パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【デッドフォール】腑に落ちないバディもの

シルベスター・スタローンって、時々、イメージチェンジを狙うフシがありました。

ただの人の良いタフガイから、ちょっとお笑いが入ってたり、インテリだったり、SFだったり。

刑事・警察ものだけでも、「ナイトホークス」(1981)の変装が得意な捜査官、「コブラ」(1986)のスタイリッシュなハードボイルド刑事、「刑事ジョー・ママにお手上げ」(1992)の母親と同居する刑事、「デモリッションマン」(1993)の冷凍睡眠で未来で目覚める刑事など。

「ナイトホークス」は面白かったんですけど、あとは「どうだかなー」って感じでした。

 

そんなスタローンのイメチェン刑事の一本が「デッドフォール」(1989)。

彼の役はインテリ刑事。(え?)相棒のタフガイ刑事を演じるのはカート・ラッセル

さて、この映画のスタローン刑事はどうだったんてしょうか?

 

(あらすじ)

インテリ刑事タンゴとタフガイ刑事のキャッシュは署で1,2位を争う活躍をしていた。しかし彼らに恨みを持つ犯罪組織のボスが、二人を罠に嵌め、重犯罪者用の刑務所に送り込んでしまう。ボスはそこで彼らを抹殺しようとするのだが・・・


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シルベスター・スタローンカート・ラッセルの組み合わせを僕が見逃すハズありません。

でもこの映画、見たような見てないような・・・

記憶が超曖昧なんです。

良かったとも、悪かったとも、どちらの印象もなし。

 

ってことは、良くなかったのは間違いないです。

だって良かったとか、面白かったら、絶対に忘れないから。

 

そして同様にびっくりするほど悪かったわけでもなさそうです。

こちらも絶対に忘れないから。(恨)

 

ということは、「プチいまいち」だった可能性大です。

 

さて、結論から言うと、僕の推測は当たってました。

 

まずスタローンは株式取引に勤しみ、三つ揃いのスーツを着て、銃をスマートに構えるインテリ刑事。

でも捜査は強引。

 

カート・ラッセルはデカい銃を持ったガサツなタフガイ。

やっぱり捜査は強引。

 

あれ?

二人とも捜査は強引だぞ?

 

スタローンはおしゃれな眼鏡をかけ、常に冷静に行動し、財テクで資産を増やしている男を頑張って演じてます。

カート・ラッセルは・・・いつものカート・ラッセルです。

 

お約束通り、最初はお互いにライバルということもあって、いがみ合ってばかり。

そんな二人が犯罪組織にはめられて、一緒に刑務所に入れられるんです。

そこは彼らが捕まえた犯人がいっぱいいる重犯罪者専用刑務所。

当然、彼らは二人に嫌がらせから始まり、遂に集団で囲んでボコそうとします。

 

ここからスタローンが豹変していきます。

もうインテリなんて言ってらんねぇ!みたいに、筋肉を見せつけながら、凶悪犯たちをノシてくわけですよ。

勿論、カート・ラッセルもノシてくわけです。

 

そんな二人は何とか体力にモノを言わせて、脱走。

既にそこにインテリ・スタローンの面影はありません。

気がつけば結局、二人とも腕力で相手をぶっ飛ばすキャラになってます(笑)

 

そして、二人の間に友情が芽生えてくるんです。

 

なんだ、お前も一緒のキャラか、みたいな?

 

しかし、話はこの辺りから一気にトーンダウンしてきます。

 

何故か?

 

それは二人がキャラ被りになっちゃったからです。

二人ともタフガイだからダメとうワケではありません。

タフガイならタフガイなりにキャラ分けをした方が良かったです。

例えば一人は射撃のプロ、もう一人はマーシャル系だけど射撃がど下手、みたいなのが良かったかも。

 

スタローンがインテリアキャラを演じてる間は、それなりにカート・ラッセルとの差別化が出来ていたと思います。

しかしそのインテリキャラが物語の中で生かせてなかったのが痛かった。

そして刑務所に入った頃から、そのインテリキャラも捨てられ、二人ともタフガイ系キャラになったことで、差別化が出来なくなり、バディ物として面白さが半減しました。

 

この映画、こういった脚本の弱さが目に付くんですよ。

 

脱獄してから、指名手配されてるのに、変装もせずにクラブをウロウロしたりと、おいおい、というシーンが目立つようになり、挙句の果てに、途中から007みたいな秘密兵器が出てきて、クライマックスにはスーバー装甲車で乗り込み、敵の基地をガンガン破壊するという、刑事ドラマから超脱線した展開に。

 

スーバー装甲車は、明らかに警察というレペルを逸脱したガトリング砲を外付けした異様なデザイン。

刑事ドラマではありません。

完全にSFの世界です。

 

タローンとカート・ラッセルの組み合わせ自体は、実は思ったより良かったんじゃないでしょうか。二人のやり取りは、ユーモアもあって、そこは合格点でした。

だからこそ、ちゃんと脚本が練られていれば「バッドボーイズ」(1995)みたいな面白いバディ物になれた気がします。

 

それだけに凄く残念でした。

 

言い換えればシルベスター・スタローンカート・ラッセルの個人的な魅力と演技だけで成り立ってる映画だったと言えます。

 

出来としては50点ぐらいですね。

 

監督は当時注目されてたロシア出身のアンドレイ・コンチャロフスキー

暴走機関車」(1985)で注目された監督です。

その割に締まらない映画だなぁ、と思ったら、途中でプリンス主演の「プリンス/パープル・レイン」(1984)のアルバート・マグノリに交代してるようです。

だからチグハグなんですかね?

(ちなみにアルバート・マグノリはノークレジットです)

 

DVDはお手軽に入手できます。