何度も書いてますけど、僕はデヴィッド・ボウイが好きなんですね。
だから、彼の映画もチェックしてます。
彼が出ている映画って、純粋な娯楽作よりも、ちょっと文芸作っぽさがあるものが多い気がします。「地球に落ちてきた男」(1976)とか「ジャスト・ア・ジゴロ」(1978)「戦場のメリークリスマス」(1983)や「ハンガー」(1983)。
そんな中で異彩を放ってるのが「ラビリンス/魔王の迷宮」(1986)。
気になりますが、見たいような、見たくないよいな。
意を決して、見てみることにしました!
(あらすじ)
継母に留守番をいいつけられたヒロインは、泣き止まない赤ん坊の異母弟を「ゴブリンの国に連れ去って!」と呪文を唱えると、本当にゴブリンの魔王が現れて、弟を連れ去ってしまう。慌てたヒロインに対し、魔王は時間内に迷宮を抜けて、城までたどり着けたら弟を返してやろうと、約束する・・・
うーん、なんて言ったらいいんでしょう。
テレビ番組のスペシャルみたいな映画でした。
デヴィッド・ボウイと、ヒロインのジェニファー・コネリー以外の登場キャラはほとんどマペット。操り人形ですね。
このマペットの造形で操演を担当しているのは監督のジム・ヘンソン。
人形界の第一人者ですね。
とにかく「え?これ本当に人形なの?」って驚くぐらい表情豊かで、いろいろな動きをします。
(実際は人形操演ではなく、アニマトロにクスなんですが)
これは一見の価値あり。
ちなみにフランク・オズ(こちらも人形操演界の巨匠。「スターウォーズ」シリーズのヨーダの操演で有名です)が、一部のキャラで操演をしているようです。
さて、はっきり言いましょう。
出来は60点です。
とにかくデヴィッド・ボウイが浮きまくり。
まず衣装が似合ってない。
コスプレレベルです。
(プロのコスプレーヤーではなく、学際とかで生徒がやるやつ)
更にキャラ作りがイマサン。
これは脚本のせいだと思うんですよ。
そもそも部下が小さいゴブリンしかいないので、威厳はありません。
それもいつも騒々しくて、頼りない感じばかり。
これじゃ、幼稚園児を集めて、いばってる小学生にしか見えません。
時々、ヒロインの前に登場しては、いろいろ難題をふっかたり、意地悪をするんですが、どれも本気で邪魔してるように見えません。
その挙句、ヒロインの「私のものになれ」・
あれ?そういう話だっけ?
元々はヒロインが、泣き止まなくて手を焼いてる異母弟をゴブリンに連れ去って」って呪文を唱えたから、魔王は「もうあの子供は私のものだ。取り返したかったら迷宮を抜けて私の城に来い」って話だったハズ。
もうめちゃくちゃ適当です。
いかにもバラエティ番組っぽい展開。
不思議なクリーチャーはたくさん出てきますが、肝心の魔王のキャラがこれじゃ、ファンタジー感はありません。
せっかくデヴィッド・ボウイに魔王を演じさせてるんだから、これじゃダメでしょう。
ポスターは上品なファンタジー感覚満載。
せめて、魔王の配下に凄く強い部下がいて、彼がそんな奴を配下に置くぐらい強いんだぞ、っていう演出が欲しかったですね。
まぁ、この映画は「マペット Meets デヴィッド・ボウイ。スペシャルゲスト:ジェニファー・コネリー」っていうデヴィッド・ボウイをゲストに招いたマペットのTVスペシャルってことでしょう。
彼の歌や「なりきり」演技を楽しむ番組。
対象は子供じゃいかと思いますが、まさかこれで大人も対象って言うなら、噴飯ものです。
デヴィッド・ボウイはこの映画のために5曲書き下ろしてます。
主題歌である「Underground」は冒頭から流れます。
正直、彼の曲の中ではイマイチな気がしますが・・・
要所で彼の曲が流れるので、まさに<デヴィッド・ボウイ・ショー>。
そもそも迷宮ってなってますが、どっちかとうとテーマパークによくある迷路に近いですね。
そのところどころに門番がいたり、変なクリーチャーがいたり、といった仕掛け。
正直、迷宮といってもオドロオドロシさは全くありません。
だから緊迫感は「決められた時間」だけかも。
繰り返しになりますが、マペット(クリーチャー)は魅力的なだけに残念。
ちなみにジム・ヘンソンと言えば、この映画の4年前に「ダーククリスタル」(1982)という超傑作人形映画を作ってます。
こちらはマペットのみが出演する映画ですが、完成度がめちゃくちゃ高いんです。
そんな映画を作った後に、これかー、って思います。
「セサミストリート」みたいに人とマペットの融合を狙ったんでしょうか。
この映画は完全に人を出演させたことが、仇になってます。
「ダーククリスタル」と比べれば一目瞭然。
そう言えば「ダーククリスタル」の前日談が、2020年にNETFLIXで配信されてます。
(日本でも視聴出来ます)
Blu-rayやDVDは手頃な値段で入手出来るようです。