世の中には、劇場公開時にリアルタイムだったファンには記憶されてるものの、その後の世代には「それ何ですか?」的な扱いを受けてるものがあります。
今回、レビューする「ハイランダー 悪魔の戦士」(1986)はまさにそんな作品。
主演は、この頃旬だったクリストファー・ランバート。共演には、この頃再び人気を取り戻していたショーン・コネリー。
そして音楽はクィーン。
当時、この作品はメディアに比較的よく取り上げられてました。
なんかちょっとスタイリッシュで、かっこよさそうなSF映画。
だけど、何故かスルーしてたんですよね・・・きっと正統派SFが好きだった当時の僕からしたらスタイリッシュ過ぎて、気になるけど優先順序が低い、みたいな。
そんなことを言ってるうちに公開から30年以上経ってしまったので、遅まきながら見ることにしました!
(あらすじ)
中世のスコットランド。主人公は戦いの中で致命傷を負うが、奇跡的に助かる。彼は「不老不死の人間」だと分かるが、村からは悪魔として追放される。ひっそりと生きていた彼の元に、同じ「不老不死の人間」である男・ラミレスが現れる。この世界には何人か不死の人間がおり、最後の一人になった時、究極の力を手に入れられることを教える。そして彼に致命傷を負わせた男、クルガンも不老不死の人間であり、同じ不老不死の人間を全て倒して、その力を手に入れようとしていることも知る。究極の力を手に入れようとするクルガンに対抗できるよう、ラミレスは主人公を鍛える。しかしクルガンは彼らの元に迫っていた。ラミレスを失ったものの、主人公とクルガンの戦いは現代まで続いていた・・・
監督はMTV出身だそうです。
そのせいか、スタイリッシュな演出が目立ちます。
それはそれでかっこいいのですが、風格はゼロ。
特に現代のシーンでそれが目立って、やたら軽いかったりします。
過去の中世のシーンなどでは、意外と手堅い演出が出来ているし、それが映画の雰囲気にマッチしているので、やれば出来る人なのになぁ、と残念に思いました。
やっぱり不老不死と永遠に戦わなければならない宿命っていうテーマは重く、現代シーンも含めて正統派路線で作った方が良かったのかなぁ、と思いました。
まぁ、時代がMTV風を求めていたってんでしょうね。
戦いの中で偶然、自分が不老不死であることを知る主人公。
どうやら、他にも不老不死になった戦士が何人もいて、最後の一人になると強大な力が手に入るらしいんです。
本人はそんな力、どうでもいいみたいですが、その力を手に入れたいライバルがやたら戦いを挑んでくるため、現代になるまでずーっと戦い続けてるって設定。
現代の主人公はリッチな美術商。
不老不死の戦士たち、みんな生活に困ってないみたい。
だったら、このままでよくない?
そもそも不老不死の戦士たちがどうやって生計立ててるか謎。
まぁ、重箱の隅みたいな、小さいことなんでしょうけど、気になるんですよね。
同じ不老不死で、豪勢な生活を送ってたのは、「ハンガー」(1983)のカトリーヌ・ドヌーブも同じ。
まぁ、彼女の場合、吸血鬼だし、血を吸って相手を隷属させるなんて、お茶の子さいさい。
召し使いにしないやつは、血を吸ったら、さっさと殺して、自宅の焼却炉で燃やしちゃうぐらい非道なんで、悪どいことして金持ちになったんだろーなー、って想像出来ちゃうんです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
でも、この清廉潔白な主人公は、そういうこと出来そうもないんでので、謎です。
未来から来た人間なら、いくらでも儲ける手段はあるんですが、不老不死だけじゃ飯のタネになりません。
ちなみに主人公たちは剣で戦います。
これは首を跳ねないと死亡判定にならないからみたい。
それぞれの戦士が自分のキャラに合った剣を持ってるんです。
まぁ、お約束通り悪役はごっつい剣なんですよ。
で、主人公はというと、日本刀もどき。
カッコいいですね。世界で類いまれなる切れ味で勝負する剣。
「ブレイド」(1998)や「ゴーストドッグ」(1999)も日本刀でしたが、ちょっとダークなヒーローに日本刀は似合います。
(この映画の主人公はダークじゃないですが、演じるクリストファー・ランバートがいかつい系の顔なのでダークっぽいです)
不老不死はいいことばっかりではなく、恋人だけが老いていき、若いままの自分がそれを看とるところはエピソードとしてはグッド。
まぁ、昭和のSFマンガ少年からすると、「それって超人ロックじゃん!」って言いたくなるんですけどね。
(「超人ロック」は昭和の代表的なSF超能力者マンガ)
映画は中世から現代にいたる経緯に、現代のトルガンとの闘いを調査している市警鑑識官の女性が彼が「普通の人間ではないのではないか?」と気づいて近づいていく様が描かれます。
そして終盤にはこれぞ悪役というライバル・トルガンが、現代に合わせてパンクな格好になって、俺ってすげーだろ?ってイキるんですよ。
めっちゃ、(よくある)悪役感を出します。
これ、ポスターにあるやつです。
これはちょっと安易。
そういう一見、かっこよく見えるけど、ちょっと安易じゃない?みたいなのが目につきます。
不老不死で何百年も戦い続けてるっていう設定はかなりそそられるものがあります。
実際に過去から現代に至る戦いと苦悩の連続は、そこそこ見応えあります。
特にショーン・コネリーが演じる主人公の師匠が、さすがショーン・コネリーという演技(まぁ、いつものショーン・コネリーなんですが)で映画を引き締めます。
前述した嫁さんだけが老いて亡くなるシーンとか、過去の物語を織り混ぜて不老不死感を出してますが、雰囲気作り程度。もうちょっとその設定を生かして欲しかったです。
それは現代のシーンで不老不死を生かしたエピソードがないから。
きっと不老不死が物語のカギとなってないのが原因じゃないでしょうかね。
ただ死ななくて、ただ若いまま、って扱いになってます。
主人公が不老不死を憂いてるのか、戦いを避けたいのか、邪悪なライバルを倒したいのか?この辺りが正直釈然としません。
「俺って不老不死で可哀そうじゃね?戦うの嫌じゃね?」程度。
これは主演のクリストファー・ランバートの演技不足もあるんじゃないんでしょうか?
(雰囲気は合格点なんですけどねー)
この人、顔がいかついってうのもあって、陰鬱な雰囲気はうまいんですが、それ以外の喜怒哀楽の表現は上手じゃないんです。
だからポスターや宣伝用の写真では、それらしく見えるんですが、映画の中だと今一つパッとしません。
また監督の演出も、人としての機微に重きを置いておらず、スタイリッシュな画面と切り替えを重点に演出してたように見えます。
これがリドリー・スコット監督レベルの人が、正攻法で重厚に作ったら、かなりの傑作になったんじゃなんですかねー。
ほんと、不老不死をネタとしたのは悪くないんですよねー
クィーンが音楽を担当ということで、彼らもかなりの曲を書き下ろしています。
彼らのスタジオアルバム「カインド・オブ・マジック」(1986)がこの映画のサントラに相当するみたです。(全曲、この映画のために書かれたようですが、完全なサントラという扱いではないようです)
でも映画の中ではそんなに使われてなかったような???
多分、劇中で1回とエンディングのクレジットロールの時の2曲だけだった気がします。
まぁ、この映画を観たことはない人が、アルバム「カインド・オブ・マジック」を通して聴いても、この映画のイメージを感じることはゼロじゃないでしょうか。
ロックアルバムとしては、とっても良く出来ていて好きなんですけど。
メインのテーマ曲は名バラード「リヴ・フォーエバー」。この曲は映画の中で効果的に使われてました。(それも中世のシーン)
総じて雰囲気重視の映画。
素材を生かしきれてない残念さもあります。
だけど見れないかと問われれば、「見れる」映画です。
2時間を通して、途中で「もう見るのはやめよ」ってことにはならないと思います。
見た後の感想は「これぞ、80年代っていう映画だったね。まぁ、悪くないんじゃない?」といったところでしょうか。
そうい意味では評価に困る映画です。
世間的には評判は良かったみたいで、続編やテレビシリーズが作られてます。
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