの親友が植物人間にされても、大げさに嘆かず、淡々としている。

 

淡々としているのは、ある意味、「デスレース2000年」の主人公フランケンシュタインと似てるんですが、あっちはニヒルな悪漢ヒーロー(死語?)なんで、全然タイプが違います。

 

寧ろ。会社に別れさせられた元嫁さんのことが忘れられず、いつも家では彼女のビデオを見ている方が彼の本質ではないでしょうか。

だって元嫁さんを戻してくれるなら、引退を受け入れてもいいって言っちゃうぐらい「ローラーボールより元嫁さんの方が大切」。

 

全てを捨てて、好きな女のために生きたい、っていうのは中二病のツボであるハズです。

でも何故、このキャラは中二病にツボらなかったのか?

 

それは心のどこかで嫁さんは戻ってこないと半分諦めてるから。

 

あきらめたらそこで試合終了だよ

 

安西先生もそう言ってるじゃないですか。

少年スポーツ漫画的には「俺はぜってー諦めねぇーっぞ!」っていうのが主人公の定番。

でも彼は「どうせ無理」って世間のことが嫌になっちゃってる。

 

彼にはそんな厭世観が常にあり、どことなく高倉健さんの世界に近いものがあります。

 

この複雑なキャラを当時売れていたアクションスターのジェームス・カーンが、私生活でのやるせない男と、ゲームでのスター選手を凄い上手に両立させてます。

 

映画は静かにスタッフが会場の準備をするところから始まります。

コースや機械のチェック等、ドキュメンタリー映画っぽいです。

リンクの状態を手で触ってみて確認するスタッフ。

手元ボタンを操作する審判員。鉄球の試射・・・

近未来という設定なのに、変にSF的なガジェット出てこないので、まるで今どこかで行われているリアルなスポーツの準備風景に見えます。

 

考えてみれば監督のノーマン・ジュイスンは、SF映画の専門家ではなく、良質な映画を作り続けて、何度もアカデミー監督賞にノミネートされる、名の知れた監督。

だからこの映画のテーマは、彼にとって「中二病を熱くさせる殺人ゲーム」ではなく、「企業に管理されたディストピアだったんでしょうね。

 

だから彼にとってはローラーボールというゲームは、「企業の大衆管理の不条理なツール」という役割であり、「賛美されるゲーム」ではないということです。

 

主人公が引退を迫られるのも、「企業に逆らったから」とか「企業の秘密を知ったから」ではなく、単に「民衆の人気を集め過ぎた=企業より上の存在になる可能性が出てきた」という大衆管理上の問題です。

 

まさに政治批判的な映画が多かった70年代の香りがプンプンします。

 

面白いのが、この映画に出てくるのは、主人公を含め管理社会の中のエリート層だけなんです。

日々の生活は貴族的&享楽的。

 

反対にゲームに熱狂する大衆については、ほとんど触れられてません。

彼らが貧しいのか、搾取されてるのか、企業に不満を持っているのか、というのが一切なし。

普通こういうディストピア映画って、「個性を消された大衆」だったり、「抑圧された大衆」っていうのが出てくるじゃないですか。

の映画の大衆は、今の管理社会のままで、今まで通りローラーボールが見れればよいと思っているような印象です。

更にこの映画には上流社会にも「反政府的な不満分子」も出てこないんです。

ディストピア貴族の平凡な毎日」ってことですね。

そういう点で、貴族映画っぽです。

 

優勝決定戦で一人だけ生き残った主人公に、観衆が彼の名前をコールするエンディングは、最後にちょっとだけカタルシスを感じさせてくれました。

 

この映画の特徴として、普通のSF映画にはない格調の高い雰囲気があります。

貴族映画っぽいことや、ノーマン・ジュイスンの正当な演出、SFガジェットを無駄に出さないこと、主人公の覚めたキャラクターが理由ですが、その中で書いておきたいのが音楽です。

 

この映画も「2001年宇宙の旅」(1968)や「未来惑星ザルドス」(1974)のようにクラシック音楽がメインで使われてます。バッハの「トッカータとフーガ」や「G線上のアリア」がハマってるんですよ。尊厳さと陰鬱さが出てます。

 

ローラーボール サントラLPジャケット(輸入盤)

 

 

確かに、この映画は中二病が喜ぶ設定なのに、映画自体はその夢を外していました。

でも、ディストピア映画としては、とっても完成度が高いです。

ローラーボールという、架空の殺人ゲームを軸に据えたことで、娯楽性も十分に備えた(中二病向けではない)大人の映画というのが、この映画の正体でしょう。

 

昔の僕は、まだまだ大人じゃなかったってことですね。

 

この映画は歴史に残る大ヒットというわけではありませんが、設定が魅力的だったのか2002年にリメイクされました。


www.youtube.com

 

リメイク版は、時代は現代に、場所はカザフスタンに、主人公はプロのホッケー選手で巻き込まれちゃった系に変えられてました。

ローラーボールは金持ちマフィアが現地でやってるローカルスポーツっていう位置付け。ローラーボールが「大衆コントロールのための世界的な政治ツール」として使われてるオリジナルとはえらい違いです。

 

これ、もう別の映画ですよね?

 

当然、本質のディストピアはなし。

案の定、イマサンでした。

ゲームするアリーナもシンプルで、大きなオーバルコースじゃなくて、ちょっと狭いスケボーパークのような起伏のあるコースに変えられえていて、スケール感が失われてます。

中二病的な設定(ローラーボール)だけ取り出し映画にしてもダメだってことですね。

 

そう言えばマンガ「銃夢」(映画版は「アリータ:バトルエンジェル」2019)に出てくる競技モーターボールは、ローラーボールがヒントだったんだろうなって思ってるのは僕だけでしょうか?

ちょっと違いますが、マンガ「コブラ」の「ラグボール」も殺人スポーツという意味では影響があったんじゃないのって思ってます。

 

この映画もAMAZON PRIMENetflix、U-NEXTのサブスクでは見られません。

近所のレンタル屋さんにもなかったので、これもTSUTAYAの宅配レンタルで見ました。

 

ちなみに新品のDVDもちょっと高価な特別編のみ入手可能なようです。

 

 

【ザ・ソルジャー】お金はなくとも、映画は工夫と心意気だ!

ジェームス・グリッケンハウスって名前を聞いて、「おー懐かしい」と思う人は相当のヲタクです。

そんな彼の隠れた名作(?)が「ザ・ソルジャー」(1982)。

大昔に劇場で見た時は面白かったんですが、今見るとどうでしょうか?

 

(あらすじ)

アメリカで核物質が強奪され、サウジアラビアの油田に核兵器が隠された。テロリストの要求はパレスチナイスラエルからの解放。核兵器が炸裂すれば、世界の原油供給の50%が絶たれることに。アメリカはCIAの特殊工作員<ザ・ソルジャー>にタイムリミットの96時間以内に秘密に解決するように指令を受ける・・・

 


www.youtube.com

 

僕がこの映画を見たのは、昭和の時代、多分85~86年頃です。

今は亡き横浜・日ノ出町にあった名画座「かもめ座」でした。

同時上映は多分、ジャッキー・チェンの「プロテクター」(1985)。

そっちもグリッケンハウス監督なので、<グリッケンハウス特集>だったのかもしれません。

ちょっと通好みの特集過ぎませんかね?

 

話が逸れますが、「かもめ座」は普通の映画と18禁の映画を週替わりで交代に上映するような映画館でした。

スクリーン両脇にカーテンがあったり、椅子がフカフカ「だった」椅子だったり、と、「昔は格式のある映画館だったんだなぁ」と思わせる作りでしたが、当時は相当に古びて、小汚い感じになっていて、まさに場末の映画館という佇まい。

近所に場外馬券売場特殊映画館(?)「光音座」があるような地域なので、映画目的ではなく、時間つぶしで入るようなお客さんが多い印象でした。授業が終わった夕方の遅い時間に入ると、お客さんもまばらで、ちょっと怖い感じだったのを今でも覚えてます。

ターミネーター」(1984)もここで見ましたが、その時一番印象に残ってるのが、隣の席にどぎつめのエッチな本がポンと置いてあったことです。後にも先のもそんな経験は、「かもめ座」しかありません。

 

閑話休題

 

さて、昭和のB級アクション映画好きが、グリッケンハウス監督と聞いて思い出すのは「エクスタミネーター」(1980)じゃないでしょうか。

残酷描写多めのB級アクション映画で、フルフェイスのヘルメットに革のベストと、マッドマックスのパクリみたい(きっと意図的)なポスターがB級臭をプンプンさせてました。

だけど中身はテンポのいいアクション映画。

今でもカルト的な人気があり、僕も見直してみたいと思ってます。

 

アクション映画を作ることに長けた監督で、ほとんどがB級映画

また監督作、プロデュース作ともに多くなく、まさにマニアのための監督です。(笑)

 

で、本題の「ザ・ソルジャー」です。

正直に言います。

どんな話か全く覚えてなかったです。

いや、もっと正直に言っちゃうと、僕の頭の中でこの映画の感想は「アクションがいっぱいの面白い映画」っていうテキスト情報になっていて、動画どころか、映像も覚えてない状態でした。

映画館のことはあんなに覚えているのに(笑)。

 

そんなわけで、とっても新鮮な気持ちで今回改めて見てみたら、やっぱり面白かったんですよ。

話のテンポも良く、アクションシーンのキレもいい、そして何よりもダラダラしたところが少ないのがいいですね。

 

その売りであるアクションシーンはかなり上手いです。

アクションに次ぐアクションの連続!っていうよりは、要所要所できちんとアクションシーンを見せてくれる構成。

勿論、アクション自身はお金をかけた大作のような派手さやスケール感はないですが、十分楽しめるレベルにあります。

スキーでのチェイスなんて、007シリーズ????っていう出来。

グリッケンハウス監督に007を撮らせてみても面白かったんじゃないでしょうか。

 

話の舞台が主にヨーロッパっていうのは、往年のスパイ映画の雰囲気があってGOODです。特に冷戦下のベルリンはスパイ映画の王道ですね。ベルリンの壁があるうちに訪問してみたかったなぁ。

 

ただ話としては雑になるところが多いんですよ。

理論的とか、整合性とか、説明力はあまり気を使ってないように見えます。

 

例えば今回の黒幕はテロリストじゃなくて、KGBなんですけど、何でKGBイスラエルパレスチナから撤退させようとするのか、世界大戦の引き金となるような事件を起こすのか、イマイチ腑に落ちません。

そんな感じで、全体的に詰めが甘いところが目立ちます。

 

まぁ、そもそも主人公(CIAの秘密特殊工作員)のコードネームが「ザ・ソルジャー」。

めちゃめちゃストレート過ぎてコードネームになってないですよね?

 

ちなみに脚本はグリッケンハウス監督本人。

監督作は一作目以外、全部自分で脚本書いてます。

根っからのアクション監督なので、「面白そうなアクションが出来そうなプロットを思いつく → 具体的なアクションシーンを描く → アクションシーンが映えるような脚本を書く」って流れなんじゃないでしょうか。

ただし庇うワケではないのですが、時間も95分とお手頃だし、「おー面白い」って思ってる間になんとなく終わってしまうし、そもそもB級だって目で見ているのも事実。

 

この手のB級アクション映画(それも80年代)に脚本力を求め過ぎてはいけない

 

そういうことだと思います。

 

そう考えると、このノリで007の脚本を書かれても困るので、やっぱり007の監督は無理ですね。

 

ちなみに「プロテクター」では、主演のジャッキー・チェンがグリッケンハウス監督の脚本と演出に大いに不満だったみたいで、アジア地区ではジャッキーが脚本も変えて、アクションシーンだけでなく、普通のシーンも撮影・編集し直したバージョンが公開されたようです。

 

正直、ラストの戦闘機が出撃するシーンがニュースフィルムっぽいやつからの露骨な使い回し(画質が明らかに違う)だったりと、所々安っぽさが匂います。

しかし安っぽさは「ちらほら」というだけで、リアル低予算映画に見られる、「どこを切っても安っぽい」というワケではありませんので、ご安心を。

寧ろベルリンのカーチェイスや、前述のスキーでのチェイスシーンはしっかりつくってあるので、安っぽいところが相対的に目立ちやすいのです。

まぁ、単にアクションシーンにだけカネとチカラをかけました、ということかもしれませんが。

 

主演のケン・ウォールは、左右繋がっていそうな太い眉毛にばかり目が行きますが、ちょっとカッコイイし、軽くもなく、かといってシリアス過ぎず、アクションもそこそこサマになる、この映画にうってつけの人材。これはナイスな配役です。

ケン・ウォールのフィルモグラフィを見ると、あまり作品に恵まれず、1990年代後半で映画出演がなくなってますね。

ストリート・オブ・ファイヤー」(1984)や「フィラデルフィア・エクスペリメント」(同じく1984)で人気の出たマイケル・パレと似たような立ち位置だったんでしょうが、マイケル・パレほどB級アクション映画まっしぐらに振り切れなかったことが敗因だったのでしょうか。

マイケル・パレは今でも年に数本B級アクション映画に出てます)

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

また意外なところで名優(怪優?)のクラウス・キンスキーがKGBの大物を演じています。

カメオ出演ではなく、ちゃんとした役です。

「キャットピープル」(1982)の時にも書きましたが、クラウス・キンスキーは、美人女優ナスターシャ・キンスキーのお父さんとしても有名な人です。

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

そして僕が密かに驚いたのが、音楽を担当しているのがドイツのプログレッシブバンド・タンジェリンドリームだったこと。

元々、彼らはちょこちょこサントラを担当してる、それもB級が多いのでこれも「さもありなん」なんですけどね。

彼らのサントラの中では、フリードキン版「恐怖の報酬」(1977)がお勧めです。

中学生頃に名鉄岐阜駅の近くにあった小さな輸入レコード屋で買って以来、今でもCDに買い替えて聞き続けてます。

ちょっと鬱になりそうな音楽ですが、映画の雰囲気に見事にマッチするので、興味のある方は是非。

SORCERER

 

映画史的に見れば、かなりの小作品。

胸を張って「この映画のことを覚えてる人は相当マニアック」と言える作品です。

それを証明するかのように、この映画もAMAZON PRIMENetflix、U-NEXTのサブスクにはありません。勿論、近所のレンタルDVD屋にもありません。

また現在、新品のDVDも入手出来ないようです。

 

そんなワケで前回の「食人族」(1980)でも書きましたが、この作品もTSUTAYAの宅配レンタルを利用しました。

 

大切なことだから、前回に続いて言っておきます。

 

本当にこんな映画まで揃えてくれているなんて、宅配レンタルはです。

 

【食人族】避けては通れない?昭和のカルト映画の踏み絵

えー、昭和のカルト映画を語る上で、ヲタクな人たちが「外せない」作品ってあるんですよ。

例えば、僕が溺愛する「ロッキーホラーショー」「ファントム・オブ・パラダイス」「デスレース2000年」もその類です。

そんな昭和カルトの「外せない」作品の中にはレビューを書くことに躊躇するものがあります。

 

それが今回の鑑賞した「食人族」(1980製作/1983日本公開)。

 

カルトの中のカルト。

なるべく映画のように(?)不快にならないようにレビューしたいと思います。

 

(あらすじ)

ドキュメンタリー映画を撮るためアマゾン奥地に入った若者4人が行方不明になった。彼らを捜索するために、大学教授がアマゾンに向かう。そして彼は食人を行う部族の村で4人が残したフィルムを発見し、持ち帰る。そのフィルムに映っていたのは、目を覆う彼らの残虐行為とおぞましい結末だった・・・


www.youtube.com

 

僕はこの映画を初公開時に劇場で見ています。

今はなき岐阜のピカデリー劇場。

同時上映があったハズなのに全く覚えてません。

それぐらいインパクトが強かったんでしょう。

 

そんな映画ですから、なんとなく避けていたところがあるんです。

まぁ、「カリギュラ」や「フレッシュゴードン」をレビューしておいて、今更言うのもなんですが・・・

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

しかーし、この映画を避けて、「昭和のカルト映画を見た!」と自称するワケにはいきません。

 

まさに踏み絵。

 

なので、今回意を決して挑戦(?)することにしました。

 

意を決したのはいいんですが、そもそもAMAZON PRIMENetflix、U-NEXTのサブスクにはありません。

近所のDVDレンタル屋にもありません。

そして新品のDVDも売っていません。

 

まさにカルト・オブ・カルト

そんなに簡単には壁を越えさせてくれないようです。

 

そこで、今回初めてTSUTAYA宅配レンタルを利用してみました。

TSUTAYA宅配レンタルはカルト映画の宝庫。

僕の最後の切り札です。

 

はい、宅配リストにありました。

 

早速、新規会員登録をして、DVDを取り寄せます。

ちなみに2作一組で取り寄せられるので、もう一本はジェームス・グリッケンハウス監督の「ザ・ソルジャー」(1982)にしました。

 

届いた封筒からDVDを出すと・・・「本当に食人族」

 

DVDを眺めながら、「ここまでして見る必要があったのか?」と、ついつい自問自答してしまいます(笑)

 

劇場で見た時「こんな残酷なことが本当にあったのか!!!」と思いました。

 

ずっとそう思ってました。

 

当時の宣伝も「ドキュメンタリー」って売りだったんです。

パンフレットの表紙(下の写真参照)にも「地球最後のショックドキュメント!」って書いてあります。

またパンフレットには俳優のクレジットは一切なし。

主人公は「ベトナム、アフリカなどを記録した映画を監督」と説明書きがあり、「出演者はホンモノで、俳優じゃないです」風だったんです。

 

ドキュメンタリーだって思いますよね???

ノンフィクションだって信じますよね???

 

しかし後年になって実はドキュメンタリー風映画=モキュメンタリーだって知りました。

「ブレアウィッチ・プロジェクト」や「パラノーマルアクティビティ」と同じってことです。

いや、「モキュメンタリー」みたいな高尚なジャンルではなく、「やらせ」ってやつです。

だったら宇宙怪獣が襲ってくるモキュメンタリー「クローバーフィールド」に近い?

いや、本当に近いのは「川口探検隊シリーズ」だと断言できます。

 

当時の僕はまんまと騙されたワケですよ。

小学生の時に川口探検隊に騙されたように。

 

今回、見返すと高校生の僕に「お前、気づけよ」って突っ込みを入れたくなります。

 

そもそもスタッフはイタリア人

アメリカ人の話で、アマゾン以外はニューヨークが舞台なのにセリフは全部イタリア語

 

そう、これはイタリア映画なんです。

 

あのヤコペッティの元祖モキュメンタリー「世界残酷物語(イタリア/1962)」の血を引く作品だったんですねー。

 

映画は二部構成。

前半は行方不明になった若者を探す大学教授一行の話

後半は若者たちが残したフィルムの話

 

とくに前半の教授探索編は難易度★一つの間違い探しです。

カメラアングルからして完全に劇映画。

どう考えても、捜索隊とは別のカメラマンが、離れたところから撮ってるんですよ。

現地人の方にクローズアップしたアングルも多いし。

これをドキュメンタリーだと信じさせた宣伝効果は凄いです。

(昭和という時代が、そういうものを信じやすい時代だったと言えますが)

 

もうドキュメンタリー風劇映画の典型みたいでした。

ああ、高校生の時に嘉門達夫さんの「ゆけ!ゆけ!川口浩!」を聴いていたら、見ぬけていたのになぁ・・・

 


www.youtube.com

(「ゆけ!ゆけ!川口浩!」は、この映画公開の翌年に発売されてます)

 

後半は若者たちが残したフィルムなんですが、こっちの方はかなりドキュメンタリーっぽくなってます。

カメラも全て彼ら目線。

「4人とガイド全員が映ってる」とか「部族の方から若者たちを見てる」みたいな前半にはあったようなシーンはないです。

ただ「敵に追われて逃げてる時まで、ご丁寧にカメラを回してる」みたいな、モキュメンタリーあるあるシーンは結構ありましたねー。

 

更にドキュメンタリー度を高めるために、アメリカにいる若者の家族や友人へのインタビューを入れたりしてるんです。(勿論イタリア語)

 

そして最後にこのフィルムはあまりに酷すぎるということで門外不出になって映像は終わるんです、その後に映写技師がこのフィルムを無断で持ち出して罰金になった、というテロップが出る凝りよう。

 

ここまで徹底すると、フェイクを作るのも楽しんじゃないかって思えてきました。

僕が大人になったって証拠ですかね?w

 

問題の残酷シーンですが、記憶以上にいっぱいありました。

ちなみに残酷シーンは若者が残したフィルムだけじゃなく、教授たちの探検パートにもきっちりあります。

原住民の奇妙な風習と称するものがいくつもあるんですが、今から思うとよくいろいろと考えるなぁ、と感心します。

 

この映画、ドキュメンタリー風にエログロを見せるために、結構工夫してることが分かりました。

 

リーダーのドキュメンタリー監督は「いつもヤラセ疑惑がいつもある」とう設定。

「面白いドキュメンタリーを作るためなら、インチキ上等」ってスタンスなので、原住民の家をわざと燃やして「敵の部族にやられたことにしようぜ」とかやっちゃいます。

つまり彼が作っているのはヤラセドキュメンタリー。

 

これって入れ子構造ですよね?

だってヤラセドキュメンタリー映画の中で、主人公たちがヤラセドキュメンタリーを撮影してるんですよ。

凄くないですか?

 

更に残酷シーンを作るために若者たちは「原住民に何をやっても文明人の俺たちは許される」設定。

彼らは部族の女の子を襲っちゃうんですが、被害者の女の子は「汚れた」ということで、部族に「串刺しの刑」になっちゃうんです。

 

この「杭に刺さった少女」のビジュアルこそが、この映画をカルト・オブ・カルトに押し上げているといっても過言ではないです。

このシーンを見たさに、当時観客が映画館に集まったんじゃないでしょうか。

(「食人族」は日本で大ヒットしました)

 

それぐらいこのビジュアルの破壊力は絶大

当然ですが、パンフレットの表紙にもなっています。

 

食人族パンフレット表紙

更にフィギュア化され、ちょっと前までアマゾンで入手可能でした。

もうヤラセドキュメンタリーの女神かアイコンですね。

 

クライマックスは若者たちの傍若無人な振る舞いが、原住民の怒りを買って皆殺し、っていう展開になります。

そしてフィルムを回収した教授が「本当の野蛮人はどっちだったんでしょうね」と、文明批判をして終わり。

まぁ、文明批判のセリフは、誰の胸にも響いてなかったと思いますけど。

 

残酷シーンは意外にも「ふーん」っていう目で見れます。

ヤラセっていうのが分かってるのもあるんでしょうが、21世紀のハードコア・スプラッターに目が慣れてしまってた、っていうのも原因じゃないでしょうか。

 

そんな残酷シーンの中でも「えっ?!」っていうところがあります。

それはを動物虐待シーン。

間違いなくリアルに亀やサルを殺しています。

これは酷い。

気分悪いです。

 

さて、下世話な観客を集めるためにはエロとグロだ!っていうことで、エロっぽいシーンも多いです。

それでも10代半ばぐらいの女の子(設定は原住民)がスッポンポンなのはヤバいんじゃないでしょうか。今なら絶対アウト。

ネット配信がないのは、残酷なシーンよりも、こういうシーンかもしれません。

ホント、20世紀ってコンプライアンス意識ユルユルでしたねー。

 

結論から言えば「いろいろと裏ネタが分かっていた」ので、当時のようなショックは受けなかったです。

寧ろこれをドキュメンタリーだと信じてた当時の自分の方がショッキングです。

 

昔は他にも「世界残酷物語」「グレートハンティング」「バイオレンスUSA」「食人大統領アミン」といったエログロ・世界案内ドキュメンタリー風映画が定期的に封切られてました。そして気づいたら消えてましたね。

まさに昭和の時代のシンボル的なジャンルだったと言えます。

 

そして「食人族」はこのジャンルの最終形態として燦然と輝いているのです。

(それでも普通の人が見ることはお勧めしませんが)

 

【アウトランド】面白いが、これをSFと言っていいのか

今回レビューしたのはショーン・コネリー主演のSF映画アウトランド(1981)。

スターウォーズ」に始まる昭和のSF映画ブームの中で作られた一本です。

だけど、ショーン・コネリーフィルモグラフィーの中で埋もれてしまっている一本だと思います。

いや、多分、SF映画ファンの中でも埋もれてしまっている可能性があります。

僕は劇場公開の時に見ました。

その時は結構満足した記憶があります。

さて40年経って、その記憶は正しかったのか、検証します。

 

(あらすじ)

鉱山開発が行われている木星の衛星イオ。そこに新たな保安官である主人公が赴任。外界から隔絶された発掘基地で不審死が相次ぐ。調査を進めると、基地は鉱山会社の支配人に牛耳られており、不審死の原因は過酷な労働をさせるために流通させている非合法麻薬が原因だった・・・


www.youtube.com

 

岐阜県人の僕が、この映画を見たのは渋谷駅前にあった東急でした。

兄が東京に住んでいたので、中・高校生の頃は夏休みになると1週間ぐらい東京で映画三昧(岐阜で見れない映画を中心に選んでた)をしていたからです。

「ロッキーホラーショウ」と「ファントム・オブ・ザ・パラダイス」の二本立てという運命の出会いをしたのもこの頃。

また東京に来るたび、同じ渋谷にあった「すみや」というサントラ専門店にもあしげに通いました。

今や東急もすみやもなくなってしまいました。

寂しい限りです。

 

アウトランド パンフレット表紙

簡単なあらすじで、ピンときた方も多いと思いますが、要は正義感の強い保安官が悪事を暴こうとするが、街のみんなは悪玉の権力者が怖くて見て見ぬふり。そこでたった一人で悪漢たちと対決する、というお話。

いろいろなところに、アウトランド」は西部劇の名作「真昼の決闘」のSF翻案版、として紹介されています。確か監督自身もそう言ってたような気がするし、実際に見てみるとまさに「そのまんま」。

 

そんなわけで筋立てはオースドックスだけど、しっかりしてます。

ましてや監督は職人肌のピーター・ハイアムズ

A級大作は作れないけど、話の面白さを損なわず映像化し、きっちりと娯楽映画に仕立て上げるのが上手い監督さんです。

個人的に、彼の良さが一番良く分かる映画は、アポロ計画陰謀論を彷彿させる近未来SF映画カプリコン1」(1978)がじゃないかと思ってます。

反対に芸術SFの金字塔「2001年宇宙の旅」(1968)の続編「2010年」(1984)は、前作の良さが全く引き継げていない悲惨な出来でした。やっぱりそういう映画には向かないです。

ホント、「2010年」を見終わって劇場を出た時は、ピーター・ハイアムスなんてこの世界にいなければいいのに、と真剣に思いました。

 

話は逸れましたが、この映画にはピーター・ハイアムスはピッタリの人材。

そもそも脚本も彼なので、まさに自分の特性が良く分かってるってことですね。

新妻を守る「真昼の決闘」とは違い、この映画では奥さんが愛想を尽かせてショーン・コネリーの下を去っていく、とか助けてくれる女医が嫌味な枯れたおばさんといった色恋沙汰を排除して、男の決闘ドラマに徹した作りにしたので、話の焦点がはっきりしてました。

また正義感の強い、タフガイの保安官にショーン・コネリーをあてる配役もソツなくて良いです。

 

特撮も丁寧で、宇宙空間から見た基地のスケール感はしっかりあるし、「エイリアン」以降の「未来のリアルな肉体労働現場」を意識した採掘基地のデザインもナイスです。

 

こんな風に全体的にちゃんと考えられてるし、必要なお金もかけています。

この映画をまとめると、こんな感じです。

 

・話がしっかりしてる

・監督もキチンと娯楽作としてまとめあげてる

・スター俳優が出ていて、適役を演じている

・安っぽさがないどころか、スケール感や未来感がしっかりある

 

これだけ揃ってればA級とは言えなくても、間違いなく怪しいB級レベルよりはずっと上じゃないですか。

 

でも、それが反対にこの映画を埋もれさせてしまってるんです。

例えば同じショーン・コネリー主演のSF映画未来惑星ザルドスはカルト(トンデモ)映画として未だにいろいろなところで(良くも悪くも)語り継がれているんですが、この映画が取り上げられることは皆無です。

 

まず致命傷なのが、この映画が「SFである必然性がない」ことです。

木星とか、宇宙基地とかSFっぽい設定ですが、この物語の本質には全く影響してないんです。

だって舞台は北海油田みたいな、現代の絶海の採掘基地に変えても、ストーリー的には何ら問題なし。他にもSFっぽく「合成麻薬」が出てきますが、これも現代の麻薬との違いはないっぽく、ただ言葉的にSFっぽくしてるだけ。

他にもビデオメールなど当時のSF的ガジェットやアクションシーン(低重力)、宇宙空間への放出等がありますが、それはSF的なものを楽しませる小道具であって、どれも物語のカギになってません。

ちなみに主人公の武器はショットガンですよ、宇宙でショットガン。

やっぱり本質はただの「真昼の決闘」。

 

「SFブームだから、宇宙基地で「真昼の決闘」をやったら売れるんじゃね?」っていう安易な発想だったんじゃなんですかねぇ。

 

だから見終わった後に、SF映画を見た」っていう気持ちがめっちゃ薄いんですよ。

ただ、「ショーン・コネリーの面白いサスペンス映画を見た」っていう印象なんですよね。

 

そして何よりも「ただの真昼の決闘」というのがアウト。

古典ともいえる「真昼の決闘」のプロットを使うこと自体は悪くないんです。

問題はSF的エッセンスを加えることもなく、また現代的な大きなヒネリを加えることもなかったので、ただの手堅く物語が展開する安心安全の作品になってしったのも敗因です。

簡単に言えば

 

他の「真昼の決闘」モドキと何が違うんだっけ?

 

と言われるレベル。

だから見終わった直後は面白いけど、時間が経つと記憶に残らない、そんなところでしょうか。

 

唯一無二の作品にはなれず、かといってカルトにもなれない。そしてSFファンにはSF映画と認識されない映画。

そんな映画は歴史の中に沈んでしかありません。

かえすがえす、SF的要素をきちんと取り入れてさえいれば、違った評価が待っていたんでしょう。

(そしたらC級カルト映画になってたリスクもあるんですけどね)

 

さて、最後にショーン・コネリーSF映画繋がりで小ネタを。

彼が主演する「メテオ」(1979)というSF映画があります。

巨大隕石が接近、それを科学者が阻止しようとするお話です。

マンハッタンに巨大な隕石孔が開いているイラストのポスターが印象的でした。

(名イラストレーター・生頼範義さんの作品)

当時、劇場で見れなかったので、是非見てみたいんですが、日本国内ではDVD化されてません・・・何とか見たいんですが・・・

 

今回はU-NEXTのサブスクで見ました。

新品のブルーレイは入手できるようです。

 

 

【ゾンバイオ/死霊のしたたり】これはホラー?、コメディ?どっちでもいいけど、面白い!

外国映画って時々、原題とは関係のない、とんでもない邦題を付けられます。

特にホラー映画はその傾向が強いんじゃないでしょうか。

サム・ライム監督「Evil Dead」は「死霊のはらわただし、ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビシリーズの三作目「Day of the Dead」は「死霊のえじきでした。

「Evil Dead」は死霊だけど内臓を出すわけじゃないし、「Day of the Dead」はそもそも死霊じゃないし。

 

今回、皆様にご紹介するホラー映画の原題は「Re-Animator」。

直訳すれば「再活性化させる者」でしょうか。

原作はホラー/ファンタジー/SFファンの間で人気の高い作家ラヴクラフトの「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」。

その映画の邦題が「ゾンバイオ/死霊のしたたり」(1985製作/1987日本公開)。

 

(あらすじ)

アメリカの医学校に一人の学生が転校してきた。彼はスイスの学校で、偶然にも死体を蘇生させる薬を発見しており、新しい学校でも実験を続ける魂胆だったが・・・


www.youtube.com

 

「ゾンバイオ/死霊のしたたり」っていうタイトルは、全く映画の中身を表していません。

映画にはゾンバイオなんて言葉は一切出てきません。

蘇生した死体(ゾンビ)が襲ってくるのと、蘇生薬というバイオテクノロジーを使うから、日本で勝手に作った言葉ですね。映画の内容を端的に表してるということで、ギリギリセーフでしょうか?(甘過ぎます?)

ちなみに今は「ZOMBIO/死霊のしたたり」と英語表記になっていますが、ZOMBIOって和製英語になるんでしょうか?

 

閑話休題

 

しかし「死霊のしたたり」はいけませんよ。

だって死霊は出てこないですから。

確かにゾンビからはいろんなものがしたたりますけど(笑)

でもこういうトンデモ邦題って、まさに昭和ですね。

 

さて冒頭でカリスマホラー/SF作家ラヴクラフトが原作ということで、この映画も正統派の格調高いと勘違いされたマニアの方もいると思います。

ごめんなさい、違います。

まず、どこをどう切っても超B級映画

アメリカ公開から日本公開まで2年開いているのは、そういうレベルの作品ってことです。個人的な推測ですけど、「死霊のはらわた」のヒットに始まるプチホラーブームの一環として、発掘されたんじゃないかと思います。

(「死霊のはらわた」自体、日本公開はアメリカ公開のから3年以上経ってからですけど)

 

が、超B級であってもこの映画、めっちゃ面白いんです。

あの頃に作られたホラー映画の中では、個人的にイチオシ。

そんなに完成度が高いのか、って?

いや、面白いとは言ってますが、完成度が高いとは言っていません。

ただただ85分飽きないんです。

はっきり言うと

 

よくこんなバカバカしい話を面白おかしく見せてくれるなぁ

 

という感じ。

 

原作は読んでないんですが、きっとちゃんとしたゴシックホラーなんじゃないかと思うんですよ。

でもね、この映画はキャラクターと粗筋だけを借りてきて、あとは自由発想なんじゃないんでしょうか。

おどろおどろしいシーンもあるし、ドキドキするシーンもあります。

でもこの映画は間違いなくホラーコメディなんですよ。

 

冒頭、研究室で暴れている教授が血飛沫を出して倒れます。入ってきた人が主人公に「あなたが殺したのね!」と言うと、彼はこっちを向いてカメラ目線で「いや、蘇らせたんだ」という展開。

つかみとしてはいけてます。

普通なら謎を含ませて始めるんでしょうけど、ここは隠し事なしの直球勝負。

この直球勝負というスタンスは全編に貫かれてます。

変な伏線も、思わせぶりもありません。

この分かり易さが、この映画の魅力です。

ただただ暴走するように話が進んでいきます。

 

次の魅力は主人公のマッドサイエンティストぶり。

協調性ゼロで、何よりも死体蘇生の実験が大切という典型的なマッドサイエンティストなんですね。

最近は主人公も悪役も、複雑で深みのあるキャラで描かれることが多いじゃないですか。

でも彼は竹を割ったようなマッドサイエンティスト清々しいです

観客の予想を裏切ることなく、死体蘇生のためなら何でもアリです。

自分のせいで、ゾンビに殺されちゃった学長も「この薬で蘇らせればいいじゃん」(笑)

 

話は後半になると、欲と色にまみれた教授が絡んできて、ヒロイン&蘇生薬の争奪戦に。

ここで一気にホラーからドタバタ喜劇にトランスフォームします。

 

蘇生薬を盗んで自分の手柄にしようとする教授を、主人公を反対に返り討ちにして彼の頭を切断します。頭と体はバラバラになっても蘇生するのか?と言い出して、両方に蘇生薬を打ってそれぞれ蘇らせるという荒業展開。

教授は体に、頭を持たせて逃走。あのマジンガーZブロッケン伯爵の再現です。

更に頭をスポーツバッグに隠して、体に人体模型の頭を乗せて変装する教授。

これをお笑いと言わずに何と言えばいいんでしょう

 

とにかく楽しいです。

ホラーにお笑いっていうのは、一見矛盾する組み合わせですが、絶妙にブレンドするとこんな楽しくなるなんて思いもしませんでした。

 

クライマックスはお約束の教授の大量ゾンビ軍団(病院の死体置き場にあった死体) VS 主人公たちがあり、最後はちょっと物悲しいオチで終わり。

(「ペットセメタリー」(1989)を思い出しました)

 

時間も1時間半以下(85分)なので、お手軽です。

この時期の「飽きない」ホラー映画としては、サム・ライミ監督の出世作死霊のはらわた」と双璧じゃないでしょうか。

あ、「バタリアン」も捨てがたいですね。これもお笑い要素バリバリです。

 

僕は当時、この映画を劇場では見てませんでした。

あとからB級映画玄人筋が面白いよ、という評判を聞いて、レンタルビデオで借りました。

玄人筋の言う通り、怖さが足りない、話のヒネリがない、どこかで見たことのある展開や場面ばかり、というホラー映画より全然楽しめました。

確か続編も借りた記憶があります。

 

今回はU-NEXTのサブスクで見ました。

調べたところ、残念ながら近所のレンタル屋さんにはありませんでした。

ちなみに新品ブルーレイは手に入るようですが、「4Kレストア/パーフェクトバージョン」のようです。この映画を4Kで見るかどうかは趣味の問題です(笑)

【キャノンボール】これは”レース”ではない。チキチキマシン猛レースだ!

公道を使ってアメリカを横断するレースを描いたキャノンボール(1981)。

70年代から流行ったオールスター映画でもあります。

勿論、当時のお約束でポスターにも俳優がズラズラと描かれています。電飾みたいです。

この豪華布陣の「キャノンボール」、無事に観客の心にゴールイン出来たのでしょうか?

 

(あらすじ)

アメリカの東海岸から西海岸まで公道で速さを競う非公認レース「キャノンボール」。参加者は警察につからないようにあの手この手と知恵を絞り、あるものは救急車で、あるものは偽装神父、あるものは新婚夫婦を装ってゴールを目指すのだった・・・


www.youtube.com

 

オマケに日本版のTVCM。めっちゃ昭和を感じられます。


www.youtube.com

 

この映画が公開されたのは1981年12月。お正月映画第一弾でした。

岐阜でも大都市圏より1週間遅れて公開されてます。

いつも通りの二本立てなんですが、同時上映は「エンドレスラブ」。当時人気絶頂のブルック・シールズ主演の甘い恋愛映画で、主題歌がすさまじくヒットしました。(久々に聴きましたが、いい曲です)

 

 

当然、中二病まっさかりの僕は「エンドレスラブ」なんかに1ミリも興味はなかったんですが、スター達が共演するアメリカ横断ウルトラレースっていうのは燃えるぜ!ってことで劇場に向かいました。

 

そして劇場を出る時は虚無感がいっぱい

貧乏性なんで我慢して見た「エンドレスラブ」の生ぬるさのせいだけではありません。

キャノンボール」は僕の想像していた大人のユーモアを交えた血のたぎるレース映画・・・ではなかったのです・・・

 

今回もまた宣伝に騙されました。

だってパンフレットの表紙はこんなんですよ。

キャノンボール パンフレット表紙

いろんな俳優のイラストと、カウンタックを中心にズラズラと並んだ車たち。

娯楽レース大作ですよね?

僕は間違ってないですよね?

 

そう、お気づきの方もいると思いますが、この映画の配給会社はあの東宝東和

昭和のカルト宣伝の金字塔「メガフォース」を始め、今なら誇大広告で消費者から訴えられてもおかしくない宣伝を連発したツワモノ会社だったんです。

そりゃ、高校生では勝てません。

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

主演は男臭い、アクション系映画で活躍してたバート・レイノルズだし、監督もスタントンマン出身のハル・ニーダム

このコンビでカーアクション娯楽作「トランザム7000」等のヒットを出してた頃なんで、東宝東和の黒マジックがなくても、間違った方向に期待していたと思います(自己弁護)

 

この映画、結論から言うと懐かしのアニメチキチキマシン猛レース」の実写版みたいなイメージです。

(あ、本当の実写版は、僕の心の映画「デスレース2000年(1975年)」ですけどね)

要は実力で勝つレースではなく、「いかに狡賢く、ライバルと警察を出し抜くか」というお話。

 

さて、冒頭で映画会社のロゴが出ます。

あれ?この映画会社は・・・20世紀フォックスでも、コロンビアピクチャーでも、MGMでもありません。

 

ゴールデンハーベストです。

 

そう、ブルース・リージャッキー・チェンの映画、Mr.BOOシリーズで有名な香港の大手映画会社、あのゴールデンハーベストです。

アメリカ映画じゃないんだ・・・

ここで警戒すべきでした。

劇場公開時は、まだ警戒能力が低かったんですね。

 

やがて、主人公(バート・レイノルズ)が乗る車が、ポスター(確かパンフレットと同じイラストだったと思います)の中央に描かれているカウンタックどころか、スポーツカーでさえないことが発覚。

なんと救急車!

畜生、ここでも東宝東和の罠が!!!

救急車ならパトカーも止めないだろう、という発想。

それも万が一止められた時を考えて、金で雇った医者まで乗り込ませる主人公。

更に途中で無理やり乗せた写真家(ファラ・フォーセット)まで乗せます。

もうリアルレースの高性能+軽量化の追求なんて関係ありません

 

ファラ・フォーセットは1秒もハンドルを握りません。

要は映画に華を加えるためにいるようなキャラです。

でも当時、彼女はTV「チャーリーズ・エンジェル」に出演して、日本でも大人気。

なので彼女はデカデカとポスターのど真ん中に描かれました。

それもレーシングスーツ姿。

繰り返します。彼女の役は写真家で、全くハンドルを握りません。

当然レーシングスーツなんか着ません。

出ました、東宝東和の黒マジック。

 

脱線したので本編に戻って、他の参加者のインチキぶりも似たようなものです。

 

神父の化けてフェラーリを飛ばす二人組や、「新婚旅行は警察に捕まらない」と相棒に女装をさせてバイクを飛ばす金持ち、警官を色仕掛けでかわすことをモットーとしている女性ペア等、一癖も二癖もあるキャラ達。

いろんな設定のキャラを出し過ぎて、存在感の薄い人たちも少なくないですが、それでもどこか懐かしい面白キャラ達が堪能できます。

勿論、こういう映画に欠かせないドジな敵役(執拗に追ってくる交通安全協会のおじさん)もいます。

 

とにかくフェアで真面目なレースなんて発想はありません。

これぞ、チキチキマシン猛レースです。

 

そんなキャラの中で印象的だったのが、ロジャー・ムーア

出演したのは007役で売れてた頃です。(「007/ムーンレイカー」の翌年)

彼の役柄は「自分のことをロジャー・ムーア+ジェームス・ボンドだと思ってる金持ちのボンボン」。

勿論、乗っている車は秘密武器満載のアストンマーチンDB5!初代ボンドカーです。

そんななりきりドジキャラを、ロジャー・ムーア本人が真面目、且つ楽しそうに演じてるんですよ。これは一見の価値ありです。

 

次に印象的だったのは、ジャッキー・チェンとマイケル・ホイ(Mr.BOO)の日本人コンビ。

ハイテク改造をしたスバルに乗るんですが、真面目だけどハイテク過ぎて失敗ばかり、という当時の日本人イメージを反映してます。

ジャッキー・チェンが運転しながら、こっそり車載ビデオで伝説のポルノ映画「グリーンドア」を見るシーンも、ある意味むっつりスケベという日本人観を反映してます(笑)

この二人、日本語と中国語、英語のちゃんぽんで会話するんです。英語と日本語は分かりますが、何故中国語?中国と日本をごっちゃにしてる?と思ったんですが、製作が香港の会社なので、ワザとなんでしょうね。

ちなみに終盤、キャノンボールの参加者と暴走族の乱闘シーンがあるんですが、途中で他の参加者が「さぁ、行くぞ!」って去っていくのに、ジャッキー・チェンだけが「俺はまだやるぞ!」と一人残ってたっぷりカンフーアクションを見せるんです。

これってジャッキーのアメリカへの売り込みも兼ねていたのかもしれませんね。

 

当時がっかりした記憶があったので、今回はかなり警戒して見始めましたのですが、終わってみれば意外に面白かったです。

今の時代には失われた80年代テイストに溢れた娯楽作(勿論、B級レベルですが)と言えるかもしれません。

もし最初からお笑いレース映画だと知ってたら、当時の印象も違ってたんでしょうね。

 

ハル・ニーダム監督は、これでゴールデンハーベストに見初められたのか、前述の怪作「メガフォース」の監督をすることになります。(合掌)

 

そう言えばアメリカ横断公道非公式レースはこの映画の5年前(1976年)に「爆走!キャノンボール」という映画がありました。

これを作ったのは香港の映画会社ショウ・ブラザーズ。

ゴールデンハーベストは、同郷のライバルに対抗してこの映画を作ったのかもしれませんね。

 

さて、最後に口八丁手八丁の偽神父に黒人スターのサミー・デイヴィス・ジュニアが扮してるですが、そんな彼をバート・レイノルズが「黒人の神父なんかいるか?」「黒い神父」「チョコレート神父」ってディスるんです。

今なら間違いなくコンプライアンス違反になる発言を連発。

20世紀は遠くなりにけり、です。

 

今回はU-NEXTのサブスクで見ました。

新品のDVDは手に入ります。