パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ミスタ-・アーサー】酔っ払いのおとぎ話???

主題歌ぎ大ヒットした、80年代を代表するコメディ映画「ミスター・アーサー」(1981)。

2011年にリメイクもされました。(日本未公開ですが)

 

当時、劇場で見たんですが、そこそこ面白かった印象があります。

主演は僕が好きなダドリー・ムーア。

共演はミュージカル映画界のサラブレッド、ライザ・ミネリ

 

先日「10(テン)」(1979)のダドリー・ムーアにガッカリしたんですが、今度は大丈夫でしょうか?

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

(あらすじ)

大金持ちのボンクラ息子アーサーは、酔っぱらってはどんちゃん騒ぎをする日々を送っていた。そんな彼が行きつけの洋服屋で女性が万引きするのを見かける。警備員に捕まった彼女を、とっさに自分の連れだと庇う。全く悪びれない彼女にアーサーは惹かれていく。


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映画はダドリー・ムーアがペロンベロンに酔っぱらって、高級レストランで騒動を起こすエピソードからスタート。

このシーンの酔っぱらいぷりが酷いんですよ。

笑えるレベルを超えて、ウザい感じ。

 

まぁ、人情系コメディみたいなので、「本当の人生に気づいて、どこかで真面目になる」と予想するじゃないですか。

 

でもね、ダドリー・ムーア演じる主人公は、最初から最後まで酔っぱらいぱなし。

いつも適当な半笑いで、面白くない冗談を言って、何が本気で、何が適当か分からないんです。

結局、ずっと「笑えるレベルを超えて、ウザい感じ」。

 

だから、まーったく彼に同情出来ないんですよ。

彼がピンチになろうが、ハッビーになろうが「ふーん」って感じ。

 

なんで当時、これが面白いって思ったんだろ?

 

僕が常識人になったってことでしょうか?

 

そんな「カネはあるけど、魅力のない主人公」ですが、周りを固めてる人たちは魅力的です。

彼が好きになる、勝ち気な下町女性はライザ・ミネリ

ハマり役のように、とっても可愛らしく演じてました。

「10」の時は、同じくミュージカルの大女優ジュリー・アンドリュースが意外にも大人の女をチャーミングに演じていたことを考えると、ダドリー・ムーアには、ミュージカル女優の新たな一面を引き出す効果があるんでしょうかね?

 

名優ジョン・ギールグット演じる執事は文句無しです。

実際にこの映画でアカデミー賞ゴールデングローブ賞の助演賞を受賞しています。

この映画で観客をホロっとさせるのは、ほぼ彼の出演シーンです。

ボンクラ息子に愛情をそそぐ執事っていうだけで、ある意味、勝ち確定ですが、それを漏れなく期待通りに演じるっていうのは凄いです。

難癖をつけるなら、設定がややステレオタイプだったかなー、ぐらいでしょうか。

もうちょっとひねったキャラでもジョン・ギールグットなら演じられたと思います。

あと、お付きの運転手も良かったっです。

 

ミスター・アーサー パンフレット表紙

 

人情コメディとして、プロット自体は悪くはないけど、話運びと主人公の設定がつたな過ぎます。

主人公のダメさ加減はもう書いたけど、ちりばめられているエピソードも底が浅い。

これでアカデミー脚本賞候補だったっていうのは、正直びっくり。

まぁ、僕も当時は面白いと思ったんだから、人のことは言えませんが・・・

 

結局、一度もシラフにならず、一度も真剣にならなかった主人公が、身分の違う女性と結婚したのは、本当にハッピーエンドなんでしょうか?

 

なんか、あとから「その時は、そういう気分だった」って言う気がしてならないんです。

だって彼は何一つ変わってないし、全てが行き当たりばったりで、勢いで済ませてしまってるように見えるから。

 

父親から「そんな相手と結婚するならカネは取り上げる」って言われたのも、最後おばあちゃんを口説いて、遺産を全部貰うってことは、今までの自分の行動を反省することなく、何でもカネで解決できる生活が続くってことです。

 

それでいいんでしょうか?

とっても釈然としないものがあります。

 

更に突っ込めば、今まで彼の尻拭いをしてくれた執事がいなくなった分、リスクが高くなってますよね?

 

片やヒロインも「カネはあるけど、生活力も、仕事をする力も全くないし、改心もしていない」男と結婚して幸せになれるんでしょうか?

 

そういう意味で、この映画はおとぎ話ではなく、残酷な結末の大人の童話なのかもしれません。

 

主演のダドリー・ムーアを初めて見たのは「ファールプレイ」(1978)。

主役じゃなかったんですが、彼の演じるキャラが本当に面白くて、すぐにファンになりました。

僕としては、この映画の「舌足らずの酔っぱらい」演技は、彼の良さが生きてない気がするんですが、「10(テン)」でも似たようなキャラ(この映画に比べれば控えめですが)を演じているので、実はこっちの方がアメリカでウケていた、本当のダドリー・ムーアなのかもしれません。

 

さて、この映画で欠かせないのが、主題歌「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」

この曲は当時、とてつもなくヒットして、全米1位は勿論、アカデミー歌曲賞も受賞しました。

爽やかな、よく出来た曲で、この映画には勿体ないないぐらいです。

歌っているのは、この曲の共作者でもあるクリストファー・クロス

彼は前年に「セイリング」(全米1位)をヒットさせた時の人でした。

これもとってもいい曲です。

Sailing

Sailing

  • provided courtesy of iTunes

 

この映画の音楽を担当しているのは、主題歌の共作者でもあるバート・バカラック

「恋の面影」や「雨に歌えば」などの大ヒットを何曲も作ってる映画音楽界の大御所です。

バート・バカラックらしい60-70年代香りがする音楽を書いているのですが、残念ながら主題歌以外は効果的に使われてませんでした。

 

この映画を見たのは、岐阜のロイヤル劇場。

今は全国で唯一のフィルムを使った名画座になってます。

同時上映は「シャーキーズ・マシーン」(1981)。

こちらは見直したら、昔より印象が良くなりました。

 

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現在、「ミスター・アーサー」のDVDやBlu-rayは入手困難なようです。