映画を見ていて、何となく大筋は見えてるけど、ディティールがよく分からない、この登場人物のストーリー上の立ち位置が分からない、というパターンにはよく出会います。
しかし最初から最後まで見たのに、話がチンプンカンプンだった、って映画は、そんなにありません。
ショーン・コネリー主演の「シークレット・レンズ」(1982)は、まさにそんな映画です。
(あらすじ)
主人公はニューヨークの地方テレビ局のレポーター。中東を取材中に、女性ジャーナリストと知り合い、更に武器商人と出会う。女性ジャーナリストは実はCIAのスパイで、武器商人が持っていた原爆の情報をイスラエルに伝えようとするが、殺されてしまう。主人公が取材を進めるうちに、原子爆弾を巡ってCIA、現米大統領、ライバルの次期米大統領候補、某国の国王などの思惑が複雑に絡んでいることに気付く・・・
今回見る気になったのは、「高校生の時、全く理解出来なかったが、今見たら理解出来るんだろうか?」という素朴な疑問からです。
30年以上、サラリーマンをやってきたお陰か、今回は話を理解することができました。
だが、改めて思ったのは、
高校生の僕に理解しろ、というのは無理!
でした。
この映画は、当時の国際政治情勢を圧縮したブラックコメディ。
中東の米傀儡政権、中東テロリスト、イスラエル、CIA、米大統領(民主党っぽいです)、次期大統領候補(共和党っぽい)、中立を装う武器商人・・・
これらが、いろいろと駆け引きをして話が進んでいきます。
とにかく当時のネタになりそうな情報がてんこ盛り。
いや、詰め込み過ぎ。
今見ても、基礎知識がないと「何言ってるんだかよく分からない」状態。
当然、遊び惚けていて、世界情勢に疎い高校生に理解するのは到底無理です。
話は、裏で手を結んでいるとか、反対に裏では裏切ってるとか、そんな複雑な展開が足早に進みます。
時々、あらすじを読んでいるだけの気分になるほど、雑な展開もあり、辻褄合ってる?強引じゃね?という場面もしばしば。
はっきり言えば、観客置いてけぼりです。
やっぱり高校生で理解するのは無理。
更にブラックコメディという割に、笑えるようなシーンは皆無。
ショーン・コネリーが007っぽく、ユーモアとシリアスの間のような軽妙な演技をしているのが救い。
あと80年代を代表するの小悪党役者のヘンリー・シルバが、妙に大げさな演技でテロリストの親玉を演じてますが、これも笑えると言えば笑えるのかなぁ・・・
反対にハーディ・クリューガーの武器商人やキャサリン・ロスのCIAのスパイなんて、大真面目な演技で笑える要素ゼロです。
そもそも筋立て自体も「博士の異常な愛情」(1964)のような強烈な政治への皮肉はありません。
どこで観客をニヤリとさせようとしてるか、最後まで謎。
これだったらブラックコメディにせずに、シリアスな政治ドラマにした方が良かったんじゃないかと思います。
ちなみにショーン・コネリーのレポーターは狂言回しで、問題の解決には一切ノータッチ。
ただ狂言回しという役柄は悪くなかったと思います。
反対にショーン・コネリーじゃなかったら、暗くて、重くて、理解困難な映画になてった恐れがあります。
最後に彼は何故かカツラを取ってみせるんですが、それもユーモアなんでしょうか?
全く笑えないし、必要がないと思うんですけど。
これじゃ、ショーン・コネリーのフィルモグラフィから忘れ去られちゃいますよね。
このパンフレット、まるで007ですよね?
よく見たら手に持ってるのカメラ。
当然、劇中にショーンコネリーがビキニの美女が絡むシーンはないですし、背景にあるような戦車やヘリコプターがばんばん出てくるようなシーンはありません。
これぞ、昭和の宣伝!
このポスターを見てアクション娯楽作だって勘違いした高校生の僕は悪くないですよね??
ちなみにこの映画を見たのは岐阜のロイヤル劇場。
二本立てで、併映は「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」。
「殺人魚フライングキラー」のレビューで、「こんな二本立てをデートに選んで、本当にやっちまったと思いました。」書きましたが、今回「シークレットレンズ」も見直して、本当にその通りだ、と深く反省しました。
(デートなのに下調べが杜撰過ぎるって、当時の僕を叱ってやりたい)
改めて、この映画デートで呆れずに、次の映画デートにも付き合ってくれた彼女は立派な人でした。
ありがとう。(平身低頭)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
ちなみにあまりにマイナー過ぎるのか、AMAZON PRIME、Netflix、U-Nextのサブスクにもなく、近所のDVDレンタル屋さんにもありませんでした。
というワケで今回もTSUTAYA宅配レンタルの力を借りて視聴しました。
でも何故か新品のDVDは普通に入手出来るようです。