パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ネバーエンディングストーリー】子供も騙せないファンタジー

当時、鳴り物入りで公開されたファンタジー映画ネバーエンディングストーリー1984製作/1985日本公開)。

原作は海外では有名な童話(?)「終わりなき物語」。

 

で、当時の率直な感想は「????」

 

その感想は正しかったのか?それとも若気の至りだったのか?

それを検証します!

 

(あらすじ)

お母さんを亡くした小学生の主人公は、学校でもイジメに遭い、辛い日々を送っていた。いじめっ子に追われて,逃げ込んだ古本屋で、主人公は不思議な本に出会う。主人公が学校の倉庫で、「終わりなき物語」と書かれた本を読み始めた。それは「無」に侵食された王国ファンタージェンを救う物語だった・・・

 


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この映画でまず思い出されるのは、主題歌。

歌ってるいるのはリマール。

当時世界的に人気のグループ「カジャグーグー」を脱退したばかりでした。(「カジャグーグー」は「君はTOO SHY」って曲が有名です。)

ソロ第三弾シングルだったこの曲が世界中で大当たり。40~50代ならみんな聞いたこよあるんじゃないんでしょうか。

Never Ending Story

Never Ending Story

  • リマール
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ちなみにリマールはそのあと、ほとんど名前を聞かなくなりました。

彼の人気はネバーエンディングではなかったようです。

 

そんな話題もある上に、日本では家族向けの春休み映画としての公開(1985年3月16日)だったことで期待度は高かったと思います。

 

だが、映画館で目にしたのは60点の出来の映画

 

そして残念ながら、今回もその評価は変わりませんでした。

 

今回改めて思ったのは「子供でも面白いと思わないんじゃなかろうか?」ってこと。

 

とにかく終始モヤモヤします。

特撮も頑張ってるし、演出も役者も手を抜いてる感じはしません。

だけど、それが映画の出来にあまり貢献していません。

 

何故か。

 

それは、根本的に話に起伏が乏しく、キャラが立っていないせいで、全くパンチがないから

ネバーエンディングストーリー パンフレット表紙

ファンタジー映画の肝って、世界観だと思うんですよ。

空想の世界(この映画では<ファンタージェン>)をどれだけ魅力的に作れるかにかかってるんですね。

 

この映画にもロックバイター(岩食い男)や、猫みたいな竜のファルコンなど、いろんなキャラが出てくるんですが、まぁ、どれも魅力に欠けるんです

寧ろ、女王の宮廷に集まってるモブキャラ扱いの、脇役クリーチャーたちの方が目を引きます。

 

これは登場キャラに、エピソードらしいエピソードを持たせてないため、深みのない見た目だけのキャラになっちゃってるんですね。

言い換えれば彼らは背景と同じ扱いなんです。

 

また「無」がファンタージェンを侵食していくのを食い止める、っていうのが話の主軸なんです。

でもこの「無」が分かりにくい。

多分、<絶対ゼロ>みたいな恐ろしい現象なんですが、画面ではただの嵐にしか見えません。

「無」にはダースベイダーやサウロンのような「邪悪性」も「悪意」もないんです。

要は自然災害っぽいイメージになっちゃうんですよ。

 

つまりこの映画には「悪」が出てこないんです。

せめて「無」を食い止めようとする勇者を阻む強大な敵がいればよかったんですか、登場人物は庶民的存在ばかり。

(狼みたいなのが出てきますが、添え物的で、典型的なやられキャラです)

 

「無」の脅威も伝わらなければ、主人公が乗り越えなきゃいけない悪もいません。

 

これじゃドキドキしないですよね。

まるで「家族向けだから、見ている子供をハラハラドキドキさせちゃいけない」とワザとやってるんじゃないかって勘繰りたくなるぐらい、のレベルです。

本当は家族向け映画は、家族向け映画なりのハラハラドキドキが必要なんですけどね~。

 

お金もかかってそうだし、スタッフ・キャスト共に頑張ってるのに、すべてが中途半端。

おかげで薄っぺらく、緊張感のない展開になり、その結果、ファミリー映画っぽいのに、大人も子供も楽しめない映画になってなってます。

これじゃ、モヤモヤします。

 

原作者のミヒャエル・エンデも不満だったようです。

 

こういう映画は、大人が楽しめる要素と、子供が楽しめる要素をきちんと織り込むべなんです。

スタッフは作る前にファミリー向け映画の傑作「がんばれ、ベアーズ」(1976)を見るべきでした。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

監督はウォルフガング・ペーターゼン。「Uボート」(1981)や、「エアフォースワン」(1997)「パーフェクトストーム」(2000)といった男臭いテンションの高いドラマを得意とする人です。

特に「Uボート」は傑作です。

そんな彼の特性を考えると、この映画は無理があったんじゃないでしょうか。

彼は脚本も担当していますが、ちょっと「大人も子供も楽しめるファンタジー映画」っていう意味を誤解したのかもしれませんね。

本来のテンションの高い、ダイナミックな演出や展開で勝負したら、もっと質は高くなったこと間違いありません。

 

ちなみにこの映画、スタッフにもドイツ人っぽい名前が多く、世界公開もドイツが先なので、どうやらドイツ映画(+アメリカも資本参加)だったようです。

(原作のミヒャエル・エンデもドイツ人)

そのためリマールの主題歌も日本とアメリカ公開版だけだと最近知りました。

 

続編として「ネバーエンディングストーリー 第二章」(1990)と「ネバーエンディングストーリー3」(1994)があるんですが、見る気にはなれません・・・

 

今回はPRIME VIDEO の100円レンタルを利用しました。

DVD/Blu-rayは手に入るようですが、ちょっと高めです。