パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【弾丸特急ジェット・バス】あまりにも70年代を感じさせるコメディ

多分、今はこんなコメディ映画って作られないんじゃないだろうか、って思われる一本が「弾丸特急ジェット・バス」(1976)。

子供の時に映画雑誌「スクリーン」で載った楽しそうなイラストのポスターを見て、「見てみたい!」と思ってた映画です。

 

今では誰の記憶からも忘れ去られたような映画なんですが、DVDは発売されてるんですよ。それもAMZONで新品1000円

ついつい衝動買いしてしまいました。

さて、期待の映画の出来はどうだったんでしょうか?

 

(あらすじ)

プールやバーまで備える人類初の原子力バスが完成。しかし原子力を快く思わない産油国のテロで、運転手が負傷。開発者の元恋人で、ワケありの敏腕バス運転手を代わりに立て、個性豊かな客や乗務員を乗せてニューヨークからデンバーまでノンストップの旅に出るのだが・・・

 


www.youtube.com

弾丸特急ジェット・バスのチラシ

ね、イラストが楽しそうでしょ?

(70~80年代って、コメディに限らず、こういうイラストの映画ポスターが多かったです)

 

さて、内容は予想通りかるーくて、薄っぺらいB級コメディ

 

工場の敷地で、原子力バスの出発の取材に来た新聞記者を送迎バスが乗せたと思ったら、駐車場を一周して倉庫の前でみんなを下すとか、酒場の喧嘩でビール瓶を割って武器にするんじゃなくて、牛乳の紙パックを割って武器にするとか。(周りが「やばい、牛乳パックだ、気をつけろ!」とビビったり)

そんな70年代風のギャグが満載。

 

乗客も、神を信じない神父、人間が治療できない医者、いつも能天気なピアニストと乗務員、喧嘩をしてはすぐに情熱的に抱き合う中年カップルなど、「ネタをふりますよ!」感が満載。

どうでもいい話ですが、ヒロインの女性が、ちょっと往年の美人女優エリザベス・テイラーに似てました。

 

話が進むにつれてネタが次々と続くんです。

主人公が人肉を食べた疑いがあるとか、副ドライバーがすぐに気絶しちゃうとか、自動タイヤ装置っていうのが、走行中にタイヤを外側に吹き飛ばして、新しいタイヤが車内から自動的に出てくるとか・・・

 

あれ?これ見たことあるぞ?

 

そうなんです。

どうやら、僕はこの映画を見たことがあるみたいです。

 

見たこと自体をすっかり忘れちゃうような映画ってことか?と思いました。

そして結論から言うと、その通りでした

 

つまらないとかじゃなくて、当時よくあったB級お手軽コメディの王道パターン過ぎて、これといった特徴がないんですよ。

だからギャグが、この映画だったのか。それとも他の同年代の映画だったのか分からないレベル。

 

原子力バスを無事にデンバーまで運転させるっていう大筋の物語は、細かいギャグを見せるための入れ物でしかありません。

典型的な70年代コメディ映画の作りです。

それぐらいこの映画は70年代のお笑いテイストが溢れてます。

 

よく言えば、70年代コメディ映画をお手軽に体験してみたい人には、悪くない一本です。

 

クライマックスは谷底に落ちそうなるバスを何とか道路に戻して、さぁ、最終目的にデンバーまであと少しだー!ってバスが再発進したところで、なんとEND。

あと少し、って言うなら、デンバーまでやりきればいいのに。

とっても中途半端です。

 

でも、正直言うと、あと30分同じようなギャグを繰り返されてもなぁ、というのも事実。

確かに時間も1時間半だし、ほどよい引き際にも見えます

この辺りはプロデューサーがよく分かってたんでしょうね。

 

この映画で一番驚くのは、舞台となる原子力バス「サイクロプス」。

巨大で、とっても変なデザインなんですが、これ、走る実物を作ってるみたいなんです。

それも意外とちゃっちくない!

巨大感もあります。

なので走ってるところがとっても自然。

妙なリアリティーがって、メカ好きはワクワクするんです。

実物を作っちゃうという、この時代の力技っていいですよね。

 

あとギャグの一環で、登場人物が飛んだり、跳ねたり、落ちそうになるシーンが多いです。結構危ないシーンも多いです。

当然、CGはないので、生身の人間がやってます。

だからハラハラ感が半端ないです。

(今だと危険なシーンでも「どうせCGだよね~」って勝手に思っちゃうので、安心して見ちゃいますよね。)

 

DVDのジャケットは、豪華スター出演みたいになってますが、多分、名前が通ってるのは、ネッド・ビーティだけじゃないでしょうか。

ネッド・ビーティは存在感あるんですが、基本はユーモアのある「名脇役」俳優なのでオールスターっていうのに加えていいのか、ちょっと疑問です。

 

ちなみに音楽はデヴィッド・シャイア

映画音楽家としては地味で、作品も少ないですが、「ヒンデンブルク」(1975)や「さらば愛しき女よ」(1975)といった良質な音楽を作る人。

特に「さらば愛しき女よ」は傑作スコアです。

そんな彼が、こんな(超B級)映画を担当してるなんてびっくりでした。

プチ情報ですが、彼の奥さんは女優のタリア・シャイア

「ロッキー」シリーズのエイドリアンを演じた女優で、あのフランシス・F・コッポラ監督の妹です。

 

冒頭に書きましたが、DVDはお手頃で入手できます。