パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【殺しのドレス】ハラハラドキドキのポイントが違うのでは?

やっぱり僕らの世代はブライアン・デ・パルマ監督は避けて通れません。

そんなワケで今回は殺しのドレス(1980製作/1981日本公開)です。

スリラー/ホラー監督として知名度がグングン上がっている時の一品です。

 

(あらすじ)

欲求不満の中年主婦ケイトは美術館で偶然出会った男と関係を持つが、その帰りに何者かに惨殺される。目撃者の娼婦と被害者の息子は、被害者のかかりつけの精神科医の患者の中に犯人がいると確信し、協力して犯人を探し始める・・・

 

僕らの世代でブライアン・デ・パルマ監督は、絶大な人気を誇っていました。

丁度、超カルト映画「ファントム・オブ・ザ・パラダイス」がマニアの間で話題になり、「キャリー」(オリジナル版)で原作者のスティーブン・キングと揃って大評判に。渋い超能力ものの佳作「フューリー」に続いて監督したのがこの「殺しのドレス」。

この時点ではホラー系の作品が多かったこともあり、中二病まっさかりの僕らには、まさにツボる監督でした。

ただ同時期に、同じく僕らSF/ホラーヲタクの人気が出たジョン・カーペンター監督と違うのはジョン・カーペンター監督が「生涯B級一筋」なのに対し、デ・パルマ監督はこの後、「アンタッチャブル」「ミッション・インポシブル」とメジャー監督になっていきます。

いつまでも大人になれない僕らは「カーペンターは一本筋の通った尊敬できるヤツだが、デ・パルマはカネで魂を売ってた」と勝手に憤慨しました。

でも残念なことに「いつまでもB級」なカーペンター映画より、デ・パルマのメジャー作品の方が面白いんですよ(笑)

そこは素直に認めます。

 

さて「殺しのドレス」の原題は「Dressed To Kill」。

当時買っていた映画雑誌「SCREEN」には、映画紹介の欄に原題の日本語訳というのがついてたんですが、この映画にも「原題:殺しのための装い」とありました。

でもそんなネタバレっぽい話なのかな?と思って調べたら、「Dressed To Kill」って<悩殺するようなおめかし>って意味なんですね。

つまりダブルミーニングなってるんです。

この原題の付け方は上手いなぁ、と思いました。

 

殺しのドレス パンフレット表紙

 

 

当時の僕がこの映画を見逃すはずもなく、すぐに劇場に足を運びました。

見たのは、今は亡き衆楽劇場という大きな映画館で、同時上映はミュージシャンのニール・ダイヤモンド主演の「ジャズシンガー」。そっちも面白くて、サントラは今でも愛聴盤です。

 

当時の「殺しのドレス」の印象は「面白かった」。

ただそれだけ。

それで十分なのかもしれませんが、あんまり心に残らなかったのも事実です。

それはどうしてなのか?

今回、大昔に録画してあったものを発見したので見てみました。

 

ちなみにAMAZON PRIMENetflixにはありませんが、U-Nextでは見ることができます。

また新品のDVDも手に入ります。

 

 

ぶっちゃけネタバラシ的な話をすると、この映画はヒッチコックの名作「サイコ」の換骨奪胎ですね。

普通の男性と女装趣味(性転換希望者)の男がいる二重人格者がいて、女装趣味の人格の方が、男性人格の時の彼を誘惑する女性を殺す、という話です。

ね、「サイコ」でしょ?

 

普通の男性人格は知的で人当たりのいい精神科医、もう一つの人格(犯人)が彼の患者として描かれてます。(二重人格の自覚のない)精神科医が、留守番電話に残された犯人のメッセージを聞き、「こいつが犯人か。まずいな」と呟くなど、二重人格ではなく別の人間がいるように上手にミスリードさせる演出は、さすがヒッチコックマニアと言われるデ・パルマ監督ならではです。

 

キャスティングもかなり良くて、精神科医役には、こういう役をやりそうもないマイケル・ケイン。この頃は普通に出演する映画では主役級ですから、まさかこんな異常性格の犯人役をやってるとは思いませんよね。これは観客の目を逸らす見事なキャスティングです。

 

事件の目撃者である心優しい娼婦役は僕の大好きなナンシー・アレン。前にレビューした「フィラデルフィア・エクスペリメント」でもキャラ的に可愛い女性を演じてましたが、今回もキャラ的な可愛さ満載。ちょっとすれてるけど、本当は優しくていい人を演じさせると彼女はピカイチです。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

ナンシー・アレンは、デ・パルマ監督のこの次の作品「ミッドナイトクロス」でも事件を目撃する心優しい娼婦を演じてます。この時、ナンシー・アレンの旦那ってデ・パルマ監督なんです。よっぽど奥さんが娼婦役を演じるのを気に入ってたんでしょうか。

実は奥さんのそういう姿が見たくて、役をふってるのでは?と思っちゃいます。

(ハマってるので間違った選択ではないんですが)

 

とにかく配役とプロット、設定はかなりレベルが高いと言っていいでしょう。

勿論、デ・パルマ監督のスリラー演出の腕も確かです。

でもね、何か足りないんですよ。

それが今回見直して分かりました。

 

冒頭から欲求不満の中年女性(このアンジー・デッキンソンもピッタリ)がエレベーターで殺されるまでの一連の流れは隙がないほどテンション高いです。

特に美術館でアンジー・デッキソンが気になった男を追うシーンは、殺人鬼が出てくるわけでも、人が死ぬわけでもない普通のシーンなのに、めっちゃドキドキさせられます。これは緻密に計算されたカメラワークと演出、編集の賜物です。

 

問題はこの後に、この一連の流れを凌ぐハラハラするシーンがないってこと。

 

殺人が起こったんで、いよいよ本題に入っていくにも関わらず、冒頭の普通のスリラー/ミステリー映画レベルのテンションに「下がっていく」んです。

冒頭と同じぐらい完成度の高いレベルで作って欲しかったですねー。

 

そしてもう一つの問題は、話の展開です。

二重人格の精神科医、別人格が彼の患者、など謎解きプロットとしてかなり面白い素材だと思うんですよ。

でもね、ナンシー・アレン精神科医との面談を利用して、別人格の患者のカルテを盗見をします。さて、これからどうやってその患者が精神科医の別人格と判明するのか気になりますよね?

でも何食わぬ顔で診察室に戻ってきたナンシー・アレンを女装したマイケル・ケインが襲い掛かるんです!あー、もうここで謎をばらしちゃうの?

更にそこに警官が突入し、マイケル・ケインを撃って無事解決。

そんな強引でイージーな展開ってある?

 

僕らは主人公たちが推理を重ねて、「あ!マイケル・ケインが二重人格で、彼が患者でもあるのか!」と判明するカタルシスを期待するじゃないですか。

でもそれを見事に観客から奪ってるんです。

酷いですよね、この展開。

 

それだけならまだしも、最後にマイケル・ケインが病院から脱走して(レクター博士っぽい)、ナンシー・アレンを襲うシーンがあるんですが、実はこれは夢でした~、という完全な蛇足があります。それも長い。

「キャリー」のラストシーンの焼き直し?と思いましたが、あちらはホラー映画なので、「ありと言えば、あり」なんですが、こっちは純粋なミステリー映画では不要でしょう。

だったらもっと謎解きに時間を割いた方が、この作品の質は上がったと思います。

 

というワケで、見ている間はそこそこ楽しいですが、見終わったら不完全燃焼ということを再確認できた今回のレビューです。