パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【デモンズ】スカスカのゾンビ映画(本当はゾンビ映画じゃないけど)

世の中には、見終わった後に「何でこんな映画見ちゃったんだろ?」という気持ちにさせる映画があります。

それが例えばグロかった、とか、コメディなのに笑えなかったとか、話が訳わならないとか、いろいろ理由はあります。

 

その中で最悪なのは・・・

 

これって、話があるんだっけ?

 

と思わせる映画。

スクリーンには、ただただ映像が流れてるだけ、みたいな。

実際には話らしきものがあるんでしょうけど、全く存在しないが如くスカスカってやつです。

 

そんな映画が今回レビューした「デモンズ」(1985製作/1986日本公開)。

 

当時、映画館を出るとき、映像を見たけど、あれは何だったのか?と思いました。

さて、その感想は正しかったのでしょうか?

 

(あらすじ)

新たな映画館の開館を知らせる広告を受け取った主人公は、友達とその映画館に出かける。上映された映画は古代の呪いが甦るホラー映画だった。しかし、上映中に、ロビーにある謎の仮面で怪我をした女性の傷口が広がり、悪魔になってしまう。そして彼女は観客を遅い始めるのだった・・・


www.youtube.com

えっと、まぁ、正直に言いますと、やっぱり映画としての体をなしていない、イメージビデオみたいな映画でした。

 

こういう映画を見ると、やっぱり話って大切だと痛感します。

 

この映画を見たのは学生時代。

見たのは綱島映画館という、今は廃館となった横浜の場末の映画館でした。

フェノミナ」(1985)の時に書きましたが、この時はホラー三本立てで、同時上映は「フェノミナ」と「ティーンウルフ」(1985)。

フェノミナ」も「ティーンウルフ」もたいがいな映画でしたが、この映画は、それを大きく上回るダメさでした。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

とにかく内容がスカスカ。

捻りがないとか、安直とか、そういうレベルではなく、本当に話がないようなもんです

有名なコズミック・ホラー作家H・P・ラヴクラフトの本を原作にしてるそうですが、微塵も感じられません。

反対にラヴクラフトファンが見たら怒るんじゃないかって心配になります。

 

不気味な映画館で、ホラー映画を見てた観客の一人がゾンビみたいな悪魔になって、他の観客を襲いまくり、殺された観客も次々と悪魔化していく。

本当にそれだけ。

 

何で悪魔になったのかは、多分、上映してたホラー映画に関係があるみたいです。

でも一切説明はありません。

悪魔が現れる前には、観客それぞれにキャラクター付けされてましたが、それも何の意味もなしません。

みんな、平等に襲われて、死んで、悪魔になります。

デモンズ_パンフレット表紙

パンフレットの表紙は、ちょっと知的なパズル=謎、みたいな雰囲気ですが、知性はゼロです。

実は見る前は、ちょっとは期待してたんです。

製作総指揮は「サスペリア」(1977)のダリオ・アルジェント

僕のご贔屓です。

音楽も「サスペリアpart 2」(1975)以来、ダリオ・アルジェント映画の音楽を担当するプログレッシブパンド、ゴブリンのリーダー、クラウディオ・シモネッティ。

(この時、ゴブリンは解散してたらしい)

 

確かにアルジェントらしさはありました。

あの彼独特の原色の強いライティング。

ここでも赤や青の不自然なライティングが効果的に使われてました。

でも、それだけ。

 

アルジェントさん、ちゃんと脚本読んだの???

って思ったんですが、よく考えたら、アルジェント自身の映画が、しょっちゅう話が破綻したり、後半適当になったり、唐突且つ強引に話を終わらせたりするのが当たり前なので、この映画の脚本も「ま、いいっか」ぐらいに思ってた疑惑があります。

 

そもそも彼が関わった映画に話を期待するのが間違いでした。

ここは反省点です。

 

さて映画のタイトルでもある悪魔ですが、ゾンビの親戚にしか見えません。

ただゾンビよりは攻撃的かな。

被害者の1人が「こいつらは悪魔だ!」って言うんだけど、根拠ゼロ

勿論、見ている僕も「悪魔って言われても、説明ないしなー」と納得できません。

 

ジョージ・A・ロメロが生み出したゾンビのような、意味不明の不気味さや、そこから生まれるゾっとするような気持ち悪さや怖さは皆無。

ただただ「襲ってくるから怖い」というだけです。

 

悪魔が登場したあとはひたすら、悪魔に襲われる→誰かが犠牲→そいつが悪魔になる→そいつも襲いに来る、の無限ループ。

 

脱出出来ない劇場という舞台設定は悪くないと思います。

閉じ込められた観客が「この映画館自体が悪魔なんだ!」と言うんですが、だからと言って、劇場が勝手に悪魔っぽいことをしてくるシーンは皆無。

勝手にドアが開いて、外にいたヤンキー連中を中に誘い込んで、入れ替わりに悪魔を一匹街に放ったぐらい。

映画館が悪魔だ!って言うなら、大林監督の「HOUSE」(1977)みたいに、家のあらゆるものが登場人物を襲ってきたら良かったのに。

これじゃ、「予算がないから、舞台を狭い映画館にしました」という風にしか見えません。

 

ちなみに唐突に登場したヤンキー連中は、物語にアクセントを加えるのかと思ったら、単に犠牲者が増えただけでした。

 

ラストは主人公のボーイフレンドが、劇場内でバイクに乗って、日本刀を振り回す大団円。

唐突にヘリコプターが天井突き破って落ちてきたり、と整合性も納得感も何もない展開。

見ているこっちも「もうどうでもいいや」っていう気持ちになりました。

 

壮大な世界観を持つラヴクラフトが原作なら、ダークで、荘厳な雰囲気を出して欲しかったのです。

でも、この映画はカジュアル・ゾンビというか、とってもお手軽な感じのゾンビのプロモーションビデオ。

ご都合主義、唐突、説明なし、で、思いついたようなショッキングシーンを繋いだだけですから。

 

ちなみに見どころもあって、それは当時流行りのスプラッターばりの、人体破壊シーン。

とにかくグチャグチャな描写がいっぱい出てくるので、その手のマニアには一定の評価をされているようです。(特殊メイクはまぁまぁ。人体破壊特殊メイクの大御所トム・サヴィーニがやってるんじゃないかと思いましたが、違ってたようです)

 

最後に音楽。

クラウディオ・シモネッティのゴブリンっぽいBGMを期待したんですが、劇中で流れるのは、当時の流行しいたメタル系の曲ばかり。

個人的にはACCEPTのFAST AS SHARKが聴けたのは嬉しいですが、せっかくダリオ・アルジェントが製作してるなら、「サスペリア」のようにゴブリン的な音楽を全面に出して欲しかったです。

Fast as a Shark

Fast as a Shark

  • アクセプト
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

当時はサントラ=売れそうな流行バンドのコンピレーション,っていうのが、アメリカ市場のお約束だったので、それにのっかったのかもしれません。

まぁ、クラウディオ・シモネッティの作曲したテーマ曲は、ダンサンブルで、彼らの過去の曲に比べて完成度が低いっていうのも事実なんですけど。

(イントロがちょっと「特捜刑事マイアミ・バイス」(1984-89)っぽい)

Demon (Simonetti Horror Project Version 1990)

Demon (Simonetti Horror Project Version 1990)

  • provided courtesy of iTunes

 

ダメな映画って言うわりには、いっぱい書いてしまいました。

反省。

 

今は高画質Blu-rayか、続編の「デモンズ2」(1986)とのパックセットしかありません。(それもそこそこ高価)

デモンズ Ultra HD Blu-ray+Blu-ray [Blu-ray]