ちょっと殺伐とした映画が続いたので、趣向を変えて今回は青春映画。
「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」(1986)
1980年後半と言えば、世の中に若手スターがいっぱい登場して、彼らを主演に据えた青春映画が流行った時代です。
これはその中の忘れられない一本。
「セント・エルモス・ファイヤー」と並ぶ大好きな80年代青春映画です。
(あと「ヤングガン」も好きですが、青春映画のカテゴリーに入れていいか迷います)
(あらすじ)
ハイスクール卒業間近の高校。金持ちグループから何かと差別される貧しい家庭の主人公が、金持ちの御曹司からデートに誘われる。しかし彼女のことを思い続ける幼馴染の嫉妬や、金持ちグループからの嫌がらせ、離婚から立ち直れない父親と色々な問題が待っていた・・・
この映画の良さは一言で言うと「お手軽さ」。
でも内容が薄いという意味ではありません。
起承転結もちゃんとあり、キャラも描けていて、青春映画に必要な要素はちゃんと入っています。
それを97分という短めの時間で楽しませてくれる、凄い「お手軽さ」なんです。
主要な登場人物は・・・
普通の頑張る女の子 (バイト先がレコード屋っていうのが80年代っぽくていい!)
いつもふざけてばかりいるけど、彼女のことをずっと好きな幼馴染
誠実だけど、ちょっと世間知らずの金持ちの彼氏
嫌味な金持ちグループ
バイト先のアドバイスをくれる先輩
逃げた嫁さんへの想いを引きずる心優しき父親
ね、いかにも青春映画っていう登場人物達が揃ってるでしょ?
みんなが悩みや問題を抱えてるんだけど、それを「ほど良く」描くんです。
過不足なくササっと、って感じ?
例えば金持ちたちのイジメが出てくるんですけど、しつこい見せ方もしないし、見ている方が不快に感じるところまではやらない。
やり過ぎず、見せすぎず、「あとは分かりますよね~」って観客の想像に委ねてます。
だからそれぞれの登場人物にちゃんと個性が分かるようなコンパクトなエピソードが展開されるので、設定倒れに終わらず、話に深みが出てるんじゃないでしょうか。
そしてコンパクトなエピソードが次々と繋がっていくので、見ている方も飽きません。
また話の筋自体はかなり王道で、シンプル。
家が貧しくて、嫌がらせをされてた女の子が、突然、白馬の王子のような超金持ち同級生から好意を寄せられ、困難の末に恋を貫く、というおとぎ話。
正直、「ちょっと現実にはないかなー」って話なんです。
でも当時流行ったリアルで甘酸っぱい青春映画もいいけど、こういう夢のある青春映画もいいよね、と密かに思ってた人って多いんじゃないかと思います。
この映画はそんな人たちのツボにはまる映画なんです。
そして何よりも「青春映画を満たす材料が揃ってること」「コンパクトさがあること」「おとぎ話感があること」という条件をきちんと生かせたのは、キャスティング。
それがこの映画の最大の成功ポイントです。
主要キャストが全員適材適所。
青春映画の女王と言われた、普通の女の子を演じたらピカイチのモリー・リングウォルドや、世間知らずで、品のいいアンドリュー・マッカーシー、眠そうな眼の不良を演じる若き日のジェームス・スペイダーもいいですが、何よりもこの映画の肝は、主人公の幼馴染ダッキーを演じるジョン・クライヤー。
彼がこの映画をワンランク上に押し上げてるといってもいいです。ただ単になるお調子者の狂言回しにとどまりません。主人公を傷つけた金持ち(若き日のジェームス・スペイダー!)に殴り掛かるシーンや、最後に片思いが実るかもしれないというのに、主人公をアンドリュー・マッカーシーのところへ後押しするシーンは泣けます。
それがあるから、ラストのラストで彼がハッピーになるシーンは、主人公たちの恋が実るシーンよりも爽快です。
そしてこの映画を象徴するのが、サイケデリックファーズが歌う永遠の名曲「Pretty in Pink」
僕の中で、この曲は映画の主題歌ベスト3に入ります。
青臭い、と言われてしまえばそれまでかもしれませんが、ちょっとでも青春映画を見てもいいな、という思う人には是非見て貰いたい作品です。
今回はアマプラの有料レンタルで100円セールになっていたので、それで視聴しました。
AMAZON PRIME、Nexflix、U-Nextの定額サブスクにはありません。
新規のDVDは手にいるようです。ちょっと欲しいかも、です。