高校生の時に、期待せずに劇場で見たら、すごく面白かって映画があります。
特に当時の岐阜だと二本立てが基本だったので、おまけで見た方が良かった!ってこともしばしば。
そんな1本が「カリフォルニア・ドールズ」(1981製作/1982日本公開)
見たのは、今はライブハウスになっちゃったピカデリー劇場。
同時上映は「ロッキー3」(1982)。格闘技系の組み合わせは、なんかシックリきますね。(勿論、お目当ては「ロッキー3」)
本当に面白かったのか、それとも期待してなかった分、お得感的に面白かったのか、それを検証します!
(あらすじ)
女子プロレスタッグの「カリフォルニア・ドールズ」は、ちょっと胡散臭いマネージャーとドサ回りをしながら、有名になるチャンスを伺う日々を送っている。プロモーターに騙されたりもするが、アメリカにやってきた日本人レスラーと試合をしたりしながら日銭を稼いでいた。ある日、トレド市で、地元で人気の黒人女性二人組「トレド・タイガース」との試合が組まれる。この試合は地元ファンを喜ばせるために、彼女たちはわざと負ける予定だったが、相手のラフプレーに怒った二人は、本気を出し、試合に勝ってしまう。その後、「トレド・タイガース」とのリターンマッチが実現するが、今度は反対に惨敗してしまう・・・
監督は名手ロバート・アルドリッチでした。
当時は意識してなかったけど、今なら不出来なワケはないだろうって期待します。
この映画は彼の遺作です。
男臭い、骨っぽい映画が得意な監督なので、女性が主人公の、ちょっとユーモラスな映画が遺作というのは意外な気がします。
主演の一人、マネージャー役のピーター・フォークは、1968年からTVで放送が開所された「刑事コロンボ」シリーズの主演で爆発的な人気が出た俳優。
(小池朝雄さんの絶妙な吹き替えも忘れられません)
ただし和田誠さんの映画エッセイを読むと、オールドファンにとっては「刑事コロンボ」以前から芸達者のバイプレーヤーとして、一定の評価があったようです。
彼が演じるマネージャーは、口八丁手八丁で乗り切ることは上手でも、ついつい頭に血が上っちゃうタイプ。
お陰で3人はオンボロ車で町から町へのどさ回りから、なかなか抜け出せないんですね。
これをピーター・フォークが飄々と演じてます。
刑事コロンボの、一見うだつが上がらないように見えても、実は超キレモノっていうキヮラもいいですが、こういう役も似合ってます。
彼がマネージメントをする女の子二人組は、どちらも綺麗で、垢抜けていてスター性があります。
黒髪とブロンドという組み合わせもいいですね。
(パンフレットの表紙参照)
この二人の試合のシーンでは、スタントなしの、ガチでプロレスをやるんですよ。
それも大技のプロレス技がキレキレ。
かなり練習したんでしょうね。
美人の女優たちのプロレスシーンは迫力があって、見どころです。
ピーター・フォークは一見自己中で、彼女たちを利用しているようにも見えますが、最後はいつも彼女たちを少しでも有名にしようとしてる。だけど彼女たちも彼のいい加減さに時折愛想を尽かせながらも、何となく憎めない彼を信用してるし、離れないという人間ドラマがホームドラマっぽくて心地良いです。
物語はドサ回りをしながら、紆余曲折の末に大舞台の試合に挑む話。
彼女たちがマネージャーと喧嘩したり、励まし合ったり、マネージャーが行く先々で苦労しながら(口八丁手八丁で)試合を組んだり、彼女たちの知名度を上げようとあれこれ(姑息な)手を打つ、といったエピソードが連なってます。
全体の軸となる話として、ライバルの黒人女性タッグチームとの因縁対決が3回(うち一つがクライマックスの試合)をあり、これが映画に芯を通しているので、いろんなエピソードがあっても散漫なイメージになっていません。
ただプロレス映画だからと言って、「ロッキー」シリーズのように、歯を食いしばって勝利を目指す、というものではなく、「とぼけたマネージャーの力で、元々スター性と実力がある二人が栄冠を掴む」っていう話なのでスポ根感はありません。
(この辺りはアルドリッチ監督が刑務所での看守VS囚人のアメフト試合を描いた「ロンゲストヤード」(1974)に近いかも)
ラストの因縁の試合では、マネージャーが子供たちやエレクトーン奏者に手を回して、入場の時にオリジナルの彼女たちの応援歌を歌わせて観客を味方につけたり、レフェリーが仇敵のプロモーターに買収されていて、あからさまに不利な判定をされてたり、マネージャーが最後は観客を巻き込んでカウントダウンさせたり、と公正な試合っていうより、ショーです。
そして最後は、マネージャーが特訓しておけ、と言ってた必殺技(回転エビ固め)を二人同時に決めて勝つんです。
このライバルと因縁の試合を繰り返しながら、最後は観客を味方につけ、秘密の必殺技炸裂で勝負を付けるのは、少年ジャンプみたいな展開ですが、爽快感もクライマックス感もありました。
そんなワケでプロレスがテーマの映画ですが、格闘技映画ではなく、ロードムービーと言えるでしょう。
さて、結論ですが、がっかりはしませんでした。
全編飽きないし良い映画です。
ただ大絶賛というほどではなく、当時の「凄く面白い!」っていう印象から七掛けぐらいの満足度です。
当時を思い返すと、劇場に足を運んだ目的だった「ロッキー3」が期待ほどではなかったから、余計に面白く感じたのかもしれません。
それでも、佳作ということには変わりなく、もし見たい人がいれば、「一回見てみて」とお勧めします。
この辺りの仕上がりは、さすがロバート・アルドリッチ。
ちなみに序盤にある日本人レスラーとの対決ですが、日本人レスラーを演じてたのはミミ萩原さんでした。
試合後に日本人プロモーターが試合を持ちかけるシーンがあるんですけど、僕の中では日本で試合をするエピソードがあったような記憶があったんですが、記憶違いだったようです。
DVDはお手頃価格で手に入るようです。