パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ブラック・サンデー】渋い男の隙間のないサスペンス

最近続いてる70年代サスペンス佳作シリーズ。

僕の世代の映画好きには幻の一本として記憶されてるのがブラック・サンデー(1977製作/日本未公開)。

テロを扱った映画だったからか、謎の過激派組織からの上映中止の脅迫状が原因で、公開が取り止めになったという曰く付きなんです。

面白い作品という噂だけが流れてきて、見たいなー、と思わせる一本でした。

結局、製作から大分経ってからビデオが発売されて見たんですが、噂通り面白い作品でした。

そんな幻の一本を、今回改めてレビューします。

 

(あらすじ)

アラブテロ組織がアメリカで大規模テロを計画。その計画を知ったイスラエル情報部は、対テロ作戦のプロである主人公をアメリカに送り込み、未然にテロを防ごうとする。テロ組織は退役軍人で、アメリカに恨みを持っている男を利用し、アメリカ最大のスポーツイベントである「スーパーボール」でテロを実施しようとしていた・・・

 


www.youtube.com

 

この映画の監督はジョン・フランケンハイマー

骨のあるサスペンス映画を作らせたら、ピカイチの監督です。

更に原作は「羊たちの沈黙」シリーズのトマス・ハリス

このメンツが揃ってるだけで、完成度はある程度保証されたようなものです

 

内容自体は70年代によく見られたサスペンス映画の典型。

主人公を演じるロバート・ショウは強面俳優で、この映画の対テロ専門家(要は殺し屋ですね)が似合ってます。

若い頃は「007/ロシアより愛をこめて」(1963)の殺し屋を演じるなど、悪役が多かったのですが、ベテランになってからは「ジョーズ」(1975)の鮫専門の漁師、「ザ・ディープ」(1977)のベテランダイバーといった、頑固なプロフェッショナル役を得意とするようになった渋い俳優さん。

この映画でも、まさに頑固なプロフェッショナル役で、女性絡みなど微塵もなく、ひたすら冷徹にテロを防ごうとする鉄の漢

カッコいいですねー。

最近ではこういう硬派な親父キャラが主人公って減った気がします。

 

硬派な映画ですが、一人だけ女性が登場します。

その女性こそが、自分が属するテロ組織からも過激なことを諌められる女テロリストなんです。

ベッドシーンはあるんですが、情なんてものはなく、必要があれば躊躇なくマシンガンを放つ冷酷さは敵として合格。

 

しかし、そんな彼女を上回る存在感を出していたのが、彼女に利用されて、テロに加担する退役軍人を演じたブルース・ダーン

彼のキレ演技は抜きん出ています。

ベトナム戦争で捕虜になり、その間に嫁さんにも逃げられ、未だに精神を病んでるという設定なんですが、いつもイライラしながら、「俺のこと狂ってるって思ってるんだろ?!俺はまともなんだ!」と怒鳴り続ける狂いっぷりが素晴らしいです。

なんか昨今、世の中で起きてる事件の犯人と重なるところがありせん?

 

このブログでも、何度も書きましたが、敵の強大さがないと、主人公の活躍も引き立ちません。

その点で、このテロリスト二人は満点合格。

見ている側に「これは手強い」と思わせてくれます。

 

ブルース・ダーンは、ほとんどの映画でも主役を張るようなことはありませんが、準主役として主人公を引き立てるのが上手い人。神経質な演技が特に上手かったと記憶があります。

ウォルター・マッソーと組んだ「マシンガンパニック/笑う警官」(1973)も良かったですね。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

ちなみにブルース・ダーンの娘は、「ジュラシック・パーク」(1993)や「ブルー・ベルベット」(1986)、「ワイルド・アット・ハート」(1990)に主演しているローラ・ダーンです。

(「マシンガン・パニック」の時にも書いてますね)

 

主人公はテロがあるらしいことは分かっていても、それが誰かは分からない。

まず最初はそれを探し当てる話なんです。

大体、この手の映画だとラスト近くで犯人が分かって、「あいつだったか!」となり、最後の対決というパターンが多いんじゃないでしょうか。

 

でもこの映画は、残り1時間で犯人判明の正体が判明。

テロリストも自分達の正体がバレたことが分かり、追いつ追われつの展開になります。

この後半1時間が本当にスリルたっぷりで、盛り上がるんです。

市街地でも撃ち合いをするなど、アクションシーンもあります。

(銃撃戦なのに、通りにいる人が見物状態が違和感ありますけど)

 

ラストは普通の映画なら、スーパーボールの観客にテロのことを悟られず、舞台裏で対決 → 無事何事もなかったのように試合が行わる、というパターンになるんですが、この映画ではスーバーボールは中止になり、テロにより倒れたスタジアムの鉄塔で怪我人が出たり、マシンガンでバンバン犠牲者が出たりと、全く丸く収まらない結末

 

70年代の「ちょっと鬱が入る終わり方」の一本かもしれませんが、全体を覆う緊張感を考えると、能天気なハッピーエンドよりは全然良いと思います。

 

とにかく話の軸がしっかりしていて、余分なものがなく、隙間のない展開は、サスペンス映画好きには是非見てもらいたいです。

 

DVDはお手軽に入手できます。