「スターウォーズ」(1977)から始まるSFブームの中でいくつか生まれたSFパロディの一つが「スペース・パイレーツ」(1984)
劇場では見てなくて、30年ぐらい前にレンタルビデオで借りて見たような気がします。
何故かお色気SF(?)「スタークラッシュ」(1978)と記憶がまじっちゃうんですよね。
そんな映画を今回はレビューします。
(あらすじ)
宇宙中から水が枯渇した世界。主人公は貴重な氷を運ぶ皇帝の輸送船を襲って、氷を強奪する「氷の海賊」。ちょっと抜けた仲間と安物の戦闘ロボットを率いて、輸送船を襲い、そこで冷凍睡眠中の王女を発見。彼女も強奪して逃げようとするが・・・
原題は「THE ICE PIRATES」。
氷の海賊なのに、邦題は「スペースパイレーツ」。
この頃は、SF映画っていうだけでそこそこ売れたので、邦題もSF映画って分かり易いように付ける傾向があった気がします。
カーク・ダグラス(マイケル・ダグラスのお父さん)主演のカルトSF「SATURN 5」も、邦題は「スペース・サタン」(1980)になってました。
こっちは土星(英語名サターン)の衛星が舞台なんですが、ロボットが暴走して人間を襲うので、サタン=悪魔にしたんょうか?
ちなみに「スペース・サタン」は未見なんで、一度見てみたいすが今は視聴困難映画のようです・・・
さて、この映画の舞台は、水が枯渇している世界。
宇宙で唯一水の取れる惑星を皇帝が占有し、宇宙を牛耳ってる。設定的には「DUNE 砂の惑星」(1984/2021)に似てます。
そんで、皇帝の輸送船を襲って、氷(水)を横取りする海賊たちが主人公なんですが、この水の取り合いっていう設定が全く生きてない。
そもそも主人公たちが水で困ってるシーンが皆無なんですよ。みんな、普通の飲み食いしてるし。
水の貴重品感がゼロ。
だから「氷の海賊」って言っても、「お宝」を狙ってる感がないんです。
邦題の「宇宙海賊」の方が、主人公をストレートに表しているんじゃないでしょうか。
いつもドジばっかりする戦闘ロボットが出てきたり、お姫様を助けたり、剣でチャンバラしたり、皇帝に捕まって宦官の奴隷として売られそうになったり、船内で宇宙生物が襲ってきたり、とドタバタの基本が詰まっていて、コメディとしてのポイントは押さえてあるんじゃないでしょうか。
そう言えば船内で主人公たちを宇宙生物は「エイリアン」(1979)のチェストバスターっぽいです。
チャンバラは、ライトセーバーのような未来的なやつではなく、本当に昔の海賊が持っているような剣。ちなみに戦闘ロボットは斧で戦います。
明らかに時代錯誤なんですが、海賊なんでそれもありかな、と妙に納得。
だって服装も立ち居振舞いも海賊ですから。
主人公は、ワイルドな風貌に、ちょっとユーモアセンスがあり、この手のパロディ映画の主人公としては合格。
彼の部下に売れてない頃のロン・パールマン(「ヘルボーイ」(2004))と、当時そこそこ売れてたはずのアンジェリカ・ヒューストン(「アダムス・ファミリー」(1991))が出演してました。アンジェリカ・ヒューストンはこの映画の翌年アカデミー助演賞を受賞してます。(勿論、この映画ではなく、「女と男の名誉」(1985)ですw)
個人的には主人公の相棒を演じたマイケル・D・ロバーツが、良かったですね。
演技が上手いとか、超個性的とかじゃないんですが、「この主人公にこの相棒」っていう、相性(ノリ)の良さを出してました。
この映画は、典型的なお気楽極楽映画。
話はお姫様から、伝説の水に溢れた惑星を探す旅に付き合わされるという、SFっぽい、それらしい筋立てに、適当に見せ場を散りばめてるというもの。
基本はパロディ映画なので、見せ場=有名SF映画から借りてきたみたいなシーンなんですが、そこそこ見せ方が上手く、そこそこ飽きないように上手にまとめています。
勿論、突っ込みどころは満載だし、すべってるギャグ(宇宙スペルマ)もありますが、作ってる方からしたら「そんな真剣に見ないでよ。ほらほら肩の力抜いて」って言われそうかも。
ふかーく考えずに見てれば、なんとなく面白く時間が過ぎてきます。
ハッキリ言えば、真面目に作られた「銀河伝説クルール」(1983)より面白かったです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
ただカルト映画という、マニアをくすぐるレベルにはありません。
普通のB級娯楽作品。
あくまで「偶然出会えば、見てもお気軽に楽しめる」作品です。
ワザワザ探してまで見るまでもありません。
僕も三回目はないかなー。
DVDはちょっとお高めです。