「ジョーズ」(1975)の大ヒットにより、70年代後半から「動物パニック映画」が流行りました。
襲ってくるのが熊だったり、シャチだったり、タコだったり、無人の車だったり、と色々登場。
その中で本家「ジョーズ」のスピルバーグ監督も認めたと言われてるのが、ジョー・ダンテ監督の「ピラニア」(1978)。
評判は前から知っていたのですが、実は見たことがありませんでした。
昭和の妖しい映画ファンとして、今回意を決して(?)調査します!
(あらすじ)
行方不明になったカップルを探しに来た探偵と案内人。二人は山奥で謎の施設を発見し、そこにあるプールが怪しいと睨んだ。勝手に施設に入った二人は、研究員の制止を振り切り、プールの水を抜く。しかし抜かれた水と一緒にプールで飼われていた軍事用に強化されたピラニアの群れも川に流れ出てしまった・・・
動物パニック映画のフォーマットって決まってますよね。
主人公だけが凶暴な生物に気づく → 警告しても信じない → 大きなイベントが予定されてる → もう一度警告 → 実力者がイベントを優先させ、主人公を恫喝 → イベントが大惨事 → 実力者死亡 → 主人公たちが倒す
この映画もこの鉄板フォーマットの上で進んでいきます。
川上で主人公たちがピラニアを逃がした後、まず人気のないところでポツポツと犠牲者が出ます。
ピラニアは人の多い川下にどんどん進んでいきます。
川下で行われている子供たちのサマーキャンプのハイライトの水泳大会とリゾート地のオープニング祭りというお約束のイベント中。
秘密を隠したい軍やリゾート地の開発者(具の司令官も出資)はオープニングを強行させたようとします。(これもお約束)
まさに「ジョーズ」で作られたフォーマットの焼き直しです。
まずはオープニング。
入ってはいけないプールに忍び込んだカップルが、裸でドボン。ここでサービスオッパイが出たら、ピラニアが寄ってきてThe END。
これも「ジョーズ」の焼き直しでしたね。
(本家はカップルで泳ごうとするんだけど、男の方は服が脱げなくて、女の子だけスッポンポンで先に泳ぎにいって食べられちゃう)
あれ、これ別の映画でも見たなぁ、と思ったら、「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」(1981)でした(笑)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
目新しいのは、主人公たちがピラニアを追いかけて川下りするところ。
「ジョーズ」のように固定のビーチで物語が展開していくのではなく、場所がどんどん変わっていきます。
寂れた川下から、ダムを経て、キャンプ場、そしてリゾート地と徐々に人が多い場所になっていく仕掛けは「早く止めなきゃ」っていう緊張感を高めてました。
それも車もボートも使えないので、手製の筏で川下りをしているので、なかなかピラニアに追いついたり、川下の人たちに連絡出来ない、というもどかしい状況設定はナイスでした。
ハイライトのイベントも一つじゃなくて、子供たちのサマーキャンプとリゾートのオープニング祭りと二段構えだったり、軍が独自に退治しようとしたり、と独自性があります。
また他のジョーズモドキが、「巨大生物」なのに対し、小さな魚が群れで襲ってくる方がリアルっぽさがあったと思います。
少なくとも乳母車を海中に引きずりこんじゃうような巨大なタコよりも、何十倍もリアルです。(「テンタクルズ」ファンの方、ごめんなさい)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
その上、襲われても一気に死ぬわけではなく、食いつくされるところが怖い。あと複数が同時に襲いかかるのも怖いですね。
確かにこの映画、面白いです。
「ジョーズ」の亜流の中では一番というのも頷けます。
B級映画だけど、手を抜かずに、出来るだけ丁寧に作ろうという姿勢があるので、安物っぽさもないです。
でもね、何かスッキリしないですよ。
それは何故か。
それはこのピラニア事件の元凶が主人公たちだからです。
百歩譲って、ピラニアを逃がしちゃったのは勘違いだから仕方ないとしましょう。
でもこの二人、自分のやったことは完全に棚に上げて、「悪いのは軍だ!」と責任転嫁を連呼。
これって日本人からすると「え?」ってなりますよね。
これがアメリカ流の自己主張ってやつなんですか???。
西洋流の、謝ったら負けっていうやつですか???
だから、僕としてはどうしても主人公たちを応援しきれないんですよ。
最後はピラニアを退治して、二人で微笑み合うんですが、やっぱり「お前ら、その前にすることがあるだろう?まずはごめんなさいじゃないのか?」って画面に向かって言いたくなりました。
この映画、アメリカでも評価が高かったようで、続編(殺人魚フライングキラー)が出来ただけでなく、21世紀に入ってリメイク(ピラニア3D / 2010)とその続編の「ピラニア・リターンズ」(2012)が作られています。
ちなみに「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」は、軍の秘密兵器第二弾ということ以外、この映画と全くつながりはありません。
(繰り返しになりますが、製作者は一緒です)
監督のジョー・ダンテは、この後に「ハウリング」と「グレムリン」を撮って出世していきます。
この映画では、軍の研究施設で人形アニメーションによる変な生物を(本編に関係なく)出したり、劇中のTVで白黒の古いSF映画が流すなど、生粋のB級SF/ホラー映画ヲタクぶりを垣間見せてます。
最後に低予算映画の割に「おや?」というスタッフが参加していたので紹介しておきます。
音楽はピノ・ドナッジオ。
「キャリー」や「殺しのドレス」等一連のブライアン・デ・パルマ作品を担当していることで有名です。甘いメロディが特徴的で、この映画でもピノ・ドナッジオらしい音楽が聴けます。
しかし明らかに彼の作品ではなさそうな安っぽい音楽も多数使われてます。
特撮はロブ・ボッティンにフィル・ティペット。ロブ・ボッティンは「ハウリング」の狼男の変身シーンで一躍有名になった人です。
ピラニアに襲われるシーン等特撮や死体の特殊メイクが一定のクオリティを保ってたのは、この人たちが担当してたからかー、と納得しました。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
この映画はAMAZON PRIMEとNetflixのサブスクにはありませんでしたが、U-nextにはあったので、そちらで見ました。
新品のBlu-rayは手に入るようですが、ちょっと値段は高めです。