パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【キャットピープル】ナスターシャ・キンスキーのPV

今回は「キャットピープル」(1982)。

1942年の映画のリメイクです。

当時、人気急上昇中だったナスターシャ・キンスキー主演のエロティックホラーという売り込みでした。

前回、「最近、エロポイントがある映画のレビューが多いので、今度はそっちも軌道修正したいなぁ」と書きましたが、やっぱり今回もエロポイントが売りの映画になってしまいました。残念。

 

(あらすじ)

孤児だった主人公(ナスターシャ・キンスキー)は生き別れた兄と一緒に住むことになった。しかし兄はすぐに行方不明になり、殺人事件が起こる。更に家の地下からは多数の死体が発見された。やがて彼女自身にも変化が起こり始める・・・


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初公開時に劇場で見ました。

岐阜あるあるで、スピルバーグ制作、トビー・フーパー監督の「ポルターガイスト」の同時上映付き@ロイヤル劇場。

実はお目当ては「ポルターガイストだったんですが、そっちは期待通りの面白さでした。

1982年8月の岐阜の映画上映リスト

 

では(僕的にオマケ扱いだった)「キャットピープル」はどうだったかというと、

 

もっさりして、メリハリのない映画だなぁ、

 

というイマイチな印象。

 

今回はその印象が正しかったのか、レンタルDVDを借りて検証です。

 

キャットピープル パンフレット表紙

ご想像通り、狼男系の変身物。

キャットピープル=猫人間ですが、三毛猫になるわけではありません。

今回変身するのは”豹”。猫族ってことですね。

それも狼男のように半人半獣ではなく、完全に黒豹になっちゃいます。

 

猫族はエッチをすると豹になり、人を食べると人間に戻ります。

自分が豹族とは知らない主人公はエッチ未経験だけど、興味はあり。

そこに素敵な男性が現れて・・・みたいな、少女から大人になると、豹になって凶暴化するという現実の寓話なんじゃないかって笑うに笑えない話です。

 

主演のナスターシャ・キンスキーは、当時美少女で絶賛売り出し中。

 

確かに彼女は可憐でありながらも、そこはかとなくセクシーな雰囲気もあるので、この役にはピッタリ。

というか、この映画って彼女ありきで企画されたんでは?と思うぐらいのハマり具合です。

そして本当に気前良く脱いです。

そりゃ映画の売りにしたくなりますよね。

 

更に音楽は当時にMTVで売れに売れてたジョルジオ・モロダー

彼のトレードマークのシンセサイザーとシンセドラムを使った音楽が流れると、もろに画面が80年代のMT風になります。

こうなると、映画は瞬く間にナスターシャ・キンスキーのプロモーションビデオと化します。

画面がナスターシャ・キンスキーのグラビア写真集だと思えば、大胆なヌードシーンも納得です。

 

ちなみに主題歌はデヴィッド・ボウイでした。


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余談ですが、彼女は二世俳優で、お父さんは怪優として有名なクラウス・キンスキー。

すんげー強面で、ドイツの異能の映画監督ベルナー・ヘルツォークの常連です。

何でこんな強面の親父から、こんな可憐な娘が???と思うのですが、二人の写真を並べてみると、実はパーツ、パーツはよく似てるんですよ。パーツの大きさと配置で、こんなに変わるのかと驚きます。興味のある人は比較してみて下さい。

 

さて、自分が豹族と自覚し、ナスターシャ・キンスキーに関係を迫る兄を演じるのはマルカム・マクダウエル。

あ?僕的には前回の「カリギュラ」からマルカム・マクダウエルの連投ですね。

 

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そして今回の彼も「豹族は近親者で家族を作らなければならない」とカリギュラ」と同じく妹と結婚しようとする兄の役(笑)

カリギュラ」では思いっきり妹を愛人にしていましたが、「キャットピープル」では拒否されます。当たり前ですが。

あんなに「カリギュラ」に出演したことを後悔してるって言ってるくせに、わざとこういう役を選んでるんじゃないかって疑惑が浮かびます。本当はこういうの好きなんでしょ、マルカムさん?

 

とにかくいつもの言葉使いが丁寧な、一見ナイスガイ、実は異常性格者という役をきっちり期待通りに演じてます。この人のいつも、どことなく狂気をはらんだ眼差しって天性のものですよね。

 

ナスターシャ・キンスキーが好きになる動物園の園長は物静かだけど、優しくて行動力のある一見好人物。

でも実は元々同僚の恋人がいるのに、ナスターシャ・キンスキーを誘うだめんず

ラストはナスターシャ・キンスキーが変身した豹を動物園で飼う一方、同僚ともよりを戻してます。それが悪気ないみたいなんです。だってその後に悲しげな眼で檻の中の豹をなでるんです。

 

まだ二股かけてるんのか?

こいつ、本当にダメ人間です。

 

そう言えば自分が豹になって人を殺してしまうことが分かった主人公が、最後にエッチをして、そのまま捕まえてもらおうと園長のところに来るんです。

が、豹になったら逃げちゃうんで、彼は裸のナスターシャ・キンスキーをベッドに両手両足を縛り付けてからエッチをするんですよ。

 

変態ですよね?倒錯ですよね?

 

仕方なくやってるんじゃなくて、好きでやってるようにも見えちゃうのは、僕の問題でしょうか。

 

本当に悪い男にひっかかって、ナスターシャ・キンスキーが可哀想になりました。

これは悲恋の映画なんかじゃなくて、悪い男にナンパされてボロボロになるまで尽くすまじめな女の子の悲劇なんじゃないでしょうか。

 

さて、スタッフですが、製作総指揮はジェリー・ブラッカイマー

この頃はまだまだヒットに恵まれてませんでしたが、この後に「ビバリーヒルズコップ」や「トップガン」「フラッシュダンス」「アルマゲドン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」等、スーパーヒットを連発する希代のヒットメイカーになる人です。

勿論、最新作(2022年6月時点)は「トップガン/マーベリック」。

 

監督は日本通で有名なポール・シュレイダー

高倉健主演のアメリカ製ヤクザ映画「ザ・ヤクザ」や三島由紀夫の生涯を描いたアメリカ映画「MISHIMA」の脚本や監督をしています。(「MISHIMA」は三島由紀夫の遺族の意向で日本未公開&ソフト未発売)

元々「タクシードライバー」「ローリングサンダー」「レイジングケイン」などの名脚本家として知られていますが、監督としては今ひとつパッとしない印象。

当時は「この監督だからパッとしないのも仕方ないかな」という妙な納得感がありました。

 

が、今回見たら、意外につまらなくないんですよ。

同じ時期(この作品の前年)に同じく新感覚の半人半獣物として作られたハウリング」とは大違いです。

(あっちは「当時つまらないと思ったが、やっぱりその通りつまらなかった」だった)

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

改めて見ると、人間ドラマとしてしっかり作られてるんですよ。

豹族として生きていくと決めている兄と、少女から女性へと変わる中で豹族であるべきか悩む妹の葛藤のドラマ。それを迷信の世界観が残るニューオリンズを舞台にしたところがいいですね。

 

確かに派手な起伏はないし、人間から豹に変わる特撮もあるけど、ホラー映画っぽいおどろおどろしさがないので、ホラー映画や特撮映画として見るとパンチに欠けます。

だから「B級ホラー映画ヲタク」だった当時の僕には食い足りなかったんだですね。

 

だけどホラー要素はあくまでも人間ドラマを盛り上げる材料と割り切って見るべきでした。

更に豹になるナスターシャ・キンスキーが脱ぐからって「エロティックホラー」っていう間違った売り込みに踊らされたのもいけなかったです。

ごめんなさい。

 

ポール・シュレーダーは監督だけかと思ったら、脚本にクレジットがないだけで、ちゃんと関与してるんですね。だから話がちゃんとしてるだと、今回納得しました。

 

最後に当時の売りだったエロですが、そういうシーンがいっぱい出てくるものの、普通の映画ぐらいのエロさしかないです。寧ろ、脱いでる割にエロさを感じないシーンが多いかも。

でも、これってこのレビューの前に「カリギュラ」を見て、感覚がマヒしてるかもしれないですね(笑)

 

最後にプチ小話

高校の後輩(女の子)が、憧れの先輩と初の映画デートに「ポルターガイスト」を選んだそうです。「ポルターガイスト」は期待通りめっちゃ面白くて盛り上がったとか。

しかし続いて同時上映の「キャットピープル」が始まると、あまりに裸のシーンが多くて、気まずい雰囲気になったそうです。高校生デートって感じですね~

 

ちなみにAmazon PrimeNetflix、U-Nextの定額サブスクにはありませんが、新品のブルーレイは手に入るようです。