世の中には言われないと思い出せないってものがあります。
映画もしかり。
見た映画を全部覚えてて、そらで言えるはずもなく、言われて記憶の奥底からゴソゴソ出してくるような映画はたくさんあります。
そんな映画は、暇な時にサブスクの映画リストをくまなく見てると、「お?!」と記憶の端っこにひっかかります。
今回レビューする映画もそんな一本。
記憶を辿ると「この映画は、80%が暗闇のシーンです」というキャッチフレーズが思い出されました。
だから何?っていう、そんなキャッチフレーズで宣伝されてたのな、SFホラー映画「ザ・ダーク」(1978製作/1979日本公開)
間違いなく岐阜の劇場で見ました。
いつものことながら、二本立てでした。
お目当てはもう一本の映画で、この映画はついでに見た、っていう記憶です。
しかし、今となっては、お目当ての映画の方も何だったかすっかり思い出せません。
とにかく記憶にあるのは、ショボい映画だったー、ってこと。
今回はどれだけショボかったのか、時空を超えて検証します!
(あらすじ)
ロサンゼルスで、若い女性がバラバラにされて殺害される。被害者の父親であるバイオレンス作家の主人公は独自に犯人を追うとするが、前科のある彼に刑事の対応は冷たい。同じ頃、TVレポーターもこの事件に注目して、犯人を捜そうとする。そして超能力者を持つ霊媒師はエイリアンの犠牲者の一人を予知し、警察に伝えに行くが相手にされない。そしてまた次の犠牲者が出るのであった・・・
いやー、まじでショポイです。
主人公は一番最初の犠牲者の父親。
離婚してるバイオレンス作家という設定。更に当時の嫁さんが浮気している現場に遭遇し、不倫相手をぶっ殺して刑務所に入った経験あり。
お陰でこの事件を追う顔馴染みの刑事からも、ウザがられます。
影のあるイケオジっていう設定のようですが、全くそう見えない。
ピカピカのスポーツカー(オープンのシボレーコルベット)に、豪華な家なんですか、本人がモサッとしてる。
イケオジになりたい、イケてないおじさん。
あー、劇場で見た時も、なんでこんな人が主演なんだろー、と思ったことを思い出しました。
娘が殺されてるのに、悲哀感ゼロだし、同じ事件を追ってるテレビキャスターの女性を家に誘って、エッチして、いい関係になってるし。
こいつ、娘の復讐をしたいんじゃなくて、ネタ探ししてるんじゃないのか?
とにかく見ている側が、肩入れできないタイプの主人公なんです。
あとの登場人物も、ネタを追ってるうちに、被害者の父親(主人公)とイイ関係になっちゃうニュースキャスター、過去に主人公を逮捕し、今回も何かと主人公を目の敵にする刑事、その刑事の間の抜けた相棒、予知能力を持つ霊媒師、と、ちょっとどう扱っていいか分からない人たちばかり。
そして一番の問題は、悪役エイリアン。
モンスター映画で、怪物の正体をなかなか明かさなかったり、詳細を不明にして不気味度を上げるのは常套手段。
「エイリアン」のエイリアンだって、何故人を襲うのか、何故あの謎の惑星の遺跡の中に卵があったのか、みたいな説明はないワケですよ。
(捕まえた人間に卵を植え付けて利用するって設定があって、実際にそのシーンも撮影されましたが、カットされてます)
それでも劇中で徐々にヒントやサインを出して、観客の創造力を掻き立てるわけです。
でもね、この映画のエイリアンは、最後までなーんのヒントもなし。
冒頭の「宇宙には危険なエイリアンがいるかもしれない」っていうナレーションと、それに続く隕石(宇宙船?)が飛来するシーンで、モンスターは危険な宇宙人らしいということは分かるんですよ。
エイリアンについては、「犠牲者の体をバラバラにする残虐な殺し方をする」と、「灰色の皮膚」、「目から怪光線を出す」ぐらいしか分かりません。
普通は主人公たち(大体、科学者が含まれる)が、エイリアンの残したヒントから色々と推理してくんですが、この映画にそういう知性がある人は全く出てきません。
つまり、エイリアンのことは最後まで何も分からないまま。
更に言えばエイリアンといっても、後ろ姿は2メートルちょっとのデカい人です。
(暗闇で顔は見えず)
これって「遊星よりの物体X」(1951年版)の宇宙人とレベルが同じです。
頭からパーカーのフードを被ってるだけに見えるので、特殊メイクらしきものもなさそうなので、それ以下かも。
↓ 「遊星よりの物体X」の宇宙人
という影がめっちゃ薄いエイリアン。
そのためモンスター(エイリアン)映画なのに、人間ドラマばっかしが記憶に残っちゃうんです。
それもC級のドラマが。
闇雲にエイリアンを追う主人公と、いつの間にか恋仲になったレポーターが、いつも刑事から嫌がらせを受けてるとか、霊媒師の予知能力のおかげで、エイリアンを追い詰められるとか、もう雑談レベルのつぎはぎです。
霊媒師が「次はパーティー好きの若いアーリア人が殺されるわ」と何の根拠もない(ただ「私には見えたのよ」というだけ)話を警察に伝えても、相手にされないエピソードがあります。
脚本家は警察の無能さを表したシーンだと思うんですが、その程度の話で警察に信じてもらえると思った霊媒師ってどうなの?って思いますし、反対にそんな話を警察が信じて捜査を始めたら、その警察どうよ?って心配になりますよね。
それぐらい雑な脚本です。
超能力を持つ霊媒師は、脚本家が知的に謎解きをしていく展開が考えられなかったから、一挙解決の方法として「何でもお見通し」の存在として登場させたんじゃないかって疑ってます。
とにかく、どの登場人物にも共感出来ないし、エイリアンは影薄いし、雑談で思いついたプロットをそのまま撮影しちゃったような話です。
結論は「時空を超えて検証しなくてもよかったな」レベル。
きっと思い出せなかったのは、頭の中で封印していたに違いありません。
「こんな作品、サブスクで出さないで欲しい」と逆キレだと分かっていても言いたいぐらい。
(でもマイナーな作品もラインナップしてくれてるので、恩恵の方が大きいんですけどね)
みなさん、見ると時間の無駄になります。
犠牲者は僕一人で十分です。
DVDは・・・お手頃な値段で入手可能です。
(ジャケットにエイリアン出てますねww)