「ロボコップ」(1987制作/1988日本公開)。
とっても位置付けに難しい映画です。
マニアックな映画というほどマイナーではなく、むしろみんなが知ってる映画。
でも同じ頃のSF映画「ブレードランナー」(1982)のような名作とか、完成度の高い作品という評価でもありません。
ビミョーな作品というのが、個人的な印象。
公開前に、初めてロボコップのデザインを見た時も「カッコ悪いとは、言わないけど・・・」でした。
そんな映画をレビューします!!!
(あらすじ)
デトロイト警察の運営を任されてるオムニ社は、悪化の一途をたどる治安回復のため、新たなロボット警官を開発しようとしていたが、そのためにはロボット警官になる、人間が必要だった。同じ頃、正義感が強く、家族想いの警官である主人公は、配属された署で早速パトロールに出て、テロリストたちに遭遇。相手を追い詰めるものの、返り討ちにあい、瀕死の重傷を負ってしまう。そんな彼の存在を知ったオムニ社は、彼の記憶を全て消去し、「ロボコップ」にするのだが・・・
一言で言えば「イロモノ」。
だって、この映画には何一つカッコいいところはありません。
日本の宇宙刑事シリーズを意識したというロボコップのデザインも、ピンときません。
(実際に宇宙刑事シリーズをデザインした村上克己氏に許諾を取ってます)
きっとフェラーリやランボルギーニが幅を利かせたスーバーカーブームの時代に、当時のアメリカ車を見るような感覚でしょうか。
分かります?
デザインをしたのはロブ・ボッティンという有名な特殊メイクアップアーティスト。
元々、モンスター系の特殊メイクを得意分野としていて、代表作は「ハウリング」(1981)、「遊星からの物体X」(1982)。
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なのにこの作品では、メカをデザインしろ!って言われて、かなり苦労した模様。
「苦労して、これかーー」というデザインです。
ちなみに敵のメカもスタイリッシュ度ゼロ。
テロリストが持ち出す、ロボコップを倒すための強力な銃なんて、小学生のメカマニアがデザインした、「いかにも強そうなデカい銃」。
頭悪い感じで、センスを感じません。
でもね、実はワザとカッコよくないデザインにしてるんじゃないかって疑ってます。
何故か?
それはこの映画の監督が、ポール・ヴァンホーヘンだから。
この人、どうやら意図的に物事を「カッコよく描かない」「グロく見せる」というのを作風にしているようです。
勿論、その志向(?)は話や演出にも徹底されてます。
とにかくカッコいい人やカッコいいと思えるシーンが出てきません。
主人公マーフィーは家族思いの正義感で、拳銃の扱いも様になってるんですが、あっという間に殺されて、記憶も感情もないロボコップにされちゃいます。
その後は「あれ、この家見たことがあるぞ」「あれ、俺って誰だっけ?人間だったような?」と、薄らとした記憶に悩み、やられる時はボッコボコにやられます。
見終わった後にロボコップで印象に残るのは、この二つばかり。
クライマックスなんて、マスクが取れて、生身の顔がむき出し(でも後ろ半分は機械)という、ちょっと不気味な出で立ち。
木城ゆきと先生のマンガ「銃夢」に出てくるサイボーグみたいです。
そんなワケで、ロボコップがカッコよく見えるシーンはほぼ皆無。
そもそも正義信に溢れて、悪を颯爽と倒すっていうより、「悪を倒すようにプログラムされてるから、倒してる」感じが強くて、ヒーローっぽくないんですよね。
悪人もみんなどこか間抜け。
トイレで上司の悪口を言ってたら、後ろから上司が現れ、おしっこの途中でチャックを上げて、ズボンを濡らしながら去っていく重役のシーンなんて、ギャグです。
全体的に笑うとこなんだか、真面目に見るところなんだか迷うようなシーンが次々と出てきます。
その最たるものが、劇中のTVで流れるニュースやCM。
いきなり冒頭で「ブレトリア(南アフリカの首都)で反核運動の暴動が起こっており、白人軍政府は最終手段としてフランス製の中性子爆弾の使用を発表」というニュースと、続いて「当院でヤマハのスポーツ人工心臓を是非お試し下さい!保証付き、ローン有」という病院のCM。
時代は大企業が行政の委託で警察の運営を行っている近未来。
大企業の効率化のせいで、警察機能が十分に機能せず治安が最悪となっているデトロイト。
デトロイトは実に街が廃れて治安が悪化しているので、「将来ありそうな」話です。
要はディストピア系SFなんですね。
そのディストピアぶりを、劇中のCMやニュースでを観客に理解させる手法は、ブラックだけど有効でした。
ヴァンホーヘン監督は、「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)でも政府発表の放送で同じようなブラックな演出をして、地球軍が腐ってることを暗示してました。
この手法、好きなんですね~
(僕も嫌いじゃないけど)
カッコよかったのは、ラストで名前を聞かれて「マーフィー」って答えるとこだけでしょうか。
ただ、かなり期待を裏切るというか、そういうレベルではなく、ポスターから想像された映画とは全く別物。
監督の「ほら、お前らが勝手に期待したものとは全然違うだろ?残念でした~」っていう、嫌がらせのような、ニヤリとした顔が見える気がします。
ちなみにヒロインとして、僕が贔屓にしているナンシー・アレンが出演しています。
行動力のある同僚警官の役なんですが、割と似合ってます。
でも、やっぱり「殺しドレス」(1980)、「フィラデルフィア・エクスペリメント」(1984)の彼女の可愛さには敵いません。
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先入観をとっぱらって見れば、深みはないものの、実は展開は意外にまっとう、というか王道で、コンパクトにまとまってます。
悪者は悪者として描かれている勧善懲悪ものなので、なーんにも考えずに見ていても、分かり易いし、飽きません。
まぁ、SFを題材にした、ブラックユーモアに溢れた映画と思えば納得です。
だから、ワザとカッコイイを避けたのではないかと思うんですね。
一流を感じさせる要素はありませんが、間違いなく印象には残る映画です。
この映画は、2014年にリメイクされ、ロボコップのデザインも黒を基調としたカッコイイものに変えられてました。
でも、作品は全く記憶に残らないダメ映画だった覚えがあります。
やっぱりカッコイイだけではダメなんですね・・・
最後にロボコップと言えば、当時、吹越満さんがロボコップをネタにした芸を披露してました。あれは面白かったです。
DVDはお手頃な値段で入手できるようです。