9月の終わりから仕事を始めたため、ブログのアップが疎かになっていました。
激反省です。
さて、今回もブライアン・デ・パルマ監督作品の「ボディ・ダブル」(1984製作/日本公開1985)。
このブログでデ・パルマ監督作品を取り上げるのは4回目かな?
どんだけデ・パルマ監督のことが好きなんだか・・・
当然、この映画も公開時に見ました。
岐阜にあった、自由劇場っていう半地下の小さな劇場。
あの時の記憶が蘇ります・・・
(あらすじ)
売れない俳優の主人公は、せっかく得た役でも失敗し、その上、恋人にも浮気をされてしまう。家を飛び出して行く当てがない時に、知り合った男から旅行の間の留守番を頼まれる。高台にあるその家から望遠鏡を使って、遠くの家を覗き見ると、そこには半裸でセクシーに踊る美女の姿が。彼は次第にその女性にのめり込んでいく・・・
当時、ブライアン・デ・パルマ監督は「フューリー」(1978)、「殺しのドレス」(1980)、「ミッドナイトクロス」(1981)「スカーフェイス」(1983)と上り調子。(個人の感想です。ちなみに「スカーフェイス」は当時、賛否両論でした)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
新作は彼の王道であるミステリー/サスペンス系。
間違いなく面白い、って期待しますよね?
そんな映画なら「デートのベストチョイス」って思うのが自然。
だから気になってた女の子を誘ったんです。
僕は(いろんな意味で)期待に胸を膨らませて映画館に入りました・・・
設定は悪くないです。
閉所恐怖症の俳優、覗き目で見た美女、殺人の目撃・・・
ハラハラドキドキの要素が揃ってます。
映画ファンなら「ヒッチコック監督の「めまい」(1958)と「裏窓」(1954)のパクりだよね?」って速攻指摘が入るのは100%確実なんですが、なんたって常々「ヒッチコックが大好き」って言ってるブライアン・デ・パルマ監督ですから、そこは「ヒッチコック作品へのオマージュ」ってことにしておきましょう。
タイトルの「ボディ・ダブル」は、映画の製作現場で「代役」っていう意味。
出演者に変わって、別の人がその俳優の代わりに演技をすることですね。
スケジュールが合わない時の後ろ姿や、俳優が演奏出来ない楽器の演奏シーン、ヌードがNGの女優なら首から下のヌード姿の「代役」なんていうのもあります。
俳優の代わりにアクションシーンを演じるスタントマンも「ボディ・ダブル」の一種ですね。
この「ボディ・ダブル」っていうタイトルが、ストレートに「ネタばらし」になっちゃってるんです。
センスないです。
この映画、流麗なカメラワークや編集、ドキドキさせるカメラアングル、ヒッチコックっぽい絵作りと、いつものデ・パルマらしさがふんだんにあります。
だが、しかしこの映画は全くダメ。
見ているのが本当に辛くなります。
心情的に辛くなるようなシーンがあるとかじゃないんです。
こんなダメな映画を最後まで見なきゃいけないという辛さです。
売れない俳優が、撮影の失敗や恋人の浮気で落ち込んでいる時に、知り合いになった男から留守番を頼まれる・・・この入り口は悪くありません。
留守番を依頼した男が、窓にところに備え付けられてる望遠鏡を主人公にのぞかせて、「あの家を見ろ」っていうと、カーテンを開けたまま半裸で、セクシーな踊りをしている美女がいます。
「この時間に決まって踊るんだ」
彼女の踊りに食らいつく主人公。
この辺りまでは「普通の男なら、こういう願望あるよねー」って思います。
が、ここからこの主人公があらぬ方向に暴走を始めます。
その女性が車に乗っているのを見かけ、ショッピングモールまで追いかけます。
更にショッピングモールの中でも、彼女のあとを追います。
最初は「近所のかわいい女の子を偶然見かけたら、どこに行くのかな?って気になってそっちを見ちゃうことあるな~」と思うんですが、徐々に主人公の追っかけが執拗かつ露骨になってきます。
はい、そうです。
どう考えてもストーカー。
デ・パルマ監督が、まるで「みんなもストーカー願望あるよね」という感じで、彼の行動が情熱的に見える演出してますが、当然、全くシンクロしません。
次はその女性が下着売り場で試着している姿を店の外から凝視。
そして彼女が試着したパンティをゴミ箱に捨てると、すかさずそれを拾います。
これも、「好きな人の下着が欲しくなるのって普通だよね」って言われてるような感じでうすが、当然共感なんて出来ません。
更にこの後、この女性が殺される現場を目撃することになるんですが、その後、警察に「あなたが犯人でないことは分かってるが、彼女のストーカーだったのでは?」と言われ、ポケットに入れてたパンティが見つかる始末。
「何を言ってるんだ。違う」と否定したものの(観客は間違いなく肯定するハズ)、モヤモヤした気持ちで、留守番をしている家に戻り、
ベッドに横になりながら、エロ映画を見ていると、あの女性が半裸で踊っていた時と同じ振り付けで踊る女優を発見!!!
あの時、自分が見たのは殺された女性ではなく、この女優だったんじゃないのか?
自分はあの家を覗き見するように仕組まれたんじゃないのか?
いや、その前に自分が気にいなってた女性が目の前で殺された上に、ストーカー容疑までかけられてるのに、家に帰ってすぐにベッドでエロ映画を見てる神経ってどうなんでしょう?
明らかに普通とは違いますよね?
そして、その女優に真相を聞くべき、自分が彼女の所属する芸能事務所に乗り込んで・・・エロ映画で彼女と共演して、近づくことに・・・
もっと他の方法があったんじゃないんでしょうか?
こんな異常行動を繰り返す主人公に同情するのは無理。
やっぱり巻き込まれ型の主人公は、観客が応援したくなるキャラじゃないとダメでしょう。
映画が進むにつれ、主人公を応援する気がどんどんなくなり、最後は1ミリもないまま映画は終了。
こんなに主人公がピンチになっても、どうでもいいや、と思える映画は珍しいです。
話は素材や設定、アイディアだけで最後まで引っ張っちゃいます。
工夫が少なく、意味不明な展開と、安易な展開が入り混じるチープ感の高い脚本。
高校の映画研究会のメンバーが「ヒッチコックぽい映画作ろうぜ」って思いつくレベルでした。
映像についても、デ・パルマの映像美があると書きましたが、じゃ映画的にどうかって言われたら不合格。
何故か。
無駄にダラダラと見せるシーンが目立つから。
一番ダメだったのは、美女をショッピングセンターの中で追い回すシーン。
これがやたら無駄に長い。
「殺しのドレス」にも欲求不満の熟女が、たまたま見かけたかっこいい男を、迷路のような美術館で後追いするシーンがありました。
こちらはスタイリッシュで印象的なシーンと評判がすこぶる良かったです。(僕も大好きです)
二つの映画の決定的違いは、ここでも主人公への共感。
「殺しのドレス」だと「女性が追いつくの?相手は気づいてるの?」ってドキドキしてましたが、この映画は主人公に対して「お前、止めとけよ~」と思っちゃうからです。
だから無駄に長く感じるんですね。
他にも美女と砂浜でキスをするシーンや、殺人犯が美女を殺すシーンとかも「長い!」って感じました。
とにかく、この映画では主人公の性格付けも含めて、デ・パルマ監督が撮りたいものと、観客が見たいものが明らかにズレています。
そんなワケでとってもガッカリした映画でした。
見終わった後に「楽しかったね」と言える類ではありません。
更に実は無駄にエロいシーンも多いんです。
だから映画館から出る時、高校生の彼女は無言でした。
そして、そのまま解散。
「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」(1981)よりダメな映画デートでした。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
今回はPRIME VIDEOで100円レンタルがったので、それで見ました。
サブスクではPRIME VIDEO、Netflix、U-Nextにはありませんでした。
また新品のDVD/Blu-rayは入手困難のようです。