1970~80年代、バート・レイノルズと言えば、タフガイの代名詞。どんな逆境でも余裕でギャグをかますような爽快キャラが得意で、話題作によく出ていました。
彼はちょこちょこ監督もやってるんです。
監督第3作目が今回レビューする「シャーキーズ・マシーン」(1981製作/1982日本公開)。
彼が主演も兼ねた刑事モノです。
勿論、大アクション映画を期待して劇場に向かいました・・・
(あらすじ)
おとり捜査に失敗した麻薬課の敏腕刑事シャーキーは、うだつのあがらない風紀課に転属させられてしまう。しかし逮捕した娼婦から高級売春組織の存在を知り、そのうちの一人を監視しているうちに、州知事候補が関係していることを知るが、殺し屋が口封じにその高級娼婦を狙っていた・・・
ずばり言います。
肩透かしを食らいました。
いや、つまらなくはなかったんです。
でもスッキリしないというか、ちょっとモヤモヤした気持ちになりました。
見た劇場は岐阜のロイヤル劇場。
今は名画座として、日本唯一のフィルム上映を続ける商業映画館になってます。
勿論、岐阜なので同時上映がありました。
「シャーキーズ・マシーン」の同時上映は当時人気だったダドリー・ムーア主演の「ミスター・アーサー」(1981)。
主題歌の「ニューヨークシティ・セレナーデ」(クリストファー・クロス)が世界中で大ヒットしたコメディ映画です。
この曲の原題は「Arther's Theme (Best that you can do)」。
どうして「ニューヨークシティ・セレナーデ」という邦題になるのか不明ですが、これも昭和のあるあるです。
ちなみに「ミスター・アーサー」の日本公開は1981年12月。
でも岐阜では「シャーキーズ・マシーン」の同時上映として1982年4月に公開されています。これも岐阜あるあるです。
話題戻って、今回見直してみたら、あの時のモヤモヤの原因がはっきりしました。
この映画、タフガイ刑事が一匹オオカミとして事件を解決していくものではありません。
主人公と冴えない風紀課のメンバーが一致団結して、巨悪に挑むというバディムービー。
冒頭の麻薬捜査やクライマックスの殺し屋とのチェイスなどポイント、ポイントでアクションはありますが、基本はオーソドックスな刑事ドラマ。
「ダーティー・ハリー」(1971)や「フレンチコネクション」(1971)のように、ちょっと強引に情報を引き出す捜査や、他の課の知り合いに無理を言って協力させる辺りは80年代の男臭い刑事ドラマの定石ですね。
この映画を前半から話を引っ張ってるは、主人公ではなく、ヘンリー・シルヴァ演じる精神異常の殺し屋。
明らかに壊れてるんですが、殺しに関しては超一流。
容赦無用ない彼が常に先回りして口封じに動くことで、常に緊張感が生まれました。
ヘンリー・シルヴァって悪役が多いんですよ。
このブログで取り上げた「メガフォース」(1982)や「シークレットレンズ」(1982)でも悪役を演じてました。
(どちらもコメディ要素が入ってましたが)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
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この人、確かに悪役顔です。
でも小者感満載です。
「メガフォース」では主人公の旧友であり、敵の戦車軍団を率いる隊長、「シークレットレンズ」ではテロリストの親分ですが、リーダーの風格ゼロ。
だから敵ボスとしてイマイチ迫力ないから、映画のスケール感も落ちます。
その点、この映画では敵ボスではなく、彼の弟の一匹オオカミの殺し屋っていう役がよく似合ってました。
なんたってリーダーの風格が必要ない、暴走タイプ。
主人公が指を二本切られる拷問から脱出し(ナイフで一本、一本切断されるシーンがマジで痛そう)、ヘンリー・シルヴァを追い詰める終盤はアクションシーンとして盛り上がります。
撃たれても、撃たれても不死身のヘンリー・シルヴァ。
繰り返しますけど、リーダーより、イっちゃってる役が彼には似合います。
このクライマックスも、主人公だけじゃなく、風紀課のみんなで追い詰めるんです。
やっぱりバディ・ムービー。
そんなワケで”タフガイ”バート・レイノルズの映画にしては、地味目でした。
でも刑事モノのバディ・ムービーとしては、十分に合格。
定番っぽい展開が多いながらも話はしっかりしてるし、バディ・ムービーに不可欠な仲間の描写も丁寧で、それぞれキャラが立ってます。
そしてバート・レイノルズの演出は奇をてらわず、堅実。
まさに良質な脚本を損なわずに映像化するのに相応しい演出でした。
そんなわけで、この映画は地味ながらも、無駄なところが少ない、正統派の佳作。
最初に見た時よりモヤモヤがなく、楽しめたのは長い時間が経って、僕が「バート・レイノルズ」という名前の呪縛から解き放たれたからでしょう。
この映画が何もかも地味かというと、そういうワケではありません。
この映画、音楽の選曲が凄くオシャレなんです。
ソウル&ジャズがカッコよく使われていて、当時サントラも買いました。
(当然アナログLP版)
その中でも特にお気に入りが2曲あります。
一つはオープニングで使われたランディ・クロフォードの「ストリートライフ」。
これが、めっちゃかっこいい。
この映画で使われたのは、クルセーダーズのアルバム「STREET LIFE」(1979)に収録されたオリジナルとは違う、映画専用の別バージョン。
僕にとっての「ストリートライフ」はこのサントラバージョンなんですよ。
現在、サントラは入手困難で、サブスクにもサントラ版はないんです。
でも悲観することはありません。サントラバージョンを聴くことが出来ます!
サントラバージョンの「ストリートライフ」を気に入っていたクエンティン・タランティーノ監督が自分の映画「ジャッキー・ブラウン」(1997)で、オリジナルではなく、サントラバージョンを使ってるんですよ。
だから「ジャッキー・ブラウン」のサントラで聴くことが出来ます!!!
そしてもう一つのお気に入りがマンハッタン・トランスファーが歌うスタンダードナンバー「ルート66」。
静かでおしゃれな雰囲気が最高。
現在、この曲は彼らのライブアルバムで聴けますが、やはりサントラバージョンとはちょっと違うんです。
サントラバージョンが簡単には聞けないのは本当に残念ですが、このバージョンも悪くないです。
この2曲は今でも愛聴しています。
今回はPRIME VIDEOやNetflixのサブスクにはなかったものの、U-Nextにはあったので、そちらで視聴しました。
この映画のBlu-rayは比較的お手軽に手に入るようです。