パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【テンタクルズ】サメだ、熊だ、無人の車だ、そしてタコだ!

今回取り上げるのは「テンタクルズ」(1977)。

ひなびたリゾート地に巨大なタコが襲ってくるっていう1977年の映画です。

 

(あらすじ)

ひなびたリゾート地で人が次々と惨たらしい死体となって海で発見される謎の事件が発生。老新聞記者がその謎を追うと、地元の大企業の違法行為と、それによって引き寄せられた巨大生物が原因ではないかとい推測し、海洋学者に手助けを依頼する・・・

 

簡単に言えば78年のJAWS」の大ヒットにあやかった、なんちゃって作品

 

JAWS」の後には、巨大灰色熊が襲う「グリズリー」、シャチが家族を奪った人間に復讐をする「オルカ」、無人の黒いセダンが追いかけてくる「ザ・カー」(あ、これはホラーですね)、そして本家のスピルバーグ監督に「JAWSのまねっこの中ではこれはいいと思うよ」と言われた「ピラニア」と、いっぱい「パチモノ」が作られました。

 

その中でも、この「テンタクルズ」はパチモノの最極北と言っても過言ではない作品です。

 

主演は大物監督で、俳優としても名高いジョン・ヒューストン。その妹役に「ポセイドンアドベンチャー」で水泳が得意なおばちゃんを演じた往年の美人女優シェリー・ウィンタース、そして大企業の会長に名優ヘンリー・フォンダアメリカ人の重鎮が並んでます。

 

でも、これ実質イタリア映画なんですよ。

 

音楽聞いてるだけで、「あー、イタリア製B級サスペンス映画のBGMだぁ」って分かるぐらいイタリア映画。

主人公(というか、狂言回し)が老人の記者という、サスペンス映画ではあまりない設定。他の主要キャストも年寄りが目立つところが、個性的です(笑)

その新聞記者を若い海洋学者が助けるという筋立ては、ちょっと(というか、かなり)「JAWS」のパクリっぽいですが、気にしない方がいいです。

 

話はほとんどひねりはなく、冒頭からバンバン人が襲われれ死にます。

死亡フラグもかなり分かりやすく立ちます。思わせぶりの演出はほぼなしです。

 

一応、悪徳企業の違法テストが巨大人食いタコの原因ってことになってますが、どんな違法テストをしたのか、それがタコとどういう関係なのか全く触れられてません。そもそもちょろっとしか触れられてません。実は関係なかったんじゃかろうかとさえ思います。

 

そんなわけでこの手の映画によくある「主人公と企業や行政との対立」といった構図はありません。

 

警察も「そんなタコがいるのか、そりゃあぶねーなー」とあっさり協力。

お約束のヨットレース大会があるんですが、普通のサスペンス映画なら「今、中止したら、この街の評判はどうなるんだ。一体、何万ドル損失が出ると思ってるんだ!」って大物が、主人公たちを脅すっていうのが定番ですが、ここでは警察がすぐにヘリを飛ばしてヨットレースの参加者を岸に引き返させます。いい人たちです。

 

このタコは無線やラジオに引き寄せられて、人を襲います。

主人公たちも結構早い段階でそれに気づきます。でも誰も無線を使うのは危険だと言い出しません。更にタコを退治する時にも、その習性は全く利用されません。

ただ「タコは巣に戻ってくるから、そこで待ち構えよう」です。

普通は「無線を使っておびき寄せる」っていうのが王道だと思うんですが・・・

 

こういう諸々の王道外しも、時として目新しさやヒネリになるのでしょうが、この映画については、「せめて王道的な設定や演出があった方が良かった」というぐらい、スカスカです。

 

ただサスペンスシーンは手堅く演出をしているので、ちゃちさを感じるようなことは少なかったです。

 

特に関心したのはヨットレースシーン。

ヨットが次から次へと襲われ、ひっくり返った無数のボートが海に浮かびます。

このシーンと全く気付いてない、ビーチでレースから帰ってくるのを待っている参加者の家族がしゃいでるシーンが交互に出てくる編集は、コントラストが効いていて秀逸でした。

 

反対に場面によって意味不明にスチル写真になるのが頻繁にあり、これが映画を超安っぽくしています。

またカメラのズームや引きをする時に、素人がホームビデオでやるみたいな雑な操作(急にグイっと引いたりする)がイラっとしました。プロのカメラマンではない仕事です。

 

そう言えば、襲ってくるシーンは、タコが海上から目を出して、高速で近づいてくるんです。

この手の海物モンスター映画によくある演出で、違和感なく盛り上げてくれます。

でも、よく考えたらタコってそういう泳ぎ方をしないですよね。

これはないよなー、と思いつつも、こういうところがこの手の映画のツボなんでしょうね。

余談ですけど、このシーンを見て、「ゴジラVSヘドラ」のヘドラの飛行シーンを思い出しました。

 

というわけで、ひたすら「タコ VS 人間」の「やるかやられるか」のみの映画です。問題はそれ意外に見どころがないことです。

タコが襲ってくる以外、テンションが高まることはありません。

 

 

 

ちなみにポスターを描いたのは「スターウォーズ 帝国の逆襲」や「復活の日」のポスターを描いた巨匠・生頼 範義さんです。

このテンタクルズのポスターもかっこいいんですよ。

絶対に騙されるやつです。そして当時の僕も騙されて、映画館に行ってしまいました・・・

(本作の配給は日本ヘラルド

↓ これじゃ騙されても仕方ないでしょ?

テンタクルズ パンフレット表紙(イラストは生頼 範義氏)

 

(おまけ)

この映画も昭和の岐阜あるあるで、二本立て上映でした。

同時上映は「ザ・スーパーカーという高級スポーツカーを特集した日本映画(だと思う)。

ネットで調べても、なかなか実態が出てきません。当時のスーパーカーブームが生み出した幻の作品なのでしょうか。