落下した物体から出てきた人食いアメーバーが小さな町を襲う。
それが「ブロブ/宇宙からの不明物体」(1988製作/1989日本公開)
プロットとしては「トレマーズ」(1990)に似てますね。
どう考えてもB級映画の匂いしかしないプロット。
B級映画の典型的なキャラがお約束のように殺されたり、お約束のように活躍する予感しかしません。
そんな映画を見てみることにしました!
(あらすじ)
ある夜、空から落ちて来た物体の中からアメーバが出て来て、発見した老人の手に張り付く。老人は病院に運ばれるが、そこでアメーバは老人自体を食べ、更にヒロインの友人も食べて巨大化していく。主人公は日頃の素行の悪さから、「行方不明」になった人たちに関わってると疑われたが、証拠不十分で釈放。その足で向かった食堂で、彼とヒロインは再びアメーバに襲われる・・・
この映画、すんげー昔に一度見てるんですよ。
社会人になったばかりの頃、後輩が家に遊びに来たんです。
その頃はお金がなくて、社会人3人で共同生活していたんですが(今風ですよね)、そのうちの一人が大型テレビを持ってたんです。
彼が帰省するっていうんで、勝手にテレビ+ビデオを使っていいよ、と。
そこで後輩が「デカいテレビが使えるなら、ビデオ借りて映画を見ましょう!」となり、近所の小さなレンタルビデオ屋でお互いに一本づつ選んだんです。
その時、後輩が借りたのがこの映画。
この後輩、自称B級映画ファンなんですが、身内では「映画を見る目がない男」として有名でした。
なんたって彼の「ここが面白いんですよ~」っていうところの面白さが、毎回、誰も理解出来なかったからです。
そんな彼が選んだ「ブロブ/宇宙からの不明物体」が面白かったという印象がありません。
そもそもこの映画は20世紀の大スター、スティーブ・マックィーンが初主演した「マックイーンの絶対の危機」(1958)のリメイク。
要は元々、超B級映画が元ネタなワケです。
最近知ったんですが、この超B級映画の妙に明るい主題歌を作詞・作曲・演奏したのは、超大物作曲家バート・バカラックらしいです。
代表作は「雨にぬれても」(「明日に向かって撃て!」(1969))、「恋の面影」(「007/カジノロワイヤル」(1969))、「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」(「ミスター・アーサー」(1981))等。
映画関係以外でも有名な曲がたくさん作曲してます。
何でこんなB級SFなんてやったんでしょうね?ノークレジットなので、お友達仕事だったのかもしれません。
さて、リメイク版は寂れた小さな街角を映すシーンから始まります。
そして高校のアメリカンフットボールの試合。
仲良し二人組の選手がチアリーダーの女の子に声掛けようぜ、っていう青春の日常風景。
意外に画面や構図がB級映画っぽくない綺麗さです。
その後、宇宙から隕石っぽいもの(あとで隕石じゃないって分かるんですが)が落ちてくるシーンからB級っぽさが全開。
だってやたらゆっくり落ちてくる(まるで糸で操演してるみたい)し、爆発もマグネシウムで大きな花火レベル。まるで1950年代の特撮SF。
宇宙から落ちて来て、それはないですよね。
やっぱり典型的なB級映画か・・・と思ったんですが、ここからはちょっと違ってました。
落下物から人食いアメーバ(ブロブ)が出て来て、小さな街を徐々に襲うまでのはお約束なんですが・・・
まず冒頭のアメフトの試合に出てたナイスガイなイケメン選手がヒロインとデート中に、ブロブが現れます。
ここはピンチになるが、きっと間一髪逃れる展開!!
と思ったら、そのまま食べられてしまいます。
え?彼が主人公じゃないの???
普通、こういう映画はヒロインの彼氏で爽やかナイスガイが率先して街を救うんじゃないの??
そして同じく冒頭に出てきた彼のアメフト仲間も、お約束通り、車の中で女の子とイチャイチャしてる時に食われます。
オープニングでアメフトの試合に出てきた二人が早速映画から退場。
え???彼らを出したのは何のためだったんでしょうか??
悩んでいる間もなく、不良少年(こっちが本当の主人公)に理解を示していた保安官や、彼に優しくするウェイトレスなど、普通は主人公を助ける大人キャラと目される人物があっさり食べられます。
結局、あれよあれよという間に、主人公の二人以外は見せ場なくバタバタと退場。
B級映画の法則を期待していた観客を裏切っていきます。
これはひょっとし相当に雑な脚本なんじゃなかろうか。
ちょっと心配になってきます。
そして話も半ば過ぎたところで話は急展開。
唐突に軍隊っぽ防護服に身を包んだ人たちが登場するんですよ。
彼らは「君たちを助けにきたよー」っていいつつ、街を封鎖。
最初はとってもいい人たちに見えるんですが、どうやら違うみたい。
ここから話は「ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖」(1973)みたいな、ちょっとポリティカルスリラーへ。
ここでブロブの出自も分かり、政府の隠ぺい工作 VS 主人公たち VS ブロブの三つ巴。
主人公が軍の隔離施設から脱走するのにバイクで壊れた橋を飛び越えるんですが、これは冒頭に伏線があったんですねー。
すったもんだで、政府の悪い奴は死ぬんですが、ヒロインの弟もあっけなくブロブに食べられます(普通、弟は助かるだろ?)。
謎の防護服のリーダーは「目的のためなら多少の犠牲は仕方ないだろ」と主人公たちを切り捨てにかかかりますが、ここはお約束通り食べられます。
最後はヒロインがブロブを凍らせて、めでたしめでたし。
これもしっかり冒頭で伏線が貼られてました。
そしてオマケで、最後の最後にブロブ事件で重傷を負った牧師が狂信者になって登場し、ハッピーエンド?的に終わります。
B級映画なのに、結構脚本が考えられてました。
基本はB級娯楽作に求められるものを押さえつつ、誰にも信用されない不良少年がヒーローになっていったり、政府の陰謀を絡めたり、いくつかの伏線が用意されてたり、と安易にならないような工夫がありました。
で、脚本家を調べたら、なんとフランク・ダラボンだったんです。
そりゃ脚本が上手いはず。
フランク・ダラボンと言えば「ショーシャンクの空に」(1994)「グリーンマイル」(1999)の監督。
そして僕にとっては、あのトラウマ級のホラー映画「ミスト」(2007)の脚本&監督です。
重要に思える人々がいともあっさり死んでく不条理さは、ダラボンが意図的にやってったのかもしれません。
あと特撮が意外と良かった。
作りもの臭さが意外と少なくて、見せるアングルや構図も含め、こちらもかなり工夫されてました。
B級SF映画としては、かなり出来がいいんじゃないんでしょうか。
何で初めて見た時に、イマイチみたいな印象になっちゃったんでしょう?
きっと「映画に関して全く信用出来ない後輩が選んだ作品だから、面白くないに違いない」という先入観があったから、真剣に見ていなかったのかもしれません。
本当にごめんなさい。
あとオマケとしてエンドクレジットの時に流れる曲がスウェーデンのハードロックバンド・AlienのBrave New Loveって曲だったんです!
当時のハードロックファンの間では知る人ぞ知るバンドで、僕もこの曲が入ったファーストアルバムは聴きまくりました。
この映画で出会えるなんて嬉しすぎます。
Brave New Loveはめっちゃいい曲ですが、このアルバムはどの曲も粒揃いなので、メロディアス系ハードロックが好きな人には是非聞いてもらいたいです。
特にGo Easyという曲は超お勧めです。
(アルバムはスウェーデン発売版とUSリミックス版があります)
ちなみに後輩がこの映画を選んだ時、僕が借りたのは「OZ(オズ)」(1985)でした。
かの有名な「オズの魔法使い」(1939)の非公式続編です。(公式に続編とは言ってないけど、設定などを引き継いでる)。
こっちの記憶もほとんどありません。
この映画はDVDも入手困難で、サブスクでもない、レンタルにもない視聴困難作品みたいなので、確認するすべはありませんが・・・・
「ブロブ/宇宙からの不明物体」の方は、DVDで手軽に入手出来るようです。