パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

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【クロスロード】今だから分かるブルースの面白さ

「クロスロード」(1986製作/1987日本公開)ってタイトルは、エリック・クラプトンもカバーしたロバート・ジョンソンの名曲「クロスロード」からの引用。

古いロックが好きな人には堪りませんね。

この映画は、まさにその「クロスロード」がネタの話。

 

製作から日本公開まで丸1年かかってることから、公開当時の日本での注目度がめちゃくちゃ低くかったことが分かります。

まぁ、僕自身も公開当時に映画館見た記憶があるんですが、どこの映画館だったかさっぱり思い出せないレベルです。(多分、岐阜)

 

内容は概ね覚えているんですが、感想としては60点でした。

悪くないけど、心に残るものがなかいってところでしょうか。

さて、そんな映画を今回は見てみます!

 

(あらすじ)

主人公は、名門・ジュリアード音楽院で将来を嘱望されているクラシックギターの学生。しかし内心ではブルースギターに心惹かれおり、1930年代の名ブルースギタリスト、ロバート・ジョンソンが残したと言われる幻の曲を見つけて、自分でレコーディングするという夢があった。彼は近所の療養施設にロバート・ジョンソンと懇意にしていたブルースマンと思われる老人が入居していることを知る。老ブルースマンに近づき、幻の曲を教えて欲しいと言うと、老人は「自分を療養施設から連れ出し、ミシシッピまで一緒に来て欲しい」と交換条件を出す・・・


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当然、全編にアメリカ南部をベースとする”デルタブルース”が溢れてます。

これがめっちゃくちゃかっこいいんですね。

Crossroads

Crossroads

  • provided courtesy of iTunes

 

思い返せば、これを見た20代前半の僕は、まさにメタルヘッド

嬉しい時も、悲しい時も、晴れてる日も、雨の日も聴いてる音楽はハードロック/ヘビーメタル一直線

だから、この映画に流れるブルースも「ちょっと雰囲気あっていいよね」程度にしか思いませんでした。

 

しかしあれから35年経った今、僕の音楽趣味もメタルからロック、ジャズ、ブルースと音楽の幅が広がったことで、前回よりブルーステイストが分かるようになったんです!

 

進歩ですよね?

 

お陰でこの映画の印象が数段レベルアップしまた。

 

お話としては典型的なロードムービー

落ちぶれた伝説のブルースマンと、ブルースに憧れる青年がミシシッピまで旅をし、その旅を通して主人公が青年から大人になり、ブルースを理解していく成長談。

男っぽい映画作りを得意としてるウォルター・ヒル監督だけあって、この手のテーマをそつなく、上手にまとめています。

 

特にぶっきらぼうで、ちょっと胡散臭い老ブルースマン「ブラインド・ドッグ・フルトン」を演じるジョー・セネカの演技が光ります。

いい加減な言動と行動をしつつ、少年を諭し、ブルースの神髄を教えていく様がぴったりハマっています。本当に百戦錬磨のブルースマンにしか見えません。

 

反対に主役のラルフ・マッチオは力量不足

ベスト・キッド」(1984)のような少年役はいいんですが、この映画で求められる青年から大人へ成長するという役は、彼にはハードル高かったですねぇ~。

前半の軽いキャラの時は比較的違和感はなかったのですが、後半の失恋を通じて、大人になり、ブルースに目覚めていくところは、めっちゃ軽くて不似合い。

言ってしまえば、映画の最後になっても彼が大人の階段を上がって、ブルースに目覚めた実感がありません。

 

最近たまたまTVで見た劇場版「銀河鉄道999」(1979)のラストシーンの鉄郎の方がよっぽど大人の階段を上ってました。

 

当時、ラルフ・マッチオは「アウトサイダー」(1983)、「ベスト・キッド」で注目されてたので話題作りもあっての起用だったのかもしれません。

この映画だったら、同じ頃に活躍していたアンドリュー・マッカーシー(「セント・エルモス・ファイヤー」「マネキン」「プリティ。イン・ピンク」)の方が似合ってたんじゃないんでしょうか。

 

ちなみに主人公がギターを弾くシーンでは、ラルフ・マッチオがちゃんとギターを弾いています。(スタンドインなし)

音は吹替かもしれませんが、なかなか上手に弾いているように見えるので、実際にそこそこギターが弾けるんじゃないんでしょうか。

そういうところもキャスティングの理由だったりしますかね?

 

さてさて、話の中盤でキーマンとして家出少女が合流します。

彼女との淡い恋愛と失恋が主人公の成長のターニングポイントという設定。

(老ブルースマンが「ブルースは、去っていった女性への男の悲しみだ」というセリフがあります)

 

この女の子、ルックス、演技共に悪くはないんですよ。

ただこの子の扱いが、とってもステレオタイプで雑

 

主人公がこの子に恋心を抱くんですが、観客はその理由が分かりません

たまたま身近にいたから好きになったとか、3人でピンチを切り抜けるうちに「吊り橋効果」として好きになったとか程度しか思いつかないから、ただお互い気になって、流れでエッチしただけの関係に見えるんです。

だから彼女が去って悲しむ主人公は「これからもエッチ楽しみにしてたのに、いなくなるなんて~」というレベルしか感じられません。

 

これでブルース開眼はないでしょ???

 

ここはキーエピソードなんで、しっかり深堀して、人間関係の微妙なアヤを描くべきでした。

 

ただウォルター・ヒル監督を庇うワケじゃないですが、元々この監督は、カルト的傑作「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984)でも、恋愛描写になると平凡になってましたから、彼の弱点なのかもしれません。

 

閑話休題

 

この映画が普通のロードムービーとちょっと違って、ファンタジー要素があります。

 

悪魔が出てくるんですよ。

夢の中じゃなくて、本当に。

 

何で老ブルースマンミシシッピを目指してるかと言うと、19歳の時にミシシッピの伝説の十字路(クロスロード)で悪魔に魂を売ったことで名声を手に入れたんです。ところが死ぬのが怖くなって、伝説のクロスロードに戻り、悪魔に契約解消をしてもらおうとするんです。

 

ちょっと展開が「エンゼルハート」(1987)に似てます。

あっちはロバート・デ・ニーロが紳士然とした悪魔を演じてますが、この映画でも「スクラッチ」というきちんとスーツに身を包んで、丁寧な物言いをする悪魔が出てきます。契約を持ちかけるシーンは、おどろおどろしくなく、反対にちょっとユーモラスな雰囲気もあってなかなか良いです。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

しかし、よく考えれば契約を解消して欲しいなんて、虫が良すぎませますね

だって60年ぐらい散々名声を楽しんでおいて、今更、魂を返してくれって。

どう考えてもクーリングオフの期間は終わってます。

 

その上、もうブルースマンは80歳を超えてるんですよ。

普通にお迎えが来てもおかしくない歳じゃないですか。

悪魔に魂を売らなかった人よりも、元気に長生きしてますよね?

悪魔が、うっかり魂を取るのを忘れていたとしか思えません。

 

そんなファンタジー/ホラー映画みたいな展開なんですが、意外に違和感なく話にマッチしています。

「悪魔との解約解消」というのがあるので、老ブルースマンミシシッピに戻らなきゃいけないという気持ちがヒシヒシと伝わり、この映画を面白くしています。

反対に現実的な展開(例えば帰る理由が、長い間会っていない家族と会いたい、とか)だったら、このレベルの脚本力だと面白い映画にはならなかったハズです。

 

全体的に派手さの少ない映画ですが、クライマックスの悪魔のギタリストと主人公のギター対決は盛り上がります。

 

悪魔のギタリストを演じるのは、実際に超絶ギタリストであるスティーヴ・ヴァイ

丁度、デイヴ・リー・ロスバンドを脱退してフリーの時に出演しています。彼はこの映画の後に、僕の大好きなホワイトクネイクに加入しました。

Slip of the Tongue

Slip of the Tongue

  • provided courtesy of iTunes

 

とにかくスティーヴ・ヴァイが、いかにも悪魔のギタリストっていうオーラが全開でカッコいい!

彼がアグレッシブなロックを演奏するのに対し、主人公はブルースギターで対抗するんですが、ヴァイに圧倒されてしまいます。

しかし最後はジュリアード音楽院で培った超絶テクニックでクラシックフレーズを高速で弾くと、スティーヴ・ヴァイはそれを真似できず、負けを認めて、主人公の勝ちになります。

 

この対決は盛り上がるんですが、フと我に返ると、

 

え?ブルースで勝つんじゃないの?

ブルースマンが「お前は凄く上手いが、ブルースが分かってない」って言ってたじゃん?

結局、ブルース魂じゃなくて、超絶フレーズが大切なの?

 

と、腑に落ちません(笑)

 

この映画、こういうノリで書いたようなエピソードが多いです。

 

ちなみに、この時の主人公のクラシックフレーズの早弾きが、超高速ロックギタリストのイングヴェイ・マルムスティーンを思い出させるんですよ。

 

イングヴェイはアルカトラスというバンドで有名になった後、すぐに脱退してるんですが、その後釜として加入したのがスティーヴ・ヴァイ

 

だからこの最後の対決って、アルカトラスの疑似新旧ギタリスト対決に見えちゃいました。(笑)

 

噂ではアルカトラスのライブで、スティーヴ・ヴァイイングヴェイがギターソロを弾いてた曲を、イングヴェイより音数多く弾いてた、なんて逸話があるそうです。

だからこのバトルを見ながら、「本当ならヴァイが余裕で主人公に勝つのになぁ」って思ってました。

 

さて話のキーとなっている「幻の30曲目」が見つかったかどうかは、映画を見てのお楽しみ、ということにしておきます。(笑)

 

この映画の肝である音楽を担当したのはライ・クーダー

ブルースだけではなく、カントリー等、いろいろな音楽に造詣が深いミュージシャン(ギタリスト)で、この頃は日本でも雑誌によく取り上げられてました。

当時メタルヘッドだった僕ですが、巷で有名だった彼に興味があってサントラを買いました。

でもブルースの良さが分からず、結局数回聴いてすぐにCDラックに埋もれてたんです。

今回、数十年ぶりに聴いてみると、なかなか良くって、このコラムを書いている間、ずっと流してます。

iTunesで買えますが、CDは廃盤のようです。

「クロスロード」サントラCDジャケット

 

映画としては、キャラ描写の甘さや、勢いだけで書かれたエピソードが目立ちますが、深く考えなければ見ていて飽きることはありません。

音楽好きなら、より楽しめると思います。

初見の時は60点でしたが、今は10点アップの70点かな。

 

今回はPRIME VIDEOの100円レンタルで見ました。

PRIME VIDEOとNetFlixのサブスクにはないんですが、U-Nextのサブスクにはあります。

(現在、僕はU-Nextとの契約が切れていますw)

 

新品のDVDは手に入るようです。