パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【機動警察パトレイバー The Movie】緊迫感とノホホンというバランスの優れたアニメ

先日「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)をレビューしたので、同じ押井守監督の機動警察パトレイバー The Movie」(1989)を見直しました。

 

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機動警察パトレイバーも、マンガ、テレビシリーズ、OVAのどれも追いかけてなくて、劇場版3本を見たことがあるだけ。

この映画は、公開から数年後になんとなくレンタルビデオで見たんです。

が、とにかく面白くて、すぐにレーザーディスク(死語)を買ってしまいました。

当時を思い出すと「パトレイバーがあんまり出てこないけど、ドラマとして見応えあるなぁ」という印象。

さて、その印象は正しかったのでしょうか?

 

(あらすじ)

自衛隊無人レイバーが暴走事故を起こす。またその頃、都内でもレイバーの暴走事故が頻発する。特車二課のメンバーは、原因が最近書き換えの始まった最新のレイバー用OSだと睨む。しかし、そのOSを一人で開発した男は事件の直前に自殺していた。彼は自分に関するデータだけは消去していたが、何故か住んでいた場所の記録だけは残していた。それはどこも取り壊される昭和の寂れた街の中だった。片や主人公はOSが異常動作を起こす引き金となる条件は何かを探っていた・・・


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当時の記憶よりパトレイバーは活躍します。勿論、クライマックスでも活躍します。

それでも当時の印象は間違ってなかったと確信しました。

 

だって印象に残るのはドラマの部分だから。

 

話はかなり練られたミステリー/サスペンス物。

犯人を追い、何がレイバーを暴走させているか調べていく過程は、かなり緊迫感があっていいですね。

そして主人公たちをあざ笑う犯人。

既に冒頭で死んでいることが分かっているんですが、彼の(意図的に)残した軌跡を追い、どうやってレイバーを暴走させているかを突き止め、それを阻止しようとします。

だがその追跡自体、彼の組まれたシナリオのように見え、結局彼の手のひらの上だったのかも。

 

最後はレイバーの大暴走は阻止されましたが、そこまでも彼は計算していたように思えます。

そういう意味では大暴走を食い止められたものの、ハッピーエンドではない、ちょっと複雑な思いを残して映画は終わります。

 

劇中で、最後まで犯人の真の目的や、どんな人間だったかが一切語られないのも不気味でいいですね。

同じく犯人のキャラも動機も分からずに終わった「ジェット・ローラー・コースター」(1977)を思い出しました。

 

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終盤の特車2課による、建物破壊は盛り上がりましたが、やはり印象深いのは終盤までの謎解き。

特車2課の凸凹あるメンバーが、その凸凹を利用して、お互い助け合って謎を解き、真相に迫る展開は、テンポ良く、ダレがなく、適度に主要キャラの定番の笑いを混ぜていて秀逸でした。

各キャラの個性も良く生かせてたと思います。

 

ギャグとシリアスをブレンドする構図的は「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」に似てますが、シリアス度は段違い。

まぁ、事件のレベルが文化祭前夜のタイムリープと、首都圏を巻き込むレイバー(ロボット)の暴走じゃ、全然違うからなんですけど。

また笑わせるといっても、主人公たちが警察官であり、レイバー暴走を阻止しようという真面目な分だけ「うる星やつら2」ほどのオフザケ度はありません。

 

機動警察パトレイバー_The_Movie_DVDジャケット

軽やかな娯楽アニメとしては、ある種の到達点にあるんじゃないでしょうか。

多分、これ以上、話をシリアスにふると、もはや別の肌触りの映画になるギリギリのところだったと思います。

 

今回、「機動警察パトレイバー2 The Movie 」(1993)も見たのですが、そちらはそのギリギリの一線を越えた出来でした。

もはやギャク要素はほとんどなく、自衛隊のクーデターというシリアスなドラマが、重く、暗く展開されていく作風は同じパトレイバーものとは思えない、異なる肌触りでした。

勿論、こちらの完成度も異様に高かったです。

前述のケルベロスシリーズでも取り上げられているクーデターがテーマであることも、押井色が出ていたと思います。

このブログでは、1989年(昭和64年-平成元年)までに制作、又は公開された映画を取り上げることをテーマにしているので、詳しくレビュー出来ないのが残念ですが、僕の大好きな一本です。

(個人的にはこっちの方が好き)

 

聖書の引用、含みのあるセリフ回し、猥雑な街並み、うらぶれた裏路地、冷徹な事実を語る人物の登場など、後の押井監督作品の色がはっきりと出ています。

誰のコメントだか忘れちゃいましたが庵野秀明さんが描く水はきれいだが、押井守さんの描く水は汚れている」と評されてましたが、その通り。

押井監督が描く水はいつもゴミや動物の死体が浮いてそうな水です。

そういうリアリティが好きなんでしょうね。彼のライフワークであるケルベロスシリーズでも、ゴミ捨て場や下水道が出てきます。

 

明らかにこの映画をスタート地点として、「機動警察パトレイバー2 The Movie 」を経て、彼の代表作「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995)へと繋がっています。

 

今回はそんな押井ワールドの出発点を感じられる「機動警察パトレイバー The Move」

(+「機動警察パトレイバー2 The Move」)でした。

ちなみに「機動警察パトレイバー2 The Move」の方が、「GHOST In THE SHELL / 攻殻機動隊」を強く感じることが出来ます。

 

新品DVDは廉価版でかなりお手頃な値段で入手出来ます。

あー、欲しくなってきた。

(ちなみに「機動警察パトレイバー2 The Movie」の新品は、現在Blu-rayのみのようです。ここは1+2のBlu-rayセットかなぁ)

 

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