テータム・オニールって覚えてますか?
僕ら世代には、そこそこ人気にあった女優さんです。
70年代には巻頭に彼女のカラー写真がデカデカと載ることも多々ありました。
すんげー可愛いというワケではないんですが、ソバカスがあって、愛嬌があって、隣のちょっと可愛い女の子っていう雰囲気が、日本人のファンには刺さったんでしょうね。
そのテータム・オニールには弟がいたんです。知ってました?
名前をグリフィン・オニール。
彼も俳優で、数本の映画に出ています。
その一本が「マジックボーイ」(1982)。
U-nextのサブスクで見つけた時は、思わず「おお、懐かしい!」となりました。
忘れてた小学校の友達に会った気分です。
(あらすじ)
今は亡き天才手品師を父に持つ主人公は、日々手品の腕を磨いている。しかし家族は父親の跡を追うことにいい顔をしない。ある日、手品屋で、市長のドラ息子に言いがかりをつけられ、頭に来た主人公は彼のポケットから財布を盗む。しかしその財布はドラ息子が市長から盗んだものであり、財布には秘密が隠されていた・・・
これ、封切の時に衆楽劇場という映画館で見ました。
同時上映はナスターシャ・キンスキー主演、コッポラ監督のミュージカル「ワン・フロム・ザ・ハート」(1982)。
勿論、目的は「ワン・フロム・ザ・ハート」でした。
「ワン・フロム・ザ・ハート」は音楽が素晴らしく、このサントラでトム・ウェイツを好きになりました。
話が逸れちゃいましたが、ついでに見た「マジックボーイ」は、派手さはないけど悪くないな、と思ったんです。
そう言えばこの映画、制作総指揮がコッポラでしたね。
あの時の二本立ては、コッポラ繋がり。
しかしコッポラが製作だからといって、全然大作ではありません。
寧ろ小作。
きっと製作費は「ワン・フロム・ザ・ハート」の何分の一かなんだろうなぁ。
グリフィン・オニールの役は手品の才能があり、父親のように偉大なマジシャンになりたいと願う少年。彼が市長のドラ息子(ラウル・ジュリア)のドタバタに巻き込まれる話。
改めて見ると・・・
全体的に間延びするところはないので、飽きるようなことはありません。
正直、ひねった展開も、深みのある人物像もないので、見終わった後に心に残るものは(僕としては)ありませんが、軽いコメディタッチの青春映画というフォーマットからすれば十分合格点でしょう。
マジックを使ってピンチを切り抜けるシーンが全編にテンポ良くちりばめられているので、マジシャンが主人公という設定はちゃんと生かされてました。ここは期待通りですね。
物語の中盤に、食堂でナンパした年上の女の子を前に、張り切って父親が得意だった水槽脱出をやるものの、うまくいかず、間一髪おじさんに助け出されるくだりがあるんですよ。
これがちょっとシリアスなムードで、軽いノリの中で良いアクセントになってました。
(この女の子が、フツーっぽいんだけど、妙に可愛い)
あとラストの郵便ポストに逃げ込むのは、ナイス!と思いましたね。
(でもポストにナイフを捨てちゃダメだと思いましたがw)
こういうヒネリのない映画って、キャスティングや出演者の持ち味の良し悪しがダイレクトに出ちゃうものですが、グリフィン・オニールの脇を固める役者たちは、適材適所が多く、またこの映画の方向性をちゃんと理解した演技をしていて、安心感があります。
(その分、意外感はゼロですが)
出演者の中で、特にいいのがイカレたドラ息子を演じるラウル・ジュリアです。
相変わらず硬軟織り交ぜた演技は本当に上手。
この映画のキモは主人公ではなく、ラウル・ジュリアでしょう。
存在感はピカイチです。
この人、シリアスな役も上手くって、「推定無罪」(1990)で、ハリソン・フォードの弁護士役をやってるんですが、これも上手かったですねー。本当に早世(享年54歳)が悔やまれます。
ホント、期待せずに見たら、「ちょっと得した気分」になる映画です。
あ、褒めてるのか、けなしてるのか分からないですね。
ただし、全てにおいてソツない、良い出来かというと違います。
まず主人公がマジックの天才には見えない。
ちょっと目端の利く小学生が、教えてもらったトリックや技を使ってるだけにしか見えない。
要は小手先っぽいんですよね。
原題は「The Escape Artist」=脱出の芸術家」となってるんだけど、芸術家感ゼロ。
他のマジシャンの模倣レベルにしか見えません。
そして、結構気になったのがグリフィン・オニールの演技力。
この主人公に求められるのは、子供っぽさを残しながら、大人たちと丁々発止をするしたたかさ。
いい意味で大人ぶった面を出せたら良かったのかと。
だけど、そういう微妙なキャラを体現できず、「頑固で、意地っ張りな子供」にしか見えないことがありました。
弟を叱るときに言ってはいけないセリフを言っていいですか?
「姉ちゃんは、そういう役がちゃんと出来てたのにねぇ」
庇うワケではないですが、彼は彼なりに頑張ってました。
ただ演技の才能が今一つ感じられないだけです。
特に相手役が演技達者のラウル・ジュリアですから、余計に目立つのかもしれませんね。
オニール兄弟のお父さんはライアン・オニールっていう有名俳優。
お姉さんのテータイムは10歳の時にお父さんと共演した傑作コメディ「ペーパームーン」(1973)でブレイク。
3年後に出演した少年野球映画「がんばれ、ベアーズ」(1976)の大ヒットで、日本で人気を不動のものとしました。でもその後は大した映画出演もなく、テニス界のスーパースター、ジョン・マッケンローとの結婚を期に引退しました。
夫婦で日本のCMに出ていたこともあります。
弟のグリフィンも、この映画を入れて数本で早々と俳優を止めたみたいです。
もうちょっと本人の演技力に見合った役を選んでたら、役者を続けていたかもしれませんね。
最初に書いたように、U-nextのサブスクで見れましたが、AMAZON PRIMEやNetflixにはありませんでした。
新品のDVDも手に入らないようです。