ジョン・カーペンター監督って、基本はB級映画の王様で、話や登場するギミックが超いい加減になることが多いです。
まぁ、カーペンターファンはそういうところを愛してるんですけが(多分、普通の人には理解出来ない)、そんなカーペンター監督でも、80年代にちゃんとした(?)映画を作ってる時期がありました。
名作の誉れ高い「遊星からの物体X」(1982)やハートウォームな未亡人と異星人の交流を描いた「スターマン/愛・宇宙はるかに」(1984)、そして今回レビューする「ニューヨーク1997」(1981)。
ただ公開当時は「思ってたより、ちょっと軽いなぁ」って印象でした
点数的には70点ぐらい?
それでもやっぱり好きな映画なので、何年に一回は見てるし、DVDも持ってます。
そんな偏愛的な映画をレビューします!
(あらすじ)
犯罪増加率が400%を超えたアメリカは、マンハッタン島を塀で隔離し、巨大な刑務所にした。そこに入れられた囚人は二度と出ることは許されなかった。そのマンハッタン刑務所にサミットに向かう大統領機が墜落。大統領は第三次世界大戦を終結させる重要なメッセージを携えていた。マンハッタン刑務所の所長ホークは、新たにマンハッタン島に移送される囚人の中に、伝説の特殊部隊員であり、犯罪者でもあるスネーク・プリスケンを発見。彼に恩赦と交換に、マンハッタン島に潜入し、大統領と発表予定のメッセージを録音したテープを回収することを提案。断るスネークだったが、ホークに説得され渋々引き受ける。しかし潜入前の疫病予防薬と言われて打たれた薬が実は遅効性の毒薬を判明。このままスネークに逃亡されるのを懸念したホークの罠だった。大統領を連れ戻せば解毒するが、サミットが始まる24時間後までに戻らないと、毒が回って死ぬと言われる・・・
今回見て思ったのは、「最初に見た時より満足感があった!」でした。
確かに見返せば、派手なバトルは少ないし、大団円みたいなものもありません。
でも面白かった。
何で最初にこの映画を観た時に「食い足りなかったか」が分かりました。
それはシルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーが主演している派手派手バリバリの正義漢が暴れる映画と同列に考えていたからです。
でも実際は全然違います。
これは一匹狼の潜入工作の映画だってこと。
彼の目的はただ大統領を救出すること。
悪の親玉を倒すのではもなく、マンハッタン刑務所をぶっつぶすわけでもありません。
それも正義漢や組織の命令ではなく、騙されて仕方なしに。
やらずに済むならやりたくない。
だから彼は必要以上に戦闘はせず、目立たないように目的に向かって進んでいきます。
バトルになるのは「仕方なし」か目的を遂げる最短手段の時だけ。
要は「派手にバンバン銃をぶっぱなして、悪者を倒すヒーローが見たい!」って思うと、肩透かしを喰らってことです。
最近レビューした「ランボー 怒りの脱出」(1985)みたいに「俺があいつらを悪の手先(ベトナム軍)から救うんだ!」と隠密作戦を無視して、戦闘モードになる映画とは全く真逆でした。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
まさに名作ゲーム「メタルギア」の世界。
元々、この映画は「メタルギア」シリーズの元ネタの一つと言われてます。
(「メタルギア」の主人公(元特殊部隊HOUNDFOXの隊員)コードネーム名前は<スネーク>。そして同じくいつもタバコを吸ってます)
とにかく主人公がカッコいい。
眼帯をした元腕利きの特殊部隊員。
軍隊側にも、犯罪者側にも名の通ったアンチヒーロー。
喋る時は、しゃがれた声でボソボソと、必要最低限だけしか話しません。
仲間意識はゼロ。誰かを利用することはあっても、助けてもらおうという気はサラサラありません。
(時々、情らしきものを見せることはありますが)
正義漢のカケラもなく、大統領救出も仕方ねぇからやる、って感じですが、いざ戦闘になれば強いし、いろいろなピンチを力技だけでなく切り抜けていく姿は、まさに孤独のダークヒーロー。
っていうか、言ってしまえばスネーク・プリスケンを楽しむ映画なんですよ。
話自体は正直、ガーっとクラマックスに向かって盛り上がる感じなく、ちょっと淡々としていて、起伏に乏しいです。
マンハッタン刑務所を牛耳るストリートギャングのリーダー「デューク」は権力はありそうだし、見た目は悪くないですが、圧倒的な悪者感が足りないかなぁ。
だから主人公と対決構図もちょい物足りない。
寧ろ、無法地帯となっているマンハッタン島の方が不気味かも。
これも最初に見た時に、満足感が足りなかった理由かな。
でも要所、要所でかっこいいやり取りやシーンがあります。
だってスネーク・プリスケンを楽しむ映画だから。
孤独のダークヒーロー(だけを)極めた映画とも言えます。
この映画で一番好きなのは刑務所長のホークとのやり取り。
ホークを演じるのは、クセ者役者リー・ヴァン・クリーフ。
彼も得意とするのは、正義のヒーローではなく、清濁併せ飲んでミッションを遂行する、やっぱりダークヒーロー系の男。
クリント・イーストウッド主演のマカロニウェスタンでも同様のキャラで、強いインパクトを残してています。
この映画でも彼が演じるホークもかつて特殊部隊にいた凄い腕という設定。
主人公が初対面の時に「あんたがホークか」って言うセリフがあります。
そして僕が」一番好きなやり取りは・・・
初対面の時にホークが主人公を「プリスケン」と呼びかけると、「スネークって呼べ」って言うんですよ。
そしてラスト。
ホークに利用され、時間ギリギリで大統領を救出した主人公にホークが「俺と組め、スネーク」って言うと、タバコを吸う手を止めて「プリスケンだ」。
ダークヒーロー同士が、お互いに譲らない会話、痺れますね。
それ以外にもカッコいいシーンが幾つもあります。
そういう点では雰囲気映画なんでしょうかね?
出演者はアーネスト・ボーグナイン、アイザック・ヘイズ、ドナルド・プレザンス(このブログの常連かな)、ハリー・ディーン・スタントンと芸達者が揃っていて、登場人物に厚みを加えてます。
(大統領を演じるドナルド・プレザンスは相変わらず、風格が足りませんが)
その中でも出色は、やはりリー・ヴァン・クリーフと、スネーク・プリスキンを演じたカート・ラッセル。
特にカート・ラッセルは、彼でなければスネーク・プリスケンは成り立ちません。
他の役者がスネークを演じるイメージが全く浮かばない。
それぐらいハマり役です。
音楽担当はカーペンター監督自身。
まぁ、彼の映画ってデビュー作「ダーク・スター」(1974)から彼が音楽担当なんですけどね。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
テーマ曲は、相変わらず電子楽器を使ったチープ感のある音楽。
その辺りもばっちりカーペンター印です。
でもね、このテーマ曲が癖になるんですよ。
結構いろんなところで使われてるので、聴いたことがある人もいるんじゃないでしょうか。
あまりに好き過ぎて、当時、輸入盤のサントラ(勿論レコード)を買っちゃいました。
(多分、日本版のサントラは出ていなかったハズ)
ちょっと小道具が安っぽかったり、もうちょっと盛り上がりのある脚本だったら良かったなぁ、とは思います。
一般的には「70点か?」という採点でも仕方ありません。
でもダークヒーローを堪能するならお勧めです。
新品DVDは安く入手できるようです。
↓ もし面白かったらクリックをお願いします!