パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【フューリー(1978)】デ・パルマには超能力が似合う

超能力ものって好きなんですよね。

だって超能力って中二病の夢じゃないですか。

 

超能力映画って結構ありますよね。

「キャリー」「炎の少女チャーリー」「AKIRA」「エスパイ」・・・

そんな中で、密かに推しの映画があります。

それが今回調査をした「フューリー」(1978)。

地味なんですが、なかなかの佳作なんです。

 

(あらすじ)

超能力を持つ息子を元同僚にさらわれてしまった元スパイの主人公。彼はスパイ組織から追われながらも、何とか息子の居場所を見つけ取り戻そうとする。そんな中で息子と共鳴する超能力を持った少女がいることを知り、研究所から連れ出そうとするが・・・


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監督は「アンタッチャブル」(1987)「ミッションインポッシブル」(1996)のブライアン・デ・パルマ

この映画も「殺しのドレス」同様に、大作監督になる前の一本です。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

彼が超能力を扱うのは、「キャリー」(1976)に続いて二本目。

「キャリー」が70年代を代表するホラー映画なのに比べて、「フューリー」は存在を忘れてる人も多い地味な作品。

 

でも、僕的には彼の作品の中で結構好きな方。

まぁ、同じく彼の忘れられた作品「ミッドナイトクロス」(1981)が好きだから、ちょっと僕の嗜好が変わってるのかな、とも思ってたんですが・・・

 

フューリー パンフレット表紙

いやいや、今回見て、やっぱり普通に面白い!

 

この映画の超能力は、自分の好き勝手に使えるんじゃなくて、感情が高ぶると発動するという設定。

だから超能力者たちの感情が高ぶる → ドラマ的に盛り上がる → 超能力発動 → 更に盛り上がる、となかなか上手な構造になってるんです。

 

この映画も公開時に劇場で見たんです。

その時の記憶に残ってるのは、全部超能力を使っているシーン

勿論、話も超能力が発動されるポイントポイントしか覚えてなくて、主人公が元敏腕スパイだなんてすっかり忘れてました。

 

でもこの映画、超能力を扱っているんだけど、超能力者がメインじゃないんです。

あくまでも連れ去られた息子を探す父親(超能力なし)の話。

このベースとなっているドラマが結構出来がいいんですよ。

改めてこの辺りのサスペンス演出の上手さは、さすがデ・パルマ監督。

この屋台骨がしっかりしているのが、この映画の面白さの要因ですね。

 

また超能力の国家利用を企む主人公の元同僚を演じるのは名優ジョン・カサベテス。

彼のふてぶてしいまでの悪役ぶりが、実はこの映画の肝。

やっぱりサスペンス映画って、悪役の存在感が映画の出来・不出来を左右しちゃいます。

いくら主人公が魅力的でも、対する悪役が小物っぽい雰囲気だと盛り上がらないですよね。

 

反対に主人公のカーク・ダグラスマイケル・ダグラスの実父)はちょっとくたびれてるかなぁ。

元々アクションスターの側面がある人なので、スパイ時代のノウハウを使って追っ手をかわする主人公役が的外れというワケではないと思うんですよ。

ただね、おじいちゃんっぽさが出てるんです・・・ラブシーンなんてちょっと痛々しい

この役は同じような年齢の役者でも、もう少し若さを感じさせる人にやらせた方が良かったと思いますね。

 

さて超能力は、話の上ではメインじゃなくとも重要なファクターです。

次にこうの映画が面白いのはやはり超能力の見せ方

特に前半は印象的なシーンが多いです。

 

・ ヒロイン(超能力者)が模型の列車を脳波の強さで動かす実験をやると、列車が暴走して脱線

・ アラブ人テロリストに父親を殺されたと思い込まされてる息子が、遊園地で遊ぶアラブ人を見て、彼らが乗っている遊具のボルトを外して、吹っ飛ばす

 

他にも相手に触れるとその人の記憶や考えが読めてしまう代わりに、相手は目や鼻から大量出血、なんていうのもあります。

 

そしてクライマックスは大友克洋の「童夢聖悠紀の「超人ロックか?という大サイコキネシス発動大会。

このシーンは映画的(視覚的)な面白さが見るものをぐいぐい引っ張ってくれます。

 

最後はこれで終わったと思ったところで、もう一発。

受身気味だったヒロインが、一気に攻めに変わるカタルシスは最高です。

かと言って、ブライアン・デ・パルマ監督お得意の「夢でした」ではないのでご安心を。

 

デ・パルマ監督の作品にしては、とってもストレートなタイプの映画です。

良い意味で観客の期待通りに進んでいくと言っていいでしょう。

だから、かなり見やすいと思います。

だからと言って「ありきたいでつまらない」ということはなく、話の展開も適度にドキドキさせてくれるし、超能力の表現や話への織り込み方も良いです。

贅沢を言えば、「殺しのドレス」ほどデ・パルマ監督得意のヒッチコック風味のドキドキのカメラワークがないのが残念でした。

 

70年代によくあった派手さのない小作品ですが、佳作なので是非みなさんにも見て貰いたいです。

 

ちなみに音楽は「STAR WARS」のジョン・ウィリアムス。

僕は彼の小作品が好きで、このサントラもお勧めです。


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この映画はAMAZON PRIMENetflix、U-Nextのサブスクにもなく、近くのDVDレンタル屋になかったので、今回もTSUTAYA DISCAS(DVD宅配レンタル)のお世話になりました。

 

また新品のDVDも入手出来ないようです。

ちなみにサントラCDも入手困難。

このまま幻の映画になってしまうんでしょうか・・・