そこそこ昭和の特撮モノは観ているつもりですが、そこそこ有名だけど、何となく避けているものもあります。
以前レビューした「宇宙大怪獣ギララ」(1967)もそんな映画で、ついに勇気を振り絞って観ました。
そして今回は「好き嫌いを言わずに見る特撮」第二弾。
それが「大巨獣ガッパ」(1967)。
もう怪獣のデザインがアレなので、正直期待値ゼロ。
主題歌も脱力系だし。
そんなガッパをレビューします!
(あらすじ)
週刊誌プレイメイトの社長は、創刊5周年を記念して、南国をモチーフにしたテーマパークの開設を目論む。そのテーマパークで飼う珍しい動物や昆虫を採集するために、雑誌記者の主人公や動物学者、カメラマンから成る探検隊を、南国のキャサリン島に向かわせる。一行はキャサリン諸島で大噴火をしている島を発見し、上陸する。そこではガッパを祭る原住民が住んでいた・・・
製作は当然特撮の大御所・東宝ではなく、日活。
日活は戦前からある名門映画会社で、名作を幾つも作ってましたが、1960年代に斜陽になると、18禁のポルノ映画の製作に乗り出します。「日活ロマンポルノ」シリーズです。
僕が物心ついた時は、既に「日活ロマンポルノ」が全盛期でした。
もう小学生の頃には「エロ映画=日活」。
当時は日活という名前だけでドキドキしたものです。
ちなみに「日活ロマンポルノ」は低予算で、若手監督&役者にチャンスを与えまくったしたことで有名で、後の有名俳優や有名監督にをたくさん排出しています。
監督では神代辰巳さん、藤田敏八さん、村川透さん、森田芳光さん、相米慎二さん、金子修介さん等、俳優では原悦子さん、美保純さん、風間杜夫さん、内藤剛志さん、大杉連さん(デビューは新東宝)等です。
まぁ、そんな日活が特撮ブームに乗るべく製作したのが、この一本。
っていうか、後にも先にも日活の特撮はこの映画だけです。
結論から言えば、日活自身が「ああ、俺たちに怪獣映画は無理だ」と悟らせたように作品でした。
カネ儲け目的で、エキゾチックな南海の島に向かった一行が、そこで怪獣を捕獲し、日本に連れてきいて一儲けしようとしたものの、怪獣が大暴れして大変なことに・・・というコンセプトは、特撮の伝説的作品「キングコング」(1933)で確立されたコンセプトをなぞったもの。
このコンセプトを換骨奪胎した名作として「モスラ」(1961)や「キングコング対ゴジラ」(1962)があります。(どちらの製作は東宝)。
ただし「モスラ」や「キングコング対ゴジラ」と比較すると、かなりシンドい出来。
キャラの作り込みや、ドラマ部分の掘り下げがかなり甘いです。
実はいいところまではいけてるんですよ。
登場人物も金儲け主義のスポンサーおやじ、スクープを狙う記者、生物学者、美人カメラマンと、ちゃんとお約束みたいに一通り揃えてるし。
でも、そこで満足しちゃって、会話の妙もなければ、展開も凡庸。
設定段階で満足しちゃったんじゃないの?って思えます。
(その設定も東宝からしたら基本の基本レベルでしかないんですけど)
例えば火山が大爆発してる島が出てくるんですよ。
それを見て探検隊一行が「あの島に行ってみよう!」って言うんですよ。
普通行かないですよね???
東宝だったら、生物学者が「火山活動が激しい時は、普段奥地に生息しているような珍しい動物が海辺までやってくることがある」とか発言して、探検隊本来の目的と一致するから、リスクを取ろうっていうような「観客が納得する」流れを作ると思うんですよね~。
そういうところが甘いです。
そんなワケで登場人物が深く考えてない行動が目立ちます。
まぁ、ドラマの部分が「早く子供ガッパを捕まえるシーンに行こう」「次は親ガッパが暴れるシーンだ」という怪獣メインのシーンの繋ぎのような扱いになってるから、脚本も力が入ってないのかもしれません。
反対に言えば、上手い怪獣映画はこういう人間ドラマの部分にも、ちゃんと面白みを持たせて、怪獣が出てなくても飽きない作りになってるんですよね。
そこは日活が勉強足りなかった点です。
ちなみに南海に向かう理由は、珍しい動物や昆虫を採取するだけでなく、現地の美人をスカウトし、南国テーマパークの目玉にしようというもの。
完全に人買いですね。
今の時代ならアウトです。
そして何より主人公の怪獣ガッパのデザインがイマサン。
ポスターでこの怪獣を見て、映画館に行きたがる子供って果たしてどれぐらいいるんでしょうか?
ガッパは河童と天狗を足して怪獣風にした感じ。
怪獣というより、妖怪に近いです。
まぁ、一目見たら忘れないですけど。
ただ本当の問題はデザインではなく、怪獣の怖さが描けてないこと。
致命的です。
怪獣映画には珍しく、怪獣の親子愛・家族愛が描かれます。
そこは東宝や大映のガメラ(1965)との差別化なのかもしれませんが、怪獣映画としてはハンディです。
仲のいい怪獣夫婦が、拉致された我が子を助けにくる。
そんな怪獣に観客が恐れを抱くのは難しいです。
寧ろ、
「ガッパ、かわいそう」
「悪いのは人間だ!」
に、なっちゃいますよね。
怪獣映画らしさを出すなら、自分の子供を拉致した人間に怒り心頭になって、我も忘れて絶対的な力で破壊の限りをつくす、っていう風にしないと。
とにかくガッパに絶対的な狂暴さが感じられませんでした。
(あのモスラでさえ、東京タワーで繭を作るわ、羽ばたきでピル群を一気に倒壊させるわ、と凄みを見せてました)
この怪獣のキャラ作りが大失敗の原因です。
そして全く怪獣映画に雰囲気作りに寄与しない、オープニングから流れる主題歌。
典型的な昭和歌謡です。(でも、どことなく演歌風味アリ)
特撮怪獣映画に不似合いな主題では、「宇宙大怪獣ギララ」(1967)の「ギララのロック」と双璧じゃないでしょうか。
最初は雄々しくガッパの恐ろしさを強調してますが、後半はガッパの親子愛を歌ってます。
だってサビが、
仲良く親子、故郷に帰る
ガッパぁ~、ガッパぁ~
ですよ。
でも、一度聴いたら絶対に忘れられないインパクトはあります。
僕も子供の時にTVでこの曲を聴いて以来、忘れたことはありません。
ただ前述のように、お約束だけどバラエティに富んだ登場人物は出てるし、よくあるネタだけど南海の謎の島で怪獣を発見するとか、怪獣映画の基本はちゃんと学んでいるように思えます。
怪獣映画の肝でもある特撮も頑張ってました。
実際、石像の倒壊シーン等、「おー、なかなかやるなぁ」というシーンもそこそこあります。
(勿論、安直な出来にお「オイオイ」と口に出ちゃう特撮シーンもありますけど)
「日活初の怪獣映画を作ろう!」という心意気はあったでしょうし、撮影、脚本、設定などは東宝の怪獣映画を参考にしてたと思います。
前述のガッパのキャラ作り失敗に代表されるように、怪獣映画の本質の追求が浅く、ただ表面的に真似してるだけだったんじゃないでしょうか。
「決定的にダメなところはないけど、どこを切ってもイマイチ」なのはそういうことでしょう。
まぁ、結局、主題歌とガッパのデザインのインパクトだけが記憶に残る映画なんですけどね。
現在、「大巨獣ガッパ」の新品DVD/Blu-rayは入手困難のようです。
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