超ベストセラーホラー作家、スティーブン・キング。
本の売り上げだけでなく、出す小説が全て映画化されてるんじゃないか?って思うほど彼の本が原作の映画はたくさんあります。
その中には処女作「キャリー」(1976)を始め、「シャイニング」(1980)、「ミザリー」(1990)、「スタンド・バイ・ミー」(1986)、「ショーシャンクの空に」(1994)、「ミスト」(2007)と名作もいっぱい。
しかし「地獄のデビル・トラック」(1986製作/1987日本公開)は唯一無二の作品。
何故ならスティーブン・キング自ら監督をした唯一の作品だからです!
(脚本もスティーブン・キング)
そんな超売れっ子ホラー作家が、直接手掛けた映画ということで、公開当時から気になってました。
でもね、タイトルが「地獄のデビルトラック」。
見る前から、後悔させられるんじゃないかって心配させるタイトルです。
(原題は「Maximum Overdrive」なので、彼のせいではありませんが)
結局、劇場公開時はスルーして、数年後にビデオで見ました。
まぁ、名は体を表す、でした・・・
さて、そんなデビルトラックに今回は再乗車してみようと思います。
(あらすじ)
彗星が地球に接近し、地球は彗星の尾に包まれた。それから各地で機械が誤動作を起こす事故が起こるようになる。
主人公が勤める寂れた街のレストランでも、ハンドミキサーやガソリンの給油機、自販機が勝手に動作し、怪我をする事故が続発。やがてその規模は大きくなり、明らかに人間を襲うことがはっきりとしてきた・・・
予告編はスティーブン・キング自ら、「俺が監督したんだぜ!」と案内役を務めるという気合の入れようです。
ノリとしては、「トレマーズ」(1990)が近いですかね?
同じ彼の原作なら「ミスト」が近いかな?
いずれにせよ完成度・娯楽度ともに全く「トレマーズ」のレベルにはありません。ましてや超名作「ミスト」には「比較するのが失礼なぐらい」足下にも及びません。
主演は当時、「ブラットパック」の一人として、飛ぶ鳥を落とす勢いだったエミリオ・エステベス。
父は「地獄の黙示録」(1979)に主演したマーティン・シーン、弟は「プラトーン」(1986)に主演したチャーリー・シーンです。
そして音楽はロック界の大御所、AC/DC。
凄いでしょ?
ちなみにブラット・パックは80年代の青春映画に出てた俳優たちで、他にロブ・ロウやデミ・ムーア、アオンドリュー・マッカーシー辺りが入っています。
80年代にどっぷり青春で、その手の映画を見まくった僕には忘れられない俳優たちです。
ブラット・パックの代表作は「セント・エルモス・ファイヤー」(1985)、「ブレックファースト・クラブ」(1985)、「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」(1986)等です。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
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じゃ、この映画はどうかっていうと、完全な低予算B級映画。
エミリオ・エステベスも、AC/DCもスティーブン・キングのファンだから、低額で参加してくれたんじゃないかって疑います。
謎の彗星の尾に地球が包まれた影響で(お約束ですね!)、機械が自意識を持ち、人間に反乱を起こすって話を聞くと、ロボットかスーバーコンピューターが反乱を起こすと思いますよね?
有名なところでは「2001年宇宙の旅」(1968)や隠れた名作(という記憶がある)「地球爆破作戦」(1970)とか。
でも、この映画は一味違います。
車やトラックはまだしも、テレビゲームや自動販売機、挙げ句はハンドミキサー!
最初はモーターやエンジンが入ってる機械が、勝手に動くもんだと思ってました。
でもテレビゲームがゲームをやってる人間の放電して感電させたり、終盤にはマシンガンが攻撃してくるんてすよ!
お前、モーター入ってないよね?!
なんで勝手に動けるの???
さすが、キング先生。
発想が違います。
(今回は脚本、監督もやってるので、映画が勝手に改変した!とは言えませんよね?)
結局、彗星の影響で機械生命体になって、何でもありってことでしょうか?
いや、それなら主人公たちが使うライフルやバズーカも機械生命体になってますよね?
途中でバカップルは普通に車を運転しながらやってくるし(笑)
こんな映画を作っておいて、「キューブリックの「シャインニング」、あれは原作の良さが分かってない、ダメな映画だ」って、どうなんでしょ?
話は人間VS機械の壮絶な戦い・・・かと思いきや、舞台は田舎のガソリンスタンド兼食堂。
主人公は前科者の料理人。他の人間も強突張りの経営者やバカップル等、人類代表としては、なかなか心細いメンツ。
この設定はホント、「トレマーズ」にそっくり。
「トレマーズ」が、その設定を逆手に取って、コメディ要素を入れた話作りにしてるのに対し、「地獄のデビルトラック」は、概ね真面目に作ってます。
そして、それが敗因。
このメンツでシリアスな展開は厳しいです。
日常風景に近い設定でシリアス的な盛り上がりをさせるなら、「ゾンビ」(1978)のように、一般市民では事態はどうにもならない、ただ巻きまれていくだけっていう終末感を出さないとダメ。
でも、この映画は「なんか、大変なことが起きてる。あいつらをぶっ壊して脱出しないと!」っていう、やや能天気なノリですが、「トレマーズ」ほど登場人物のキャラが際立ってるわけでも、やり取りが軽妙なわけでもありません。
さて、主人公の働くレストランでは最初はミキサー、テレビゲーム(80年代のゲーセンにあるような縦型のやつ)、自販機と襲ってくる機械がグレードアップしてきます。
そしてクライマックスはトラック軍団!(勿論、無人)
ボストラックは、なんとフロントグリルが悪魔!
これが、地獄のデビルトラックか!
いやー、デコレートしたトラックはありますが、ラスボスが悪魔の顔をしたトラックは、ちょっとやり過ぎ。
キング先生、そこまでB級愛を溢れさせなくても・・・
ラストはヨットで脱出して、「謎の巨大UFOがロシアの衛星に破壊された」「彗星は予定通り去っていた」という字幕が流れるんです。
「で、人間を攻撃してきた機械たちはどうなったのか?これで元に戻ったってこと?」という問いについては全く語られず、観ている方はモヤモヤしたまま終わりました。
というわけで、そういう映画です。
当然ですが、「地獄のデピルトラック」ですが悪魔は出てきませんでした。
更に地獄からじゃなくて、宇宙からだし。
とにかく、「超薄っぺらい、超B級映画を見た」それだけ。
スティーブン・キング先生だから、もっとゾっとさせる映画かと思いましたが、だだのカラっとしたスカスカの追っかけモノでした。
AC/DCは「Who Made Who」というオリジナルの主題歌とオリジナルのインスト曲を幾つか提供する他、彼らのヒット曲を提供してます。
サントラは「Who Made Who」(1986)のタイトルで発売され、ちょっとしたAC/DCのベストアルバムになっています。
ちなみに主題歌の「Who Made Who」はかっこいい曲で、ライブでも演奏されてました。
映画のエンディング(クレジットロール)で流れるのは、これまた名曲「You Shook Me All Night Long」。
カッコイイ曲で、僕も大好きなんですが、この映画なら「Highway to Hell」(邦題:地獄のハイウェイ)の方が似合ってたんじゃないんでしょうかね?
まぁ、僕じゃなくてもこの映画を勧める人はいないと思います。
このレビューを見て、この映画を見ることを諦める人がいたら、僕のブログがその人の貴重な時間が無駄になることを回避させた、ってことになりますね。
(キング先生ご本人も失敗だった認めているようです)
新品のDVD/Blu-rayは入手困難なようです。(ホっとしてたりして)
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