パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【パラダイス・アーミー】意外と楽しめた普通のコメディ映画

ゴーストバスターズ」(1984)のメンバーが、その3年前に作った軍隊コメディパラダイス・アーミー(1981製作/1982日本公開)。

初公開時に劇場(柳ヶ瀬の自由劇場?)で見たんだけど、全く記憶がない一本です。

ちなみに同時上映は当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったニール・サイモン脚本の「泣かないで」(1981)というハートフルコメディ。

こっちも記憶がありません。

 

パラダイス・アーミー」は期待値は高かったけど、満足度は低かったなー、という、うっすらとした感想だけが思い出されます。

主演のビル・マーレイアメリカでの人気を知らなかった僕は、当時人気絶頂だったジョン・ベルーシのコピーにしか見えませんでした。

(当時のアメリカでは、ビル・マーレイは既にコメディアインの登竜門的TV「サタデー・ナイト・ライブ」の人気者でした)

 

(あらすじ)

何をやってもダメな主人公は、ついに彼女の家を追い出され、タクシーの運転手も辞めてしまう。そして同じボンクラな友達と、勢いで陸軍に入隊。彼が配属された教育部隊は、同じようなボンクラ達集団だった。同じ頃、陸軍は一見キャンピングカーに見える秘密兵器を完成させていた・・・


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そんな期待値の低い思いでしかなったんですが、これが思いの外楽しめました

勿論、大傑作、抱腹絶倒、っていうレベルではありません。

でも見ている間、飽きることはありません。

とにかくいい意味でコメディらしい予定調和に満ちてるんです。

ドラマと違って、コメディって、こっちが期待してる通りの失敗や展開になると嬉しくなりますよね?

 

軍隊ものなら、ボンクラばっかり集まって、こいつらが騒動を巻き起こすんだろーなー、とか、鬼軍曹がどっかでやり込められるんだろーなー、とか、秘密兵器はボンクラな主人公たちが「たまたまの勘違い」で、乗ることになるんだろーなー、とか。

こっちが期待する展開通りになると、思わず「そうそう」と言いたくなります。

下手にひねってるスベるより、100倍マシ。

ベタと言えばベタですが、安心しますw

 

パラダイスアーミー パンフレット表紙

ビル・マーレイも今回ちゃんと見直すと、ジョン・ベルーシとは全然違うキャラなんですよね。

ジョン・ベルーシの傍若無人の暴走ぶりとは違い、ちょっといい加減な、一般人的なボンクラキャラ。相棒のアイヴァン・ライトマンもいい感じのボンクラぶり。

二人とも妙に常識人だったり、ちょっといいことを言ったり、他人に迷惑をかけるだけじゃなくて、掛けられて困ってるところとか、どことなく昭和の日本のサラリーマンコメディの主人公を思い出させるところがあります。

 

話も冒頭の社会人としてのダメっぷり、勢いで入隊した軍隊の訓練キャンプ、そしてクライマックスの秘密兵器でのドライブ、と起伏があって良いです。

この辺りは先日レビューした「ホリデーロード4000キロ」(1983)に見習って欲しかったです。

(ちなみに「ホリデーロード4000キロ」の監督は、この映画の主演の一人であるハロルド・ライミス)

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

ボンクラたちをイビる軍曹をやってるのは、名脇役ウォーレン・オーツ。この人、シリアス系のアクション・サスペンス映画の常連だと思うんですが、ここではその強面ぶりで鬼軍曹を演じてます。

そんな彼も終盤では勘違いお笑いキャラになります。こういう展開もお約束ですが、悪くないです。

 

主人公たちと恋仲になる女性憲兵の一人をショーン・ヤングが演じてます。

僕ら中二病的SFファンにとって、彼女は「ブレードランナー」(1982)のヒロイン、レイチェルですね。

ブレードランナー」の神秘的なクール・ビューティではなく、ノリノリの女性憲兵なので、「え?本当に彼女なの?」と、最初は分かりませんでした。

 

この映画の後半の肝(ネタ?)は、軍の秘密兵器、武装したキャンピングカー。

なんで秘密兵器がキャンピングカーに偽装しなきゃいけないのか、という突っ込み不要。

勿論、いろんなところから武器が出てきたりする、ボンドカーのような仕様。

これこそ期待度通りです。

まさにこの映画の、良い意味での馬鹿馬鹿しさの象徴。

ちなみにこのキャンピングカー、パンフレットでは黒と黄のツートンになってますが、映画の中では薄い緑と濃い緑のツートン

更にややこしいことに、日本版のチラシと海外版のポスターでは、下が緑で上が黄色のツートン

これは映画で使われたカラーリングでは地味過ぎるってことで、どんどん変更していった結果なんでしょうか?

パラダイスアーミー_海外版ポスター

すごーく印象に残ったりはしません。

展開も設定も、どっかで見たことある気がするものばかり。

寄せ集めといわれればそれまで。

決してシェフが独自性を発揮する高級レストランの料理ではありません。

 

でも馴染みのある、近所のファミレスの定番料理のような、期待通りの味です。

そこそこ映画を見てると、普通のものを普通に出してくれるって、なかなかないんですよね。

 

だから、「パラダイス・アーミー」は「普通っていいなぁ」って思わせる、そんな映画でした。

きっと初めて見たときは、こういう平凡さの良さが分からなかったんでしょうね。

 

DVDはありますが、結構いい値段しますね・・・