パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【世界が燃えつきる日】話、ビジュアル、キャスト、全てが70年代B級SF!

男の子にとって、SFってメカですよね?

かっこいい乗り物は無条件で憧れます。

だから昔のSF映画って、宣伝でそういうメカを全面に押し出してくるわけですよ。

日本独自のカッコいいイラストや、やっぱり日本オリジナルの内部構造解説とか出したり、カッコよく見えるシーンだけTVで流したり。

 

まぁ、この話をすると、必ず出てくるのが「メガフォース」(1982)。

「メガフォース」については実際どうだったか、というのは僕のレビューを見ていただくとして、

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そんなメカにつられた一本が、今回レビューする「世界が燃えつきる日」(1977)。

 

核戦争後の荒廃した世界を駆け抜ける軍用特殊車両ランドマスター号!

燃える設定じゃないですか。

世界が燃えつきる日_パンフレット裏表紙_ランドマスター
もっともカッコよく見える1枚

そりゃ胸がときめいて、劇場に向かいますよね。

 

しかし劇場の中で

 

「なんじゃ、こりゃーー(松田優作さん風)」

 

この映画も、B級映画お約束の期待を裏切ることなく(?)、僕たち子供をとっても煮え切らない気持ちにする一本でした。

 

そんな映画を45年ぶりにレビューします。

 

(あらすじ)

ソ連の核ミサイルの先制攻撃により、核戦争が勃発。地軸が歪んで、荒廃した世界を、生き残った人たちを求め、主人公たちは軍の特殊車両ランドマスターに乗り、アメリカ大陸横断に向かうのだが・・・


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この映画、日本のパンフレットには、原題が「SURVIVALE RUN」になってるんですが、今は「DAMNATION  ALLEY」です。

原タイトルが変わる映画って、典型的なダメなB級映画のパターン。そこからして怪しいです。

ちなみに「DAMNATION  ALLEY」は、この映画の原作「地獄のハイウェイ」(ロジャー・ゼラズニィ作)の原題と同じです。

世界が燃えつきる日_パンフレット表紙

さて、映画ですが、いやー、しょっぱかったですよ。

 

分かってはいたんです、ランドマスター号の作りが雑なのは。

 

車両は前後に分かれてるんですが。真ん中の接続部分なんて布なんですよ。

下の写真でも分かりますよね?

世界が燃えつきる日_パンフレット_ランドマスター

せめて布なんて使わずに、ちゃんと金属感を出した作りにして欲しかったです。

作りは、完全にコメディ映画「弾丸特急ジェットバス」(1976)のジェットバスに負けてます。

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デザインも正直、カッコいいというのに、ちょっとビミョー

芋虫みたいな図体に、マシンガンやミサイルが剥き出しで取り付けられてます。

小学生が考える「凄い車両」みたいです。

 

ホント、「メガフォース」のタックコムに通じるものがあります。

↓ 「メガフォース」のタックコム。なんか雰囲気似てません?

メガフォース_パンフレット_タックコム①

あー、こういう分かりやすい武装って、最近見た「デッドフォール」(1989)にも出てきたなぁ。

個人的には、ボンドカーみたいに、一見普通なんだけど実は脱ぐと凄いんです、みたいな、秘密兵器が格納されてるのがいいです。

(だからと言って、「パラダイス・アーミー」(1981)に出てきたキャンピングカーが凄いというワケではありません)

 

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でも、パンフレットでは、それがさもスーバーメカであるが如く、めっちゃ解説に紙面を割いてるんです。

勿論、内部構造イラストは当たり前です。

世界が燃えつきる日_パンフレット_ランドマスター

あ、ちなみに「メガフォース」のパンフレットにも似たようなものがありました。

 

メガフォース_パンフレット_タックコム②

ここまでメカを全面に出したら、子供なんてこれを目当てに見に来てるじゃないですか。

そんな子供の目にもデザイン、出来ともにガッカリレベル

当時の僕には、この時点で「世界が燃えつきる日」の価値は80%毀損しました。

 

ランドマスターを熱く(?)語ってしまいましたが、映画自体はどうだったかというと、ランドマスターを全面に押し出さなければならないぐらい魅力に乏しい作品なんですね。

 

もうどこを切ってもB級映画

それもマニアが唸るようなオタクちっくな良さがあるB級映画じゃなくて、ただ単にしょぼい娯楽作品です。

 

お話は核戦争後の世界。

核戦争で地軸が歪んだせいで、空はギラギラ、大地は砂漠化し、巨大なサソリや、人喰いゴキブリが幅をきかせ、時折ランドマスター2号を破壊するほどの凶暴な砂嵐が吹いています。

米ソ冷戦まっさかりの、70年代定番の終末世界です。

 

何とか生き延びた軍人の主人公たちでしたが、住居にしていた米軍の核ミサイル基地が寝タバコが原因で大爆発(!!)。

「そんなミサイル基地あるわけないだろー」、と画面に向かって突っ込みしてしまいました。

 

主人公たちは仕方なく特殊車両のランドマスターに乗って、人間が生き残ってるらしいニューヨーク州オールバニーを目指します。

ちなみに米国空軍の軍人の主人公たちは、冒頭で核ミサイルのボタンを押してるんですね。ちょっとなかなかない主人公設定です。

 

定番の終末世界ですが、全体的に小粒というか、想像力不足。

大変な世界っぽいのは分かるし、普通の車じゃアメリカ大陸横断は無理なのも分かります。

でも特殊車両ランドマスターは、砂嵐とラストの洪水以外は基本へっちゃらです。

主人公たちがピンチに陥るのは、ほとんどがランドマスターに乗ってない時

だから、核戦争後の世界、こわーいという感じがしません。

封印作品ノストラダムスの大予言」(1974)の終末世界の方が100倍怖いです。

 

15分おきぐらいに、そこそこピンチになって、脇役軍人は死んでいくんですが、入れ替わりに少年と女性が登場。

核戦争後の世界で空が不気味な色にギラギラしてるのに、放射能の心配はないみたいですし、「そろそろガソリン入れる?」みたいなノリもあり、普通の冒険活劇です。

 

ビジュアル的には終末観を出そう頑張ってるフシもありますが、いかんせん話に終末世界という緊迫感がゼロ。

 

ちなみにランドマスターは、大型トラックの部品で修理出来るという便利もの。

え?ミサイルも搭載している軍の特殊車両が大型トラックの部品で作れちゃうの???

更に部品を求めて廃車置き場に行くですよ。

せめてトラック修理工場を探して、新品の部品を使いましょう!

 

まぁ、こんな風にいたるところに突っ込みどころが満載。

 

最後は突然、大嵐が来て、理由もなく地軸が元に戻って、空には青空が広がります。

終末世界終了のお知らせです。

 

予算制限の中、見せ場を作ろうとしたものの、中途半端なシーンをダラダラと繋げただけになり、完成したのは箸にも棒にもかからない映画だった、ってことじゃないでしょうか。

まぁ、70年代にはよくあるB級SF映画のパターンですね。

 

で、脚本家を調べたら、先日見た「バイオレント・サタデー」(1983)と同じ人でした。

この人、話に一本筋を通すとか、つじつまを合わせるとか苦手かも。

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実は原作を読んだことがあるんですが、これが結構面白かったんですよ。

西海岸から東海岸へワクチンを届けるため、一人のタフな囚人が核戦争後の荒廃した世界を、特殊車両に乗って走破するという、ちょっとハードボイルドな話で、映画とは別物です。

核戦争後の世界でアメリカを特殊車両で横断する、しか同じところないですね。

映画、原作から離れ過ぎ。

 

この原作の今の表紙が、なんとなくランドマスターを意識しているのは気のせいでしょうか。

 

僕が持っている文庫本は、この映画が公開された直後に装丁替えになって再販されたもものです。

地獄のハイウェイ_小説_表紙

この映画から、何とか原作のイメージに合うシーンを探し出して表紙にしています。

涙ぐましいです。

 

出演はジョージ・ペパードと、ジャン・マイケル・ヴィンセント。

とってもB級な人たちです。

ジャン・マイケル・ヴィンセントは、この映画の翌年に主演した「ビッグ・ウェンズデー(1978)」で、日本でもそこそこ人気が出ました。

ただ映画には全く恵まれず、「ブルーサンダー」(1983)のヒットを受けて製作されたヘリコプターアクションTV「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」(1984-1986)の主演として名を残してます。

調べたら、4年前(2019)に亡くなってました。

合掌。

 

ヒロインとしてドミニク・サンダが出てます。

なんで、こんな映画に出ちゃったの?っていうぐらい、基本は立派な映画に出る女優さん。

この映画では、ヒロインとして華奢過ぎるのか、B級娯楽作に合ってないのか、はたまたやっつけ仕事で適当に流しているのか、存在感がビミョーな感じでした。

 

監督はポール・ニューマンが探偵を演じた「動く標的」(1966)で評価を得たジャック・スマイト。

この人、現代サスペンス劇を得意としてると思うんですが、何でこんな映画を引き受けたんでしょう?

まぁ、なんていうか、可もなく付加もなくっていう、やっつけ仕事っぽい、普通の演出で、映画のレベルを引き上げるようなことは一切してません。

ってか、この人もやっつけ仕事として適当に流してたのかも。

 

とにかく出演者、脚本、演出と、どれを取ってもB級。

ランドマスターというイロモノが登場することと、DVDが入手困難(中古市場でかなりプレミアムがついている模様)で、レンタルにもサブスクにもないという視聴困難作品の扱いということで、同じB級の中でも、ちょっとカルトっぽい、マニア受けする扱いをされてるみたいです。

 

ただB級SF映画マニアの僕が見ても、55点ぐらいの映画なんですけどね。

 

そう言えばこの映画は劇場公開時に「SOUND 360」という特殊な音響装置で公開されました。

パンフレットにもその記載が大きくあります。

世界が燃えつきる日_パンフレット_サウンド360

僕も劇場で体験しているのですが、全く記憶がありません。

同時期の特殊音響「センサラウンド」(「ジェット・ローラー・コースター」(1977)、「宇宙空母ギャラクティカ」(1978)等)ほど、インパクトはなかったんじゃないかと思います。

 

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前述のようにDVD は入手困難です。ただ、だからと言って、必死に探して見るようなものではないとは思います。(笑)