パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ドリームチャイルド】ファンタジーの顔をしたロリコンオヤジの純愛映画?

酷い中耳炎をやってしまい、更新が全然できませんでした。

すみません。

 

さて、子供の頃の印象と、大人になってから改めて見ると印象が違うってこと、ありますよね。

勿論、「昔は面白くないと思ったけど、今見ると面白かった」っていうのは、このブログで書いた映画でも幾つかありました。

そしてたまに「昔は何の話か分からなかったけど、今見るとなるほど、と思った」っていうのもあります。

ショーン・コネリー主演の「シークレットレンズ」(1982)はその典型例です。

ただし、「面白くない」っていう印象は今も昔も変わらなかったのですが・・・

 

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さて、ごく稀にあるのが「普通の映画だと思ってたのに、実はトンデモ映画だった!」ってやつ。

それが今回レビューするドリームチャイルド(1985制作/1986日本公開)。

 

昔、見た時は不思議の国のアリス」の実写を交えたファンタジー、という印象だったのですが・・・

 

(あらすじ)

時は1932年。80歳になる「不思議の国のアリス」の主人公のモデルである老女アリスは、作者のルイス・キャロル生誕百周年にアメリカの大学に招かれ、イギリスを出て初めてアメリカにやってきた。好景気の沸き、活気に溢れるアメリカは、イギリスの保守的な生活の中で過ごしてきたアリスにとっては、騒々過ぎる世界だった。

ルイス・キャロルに関する質問攻めに遭い、疲弊してホテルに戻るアリスは、遠き日のルイス・キャロルとの日々と、彼がプレゼントしてくれた「不思議の国のアリス」を思い出していた・・・


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不朽の名作童話「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」は、名家の家庭教師をしていた作者のルイス・キャロルが、その家の次女アリスを主人公に書いた、というのは有名な話。

 

この映画は現在(1932年のNY)と過去(1860年代のイギリス)、そして不思議の国のアリスの世界を行き来する物語。

 

話はアメリカ人の、ちょっと軽い新聞記者と老アリスの付き人との恋愛、子供の頃のアリスとルイス・キャロルの愛情に満ちた日々、老齢のアリスと付き人のギクシャクした関係が繰り広げられる展開。

どの関係もちょっと甘酸っぱい大人のドラマ。

大ドラマではないけど、そこそこほど良い深みがあっていいと思います。

 

さて、当時気になったのは、やっぱり「不思議の国のアリス」の世界をどう実写化しているかでした。

1985年と言えば、「スターウォーズ」(1977)から8年、「ハウリング」(1981)、「狼男アメリカン」(1981)、「キャットピープル」(1982)で狼男(豹女)の変身がリアルに再現されるなど、特撮(SFX)真っ盛り。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

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宣伝にも「不思議のアリス」の実写シーンは全面に出てたので、かなり期待してたんです。

その出来は期待に違わず、マペット(人形)を駆使して、かなりリアルに、面白く再現されてました。

 

キャラの造形と操作は「セサミストリート」のキャラ達の生みの親ジム・ヘンソン

とにかく「本当に人形?」と思わせるリアルなキャラは、3年前に制作された「ダーククリスタル」(1982)で実証済み。

この後に作られた「ラビリンス/魔王の迷宮」(1986)でも彼の現実とは思えない人形の造形と操演を堪能することが出来ます。ただし映画の出来はいかがなものか、というレベルですが。

 

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ただ、昔見た時は不思議の国のアリスの再現シーンはもっとあるかと思ったけど、意外に少なかったですね。

お茶会、海岸、芋虫だけ。

今なら、このマペットで「不思議の国のアリス」の完全実写化をしてもらいたかったです。

 

さて、この映画で今回気が付いたのは、実はロリコンオヤジの純愛映画」だったってこと。

家庭教師&大人と子供という一線を越えてはいけないと思いつつ、気持ちが止められず、彼女のために「不思議の国のアリス」を書いたり、写真を撮ったり・・・中学生の片思いみたいです。

完全に教師が教え子を優しく見守るというレベルではなく、ロリコンです。

コミュ障のルイス・キャロルが、おどおどしながら幼いアリスの気持ちを惹こうとするシーンは、正直イタいです

ドリームチャイルド_ポスター

 

今見ると、ちょっと犯罪スレスレの雰囲気があって、危うい感じ満載でした。

ポスターも今見ると、ちょっとヤバい感じです(笑)。

 

老アリスがルイス・キャロルとの日々を回想して、「あんなに愛情を注いでくれてたのに、それを知らぬふりをして、素通りしてしまった」っていう表情をするんです。

 

でも、その愛情、応えたらアカンやつですから

 

だからスルーして正解。

最後は愛情を注いでくれたルイス・キャロルに感謝して、大学でスピーチをするんです。

最初に見た時の僕は、素直に「愛情に気づいてよかったね」って思いました。

 

何で、今になってロリコン親父の純愛って気づいたんでしょうか?

それは今の僕が、それだけ世間に揉まれて、汚れたってことなですかね?

 

ルイス・キャロルを演じたイアン・ホルムは、見事に口下手で内向的なロリコンインテリを演じてます。「エイリアン」のアンドロイド役といい、この人、変わった役が上手いです。

他の役者さんはあまり有名な人はいませんが、アリス役は子供の頃も、おばあさんの時も実物とそっくりでした。

 

まぁ、散々ロリコン親父をやり玉にあげましたが、映画としては丁寧に作ってあって、好感は持てるし、1時間半と短めで割と面白く見れました。

 

ただタイトルの「ドリームチャイルド」は。ルイス・キャロルがアリスをそう呼んでいたことに由来しているそうですが、ちょっと安易かなぁ。

自分の好きな女の子をドリームチャイルドと呼ぶのも、ストレート過ぎて、如何なものかと思いますけど。

(また糾弾してる?)

 

DVDやBlu-rayは、現在新品では入手困難なようです。