「戦争プロフェッショナル」(1968)
この映画のことを知ってると人は少ないんじゃないかと思います。
僕でさえ子供の頃は、タイトルだけ知ってる程度。
まぁ、覚えやすいタイトルですもんね。
親の影響もあって、小学生の低学年からガチガチの映画ファンになり、家にあった映画の本(親が「スクリーン」を毎月買ってた)を読み朝ってた時期なのに、です。
でも全く興味なかったんですよ。
だって「スクリーン」が取り上げる過去の作品は、名作や歴史的作品、人気投票に名を連ねるスターが出演しているとか、監督が名匠のものばかり。
つまり、過去のB級映画なんて取り上げられることはありませんでした。
まぁ、言い換えればこの映画は、出演者にスターがいなくて、いつか忘れ去られるようなB級娯楽作の一本ってことです。
でも今は好きな映画の一つです。
今回レビューをしつつ、何故、好きになったかを書きます!
(あらすじ)
ベテランの傭兵である主人公と相棒は、大統領に呼ばれコンゴにやってくる。依頼された任務は山奥にあるダイヤモンド鉱山から、ダイヤモンドと入植している住人を連れてくることだった。主人公は現地で旧友である飲んだくれの医者や、ナチス上がりの将校、現地兵を集めて救出部隊を編制し、列車で現地へと赴く。目的地は反政府ゲリラが迫っている危険地帯だった・・・
この映画を気にかけるようになったのは、高校生の時。
その頃の僕はお小遣いを映画関係に全投入してました。
映画を観る、映画の本を買う、そしてサントラを集める、です。
特にサントラ集めにはハマって、東京に住む兄のところに遊びにいくと、必ず渋谷にあったサントラ専門店「SUMIYA]で何枚も買っていました。
(ちなみに今でもサントラはちよこちよこ買い集めてます。)
最初は見た映画の音楽が好きになったら、そのサントラを買ってたんです。
次は映画の本で取り上げられる名曲、佳曲を買い始めました。
そして最後は、観たことないけどこの映画のサントラは面白そう!って当てずっぽうで買うようになったんです。
そんな時、MGMレコード(映画製作会社MGMのレコード部門)が、「貴重なサントラを再発売!」と名を打って、マイナーな映画のサントラを何種類か再発したんです。
そのうちの1枚が「戦争プロフェッショナル」。
確か、岐阜市にあった電波堂っていうレコード屋の店頭でジャケットを見て、「かっこいい!」と思って、どんな音楽か全く知らずに買ったんです。
ね、かっこいいでしょ?
そんなジャケット買いしたサントラだったんですが、これがめっちゃカッコ良かったんです!
イントロから、いかにも、動乱のコンゴを思わせる不気味な旋律に、不似合いなキレイなメロディが乗ってくる、というミスマッチのカッコ良さ。
痺れました。
ちなみにその後、CDでも買い直しました。
今は廃盤になっているようなので、買っておいてよかったです。
ついつい、サントラの話を熱く語ってしまいました。
では、本編の話。
実際に映画を観たのは、サントラを買ってから10年以上経ってから。
レンタルビデオでした。
完全なB級娯楽作品。
大物スターも出ていなければ、有名な監督が撮ってるわけでもありません。
サントラのジャケットは大アクション映画に見えますが、ジャケットにあるようなジェット戦闘機は出てこないし、ヒロインのイベット・ミミューが列車の上で銃を撃つなんて勇ましいことはしません。
クールに構える主人公と、祖国(コンゴ)を良くしたい相棒。
すぐに頭に血が昇る元ナチスの将校、酔いどれの医者。
「宇宙戦艦ヤマト」(1974-1975)の佐渡先生、「酔いどれ天使」(1948)の主人公と、情に厚い酔いどれ医者は定番です。
イベット・ミミュー扮するヒロインは見せ場少なく、ほとんど添え物。
どちらかと言うと渋めの作品。そして男のドラマです。
60~70年代によく作られた、戦争映画と男のドラマが好きな人だけ楽しんでくれればいいよ、という割り切りが見える、万人に媚びない佳作です。
海外版ポスターはまさにその雰囲気をよく伝えてます。
ゲリラが迫りくる地域に、武装した列車でダイヤモンドを取りに行く作戦。
前半は飛行機に襲われつつも、お互いの身の上話をしたりと、人間ドラマ仕立てになってます。
現地に倒置すると、金庫が時限式であと2時間開かない。その間に作戦を察知したゲリラの大部隊が迫ってくる。
銃撃をかわして、ダイヤを回収して列車を出発させるものの、敵の攻撃で列車は大破。切り離された客車にいた民間人は皆殺し、ダイヤも奪われます。
この畳み掛ける悲惨な展開は、かなりスリリングです。
何とかダイヤとトラックを奪取し、帰路につくものの、元ナチス将校の裏切りに逢い、相棒は死亡。
怒りに任せて元ナチス将校を殺すも、どんな理由であれ仲間の兵隊を裁判もかけずに殺すのは軍旗違反。
彼は軍事裁判に出頭する決心をし、指揮を部下に任せるところで終わります。
全く救われません。
「ワイルドギース」(1978)も、最後は味方の裏切りに逢い、決死の逃避行になるなど、傭兵モノって、悲哀が付き物。
そういう意味でも、この映画はまさに傭兵モノのスタンダードと言えます。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
緩さはないですし、全編男臭さと、戦争(内戦)のきなくささ、非情さはちゃんと描けています。
そこにやや哀愁というか、戦争という極限下の理不尽さがまぶされてます。
(妊婦の出産を助けるために最前線に残った医者が、妊婦と一緒にゲリラに殺されるとか)
また登場キャラが変に深堀りされてないのもいいですね。
主人公なんて過去や背景の説明はほぼゼロ。内面の苦悩も最後の方までほとんど出てきません。
一番内面が深堀されているのは、祖国のために傭兵をやってる相棒ぐらいでしょうか?
そんなドライな割り切りキャラ作りも60-70年代の娯楽映画っぽいです。
最近の「内面掘り下げてるといい映画」という風潮に慣れてると新鮮なぐらいです。
(最近は陳腐なトラウマや、安っぽかったり、嘘くさい過去を背負ってるキャラの多いこと・・・)
この映画が作られた頃は、予算が限られてるから、ネームパリューある出演者も、派手なアクションシーンも、考えさせられるような話もないけど、お金がないなりに面白い映画を作ろとする製作者がたくさんいたってことでしょう。
昭和の時代ってこういう硬派な小作品を見ることが出来た時代だったんだなぁ、と思わせる作品でした。
ちなみにこの映画の監督はジャック:カーディフ。
有名ではない、と書きました。
実際に監督として10数本作ってますが、目立つのはこの映画と超B級カルトホラー「悪魔の植物人間」(1973)ぐらいです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
が、実は撮影監督としては、かなりの名匠で1940~1970年代に何本もの名作で撮影監督を務め、アカデミー撮影賞も受賞しています。
(なのに「悪魔の植物人間」を監督したのは何故?)
ちなみ晩年は「ナイル殺人事件」(1978)や「ランボー/怒りの脱出」(1985)で撮影を担当しているので、僕らの世代にもちょっと馴染みがあります。
ともかく、こういう今はもう作られないような佳作を見つけるのはも、昭和映画探検の旅の醍醐味です。
この映画に出合わせてくれた電波堂も今はもうありません・・・・そして僕にとって天国だったサントラ専門店「SUMIYA」ももうありません。
「SUMIYA」も通販カタログを見るの、本当に楽しみだったなぁ・・・
残念ながら新品DVDは入手困難です・・・(涙)
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