パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

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【ハンガー(1983)】デヴィッド・ボウイとドヌーヴの吸血鬼が最高

吸血鬼映画って、90年代ぐらいから貴族色が強くなった気がします。

元々、ドラキュラ伯爵=貴族でしたが、家族はいなし、手下は妖怪みたいな吸血鬼でした。

でも「インタビュー・ウイズ・バンパイア」(1994)や「アンダーワールド」(2003)「ブレイド」(1998)辺りから、吸血鬼=闇の貴族社会を作る一族となってきました。

そんな貴族吸血鬼の先駆けとして思い出深い「ハンガー」(1983製作/1984日本公開)を今回レビューします。

 

(あらすじ)

ニューヨークの豪邸に住み、上流階級の生活をするミリアムとジョン。彼らは何世紀も生きる吸血鬼。夜になるとクラブで犠牲者となる若者を誘う生活をしている。しかしジョンには吸血鬼としての寿命が近づいていた。ミリアムは新たなパートナーとして医師のサラに目を付ける・・・


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監督は「トップガン」(1986)「ビバリーヒルズコップ2」(1987)「クリムゾンタイド」(1995)のトニー・スコット。この映画が監督デビュー作になります。ちなみに彼のお兄さんは「エイリアン」(1979)「ブラックレイン」(1989)のリドリー・スコットです。凄い兄弟です。

 

勿論、監督の手腕に疑うところはありません。

この映画でもスタイリッシュ、且つテンポよくまとめています。

でもこの映画は主演の二人が全てといっても過言じゃありません。

 

ミリアムとジョンを演じるのは、フランスの大女優で、超美人のカトリーヌ・ドヌーブと、中世的な魅力の美男子でロックスターのデヴィッド・ボウイ

とにかく二人の美貌とミステリアスな雰囲気が、最高に「吸血鬼貴族」なんですよ。

この二人じゃなかったら、この映画は間違いなく平凡な映画になっていたと思います。

 

超豪華な、「焼却機」付の豪邸で、いろいろな美術品に囲まれて、チェロを弾く、静かで神々しい姿と、クラブに貴族的な出で立ちで今風の若者を誘う姿のどっちも違和感なく演じられるのは、この二人ぐらいじゃないでしょうかね。

(焼却機は犠牲者を燃やすためです。そんな家ってあるんですかね?)

 

カトリーヌ・ドヌーブ(仏)の欧州的な正統美人も見事に吸血鬼貴族のイメージにマッチしてますが、デヴィッド・ボウイの元々ミュージシャンとして持ってた中性的な美貌や、どことなく人間離れした存在感(宇宙人っぽさ?)が見事に吸血鬼としてツボです。

元々、演技力が高いことで評価されていた人なので、演技面でも問題ありません。っていうか、上手いです。

 

このキャスティングした人、神です。

 

ちなみにこの映画では、デヴィッド・ボウイは主題歌の提供はしていません。

 

カトリーヌ・ドヌーブデヴィッド・ボウイは対等の関係ではなく、ドヌーブが主でボイが従。

 

要はドヌーブはオリジナルの吸血鬼で、自分のパートナーとしてボウイを選んで、彼を吸血鬼にして何百年も一緒にいるわけです。

でもどうやらボウイはオリジナルの吸血鬼じゃないんで、期限があるんですよ。

ある日突然、急激な老化が始まる。

一日でおじいちゃんになっていく。

そして動けなくなるんだけど、実は死ねない。

そこは吸血鬼だから。

ドヌーブは、そんな彼を屋根裏部屋の棺に入れるんですよ。

そこには彼女の歴代のパートナーが何人も棺に入ったまま「保管」されていてる。

ボウイもその棺桶の中で永遠に生き続けるわけなんです。(汗)

 

ドヌーブは他の棺桶に向かって、「彼はジョンっていうのよ。仲良くしてあげて」って優しく話しかけるんです。

 

こえー-。

吸血鬼になった代償がこれかよー。

吸血鬼に殺されるより、こっちの方がいやだー。

吸血鬼になりたくないよー。

 

さて「ボウイはもう賞味期限切れ。新しいパートナーを見つけなきゃ」とカトリーヌ・ドヌーブが女医(スーザン・サランドン)に目を付けて、パートナーにするのが後半。

(ドヌーブはバイセクシャルって設定)

 

ここから映画のボルテージがちょいと下がります。

何故か。

それはスーザン・サランドンめっちゃ普通の女性だから。

ボウイのようなミステリアスさも、気品もない。

貴族社会の中に庶民が入ってきちゃった?みたいな違和感。

 

貴族趣味が好きな僕としては、もうちょっと貴族っぽさがある女性にしてほしかったですねー。

 

あそこまで神キャスティングしているのに、詰めが甘いのが残念。

 

ドヌーブが「貴族っぽいボウイと数百年も一緒にいてちょっと飽きてたから、今度は庶民っぽい人で」って味変みたいな感覚なんでしょうか。

 

映画全体としては、当時は吸血鬼=貴族社会を全面に出しているのが目新しかったですね。

また主人公たちは蝙蝠にもならないし、姿を消すといった超自然的なパワーは使いません。(目を見つめて人を魅了する力はあるようですが)

本当に、血を吸うだけで、あとはただの金持ち、なんです。

 

そんな超自然的なパワーも使わないので、吸血鬼モノには珍しい、人間とのバトルもないです。っていうか、そもそも吸血鬼が存在すると思っている人間が出てきません

 

そんなワケで、吸血鬼映画なのにとっても静かで、ホラー度は低いです。

 

まさに貴族吸血鬼が好きな人にはお勧めの映画。

ラストのオチがちょっと腑に落ちないところはありますが、時間も長くないし、さらっと見るのはいいんじゃないでしょうか。

 

小ネタとして、無名の頃のウィレム・デフォーが主人公に絡むチンピラ役で1分ぐらい出てきます。

デビッド・ボウイがどんどん老人になっていく特殊メイクは大御所のディック・スミス(「狼男アメリカン」(1981)でアカデミー・メイクアップ賞を受賞)でした。

 

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この映画は当時、岐阜では上映されなかったはずです。

だから吉祥寺の名画座で見ました。

併映はテリー・ギリアム監督の「バロン」(1988)だったような気がします。

どっちも初見で面白かったので、とても満足して映画館を出た記憶があります。

 

今回はAMAZON PRIMEとNexflixのサブスクにはありませんでしたが、U-Nextにはあったのでそっちで見ました。

ちなみに近所のレンタル屋さんにはなかったです。

 

新品のDVDは普通に手に入ります。