パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ゾンバイオ/死霊のしたたり】これはホラー?、コメディ?どっちでもいいけど、面白い!

外国映画って時々、原題とは関係のない、とんでもない邦題を付けられます。

特にホラー映画はその傾向が強いんじゃないでしょうか。

サム・ライム監督「Evil Dead」は「死霊のはらわただし、ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビシリーズの三作目「Day of the Dead」は「死霊のえじきでした。

「Evil Dead」は死霊だけど内臓を出すわけじゃないし、「Day of the Dead」はそもそも死霊じゃないし。

 

今回、皆様にご紹介するホラー映画の原題は「Re-Animator」。

直訳すれば「再活性化させる者」でしょうか。

原作はホラー/ファンタジー/SFファンの間で人気の高い作家ラヴクラフトの「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」。

その映画の邦題が「ゾンバイオ/死霊のしたたり」(1985製作/1987日本公開)。

 

(あらすじ)

アメリカの医学校に一人の学生が転校してきた。彼はスイスの学校で、偶然にも死体を蘇生させる薬を発見しており、新しい学校でも実験を続ける魂胆だったが・・・


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「ゾンバイオ/死霊のしたたり」っていうタイトルは、全く映画の中身を表していません。

映画にはゾンバイオなんて言葉は一切出てきません。

蘇生した死体(ゾンビ)が襲ってくるのと、蘇生薬というバイオテクノロジーを使うから、日本で勝手に作った言葉ですね。映画の内容を端的に表してるということで、ギリギリセーフでしょうか?(甘過ぎます?)

ちなみに今は「ZOMBIO/死霊のしたたり」と英語表記になっていますが、ZOMBIOって和製英語になるんでしょうか?

 

閑話休題

 

しかし「死霊のしたたり」はいけませんよ。

だって死霊は出てこないですから。

確かにゾンビからはいろんなものがしたたりますけど(笑)

でもこういうトンデモ邦題って、まさに昭和ですね。

 

さて冒頭でカリスマホラー/SF作家ラヴクラフトが原作ということで、この映画も正統派の格調高いと勘違いされたマニアの方もいると思います。

ごめんなさい、違います。

まず、どこをどう切っても超B級映画

アメリカ公開から日本公開まで2年開いているのは、そういうレベルの作品ってことです。個人的な推測ですけど、「死霊のはらわた」のヒットに始まるプチホラーブームの一環として、発掘されたんじゃないかと思います。

(「死霊のはらわた」自体、日本公開はアメリカ公開のから3年以上経ってからですけど)

 

が、超B級であってもこの映画、めっちゃ面白いんです。

あの頃に作られたホラー映画の中では、個人的にイチオシ。

そんなに完成度が高いのか、って?

いや、面白いとは言ってますが、完成度が高いとは言っていません。

ただただ85分飽きないんです。

はっきり言うと

 

よくこんなバカバカしい話を面白おかしく見せてくれるなぁ

 

という感じ。

 

原作は読んでないんですが、きっとちゃんとしたゴシックホラーなんじゃないかと思うんですよ。

でもね、この映画はキャラクターと粗筋だけを借りてきて、あとは自由発想なんじゃないんでしょうか。

おどろおどろしいシーンもあるし、ドキドキするシーンもあります。

でもこの映画は間違いなくホラーコメディなんですよ。

 

冒頭、研究室で暴れている教授が血飛沫を出して倒れます。入ってきた人が主人公に「あなたが殺したのね!」と言うと、彼はこっちを向いてカメラ目線で「いや、蘇らせたんだ」という展開。

つかみとしてはいけてます。

普通なら謎を含ませて始めるんでしょうけど、ここは隠し事なしの直球勝負。

この直球勝負というスタンスは全編に貫かれてます。

変な伏線も、思わせぶりもありません。

この分かり易さが、この映画の魅力です。

ただただ暴走するように話が進んでいきます。

 

次の魅力は主人公のマッドサイエンティストぶり。

協調性ゼロで、何よりも死体蘇生の実験が大切という典型的なマッドサイエンティストなんですね。

最近は主人公も悪役も、複雑で深みのあるキャラで描かれることが多いじゃないですか。

でも彼は竹を割ったようなマッドサイエンティスト清々しいです

観客の予想を裏切ることなく、死体蘇生のためなら何でもアリです。

自分のせいで、ゾンビに殺されちゃった学長も「この薬で蘇らせればいいじゃん」(笑)

 

話は後半になると、欲と色にまみれた教授が絡んできて、ヒロイン&蘇生薬の争奪戦に。

ここで一気にホラーからドタバタ喜劇にトランスフォームします。

 

蘇生薬を盗んで自分の手柄にしようとする教授を、主人公を反対に返り討ちにして彼の頭を切断します。頭と体はバラバラになっても蘇生するのか?と言い出して、両方に蘇生薬を打ってそれぞれ蘇らせるという荒業展開。

教授は体に、頭を持たせて逃走。あのマジンガーZブロッケン伯爵の再現です。

更に頭をスポーツバッグに隠して、体に人体模型の頭を乗せて変装する教授。

これをお笑いと言わずに何と言えばいいんでしょう

 

とにかく楽しいです。

ホラーにお笑いっていうのは、一見矛盾する組み合わせですが、絶妙にブレンドするとこんな楽しくなるなんて思いもしませんでした。

 

クライマックスはお約束の教授の大量ゾンビ軍団(病院の死体置き場にあった死体) VS 主人公たちがあり、最後はちょっと物悲しいオチで終わり。

(「ペットセメタリー」(1989)を思い出しました)

 

時間も1時間半以下(85分)なので、お手軽です。

この時期の「飽きない」ホラー映画としては、サム・ライミ監督の出世作死霊のはらわた」と双璧じゃないでしょうか。

あ、「バタリアン」も捨てがたいですね。これもお笑い要素バリバリです。

 

僕は当時、この映画を劇場では見てませんでした。

あとからB級映画玄人筋が面白いよ、という評判を聞いて、レンタルビデオで借りました。

玄人筋の言う通り、怖さが足りない、話のヒネリがない、どこかで見たことのある展開や場面ばかり、というホラー映画より全然楽しめました。

確か続編も借りた記憶があります。

 

今回はU-NEXTのサブスクで見ました。

調べたところ、残念ながら近所のレンタル屋さんにはありませんでした。

ちなみに新品ブルーレイは手に入るようですが、「4Kレストア/パーフェクトバージョン」のようです。この映画を4Kで見るかどうかは趣味の問題です(笑)