パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ソルジャー・ストーリー】渋い人種格差サスペンス。

PRIME VIDEOで100円レンタルで見つけた「ソルジャー・ストーリー」1984製作/1985日本公開)。

記憶の片隅にあった映画。

当時珍しい小型版のパンフレットが、我が家の本棚に眠ってました。

確か中野か吉祥寺の映画館で見た記憶があります。

でも残念ながら話は全く覚えてません

そんなワケで、早速レンタルしてみました。

 

(あらすじ)

第二次大戦中、南部の米軍基地で、黒人の曹長が殺害される。東部から黒人の大尉が調査のためやってきた。黒人の士官を見るのが初めての兵士たちは彼に奇異な目を向け、白人の兵士はあからさまに反発する。誰もが白人が犯人と思う中、彼は捜査を始める・・・

 


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監督はノーマン・ジュイスン。

メッセージ性のある話でも、社会派ほど堅苦しくなく、ちゃんと娯楽作として良質な映画に仕上げるいい監督。

このブログでも彼のSF映画ローラーボール」(1975)を紹介しました。

ディストピア世界を通した現代文明批判だけど、ちゃんと娯楽SF映画になってました。

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この映画でも南部で黒人軍曹が殺された事件を通して、人種の壁、そして黒人たちのそれぞれの葛藤を描いています。

元は舞台劇ですが、同じ南部、東部の黒人のエリートが捜査をする等、彼が監督した名作「夜の大走査線」(1967)にダブるところがあります。(「夜の大捜査線」は7部門ノミネート、5部門受賞)

この映画もアカデミー作品賞、助演賞、脚色賞にノミネートされているので、当時は評価の高かったようです。

パンフレット表紙

この映画で強烈な存在感を放っているのは、被害者である軍曹。

彼は冒頭に殺されちゃうんですが、兵士達の証言が劇中で再現されるので、そこに生前の彼が出てくるんです。

とにかく無学の父親から黒人の地位向上精神を受け継いだ彼は、白人に反抗するのではなく、地位向上の足を引っ張る昔ながらの黒人が大嫌い。

それが行き過ぎて、全ての黒人が嫌いに見える黒人の軍曹

このビミョーな存在感のあるキャラを徹頭徹尾、憎々し気に演じきったアドルフ・シーザーが、アカデミー助演賞にノミネートされたのは当然のことでしょう。

 

その彼と対象的なキャラが、ハーバード大学の法学部を出た、東部出身のエリート捜査官の主人公。

舞台となる南部の基地では、初めて見る黒人の士官という設定。

彼は決して白人の脅しにも屈せず、自分を見下す白人の下士官たちや好奇の目で見る黒人兵士を「肩書」でねじ伏せながら調査を進めていきます。

彼もステレオタイプ的な性格のいい正義感ではなく、自分に敵対する人間にはとことんやり込める、実はちょっと嫌なタイプ

このドラマの肝って、「現実離れした良い人」が出てこないことかもしれません。

 

殺害された軍曹と捜査をする主人公は方法論こそ違え、黒人の低い地位に抵抗する人物。

同じ目的を持った人物が片や殺害され、片やそれを調査する。

このコインの裏表というのが、構造的に面白いです。

 

さすが評判だった戯曲が原作だけあって話はかなりしっかりとしています。

軍隊内という関係だけじゃなく、そこに軍隊内の野球大会も絡めたことが話に深みが出てました。

「軍隊」だけでなく、「野球」に対するいろいろな思惑が複雑に絡みます。

野球を黒人の地位向上に使おうとする軍曹、野球に積極的に協力することで軍曹に引き立てて貰おうとする兵隊、地位向上に興味がなく、楽しく生きていければいいと思うピッチャー・・・

その中に軍曹に反感を持つ若い兵隊がいるんですが、これが有名になる前のデンゼル・ワシントンだったんです。

今、映画化するなら彼がエリート捜査官をやるんでしょうねー。

そういう点では、この映画は「白人に対する黒人の抵抗のドラマ」ではなく、黒人同士の葛藤のドラマです。

 

結局、犯人は黒人を見下している白人ではなく、同じ黒人だったというオチも黒人同士の葛藤のドラマだからこそ、意味のある終わりでした。

 

事件が解決した後に、黒人部隊にヨーロッパ出征の命令が出て、みんなが無邪気に「これでナチを殺しにいけるぜ!」って喜んでいるシーンになるんですが、彼らの多くが負傷するか戦死するだろうってことを考えると切なくなります。

 

ラストは最初に主人公を追い返そうとした白人士官が、捜査を終えて帰る主人公を自分のジープに乗せ、握手をするんですが、これもちょっと「夜の大走査線」のラストに似てますね。

※「夜の大捜査線」では反目していた白人署長が、主人公を駅で彼の荷物を持ってあげて、最後に握手をし、「気をつけて」と言って別れる。

 

ノーマン・ジュイスンの演出は「ローラーボール」と同じく手堅く、奇をてらったところはありませんが、それだからこそストーリーを堪能でき、ダレることなく最後まで見ることが出来ます。

 

PRIME VIDEO、NetFlix、U-NEXTのサブスク(定額視聴)の対象にはありませんでしたし、DVDも廃盤になっていて、なかなか気軽に見れないのは残念です。

 

渋いですが、佳作なので埋もれないで欲しいなぁ、と思います。

【2001年宇宙の旅】世紀の名作SFを劇場で!

2001年宇宙の旅(1969製作)

説明不要の名作ですね。

この映画をこのコラムで取り上げるのも、どうかと思います。

名作だけでなく、「オネアミスの翼」(1987)同様にレーザーディスクもブルーレイも持ってるし、何年に一度は見ている映画。

そんな映画を何故書くかというと、実は38年ぶりに劇場で見たからです!

 

(あらすじ)

荒廃とした土地に類人猿の一群がいた。しかし彼らは弱く、虎や敵対する類人猿のグループに襲われ、衰退していた。彼らの前に謎のモノリスが出現。そこに触れると、彼らは近くに落ちていた動物の骨を手に取り、こん棒のように使えることを「発見」する。そして、その道具で動物を狩り、敵対するグループを打ちのめしていく。こうして彼らは人類の一歩を踏み出した。

時は流れ21世紀。月で同じようなモノリスが発見される。モノリス木星に向け電波を放っていた。数ヶ月後、人工知能を搭載した宇宙船ディスカバリー木星に向かって出発した。


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この映画が初公開されたのは、まだ幼稚園の頃。

当然、リアルタイムでは見ていません。

13歳離れた兄が映画好きだったので、物心ついた頃には家にこの映画のポスターが飾られていました。

やがて自分も映画好きになった小学生の頃に、「いつか見たい」と思った一本です。

初めて見たのは、高校2年ぐらいの時。リバイバル上映を岐阜の衆楽館という、大スクリーンの映画館で見ました。

この時は期待値が高かったのと、内容が哲学的なこと、当時の僕は派手なアクション系の映画が好きだったこともあり、実は途中まで睡魔との戦いでした。

 

次に劇場で見たのは、浪人時代。

名古屋の伏見にあった名画座でした。

確かボーリング場が入っているような複合娯楽施設の中にある小さな映画館で、「時計仕掛けのオレンジ」との二本立てで見ました。

 

この時も「ビジュアルは凄いけど、話は冗長だなぁ」って思ってたんです。

(余談ですが、今はどちらの映画館も閉館になってます)

 

それでも、やっぱり惹かれるものがあって、レーザーディスクを買ったり、ブルーレイを買ったりして、ちょこちょこ見てました。

そんで見ているうちに、冗長という印象が薄れていって、どんどん好きになっていったんです。

 

浪人時代以来、TVの画面でしか見ていなかった「2001年宇宙の旅」。

しかし、たまたま川崎のチネチッタで、ライブサウンドというシステムを使った特別上映があると知って、早速出掛けました。

 

劇場入り口に掲げられたポスター

後から調べたら、2018年にオリジナルの70ミリプリントで、国立フィルムセンターでの上映会もあったらしいんですよ。勿論、予約券は即完売だったみたいです。その後、各地のシネコンIMAXでも、大迫力上映会もやってたとか。

 

見たかった~

 

さて今回のチネチッタでの上映会は、多分完全版。

何が完全版かというと、

①最初は真っ暗なままクラシックが流れる

②途中で10分間の休憩が入る

③エンドクレジットが終わってからも、ワルツ名曲「美しき青きドナウ」が客電がつかないまま最後まで流れる、

があったからです。

昔、名古屋で見た時は①、②はなし、③は途中で切られてたような記憶があります。

 

久々に劇場で見た感想は、素直に面白かった、です。

 

劇場という「場」もあり、今回はずっとテンション高く見れました。

 

いやー、まさに完璧な映画だと思いました。

やっぱりキューブリックは凄いです。

 

この映画の特徴は、徹底して感情を排していること。

登場人物でほとんど感情を露にすることはありません。

だからこそ、メモリーを外されて、ただの機械レベルに落とされる時に抵抗する人工知能HALの姿が印象に残ります。

彼が「デイジー、デイジー・・・」と歌いながら機能を停止していく姿は、登場人物の誰よりも人間臭く感じました。

 

またどこを切っても嘘っぽさや、作り物っぽさがない映像美は圧巻です。

元々キューブリックがプロのカメラマンだったということもあるのでしょうが、とにかく画面作りに手抜きはありません。

隅々まで神経が行き届いているのが分かります。

物語の大半は宇宙が舞台なんですが、CGのない時代にどうやって撮影したんだろ?っていうような「特撮」というレベルをはるかに超えた完成度の高いシーンの連続。

スペースシャトルの中で浮遊するボールペン、遠心力を利用して擬似重力を発生させてる宇宙ステーションや船内等を見るだけでも一見の価値があります。

これがこの映画を古びさせない理由の一つでしょう。

 

ただ当時話題になったラストのスターゲイトのシーンだけは、昨今のSF映画のワープシーンを見慣れた目には古臭いと感じるかもしれません。

 

隙の無い美しい画面に、極力説明や感情が排除されて淡々と進む物語。

それが観客を神の視点にさせ、見終わった後に歴史ドキュメンタリーを見たような気にさせます。

 

当時、難解と言われたストーリーは、いろんなところで色んな解説が出尽くしたせいもあって、意外にすんなり入ってきます。

ただそういう情報のない人にとっては、何も説明のない人工知能HALの反乱やスターゲイトからスターチャイルトに至る展開は「何故?」「何?」となるかもしれないので、一回見て、いろんな解説を読んで、もう一度見ると断然楽しめます。

 

そしてこの映画を格調高くしているのは、BGMがクラシックっていうこと。

当時、SF映画全編にクラシックを使うなんて、かなり斬新でした。

(実はキューブリック監督が、「とりあえず」ということで趣味のクラシックを付けてみたところ、あまりにマッチしたので、そのまま使ったらしいです)

 

特にスペースシャトルが宇宙ステーションに向かうシーンで流れる「美しき青きドナウ」は最高。今てこそ、アクションシーンに静かな音楽を当てたりすることがありますが、当時はこうしたミスマッチは新鮮な驚きでした。

 

美しき青きドナウ(『2001年宇宙の旅』より)

美しき青きドナウ(『2001年宇宙の旅』より)

  • シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニック・オーケストラ
  • サウンドトラック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

壮大で、哲学的なので、気軽には見れませんが、一定時間が経つと見たくなる中毒性のある作品です。

 

ちなみに続編の「2010年」(1984)という映画があります。監督は「アウトランド」(1981)など娯楽映画を得意とするピーター・ハイアムス、主演は当時売れっ子だったロイ・シェーダーでした。

そして出来た映画は、僕らの不安を裏切らない、この映画とはかけ離れたB級娯楽映画でした。それも65点ぐらいの出来の。

この映画のファンなら、間違いなく怒り心頭になるような作品で、多分、誰も続編とは認めてないと思います。

 

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サブスク系ではPRIME VIDEO とU-NEXTで見ることが出来ます。

またDVDもお手軽な値段で入手出来るようです。

 

【オネアミスの翼】個人的アニメベスト1はこれだ!

エヴァンゲリオン」のガイナックスの第一回長編アニメ、オネアミスの翼(1987製作)。

正直、このブログの趣旨である「僕的に怪しい映画を見てみた!」から外れています。

普通に良いアニメだし、レーザーディスクもDVDも持っていて、何年に一度は定期的に見てます。もっと言えば、好きなシーンだけなら、必ず一年に一度は見てるんです。

 

そんなアニメが今回4Kリマスターになってブルーレイが発売されるのに合わせて、限定劇場公開されたので、横浜のブルグ13というシネコンまで足を運びました。

ちなみに劇場で見るのは初公開以来35年ぶり。岐阜のロイヤル劇場でした。

 

(あらすじ)

架空の世界の、架空の国。まだ人類は有人ロケットが夢だった時代。主人公は「将来ロケットを飛ばす」という目的で作られた王立宇宙軍の一員。しかし誰もロケットなんて信じず、軍隊とは名前ばかりのぐーたら集団だった。しかし政治の思惑もあり、実際に有人ロケットを飛ばすことに。

日々適当に生きていた主人公は、街中で宗教のビラを配っている少女と出会ったことで、勢いでパイロットに志願する・・・

 


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まず設定が僕好み。

舞台は歴史や国家体制だけじゃなく、文字も全て架空の世界。

時代的には昭和の30~40年代前半に似ていて、街中にはネオン管の看板とか、路面電車とか、既に初公開当時でさえ「懐かしい~」って思うレトロ感満載。

この架空のレトロ世界やレトロフューチャー(スチームパンク)って、僕は惹かれちゃうんです。「未来世紀ブラジル」(1985製作/1986公開)が好きなのも、同じ架空のレトロ世界だからです。

 

やっとジェット戦闘機が実用化されたような時代に、人を乗せたロケットを飛ばそうという男たちの話。

 

これって実話の映画化、名作「ライトスタッフ」(1983製作/1984公開)に似てますが、あの映画のニヒルな男たちの挑戦談じゃないんです。

チャック・イエーガーの「ガムをくれ」ってセリフにはめっちゃ痺れました!)

 

このアニメは、日頃からやる気のない主人公と仲間たちが、おじさんたちの野望(?)に乗せられて、手探りでロケットを飛ばす話。

時代設定も50~60年代っぽいので、アメリカの実話(まさに「ライトスタッフ」)を借りてきただけ、と言われればそれまでで、安彦良和さんが「無意味」と酷評するのも分からなくもありません。

 

でも、そう思わせないアニメだと思うんです。

 

その一番の要因は、何よりも森本レオさんが演じる主人公。

もうこれに尽きます。

彼の感情を表に出さない、淡々とした演技が、アニメにありがちな熱血だったり、クールだったりする主人公とは全く異質のキャラを生み出してます。

初めて見た時に「こんな主人公ありなのか?」と思いました。

(森本さんの喋りは、機関車トーマスと一緒のノリと言えばそうなんですが)

 

そんな不思議な主人公だからこそ、ちょっと間違えば青春熱血感動ドラマになりそうなこの映画を熱くなり過ぎないようにしてます。

特に前半のいい加減な男から、後半のロケットで飛ぶことに真剣になっていく変化は見事。

彼でなければ、間違いなく「ライトスタッフの安っぽいコピー」で片付けられてた可能性があります。

 

あとこの映画をちょっと変わったものにしているのが、ヒロイン。

大丈夫?っていうぐらい宗教にどはまりしているキャラです。

主人公は下心見え見えで、彼女に近づき、話を合わせていくうちに、宇宙に行くという使命感と重ね合わせて、自分も宗教を信じていくんですね。

 

まぁ、これが世の中で言う洗脳ってやつなんでしょう、きっと。

 

ちなみに主人公がヒロインを襲っちゃうシーンがあるんです。

でもヒロインに燭台で頭を殴られて未遂に終わるんです。

主人公が目が覚めると、バツが悪そうに彼女に謝るんです。

すると彼女は「私こそごめんないさい。あなたのような立派な人を殴っちゃったりして」って謝るんです!

 

初公開の時に一緒に見ていた友人が、このシーンを見て「宗教っていいなぁ」と言ってました。

それ完全に間違ってるんですけどね。

 

純粋に宗教を信じる彼女と接していくうちに、主人公はロケットと飛ばすことにシリアスになっていき、更に信仰も持っていくんですが、その展開が絶妙で、本当に自然に見えるんです。

 

この映画は「ロケットを飛ばす男たちの話」というのは、実は伏線で森本レオさん演じる主人公の変化(成長?)を見る映画なんじゃないでしょうか。

 

さて、そんな信心深い彼女ですが、靴を脱いだ時に、たまたま靴底からお金が落ちるシーンがあるんです。これ、とっても意味ありげ。

何故、宗教勧誘のビラを配ってるだけの彼女が生活てきるのか?っていう疑問の答えを、ちょっと垣間見させるシーンじゃないかって思いました。

 

考えすぎですかね??

今回、劇場で来場者に配られたイラストの1枚。これはヒロインの「リイクニ」



話自体ものんびりとした主人公たちの生活から、政治ドラマあり、サスペンスあり、恋愛(?)あり、クライマックスでは戦争と打ち上げが交差します。

 

軍人が打ち上げ基地にやってきて、戦争が始まるからロケット発射を中止して退避するように言うんですが、主人公が「絶対に俺は上がるんだ!」という一言で、スタッフは打ち上げを決意するんです。

軍人は引き上げながら、部下に「船乗りは船と運命を一緒にするそうだ」と言い、そこから戦闘が始まるシーンになります。

 

ここから打ち上げカウントダウンと戦闘が交互に描かれ、最後は地球を見下ろす主人公の姿で終わります。このクライマックスからラストまでの一連の流れが僕は好きで、何度も見ちゃいます。

 

あとこの映画で忘れられないのが、音楽。

音楽監督は、あの坂本龍一さん。

音楽監督なので、全曲書いているわけではありませんが、エキゾチックな雰囲気で統一されてます。

やはりその中でも出色は、彼が作曲したメインテーマと、リイクニのテーマ。リイクニっていうのは、ヒロインの名前です。

サントラが廃盤なのが、とっても残念。

今回4Kリマスターのブルーレイボックスセットには、サントラの完全版が収録されてるそうです。

 

ちなみに坂本龍一さん自身は、このアニメに関わったことを黒歴史のように語られてるようですが、全然そんなことがないぐらい素晴らしい音楽です。

 


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この映画が好きなのは、きっと「オネアミスの翼」という虚構に完全に没入てきる世界を、丁寧に作ってあるからてしょう。

そこに森本レオさんの肩の力が抜けた主人公が、僕らをその世界に連れてってくれます。

 

今回、改めて映画館で見て、本当にこの映画が好きなんだなぁ、って実感しました。

DVDのジャケット。イラストは初期設定みたいで、実際の登場人物とは異なります

サブスクではU-NEXTにあります。

DVDは普通に手に入ります。

 

【クロスロード】今だから分かるブルースの面白さ

「クロスロード」(1986製作/1987日本公開)ってタイトルは、エリック・クラプトンもカバーしたロバート・ジョンソンの名曲「クロスロード」からの引用。

古いロックが好きな人には堪りませんね。

この映画は、まさにその「クロスロード」がネタの話。

 

製作から日本公開まで丸1年かかってることから、公開当時の日本での注目度がめちゃくちゃ低くかったことが分かります。

まぁ、僕自身も公開当時に映画館見た記憶があるんですが、どこの映画館だったかさっぱり思い出せないレベルです。(多分、岐阜)

 

内容は概ね覚えているんですが、感想としては60点でした。

悪くないけど、心に残るものがなかいってところでしょうか。

さて、そんな映画を今回は見てみます!

 

(あらすじ)

主人公は、名門・ジュリアード音楽院で将来を嘱望されているクラシックギターの学生。しかし内心ではブルースギターに心惹かれおり、1930年代の名ブルースギタリスト、ロバート・ジョンソンが残したと言われる幻の曲を見つけて、自分でレコーディングするという夢があった。彼は近所の療養施設にロバート・ジョンソンと懇意にしていたブルースマンと思われる老人が入居していることを知る。老ブルースマンに近づき、幻の曲を教えて欲しいと言うと、老人は「自分を療養施設から連れ出し、ミシシッピまで一緒に来て欲しい」と交換条件を出す・・・


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当然、全編にアメリカ南部をベースとする”デルタブルース”が溢れてます。

これがめっちゃくちゃかっこいいんですね。

Crossroads

Crossroads

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思い返せば、これを見た20代前半の僕は、まさにメタルヘッド

嬉しい時も、悲しい時も、晴れてる日も、雨の日も聴いてる音楽はハードロック/ヘビーメタル一直線

だから、この映画に流れるブルースも「ちょっと雰囲気あっていいよね」程度にしか思いませんでした。

 

しかしあれから35年経った今、僕の音楽趣味もメタルからロック、ジャズ、ブルースと音楽の幅が広がったことで、前回よりブルーステイストが分かるようになったんです!

 

進歩ですよね?

 

お陰でこの映画の印象が数段レベルアップしまた。

 

お話としては典型的なロードムービー

落ちぶれた伝説のブルースマンと、ブルースに憧れる青年がミシシッピまで旅をし、その旅を通して主人公が青年から大人になり、ブルースを理解していく成長談。

男っぽい映画作りを得意としてるウォルター・ヒル監督だけあって、この手のテーマをそつなく、上手にまとめています。

 

特にぶっきらぼうで、ちょっと胡散臭い老ブルースマン「ブラインド・ドッグ・フルトン」を演じるジョー・セネカの演技が光ります。

いい加減な言動と行動をしつつ、少年を諭し、ブルースの神髄を教えていく様がぴったりハマっています。本当に百戦錬磨のブルースマンにしか見えません。

 

反対に主役のラルフ・マッチオは力量不足

ベスト・キッド」(1984)のような少年役はいいんですが、この映画で求められる青年から大人へ成長するという役は、彼にはハードル高かったですねぇ~。

前半の軽いキャラの時は比較的違和感はなかったのですが、後半の失恋を通じて、大人になり、ブルースに目覚めていくところは、めっちゃ軽くて不似合い。

言ってしまえば、映画の最後になっても彼が大人の階段を上がって、ブルースに目覚めた実感がありません。

 

最近たまたまTVで見た劇場版「銀河鉄道999」(1979)のラストシーンの鉄郎の方がよっぽど大人の階段を上ってました。

 

当時、ラルフ・マッチオは「アウトサイダー」(1983)、「ベスト・キッド」で注目されてたので話題作りもあっての起用だったのかもしれません。

この映画だったら、同じ頃に活躍していたアンドリュー・マッカーシー(「セント・エルモス・ファイヤー」「マネキン」「プリティ。イン・ピンク」)の方が似合ってたんじゃないんでしょうか。

 

ちなみに主人公がギターを弾くシーンでは、ラルフ・マッチオがちゃんとギターを弾いています。(スタンドインなし)

音は吹替かもしれませんが、なかなか上手に弾いているように見えるので、実際にそこそこギターが弾けるんじゃないんでしょうか。

そういうところもキャスティングの理由だったりしますかね?

 

さてさて、話の中盤でキーマンとして家出少女が合流します。

彼女との淡い恋愛と失恋が主人公の成長のターニングポイントという設定。

(老ブルースマンが「ブルースは、去っていった女性への男の悲しみだ」というセリフがあります)

 

この女の子、ルックス、演技共に悪くはないんですよ。

ただこの子の扱いが、とってもステレオタイプで雑

 

主人公がこの子に恋心を抱くんですが、観客はその理由が分かりません

たまたま身近にいたから好きになったとか、3人でピンチを切り抜けるうちに「吊り橋効果」として好きになったとか程度しか思いつかないから、ただお互い気になって、流れでエッチしただけの関係に見えるんです。

だから彼女が去って悲しむ主人公は「これからもエッチ楽しみにしてたのに、いなくなるなんて~」というレベルしか感じられません。

 

これでブルース開眼はないでしょ???

 

ここはキーエピソードなんで、しっかり深堀して、人間関係の微妙なアヤを描くべきでした。

 

ただウォルター・ヒル監督を庇うワケじゃないですが、元々この監督は、カルト的傑作「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984)でも、恋愛描写になると平凡になってましたから、彼の弱点なのかもしれません。

 

閑話休題

 

この映画が普通のロードムービーとちょっと違って、ファンタジー要素があります。

 

悪魔が出てくるんですよ。

夢の中じゃなくて、本当に。

 

何で老ブルースマンミシシッピを目指してるかと言うと、19歳の時にミシシッピの伝説の十字路(クロスロード)で悪魔に魂を売ったことで名声を手に入れたんです。ところが死ぬのが怖くなって、伝説のクロスロードに戻り、悪魔に契約解消をしてもらおうとするんです。

 

ちょっと展開が「エンゼルハート」(1987)に似てます。

あっちはロバート・デ・ニーロが紳士然とした悪魔を演じてますが、この映画でも「スクラッチ」というきちんとスーツに身を包んで、丁寧な物言いをする悪魔が出てきます。契約を持ちかけるシーンは、おどろおどろしくなく、反対にちょっとユーモラスな雰囲気もあってなかなか良いです。

 

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しかし、よく考えれば契約を解消して欲しいなんて、虫が良すぎませますね

だって60年ぐらい散々名声を楽しんでおいて、今更、魂を返してくれって。

どう考えてもクーリングオフの期間は終わってます。

 

その上、もうブルースマンは80歳を超えてるんですよ。

普通にお迎えが来てもおかしくない歳じゃないですか。

悪魔に魂を売らなかった人よりも、元気に長生きしてますよね?

悪魔が、うっかり魂を取るのを忘れていたとしか思えません。

 

そんなファンタジー/ホラー映画みたいな展開なんですが、意外に違和感なく話にマッチしています。

「悪魔との解約解消」というのがあるので、老ブルースマンミシシッピに戻らなきゃいけないという気持ちがヒシヒシと伝わり、この映画を面白くしています。

反対に現実的な展開(例えば帰る理由が、長い間会っていない家族と会いたい、とか)だったら、このレベルの脚本力だと面白い映画にはならなかったハズです。

 

全体的に派手さの少ない映画ですが、クライマックスの悪魔のギタリストと主人公のギター対決は盛り上がります。

 

悪魔のギタリストを演じるのは、実際に超絶ギタリストであるスティーヴ・ヴァイ

丁度、デイヴ・リー・ロスバンドを脱退してフリーの時に出演しています。彼はこの映画の後に、僕の大好きなホワイトクネイクに加入しました。

Slip of the Tongue

Slip of the Tongue

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とにかくスティーヴ・ヴァイが、いかにも悪魔のギタリストっていうオーラが全開でカッコいい!

彼がアグレッシブなロックを演奏するのに対し、主人公はブルースギターで対抗するんですが、ヴァイに圧倒されてしまいます。

しかし最後はジュリアード音楽院で培った超絶テクニックでクラシックフレーズを高速で弾くと、スティーヴ・ヴァイはそれを真似できず、負けを認めて、主人公の勝ちになります。

 

この対決は盛り上がるんですが、フと我に返ると、

 

え?ブルースで勝つんじゃないの?

ブルースマンが「お前は凄く上手いが、ブルースが分かってない」って言ってたじゃん?

結局、ブルース魂じゃなくて、超絶フレーズが大切なの?

 

と、腑に落ちません(笑)

 

この映画、こういうノリで書いたようなエピソードが多いです。

 

ちなみに、この時の主人公のクラシックフレーズの早弾きが、超高速ロックギタリストのイングヴェイ・マルムスティーンを思い出させるんですよ。

 

イングヴェイはアルカトラスというバンドで有名になった後、すぐに脱退してるんですが、その後釜として加入したのがスティーヴ・ヴァイ

 

だからこの最後の対決って、アルカトラスの疑似新旧ギタリスト対決に見えちゃいました。(笑)

 

噂ではアルカトラスのライブで、スティーヴ・ヴァイイングヴェイがギターソロを弾いてた曲を、イングヴェイより音数多く弾いてた、なんて逸話があるそうです。

だからこのバトルを見ながら、「本当ならヴァイが余裕で主人公に勝つのになぁ」って思ってました。

 

さて話のキーとなっている「幻の30曲目」が見つかったかどうかは、映画を見てのお楽しみ、ということにしておきます。(笑)

 

この映画の肝である音楽を担当したのはライ・クーダー

ブルースだけではなく、カントリー等、いろいろな音楽に造詣が深いミュージシャン(ギタリスト)で、この頃は日本でも雑誌によく取り上げられてました。

当時メタルヘッドだった僕ですが、巷で有名だった彼に興味があってサントラを買いました。

でもブルースの良さが分からず、結局数回聴いてすぐにCDラックに埋もれてたんです。

今回、数十年ぶりに聴いてみると、なかなか良くって、このコラムを書いている間、ずっと流してます。

iTunesで買えますが、CDは廃盤のようです。

「クロスロード」サントラCDジャケット

 

映画としては、キャラ描写の甘さや、勢いだけで書かれたエピソードが目立ちますが、深く考えなければ見ていて飽きることはありません。

音楽好きなら、より楽しめると思います。

初見の時は60点でしたが、今は10点アップの70点かな。

 

今回はPRIME VIDEOの100円レンタルで見ました。

PRIME VIDEOとNetFlixのサブスクにはないんですが、U-Nextのサブスクにはあります。

(現在、僕はU-Nextとの契約が切れていますw)

 

新品のDVDは手に入るようです。

【ボディダブル】全く同情出来ない男のサスペンス

9月の終わりから仕事を始めたため、ブログのアップが疎かになっていました。

激反省です。

 

さて、今回もブライアン・デ・パルマ監督作品のボディ・ダブル1984製作/日本公開1985)。

このブログでデ・パルマ監督作品を取り上げるのは4回目かな?

どんだけデ・パルマ監督のことが好きなんだか・・・

 

当然、この映画も公開時に見ました。

岐阜にあった、自由劇場っていう半地下の小さな劇場。

あの時の記憶が蘇ります・・・

 

(あらすじ)

売れない俳優の主人公は、せっかく得た役でも失敗し、その上、恋人にも浮気をされてしまう。家を飛び出して行く当てがない時に、知り合った男から旅行の間の留守番を頼まれる。高台にあるその家から望遠鏡を使って、遠くの家を覗き見ると、そこには半裸でセクシーに踊る美女の姿が。彼は次第にその女性にのめり込んでいく・・・

 


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当時、ブライアン・デ・パルマ監督は「フューリー」(1978)、「殺しのドレス」(1980)、「ミッドナイトクロス」(1981)「スカーフェイス」(1983)と上り調子。(個人の感想です。ちなみに「スカーフェイス」は当時、賛否両論でした)

 

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新作は彼の王道であるミステリー/サスペンス系。

間違いなく面白い、って期待しますよね?

 

そんな映画なら「デートのベストチョイス」って思うのが自然。

 

だから気になってた女の子を誘ったんです。

僕は(いろんな意味で)期待に胸を膨らませて映画館に入りました・・・

 

設定は悪くないです。

閉所恐怖症の俳優、覗き目で見た美女、殺人の目撃・・・

ハラハラドキドキの要素が揃ってます。

 

映画ファンなら「ヒッチコック監督の「めまい」(1958)と「裏窓」(1954)のパクりだよね?」って速攻指摘が入るのは100%確実なんですが、なんたって常々「ヒッチコックが大好き」って言ってるブライアン・デ・パルマ監督ですから、そこはヒッチコック作品へのオマージュ」ってことにしておきましょう。

 

ボディ・ダブル パンフレット表紙

 

タイトルの「ボディ・ダブル」は、映画の製作現場で「代役」っていう意味。

出演者に変わって、別の人がその俳優の代わりに演技をすることですね。

 

スケジュールが合わない時の後ろ姿や、俳優が演奏出来ない楽器の演奏シーン、ヌードがNGの女優なら首から下のヌード姿の「代役」なんていうのもあります。

俳優の代わりにアクションシーンを演じるスタントマンも「ボディ・ダブル」の一種ですね。

 

この「ボディ・ダブル」っていうタイトルが、ストレートに「ネタばらし」になっちゃってるんです。

センスないです。

 

この映画、流麗なカメラワークや編集、ドキドキさせるカメラアングル、ヒッチコックっぽい絵作りと、いつものデ・パルマらしさがふんだんにあります。

 

だが、しかしこの映画は全くダメ

見ているのが本当に辛くなります。

 

心情的に辛くなるようなシーンがあるとかじゃないんです。

こんなダメな映画を最後まで見なきゃいけないという辛さです。

 

売れない俳優が、撮影の失敗や恋人の浮気で落ち込んでいる時に、知り合いになった男から留守番を頼まれる・・・この入り口は悪くありません。

 

留守番を依頼した男が、窓にところに備え付けられてる望遠鏡を主人公にのぞかせて、「あの家を見ろ」っていうと、カーテンを開けたまま半裸で、セクシーな踊りをしている美女がいます。

「この時間に決まって踊るんだ」

 

彼女の踊りに食らいつく主人公。

 

この辺りまでは「普通の男なら、こういう願望あるよねー」って思います。

 

が、ここからこの主人公があらぬ方向に暴走を始めます。

 

その女性が車に乗っているのを見かけ、ショッピングモールまで追いかけます。

更にショッピングモールの中でも、彼女のあとを追います。

 

最初は「近所のかわいい女の子を偶然見かけたら、どこに行くのかな?って気になってそっちを見ちゃうことあるな~」と思うんですが、徐々に主人公の追っかけが執拗かつ露骨になってきます。

 

はい、そうです。

どう考えてもストーカー。

 

デ・パルマ監督が、まるで「みんなもストーカー願望あるよね」という感じで、彼の行動が情熱的に見える演出してますが、当然、全くシンクロしません

 

次はその女性が下着売り場で試着している姿を店の外から凝視。

そして彼女が試着したパンティをゴミ箱に捨てると、すかさずそれを拾います。

 

これも、「好きな人の下着が欲しくなるのって普通だよね」って言われてるような感じでうすが、当然共感なんて出来ません。

 

更にこの後、この女性が殺される現場を目撃することになるんですが、その後、警察に「あなたが犯人でないことは分かってるが、彼女のストーカーだったのでは?」と言われ、ポケットに入れてたパンティが見つかる始末。

 

「何を言ってるんだ。違う」と否定したものの(観客は間違いなく肯定するハズ)、モヤモヤした気持ちで、留守番をしている家に戻り、

 

ベッドに横になりながら、エロ映画を見ていると、あの女性が半裸で踊っていた時と同じ振り付けで踊る女優を発見!!!

あの時、自分が見たのは殺された女性ではなく、この女優だったんじゃないのか?

自分はあの家を覗き見するように仕組まれたんじゃないのか?

 

いや、その前に自分が気にいなってた女性が目の前で殺された上に、ストーカー容疑までかけられてるのに、家に帰ってすぐにベッドでエロ映画を見てる神経ってどうなんでしょう?

明らかに普通とは違いますよね?

 

そして、その女優に真相を聞くべき、自分が彼女の所属する芸能事務所に乗り込んで・・・エロ映画で彼女と共演して、近づくことに・・・

 

もっと他の方法があったんじゃないんでしょうか?

 

こんな異常行動を繰り返す主人公に同情するのは無理

やっぱり巻き込まれ型の主人公は、観客が応援したくなるキャラじゃないとダメでしょう。

映画が進むにつれ、主人公を応援する気がどんどんなくなり、最後は1ミリもないまま映画は終了。

 

こんなに主人公がピンチになっても、どうでもいいや、と思える映画は珍しいです。

 

話は素材や設定、アイディアだけで最後まで引っ張っちゃいます。

工夫が少なく、意味不明な展開と、安易な展開が入り混じるチープ感の高い脚本。

高校の映画研究会のメンバーが「ヒッチコックぽい映画作ろうぜ」って思いつくレベルでした。

 

映像についても、デ・パルマの映像美があると書きましたが、じゃ映画的にどうかって言われたら不合格

 

何故か。

 

無駄にダラダラと見せるシーンが目立つから。

 

一番ダメだったのは、美女をショッピングセンターの中で追い回すシーン。

これがやたら無駄に長い。

殺しのドレス」にも欲求不満の熟女が、たまたま見かけたかっこいい男を、迷路のような美術館で後追いするシーンがありました。

こちらはスタイリッシュで印象的なシーンと評判がすこぶる良かったです。(僕も大好きです)

 

二つの映画の決定的違いは、ここでも主人公への共感。

殺しのドレス」だと「女性が追いつくの?相手は気づいてるの?」ってドキドキしてましたが、この映画は主人公に対して「お前、止めとけよ~」と思っちゃうからです。

だから無駄に長く感じるんですね。

 

他にも美女と砂浜でキスをするシーンや、殺人犯が美女を殺すシーンとかも「長い!」って感じました。

 

とにかく、この映画では主人公の性格付けも含めて、デ・パルマ監督が撮りたいものと、観客が見たいものが明らかにズレています。

 

そんなワケでとってもガッカリした映画でした。

 

見終わった後に「楽しかったね」と言える類ではありません。

 

更に実は無駄にエロいシーンも多いんです。

 

だから映画館から出る時、高校生の彼女は無言でした。

 

そして、そのまま解散。

 

「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」(1981)よりダメな映画デートでした。

 

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今回はPRIME VIDEOで100円レンタルがったので、それで見ました。

サブスクではPRIME VIDEO、Netflix、U-Nextにはありませんでした。

 

また新品のDVD/Blu-rayは入手困難のようです。

【大魔神】昭和の日本映画の底力が見れる傑作特撮

子供の頃の特撮っていったらゴジラウルトラマンガメラと並ぶヒーロー(?)が大魔神(1966)。

 

怒ると顔が変わるというアイディアはいろんなところに流用されました。

 

リアルタイムでは見てないんですが、子供の頃に繰り返しTVで放送していたので、僕らの世代でも有名なキャラです。

(実際に小学生の時に、大魔神ゴッコをやってました)

 

しかし他の昭和50年以前の特撮映画同様、大魔神が怒りの顔になるところは覚えているんですが、話の方はさっぱり記憶にありません

そんなわけで今回、改めてレンタルDVDを借りてみました。

 

(あらすじ)

戦国時代、人格者であった丹波の国の領主は、家臣の謀反により殺害される。難を逃れた領主の子供(兄妹)は、忠臣の手引きにより脱出。山奥の魔人像を崇める巫女に預けられる。

やがて月日が経ち、新領主は砦建設のため、領民に重労働を課す暴政を行っていた。新領主を倒すべく、昔の仲間を集めに村に降りた忠臣と兄も捕まってしまう。一方、新領主は領民たちの心の拠り所が山中にある魔人と知り、それを破壊しようとする・・・

 


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そもそも驚いたのが、これ、カラーだったんですね

頭の中で勝手におどろおどろしいモノクロだと記憶を変換してたっぽいです。

 

そして次に驚いたのが、映画としてめっちゃしっかりした作りだったていうこと。

同じ大映で、同じ頃に作られた「大怪獣ガメラ」(1965)の中途半端感とはえらい違いです。

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画面には安物感がないどころか、前半の謀反から、悪玉新領主が領民を酷使して新たな城を作らせる現場のシーンまで、かなり大がかりなセットを組んでいるようで、スケール感があります。

これは当時隆盛を誇った時代劇のノウハウと、映画全盛時代の大型セットを作る技術を最大限利用したお陰なんでしょうね。

 

話は時代劇の定番的な敵討ち物。

悪者の部下に謀反を起こされて人格者の領主だった父を殺された兄妹が、成人して敵討ちを行う話です。

領主を倒そうとする企みや、領民の反抗が上手くいきそうになっても、土壇場で悪玉がそれを防ぐという展開に、終盤まで悪が優勢。

これでもか!これでもか!と暴虐を尽くし、見ている方はフラストレーションが溜まります。

 

この溜まったフラストレーションがあるからこそ、クライマックスの「大魔神の怒り」が「スカッと爽快」になるんですね。

 

これ、水戸黄門や遠山の金さん、暴れん坊将軍に似てますね。

 

さて、主役の大魔神は終盤までただの石像。

後半途中までピクリとも動かないので、そこまでは普通に時代劇です。

つまり話の2/3は普通の時代劇なので、子供には面白くなかったから、頭に話が残らなかったのかもしれません

 

そしてフラストレーションのピークは、悪者領主が「こんな石像を崇める迷信があるから領民が逆らうのだ!」と石像の破壊を命じ、腹心の悪玉が石像の額にぶっとい杭を打ち込みます!!!

 

これ、痛そう(笑)

 

そして血が流れます。

 

これフラッグですね。

領主と部下の全滅確定のお知らせです。

 

急に天気が荒れ狂い、地震が起こり、石像を破壊にしにきた腹心とその手下は全滅。

そこに兄が処刑されそうな姫が涙を流して、(ここぞとばかりに)大魔神に祈りを捧げると・・・誰もが知っている超有名シーン。

 

大魔神の顔が埴輪顔から怒りの顔に変身。

 

そして火の玉となって兄が処刑されようとしている城下町に飛んでいきます。

大魔神は怒り爆発で城を破壊しまくり、悪玉たちを虫けらのように倒していきます。

 

特に悪玉領主は十字架に押し付けられたと思ったら、大魔神はおもむろに自分の額に刺さっている杭を抜くと、それを領主の体に打ち付けるんです。

 

杭を打たれた恨み、こえー---

 

ちなみに杭を抜いた額にはちゃんと穴が開いてました(笑)

 

とにかく、直前まで溜まってたフラストレーションがスカっと抜けて、気持ちいいんですよ。

大魔神、かっけー。

どことなく水戸黄門を見ている気分です。

 

が、しかし悪玉が死んでも大魔神の怒りは収まりません。

 

え?え?え?

 

くそー、俺のひたいに杭なんか打ち付けやがって!

俺はパンクスじゃねぇんだぞ!

 

酔っぱらってワケわからなくなって怒りの収まらないおっさんみたいに暴れ続けようとします。

が、またもや姫が足元にすがって、「怒りを収めてくださいまし~」とお願いすると、

 

あ、そう?

まぁ、可愛い子がそう言うんなら、俺も鬼じゃないからねぇー

 

とばかりに、暴れるのを止めて、埴輪顔に戻ります。

 

可愛い女の子の涙に弱い大魔神

男って古今東西そういうもんですよね。仕方なし。

 

怒りを収めた大魔神の魂らしき光が空の彼方に去っていき、大魔神はグズグズと崩れて砂の山になって、映画もTHE END。

 

結局、姫が鉄人28号の正太郎君みたいに大魔神いいように使ってた、お願いをして敵討ちの代理執行してもらったてことですかね。

 

ともかくストレスが発散されて気持ちのいい(?)ハッピーエンドでした。

 

映画としてカメラワーク、美術セット、画面作りがキチンとしているというか、すごく立派。

 

やっぱり大型時代劇を連発していた時代の底力ですね。

きっとスタッフは「特撮」じゃなくて、「特撮を利用した時代劇」っていう感覚で、「いつものように」時代劇として作っていたんじゃないでしょうか。

 

そして何より特撮のレベルが高いんです。

本当にビックリするぐらい。

 

ずっと昭和の特撮は、円谷英二さんが担当した東宝特撮映画がダントツだと勝手に思ってました。

でも、大映の特撮も引けをとってませんでした。

 

映画的に絵になるアングルで作っていて、昭和ゴジラシリーズ後半の怪獣プロレスのような安易な絵作りはゼロです。

ちょっとレイ・ハリーハウゼン(「シンドバッドの7回目の冒険」(1958)「アルゴ探検隊の大冒険」(1963)等の伝説的特撮マン)のように、「出来ることをする」のではなく、「映画的に面白い絵作りをするために工夫する」ように心掛けられてる気がしました。

特に最後の城下町を破壊するシーンや領主を磔にするシーンの迫力と構図は、今見ても「凄い」と声が出ちゃったぐらい素晴らしい出来です。

「大怪獣ガメラ」の時にも書きましたが、本当に大映の特撮力は素晴らしいです。

 

話は、登場人物はステレオタイプだし、展開も定番なので、奇はてらっているものは何一つありません。

ですが、反対にオーソドックスな話を役者さん、演出を含め丁寧に作ったことが、この映画には良かったんだと思います。

だって、この映画の主人公は、やはり大魔神

土台となる部分が地味だけど、しっかり作られていたことで、畏れる神としての彼の存在感が浮き立って良かったと思います。

 

ちなみに本作「大魔神(1966)が好評だったようで、シリーズ化され続編が二本作られました。

 

大魔神 怒る」(1966)

大魔神の逆襲」(1966)

 

これ、誤字じゃないんですよ。

本当に3本全部1966年に公開されています

最初が4月、次が8月、最後が12月です。

4ヶ月おきって凄くないですか?

 

時代劇のノウハウがあったとしても、やっぱり凄いことです。

こういうところにも当時の日本映画の熱気というか、底力を感じることが出来ます。

 

僅か84分の小作品ですが、これは傑作特撮映画です。

続編の「大魔神 怒る」「大魔神の逆襲」も見るつもりです。

 

ちなみに撮影に使用した大魔神像(4.5メートル)は現存し、現在はフィギュアで有名な(僕の大好きな)海洋堂大阪府門真市)の本社に飾られています。

 

海洋堂が大魔神像の入魂式/新しい本社ビルのあるじに | 海洋堂が大魔神像の入魂式/僧侶と大魔神像 完成した本社ビルの玄関上にそびえる「大魔神」像=12日午後、大阪府門真市 | 四国新聞社 (shikoku-np.co.jp)

 

最初に書きましたが、「怒ると怖い顔に変わる」というアイディアは、パロディを含めていろんなところに使われてました。

 

僕的に一番印象に残ったのは子供の時に見た「魔人バンダー」(1969)というsf特撮ドラマです。

 

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これも戦闘モードになると、丸目の頭から、釣り目の角の生えた頭に変わります。

なかなか面白い番組だったんですが、版権等の関係で、再放送もソフト化も叶わない状態にあるとのこと。ちょっと残念。

 

大魔神」はPRIME VIDEO、Nextflix、U-Nextの定額サブスクにはなかったので、DVDレンタル屋で借りてきました。

さすが有名作品だけあって、お手軽な値段で新品のDVDやBlu-rayが手に入ります。

 

【カメレオンマン】フェイクドキュメンタリーのお手本

ちょっと今までとは毛色の違う映画を。

ウッディ・アレン「カメレオンマン」(製作1984/日本公開1985)。

ウッディ・アレンって大昔はちょっとバタ臭いコメディアン兼コメディ作家だったのに、「アニーホール」(1977)でアカデミー監督賞を取ってから、日本ではインテリ層が好む「知的な映画」の人扱いになってました。

 

そんな中、作られた純粋なコメディがこの「カメレオンマン」。

 

僕は社会人になって、中古LD(レーザーディスク。死語ですね)を購入して視聴しました。

 

とにかく掛け値なしに面白かったんですよ。

 

残念ながら我が家のLDプレーヤーが壊れちゃってるので、今回中古DVDを買って視聴しました。

 

(あらすじ)

時は好景気に沸く1920年代のニューヨーク。周りにいる人種、職業に同化するどころか、肌の色や体型、話し方まで全て一緒になってしまう男が発見された。色々な学者が彼を治そうとするが、これといった治療法が見つからなかった。新進気鋭の女性精神科医が、彼の変身の原因は心にあるとして、治療に取り組むのだが・・・

 


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「ブレアウィッチ・プロジェクト」(1999)から流行ったモキュメンタリーって、僕からすると、ちょっとどうなの?っていうのがありました。

クローバーフィールド」(2008)や「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」(2008)とか、素人が死にそうな状況でも撮影を続けるっておかしくないアタマおかしいよね?って思っちゃうんですよ。

 

この「しつこいぐらいカメラを回してる」っていう設定が、反対に映画を作りもの臭くしていて、どうもダメなんです。

 

それに対して、この映画は徹頭徹尾、病院の記録フィルム、ニュースフィルム、当時の資料や当事者の証言等だけで構成する完全なドキュメンタリー形式

どの映像もわざとボカしたり、フィルムに傷を入れたり、音声が不明瞭だったり、と凝っていて、観客に本当に当時のニュースフィルムを見ている気にさせます。

勿論、再現フィルム(という形式)なんて使っていません。

全て実際にあった記録だけで作った、という大ボラです。

特に当時の有名人に主人公の思い出を語ったり、ニュースフィルムの中で共演させたりすることで、フェイクにリアリティーを持たせてたのは良かったです

フォレスト・ガンプ」(1994)はこのやり方を参考にしたのかな?

 

流し見していたら、NHK BSでやってるような「20世紀の記録」だと勘違いしちゃいます。

 

ウッディ・アレンの映画人としての才能を感じます。

 

さて、この映画はウッディ・アレンの「カメレオンマン」と、当時の恋人のミア・ファローの「精神科医」を中心に進んでいきます。

 

見どころはなんといってもウッディ・アレンの七変化。

 

いろんな職業、いろんな人種へと次から次へと変わるんですが、これが本当にどらもそっくり。

見た目だけじゃなくて、しぐさ、服装、アクセント、話し方まで真似ています。

これだけでもクスクス笑ってしまいます。

 

きっと、この七変化は、60~70年代に活躍した、イギリスの名コメディアン、ピーター・セラーズへのオマージュじゃないかって思いました。

彼の十八番もいろいろな職業、人種を演じること。

その最高峰が一人三役を演じた「博士異常な愛情」(1964)じゃないでしょうか)

 

ちなみにピーター・セラーズウッディ・アレンは「007/カジノ・ロワイヤル」(1967)で共演してます。

(007が出てくる映画ですが、ダニエル・クレイグ主演の2006年版ではありません)

 

時代を「狂乱の20年代」に設定してあるのもナイスでした。

何でもありで、なんでも馬鹿馬鹿しいぐらいやり過ぎる、あの時代なら、こんなホラ話も「さもありなん」、ってなります。

 

とにかくクスクスっとするような、ホラ話を次から次へと繰り出し、90分以内というコンパクトな尺で収めてるので、飽きることは全然ありません。

よくまぁ、いろんなネタを考えるなぁ、と思うぐらいです。

 

話の本筋自体にも起承転結とヒネリがあって、最初から最後まで観客を壮大なホラ話に巻き込みます。

 

ウッディ・アレンの初期のコメディにあるような、「面白がってるのは、本人だけじゃない?」っていう独りよがり感がなくなってたのも良かったかも。

その辺りは「アニーホール」以降、磨かれたんでしょう。

 

そう言えばカメレオン症状が治ってから、主治医であるミア・ファローと恋に落ちるんですが、自由になったウッディ・アレンがやたらミア・ファローにベタベタするのが妙に気になったんです。

一応、自分を取り戻した主人公が、人目をはばからず感情表現をしてるって設定なんですが、この時期、ラブラブだった二人(特にウッディ・アレン)が素のままやってるんじゃないかって、いうぐらい見てるこっちが恥ずかしくなる雰囲気でした。

 

だって内気な男が周りに受け入れられたくて、自分を変えてまで受け入れられようとする男って、きっとウッディ・アレン本人の投影ですよね。

そして素の自分を受け入れてくれた女性に、愛情を注ぎまくるのも本人なのかも。

(まぁ、実生活では違った方向に愛情がいっちゃいましたけど)

 

この映画には主題歌みたいなのがあります。


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1920年代に主人公のことを歌った曲がヒットしたっていう設定があるんですが、この曲がまさに「狂乱の20年代」っぽい曲なんです。

一回聞いたら忘れられません。

1929年発売の「踊るリッツの夜」を彷彿させる曲です。

 

踊るリッツの夜

踊るリッツの夜

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この映画はサブスクにも、DVDレンタルにもありません。また新品のDVDも入手困難です。

だから中古DVDを購入したんです。

カメレオンマン DVDジャケット

でも一つ大きな不満があります。

 

それは日本語吹替がないこと。

 

この映画の日本語吹替って、ナレーションだけが吹替だったんですよ。

これがまた海外のドキュメンタリーの日本放送みたいでリアルだったんですね。

ナレーションは矢島正明さんだった記憶があります。

(調べたら矢島正明さんはビデオ版だけのようです)

 

僕にとっての「カメレオンマン」と言えば矢島正明さんの吹替バージョン。

 

レーザーディスクは吹替版だったのに(泣)

誰か吹替版、出してー!!!!

(または誰かレーザーディスクプレーヤーが直せるかどうか教えて下さい)