パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【バタリアン】マニアのための異色ゾンビコメディ?!?

「エイリアン」(1979)の脚本家、奇才ダン・オバノンが監督・脚本を担当したゾンビ映画

それがバタリアン(1985製作/1986日本公開)

 

ポスターを見た時から、ジョージ・A・ロメロのゾンビシリーズとはちょっと違うなぁ、というのは薄々感じてました。

 

で、初公開時に劇場に足を運んだんですよ。

見終わった後、「面白かった。だけど、これは何か違う」というのが正直な感想。

それから数十年、やっももう一度見る機会が訪れました。

さて、何か違うゾンビ映画バタリアン」とはどんなものだったんでしょうか?

 

(あらすじ)

医療会社の倉庫で働くことになった主人公はベテラン職員から、秘密裡に隠ぺいされたゾンビ事件の遺体を詰めたドラム缶が、軍の手違いでこの会社に持ち込まれ、今も倉庫の地下室にあるという話を聞く。ベテラン社員は主人公にそのドラム缶を見せる。中にいるゾンビを見て、「このドラム缶は大丈夫か?」と不安がる主人公に、「軍が作ったドラム缶だぞ。頑丈だ」といってベテラン社員がドラム缶を叩くと、ドラム缶の継ぎ目が裂け、中からガスが噴き出す。主人公とベテラン写真が上の階に戻ると、はく製や解剖用の遺体が動き始めていた・・・


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この映画、ずっと見直したかったんです。

でもどのサブスクにもないし、レンタルDVD屋にもない。新品のDVDは入手困難、と実は難視聴映画でした。

著作権か商品化権でつまずいてたんでしょう。

大人の事情ってやつです。

(ちなみに続編の「バタリアン2」(1987)はサブスもDVDもありました)

 

先日、Amazonを眺めてると、なんとこの映画のBlu-rayが発売、と出ていたんです。

ということは、商品化の問題がクリアされた可能性が高い!と思って、サブスクを見たら、やっぱりありました!

そこで早速視聴した、といあワケです。

 

ゾンビ映画と言えば、ジョージ・A・ロメロよ「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)(ゾンビシリーズの一作目ですね)以来、強烈なぐらい残酷な描写で怖がらせる、っていうのに力点が置かれるようになりました。

例えば亜流の「サンゲリア」(1979)や「デモンズ」(1985)( これはゾンビっぽい映画ですけど)なんて、その最たるものです。

どちらもエグい残酷シーンに気持ちを入れすぎて、恐ろしいぐらい話が雑ですが。

 

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さて、この映画も残酷シーンはあります。

でもね、それが怖さに繋がってるかというと、ちょっと違う。

何故か?

 

それはこの映画を覆うブラックユーモア的なお笑いの雰囲気。

 

そもそも出だしで、ベテランの職員が若手に

 

「おまえ、知ってるか?あの<ナイト・オブ・ザ・リビングデッド>って映画、あれは本当にあった話なんだぞ」

 

と話すところから、既にゾンビ映画をちゃかしてます。

そもそも原題が「Return of the living dad」(リビングデッドの帰還)

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の非公式続編のようです。

 

ちなみに日本語タイトルが、原題と全く関係のない「バタリアン(大群)ってすごくないですか?

それも、いかにも原題がバタリアンであるかのように、ご丁寧に<Battalion>って英語でも書いてあるんです。

そして宣伝文句は「世界初のバイオショック

え?それって何?今でもよく分かりません。

さすが昭和パワー。

 

ちなみにこの映画を配給したのは、このブログで何度も取り上げた誇大広告の鬼(っていうか虚偽広告?)の東宝東和。

もう伝説です。

 

東宝東和のネタが知りたい人は、このブログの「サスペリア」(1977)、「ファンタズム」(1979)、「キャノンボール」(1981)、「メガフォース」(1982)を読んで下さい。

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

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東宝東和を庇うわけじゃないですが、同時期にちゃんとたくさんの真面目な映画を、真面目に宣伝してました。

 

軍が閉じ込めたゾンビのドラム缶から漏れたガスが倉庫に充満すると、保管してあった標本の死体が動き出すのは、いいでしょう。

でもね、体の中(内臓)が見えるよう縦割りされた、体半分の犬の剥製が床でバタバタ動き出すのは、いかがなものかと。

これ、かなりシュールな映像です。

 

更にガスを吸った2人は、徐々に調子が悪くなり、仲間が脈を計ると、脈拍がない。

すると2人は「え、俺って死んでるの?マジで死んでるの?」って大騒ぎ。

このシーンは非常に印象的でした。

バタリアン‗パンフレット

全体的にゾンビが襲ってくるシーンは。それなりに残酷ではあるものの、どことなくふざけてる感じがします。

でも緊迫感はあるので、そのバランスは絶妙です。

 

この映画のゾンビが人を襲う目的は、脳みそ。

ゾンビはみんな、脳みそ、脳みそ~って連呼します。

中には「脳みそ~」って言いながら、舌なめずりするゾンビも。

更にパンフレットの表紙に書かれてる上半身だけのゾンビは、「何で脳みそを食べるだ?」って聞かれると「苦痛だからだよ~」って答えてくれます。

 

もうロメロのゾンビではありません。

 

主人公2人も徐々に脳みぞが食べたくなりますが、ベテラン職員は完全にゾンビになるのが嫌で、自ら焼却炉に入っていきます。

若者の方は「脳みそ食べさせろ~」と恋人を追っかけます。

 

ゾンビを使ったシュールなシーンが多く、ゾンビ好きの固定観念を逆手に取った面白さがあります。

長年、行方不明のソンビを詰めたドラム缶を探している軍人が、ゾンビ発見の連絡に生き生きとするなんて、ゾンビ映画のリアルで冷酷な軍隊を皮肉るシーンもありました。

 

「まともそうに見えてまともじゃない」キャラが多い人間側の登場人物も上手く描けてる上に、それぞれに見せ場が作られていて、「出てきただけ」のような人物がいないのもナイス。

 

この辺りの目の付けどころとバランス感覚がダン・オバノンの才能なんでしょうね。

 

とにかく1時間半という短めの上映時間の中で、あの手、この手でテンポよく話を展開し、めいっぱい楽しませてくれる映画でした。

ただ最後まで「世界初のバイオショック」って何のことか分からず仕舞いでしたけど。

 

今回、「バタリアン」はゾンビ映画(ホラー映画好き)が好きの人向けた、真剣に作られたお遊び映画だってことに気づきました。

 

正当なゾンビ映画の一本だと勝手に思い込ん映画館に足を運んだ僕が間違い。

何かが違う、でも面白いという感想は、当時の僕としては正しかったようです。

(言い訳するワケじゃないですけど、宣伝ではゾンビコメディ?なんて全く触れてませんでした。くそー、東方東和

 

B級映画好きなら見て損のない映画じゃないでしょうか。

ゾンビ映画好きに向けた映画と言っても、「バイオハザード」ぐらいのイメージがあれば、十分に楽しめると思います。

 

最後にMTV全盛時代ということもあって、この映画でもタイトル曲として45 Graveというバンドの「Party Time」という、めっちゃ明るい曲が流れます。

まぁ、伝統的なゾンビ映画には不似合いな曲(こういうところもパロディ?)ですが、なかなか耳に残る曲でした。

Partytime

Partytime

  • 45 Grave
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

最初の方でも書きましたが、Blu-rayが発売されてます。

でもちょい高めです。