パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【海燕ジョーの奇跡】アクション映画でもなく、ヤクザ映画でもなく、青春グラフィティ?

時々、ずっと勘違いしている映画っていうのがあります。

例えばこのブログでも取り上げた「コーマ」(1978)は、長い間「SF映画」だと思ってたんですが、観てみたら「医療サスペンス」だったんです。

 

さて、今回取り上げるのは時任三郎さん主演の海燕ジョーの奇跡」1984)も、そんな勘違いの1本。

当時の予告編やポスターでは、かっこいい男のアクション映画のような印象でした。

タイトルもちょっとカッコいい感じがするじゃないですか。

勝手に正義のハードボイルド系主人公が、ピンチになりながらも悪を追い詰める映画だって思ってたんです。

 

しかしその後、映画本で「意外に冗長で退屈」という批評を読んで、興味がかなり後退。

結局そのまま観ず仕舞いになり今に至りますが、タイトルのカッコよさもあって、頭のどこかにずっと気になってる一本でした。

 

最近、この映画をサブスクで発見したので、見てみることにしました!

 

(あらすじ)

本土系のヤクザ組織「琉球連合」に押され、沖縄の島袋組は解散になってしまう。島袋組の若きヤクザである主人公は弟分とバーで飲んでいる時に、琉球連合のヤクザに因縁をつけられるが、拳銃を振りかざして追い払う。しかし恨みに思った琉球連合のヤクザたちは、弟分を拉致し、殺害。それに憤った主人公は、琉球連合の幹部を射殺する。

島袋組の組長と彼の愛人、自分の恋人、刑務所で知り合った元学生運動家に助けられ、沖縄本島を脱出した主人公は、子供の頃に生き別れた父親が住むフィリピンへと密航する・・・

 

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僕的には「意外に冗長で退屈」ということはなく、寧ろ、面白かったです。

思い付きで見始めたので「飽きて途中で止めちゃうかも?」とも思ってたんですが、ちゃんと最後まで見終えました。(上映時間2時間13分)

 

まず、この映画は「アクション映画」ではありません。

銃撃戦やカーチェイスは出てきますが、大掛かりなものは終盤のシーンぐらい。

ここは宣伝に騙されました。

 

そして主人公は正義のヒーローではなく、沖縄のヤクザ。それも下っ端。

弟分を殺されたことで、勢いで敵の幹部を殺しちゃうような直情型で、頭が切れる男ではありません。

幹部を殺した後は、相手の組や警察から逃亡。

なんだ、今風のヤクザ映画だったのか?と思ったら、沖縄を出たぐらいから、旅モノになります。

フィリピンに辿り着いて、お金を失い、現地の怪しげな日本人に雇われからは、今度は青春映画っぽくなります。

フィリピンでは追われてる危機感も薄く、現地に馴染んで楽しそうに仕事をしてます。(裏っぽい仕事のようですが)

そこに日本から恋人が訪ねてきて、つかの間の休みを楽しんだ後、やっと日本から追って来たヤクザとの銃撃戦があり、フィリピン軍の検問に突っ込んで終わり。

最後はアメリカン・ニューシネマの「バニシング・ポイント」(1971)みたいです。

 

海燕ジョーの奇跡_ポスター

映画としてはかなりテンポがいいです。

無駄だなぁ、と思わせるようなシーンはありません。

昭和の映画っぽい雰囲気ではありますが、妙に人情や情緒とかに流れることなく、主人公の焦燥感や流されていく感じをブレることなく描けてました。

 

主人公を演じた時任三郎さんは、深く考えずに生きている若者を上手く演じてたと思います。

ただ序盤にあったヤクザ感は、時間が経つにつれて、薄れていき、後半は素直に人の意見にも耳を傾ける好青年に見えました。

元々、混血児という性を背負っている(フィリピンと日本のハーフ)から、ヤクザの道に入っただけで、根はいい青年という設定かな?とさえ思いました。

終盤では好青年っぽいので、最後のバッドエンディングでは破滅感がなく、ややおとぎ話的な雰囲気さえあります。

この辺りは、同じ破滅していく無軌道な実在のチンピラ&強盗犯(三菱銀行人質事件)を宇崎竜童さんが演じた「TATOO <刺青>あり」(1982)とは全然違います。

 

ちなみにこの映画も旭琉会理事長射殺事件という実話に基づいていますが、現実の組長射殺犯は逃亡せず、すぐに自首をしてるそうです。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

藤谷美和子さんが演じる主人公の恋人は、典型的なヤクザ映画に出てくるヒロインとは異なり、すれた感じが全くしません。

エッチなシーンもありますが、妖艶さはなく、純粋に主人公を一途に想い続ける一生懸命な姿の方が印象に残ります。

まさに青春ドラマ。

 

この映画で一番印象的だったのは、フィリピンで主人公の面倒をみる、胡散臭い日本人・ヨナミネを演じた原田芳雄さん。

明らかにカタギじゃない、裏家業の人なんですが、ぶっきらぼうでありながら、主人公を見守って、面倒をみるんです。

クセはあるけど、とっても良い人を見事に演じてました。

 

この映画には相手のヤクザも含めて、「人として許せない、嫌らしいヤクザ」というステレオタイプのキャラは、ほとんど出てきません。

刺青を見せびらかすようなシーンもなし。}(原田芳雄さんがちょっと見せてたかな?)

ステレオタイプのヤクザは冒頭の主人公の弟分を殺すチンピラぐらいでしょうか。

北野武さんの描くようなヤクザの世界とは全く違います。

 

この映画は三船敏郎さんの三船プロが半額出資してます。

その縁もあって三船敏郎さんも出演してます。

出演時間は短いですが、主人公を密航させる漁師の役。

ヤクザの役をオファーされたようですが、「そういうのはやらない。百姓か漁師がいい」ということで、この役になったそうです。

さすがの三船敏郎さんといった存在感が光りました。

 

田中邦衛さんの元学生運動家も味があるなど、脇を固めている俳優はみなさん、良かったです。

 

あと主人公の密航を手配する恋人の祖母が独り言のように語る「地の果て、海の果てには楽園もあるでしょう」というセリフが印象的でした。

 

終わってみれば、主人公の紆余曲折を描く青春グラフィティ物。

自分に素直な主人公が時に流され、時に悩み生きていく様を描いた作品といえます。

娯楽作というカテゴリーにはなるんでしょうけど、ちょっと文学的な雰囲気もあります。

「冗長で退屈」という批評は、時任三郎さんが躍動する大アクション映画」という先入観を持ってたからかもしれません。

 

とってもお勧め!というワケではありませんが、意外な拾い物と思える作品じゃないでしょうか。

 

最後になんで「海燕ジョーの奇跡」なんでしょうね。

海燕ジョーは、映画の中で主人公が海燕に例えられるから分かるんですが、何故「奇跡」なのか最後まで分かりませんでした。

映画の中では奇跡らしいことは全く起こりませんでした。

寧ろ必然のように物事は流れていきます。

その辺りは原作から改変されて、なくなっちゃったんでしょうか?

DVDは、こなれた金額で入手可能です。

 

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