小学校の時に「スーパーカーブーム」がやってきました。
70年代後半のことです。
本当に鮮烈な体験でした。
勿論「サーキットの狼」は読んでましたし、スーパーカー消しゴムも集めてました。
その頃、定期的にTVで放送されていた映画が「バニシング in 60」(1974製作/1975日本公開)
スーパーカーがいっぱい出てきて、カーチェイスしまくる・・・そんな痺れる番宣でした。
(あらすじ)
盗難車の保険調査を担当する主人公は、実は裏では車窃盗のプロ。彼の元に週末までにリストにある50台を集めて欲しいという高額の依頼が来る。チームで着々と集めるが、黄色のマスタング「エレノア」だけが、どうしても手に入らないのだった・・・
正直に言います。
最初に見た時は、ちょっとガッカリしました。
でもね、この映画にはそういう車はほとんど出てこないんですよ。
ヨーロッパのスポーツカーは、ポルシェとデトマソ、マクラーレン・マンタ、ランボルギーニ・ミウラぐらいでしょうか。
あとはロールスロイスとか、リムジンとか、普通の高級車がメイン。
元々、スーパーカーファンの子供たちの間では、どことなく「アメリカ車はスーパーカーではない」っていう風潮があったので、これも減点ポイント。
だからガッカリしましたね。
だけどやる度に見ちゃうんですよ。
「スーパーカー総出演」っていう番宣が釣りだってわかってるのに。
それは結局、映画として面白いから。
スーパーカーが出なくても面白いんです。
話は至ってシンプル。
期限内に50台の車を請け負ったプロの自動車窃盗団が、あの手この手で盗んでいく話。
原題は「Gone in 60 minutes」。
60秒で消える、っていうのは「60秒あれば自動車泥棒に盗まれる」という意味です。
「バニシング in 60」という邦題になったのは、「バニンシング・ポイント」(1971)っていう車で逃走する傑作映画にあやかったんじゃないでしょうか。
主人公は保険が掛かった車しか盗まない(盗まれた人が保険で買い直せるように、ってことでしょうね)というポリシー。時々失敗もしながらも、次々と盗んでいく様を無駄なくサクサクと見せていきます。
正直、鍵付きで路駐した車をそのまま乗り逃げしたり、持ち主に成りすまして車を持ち出したり、とプロっていうより、チンピラの仕事。
「確かに変装してるけど、それでも姿見られていいの?」っていうのもあり、「ハイテクなプロの技で盗む」って感じではありません。
ここはもうちょっとプロっぽいのにして欲しかったです。
さて、この映画の肝は「エレノア」と呼ばれる黄色の1971年型フォード・マスタング・マッハ1。
この映画と言えばエレノアです!
この映画の中で、どうしても盗めない車、つまりプリマドンナで、ファムファタル(魔性の女)という位置付け。
結局、50台の最後の一台となったエレノアを盗んだところで、警察に見つかり大カーチェイス。
これでもか、っていうぐらいカーチェイスが堪能できます。時間にして30分。さすがスタントマン出身の監督だけあって見応え十分です。
ラストのオチ(最後に逃げ込んだ洗車場で、新品のエレノアを、カーチェイスでぼこぼこになったエレノアと入れ替える)も洒落ていて、僕は好きです。
今回見直して感動したのが、冒頭に出てくる出演者クレジット。
一番最初で唯一のクレジットが「エレノア」。
そして、他の出演クレジットはないんですよ。
まさに「エレノア」を見せる映画なんですね。
この映画のリメイク「60セカンズ」(2000年)でも、やっぱり主人公が「どうしても盗めない車」と呼んでたのが、フォード・マスタング。通称「エレノア」。
勿論、最後はエレノアでのカーチェイス。
(ただし71年型マッハ1ではなく、67年型のシェルビータイプでした)
これでエレノアが好きになりました。
今ではゲーム「グランツーリスモ」では、黄色のフォードマッハ1を使っています。
(上手く使いこなせないけど。誰かドリフトのやり方を教えて下さい)
しかし、リメイクの話を聞いた時は正直、ビックリしました。
だって、子供の時に、「スタントマン出身のH.B.ハリッキー(製作・監督・脚本・スタント・主演)が趣味で作った映画で、スーパーカーブームだから日本でもてはやされたけど、アメリカでは無名なんだろうなぁ」と勝手思ってたからです。
それが当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのニコラス・ケイジ主演でリメイクされるなんて夢にも思いませんでした。
アメリカでも人気があったんですね。
最初にTVで見た時の話。多分、小学6年生ぐらいの頃。
放送翌日に友達と、「画面でチラっと出てきたランボルギーニはミウラか、イオタか?」ということで議論になりました。
僕はミウラ、彼はイオタと主張。
スーパーカーブームの真っただ中の子供たちにとっては、ミウラかイオタかはとっても重要なポイントだったんです。
彼の家には販売が始まったばかりの家庭用ビデオデッキ(ベータマックスでした)があり、この映画を録画していたので、早速学校帰りに確認したのを覚えています。
正解はミウラ。
僕も友達も今だにこのネタは忘れません。
こんな思い出があることも、この映画が「忘れられない一本」になってるのかもしれません。
本当にスーパーカーブームの洗礼は強烈でした。
今でも当時のスーパーカーは全部言えるし、ミニカーを見つけると欲しくなります。
(お気に入りはランチャストラトス)
そして、実はまだ当時のスーパーカーカードを持ってます(笑)
そして今でも「大金持ちになったら、ランチャストラトス」という夢も変わってません。
(なかなかならないけど)
こういうのを三つ子の魂百までも、って言うんでしょうね。
この映画はAMAZON PRIME、Netflix、U-nextのサブスクにはなく、近所のDVDレンタル屋にもなかったので、またもやTSUTAYA宅配を利用しました。
ただし新品のDVDは普通に手に入るようです。