「セント・エルモス・ファイアー」(1985製作/1986日本公開)。
思い出深い青春映画って何本もあります。
特に自分が10~20代だった80年代に集中しています。
「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」(1986)、「ヤングガン」(1988)、「メイド・イン・ヘブン」(1987)・・・
その中で、どんな時でも絶対に青春映画ベスト1なのはこの映画。
でも、そんなに好きなのに、ちょっと思い入れがあり過ぎてずっと見てませんでした。
それを今回、ついにレビューします!
(あらすじ)
大学を卒業した7人の仲良しグループは、それぞれの人生を歩んでいた。政治家を目指すもの、作家を目指すもの、その日暮らしのようにサックスを吹く生活をしているものなど・・・いくつかの出来事が起こり、彼らはもう大学生の延長ではいられないことを悟っていく・・・
大学を卒業した男女7人組の群像劇。
この映画が公開されたのは大学生の時でしたが、僕がこれを初めて見たのは、社会人になってからすぐの頃、主人公たちと同じように、学生気分が抜けずに社会人をズルズルやってた頃でした。
その頃はまだ大学や高校の友達と、昔みたいにコンサートや映画、演劇に明け暮れてました。
ただ、この映画と違って、この映画のように「仲の良い男女グループ」ではなく、男だけのグループでしたが・・・
そんな頃だったので、シンクロするところが多く、まさに刺さる映画だったんです。
この映画の良い点は、まずキャラの描き分けがちゃんと出来ていること。
見終わった後に「そう言えば、こんなやついたかな?」というのがありません。
冒頭の何気ない会話やエピソードの中で、7人全員の背景や今の立ち位置が会話などできっちり把握できる構成、そしてその後に続くそれぞれの物語も、他のメンバーと絡みながら進んでいくので、7人の群像劇でありながら、一人一人が見る側の頭に残る上手さがあります。
全員に恋愛エピソードが組まれてます。
そこは青春映画の鉄板フォーム。
群像劇だけあって、いろんな恋愛の形があり、それぞれが大学生の頃の恋愛をちょっとづつ引きずってる、でもそれも変わっていかなきゃいけない・・・っていうのが同じ世代だった僕にはグっときました。
ネタバレになっちゃいますけど、どの恋愛も学生の時のままでは上手かないんだ、と思わせて一番ダメ人間のロブ・ロウが最後の最後でホロッとさせてくれるのがいいです。
そしてそのホロっていう話から引き継ぐ形で「みんなが少し大人になり、友情が(多分)元に戻る」、というちょっとベタな終わり方なんですが、僕はこの後も友情が続くだろうという余韻が好きです。
エピソードの大半は小気味よく、ダラダラとした引き延ばしもありません。
ほどよくドキドキして。ほどよくホっとします。
この絶妙なショートストーリーの積み重ね方は、脚本も兼ねてる監督のジョエル・シュマッカーの力ですね。
登場人物は野心家から学生気分の抜けないダメ人間まで、結構バラエティに富んでいて、誰か一人には感情移入出来るんじゃないかと思います。
その中で僕が一番惹かれたのはアンドリュー・マッカーシー。
僕の青春映画と言えば彼ですね。
この映画しかり、「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」や「マネキン」(1987)もありました。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
彼が演じるのはフリーライターをしながら、作家を目指している男。
僕もこの映画を見た頃は、サラリーマンをしながらモノ書きを目指して、帰宅すると小説を書いては読み返して修正する日々でした。
更に彼が密かに愛しているのは、友達の恋人っていうのが、高校生の時に付き合ってた子に雰囲気が似てるんです。
だから自分と重ねまくってちゃいましたね。
アンドリュー・マッカーシーが、自分の記事が初めて新聞に載った時、やっと想いが通じた彼女の運転する車に駆け寄ってきて、窓ガラスに新聞をあてて「記事になったよ!」というシーンは忘れられません。
もう一人印象的だったのはエミリオ・エステベス。
普段はお調子者で、冗談なのかシリアスのか分からず、フラフラしている役。
彼の恋愛エピソードは、結果だけ見ればハッピーエンドじゃないんですが、何故かハッピーエンドに見えるんです。
これはユーモアとシリアスの中間を演じられる、彼の特徴が良く出てたんだと思います。
「ヤングガン」の飄々とした主人公(ビリー・ザ・キッド)も見事に演じてましたが、それとは別の意味で軽やかな演技でした。
今回見て、コカイン中毒のダメ人間を演じているのが若いころのデミ・ムーアだっていうのを再発見しました。
大出世作「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990)の前です。
こういう青春映画のイメージがないので、すっかり忘れてました。
ちなみに金髪だし、役柄も売れた後のデミ・ムーアのイメージと違うので、一見デミ・ムーアに見えません。
でも、ダメ人間をすごく自然に演じてます。
これは見つけものでした。
今回改めて見て、20代で見た時ほどグッと来ることはなかったてすけど、やっぱりいい映画だったし、僕は好きです。
主人公たちが学生の頃から集まるバーの名前がセント・エルモズ・バー。
これと、「セントエルモの火」(航海中に見える幻の炎)を掛けてるんですが、それをラストでわざわざ解説しちゃうのは蛇足。
ここは仄めかすぐらいが良かったかなぁ、と思います。
そう言えば、この映画では主人公たちは、至る所でよくタバコを吸うんです。
ホント、80年代ですねー
アンドリュー・マッカーシーは、この映画のためにタバコを吸うようになったらしいですが、めちゃめちゃサマになってます。
(そのままタバコ好きになって撮影の後も、数年も止められなかったみたいです)
「セント・エルモズ・ファイヤー」と言えば大ヒットした主題歌とラブテーマですね。
僕もこの二曲のためだけにサントラを買いました。
どっちも甲乙つけがたいんだけですが、やはり映画の中で効果的に使われてたのはラブテーマの方です。
ラブテーマには歌付きのもありますが、やはり映画の中で使われてたインストバージョンがお勧め。
今回もPRIME VIDEO の100円レンタルを利用しました。
さすがにヒットした映画だけあって、Blu-rayがお手軽に入手することが出来ます。