パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【パラダイム】相変わらず「何故、どうして?」は禁句のカーペンターのホラー映画

ジョン・カーペンター監督の映画って、見終わった後に「やっぱりB級(以下)だったかぁ」っていう思いをすることが本当に多いんですよ。

でもね、それでもついつい見ちゃうんです。

「男には負けると分かっていても、行かなきゃいけない戦いがある」

それと同じですね。

 

さて、今回のカーペンター映画はパラダイム(1987製作/1988日本公開)。

パラダイムって「ある時代に支配的な物の考え方・認識の枠組み」という意味。

まぁ、価値観みたいなものです。

ちなみに原題は「Prince of Darkness」=闇の王子、と全然違うんですけどね。

 

さて、この映画、観たことはありませんでした。

カーペンター好きとしては失格です。

そこで欠落したピースを埋めるべく、今回「パラダイム」に挑戦です!

 

(あらすじ)

都心にある古い教会の地下に、緑色の液体の詰まった筒状の物体が見つかる。その不気味な佇まいから神父は超常現象を専門とする科学者に相談する。科学者はいろいろな分野の専門家を集めてチームを結成し、謎の物体の調査を始める。しかし調査を始めると教会では不思議なことが起こり始めた、また教会の外には不気味な浮浪者群れが集まり始めていた・・・


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みなさん、予想していたと思いますが、相変わらずのジョン・カーペンターの映画でした。

本当にその一言に尽きます。

 

特に話の適当ぶりは、全く期待を裏切りません

彼の映画に、整合性やきちんとした説明を求めたら負けです。

今回も雰囲気はいいですが、話を自分なりに整理していくと「?」となります。

 

物理法則を無視したよいな現象を起こす、古ぼけた教会の地下にある謎の封印物。

それを調査するために、いろいろな分野から集められた科学者や学生たち。

研究中に不可思議な現象に遭う。古文書研究チームは、謎の封印物には悪魔(サタン)が封じ込められてると突き止めるが・・・

科学と超常現象がせめぎ合うプロットは魅力的です。

個人的にお気に入りは、みんなが見始める謎の夢(電波状態の悪いアナログTVのような画像。「リング」(1998)の呪いのビデオっぽいかな?)。

実は未来からの警告で、夢の全体が分かるラストは「おお」となります。

 

でもね、やっぱりドB級映画

 

ジャンルは違いますが、同じような映画の構造として「エンゼル・ハート」(1987)を思い出しました。

エンゼル・ハート」は、失踪人を探すしがない私立探偵が行く先々で殺人事件に巻き込まれていくという、ハードボイルドミステリーのように進行し、最後に大どんでん返しになってすべての謎が分かるんです。

僕が「エンゼル・ハート」が好きなのは、不気味な雰囲気作りをしている不可思議な状況や現象があるのに、それが何故なのかというのを終盤まで明確に説明せず、最後のどんでん返しできちんとまとめてるところ。

これには感心しました。

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

この映画も、前述の謎の夢や、科学者たちが議論を戦わせて、封印物の正体に近づいていくシーンなど、雰囲気作りはいいんです。

 

問題は、早々に「あの封印物は悪魔の復活だぞー」って観客に分からわせちゃうこと。

映画の中の主人公たちは、いつまでも謎の物体の正体に確認が持てません。

そして途中から、一人、また一人とゾンビ(悪魔の手下)になって仲間が襲ってくるようになると、ジャンクなB級映画っぽい安っぽさマシマシの展開に。

「悪魔復活」と観客には教えて、それが分からない登場人物がやられるのをドキドキして見守らせるのは、B級ホラー映画の定番演出ですが、凄く平凡で古臭いです。

 

だから見終わった後、なんだー、いつものB級映画かよー、という気分になります。

 

まぁ、ワケ分からず、ゾンビ(悪魔)が大量発生するだけの、ダリオ・アルジェントの「デモンズ」(1985)よりはマシですけど。

(それだけ「デモンズ」は振り切れてるとも言えますが)

 

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クライマックスまで、科学者や宗教学者が調査を進めて、悪魔の復活だったのか!って気づいた時は手遅れ・・・みたいな話だったらよかったんじゃないでしょうか。

 

パラダイム‗ポスター

出演はドナルド・プレザンスとヴィクター・ウォン、デニス・ダン。

共にカーペンター組で、主演のドナルド・プレザンスは「ハロウィン」シリーズや「ニューヨーク1997」(1981)に、ヴィクター・ウォンとデニス・ダンは「ゴースト・ハンターズ」(1986)に出演しています。

またロックミュージシャンのアリス・クーパーが教会に集まってくる悪魔崇拝主義者のリーダーとしてゲスト出演してます。

 

やっぱ、カーペンターだな!って笑い飛ばせる、カーペンター好き以外にニーズがあるとは思えない映画でした。

 

繰り返しますけど、この映画といい、同じカーペンター監督の「ゼイリブ」(1988)といい、ネタは悪くないんですけど、調理法が間違ってます。

ちなみに「遊星からの物体X」(1982)や「ニューヨーク1997」(1981)のように、ちゃんと普通に誰が見ても面白い映画が作れる人でもあります。

でも、カーペンター映画を観たぜ!っていう期待を裏切ってないのはこっちだったりしますがw

まぁ、彼の映画はこういう出来の映画が多すぎるんですけどね。

みうらじゅん先生風に言えば「人はそれをカーペンターと呼ぶ」ってことなんでしょうけど)

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

しかし原題「闇の王子」が、何故「パラダイム」っていう邦題になっちゃったんでしょうか?

教えて、東宝東和さん(笑)

あ、これも「何故、どうして?」って訊いちゃいけない案件だったかも???

 

(この映画の配給会社・東宝東和のことを知りたい人は「ファンタズム」(1979)のレビューを読んで下さい)

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

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