SFブーム中に公開された映画の一本「銀河伝説クルール」(1983製作/1984日本公開)
よくあるB級娯楽映画の一本。
プライムビデオの100円セールで見かけるまで、その存在をすっかり忘れてました。
遠い記憶を辿ると、手裏剣みたい武器を持った主人公のイメージが思い出されました。
だって手裏剣なんて珍しいから。
見たことがあるのか、どうかさえ記憶にないこの映画をレビューします。
(あらすじ)
王子である主人公は、結婚式の当日、惑星クルールに攻めてきた侵略者ビーストの軍勢に父親と部下を皆殺しにされ、更に花嫁を奪われてしまう。悲嘆にくれる主人公だったが、賢者に導きで伝説の武器を手に入れる。そして苦難を乗り越えながら、ビーストの居城<黒い砦>を目指していく・・・
はっきり言います。
邦題には「銀河伝説」とありますが、オープニングに何故か宇宙から敵の要塞が降りてくるシーンと、敵の兵隊がビームらしきものを撃ってくるところと、オープニングとラストのナレーションに「銀河」って出てくるところ以外は、銀河どころか、全くSF風味はありません。
主人公たちは馬に乗ってるし、普通にお城に住んでます。
武器は剣や斧だし。
魔法使いや一つ目巨人が出てくる、まさに剣と魔法の世界。
これ、完成してから「SFブームに乗っかろうぜ」ってことで、オープニングの宇宙のシーンと、ナレーションを付けたんじゃないか?、って疑ってます。
いきなり批判から入りましたが、じゃ、出来映えはどうかって言うと、ファンタジー映画としては悪くないです。
もっと正直に言います。
超B級映画としては、まぁ、頑張ってるな、と。
話は桃太郎タイプ。
父親と部下を皆殺しにされ、嫁さんを拉致られた主人公が、賢者の助けを借りて、仲間を集めながら、鬼ヶ島、じゃなくて敵の本拠地「黒の砦」を目指すんです。
仲間は脱獄してきた囚人、口先だけの魔法使い、死期を悟っている一つ目巨人等、一癖あるちょっとマンガ的なキャラだし、話の展開は伝説の武器を探したり、預言者に会いに行ったり、と謎解きしながら敵の本拠地を目指すんですが、これってまさにファミコン時代のロールプレイングゲームの実写化。
短めのイベントが連続するので飽きません。
ただどのイベントも盛り上がりの欠ける、緩めな感じがあります。
仲間が死んでも、一つ目の巨人以外は、あー死んじゃったのね、ってレベル。
ドキドキ感少なめ。
この辺りのお気楽さは、やっぱり初期のロールプレイングゲームの実況を見ているような感覚かなぁ。
寧ろ、ファミコンの「ファイナルファンタジー2」(1988)の方がドラマチックだったかも。
そんなロールプレイングゲームの実写化ですが、それなりにお金をかけて、しっかりとした美術セットや、壮大なロケなどスケール感はあり、有名な俳優は出ていないものの役のイメージに合った役者が演じてるので、安っぽさや手抜き感はありません。
だからと言って、素晴らしい映画になってるか、っていうとそれは別の話ですが。
この映画のキーである伝説の武器っていうのが、ポスターやチラシにも全面に出ている豪華な手裏剣。
賢者が「これは最後の最後で使うのじゃ」と主人公に言うのを見て、観客の僕らも「すげー武器なんだろうな」って期待します。
そしてラストは、当然、伝説の武器でラスボスと対決!
手裏剣は投げたら、相手をブスっと切って、サっと主人公のところに戻ってくると思うじゃないですか。
でも手裏剣は投げられると、敵の周りで空中浮遊してるんです。
????
ドローンか?!?!?
なんと主人公が手をかざして、念力で手裏剣を遠隔攻撃!!
ラスボスの周りで緩めに動く手裏剣。
主人公は手を掲げて念じてるだけ。
迫力も、緊迫感もナッシング。
更に相手が怪獣レペルの大きさなので、こんなちっちゃな手裏剣効く気がしません。
いや、ポスターでは手裏剣からビームが出てるから、最後には波動砲みたいなビームで倒すに違いない!
そんなものは出ません。
ポスターに騙されました。
それでも相手にブスっと刺さるとラスボスがばったり倒れるんです!
そんな小さな手裏剣が刺さって、死ぬのか?
手裏剣が凄いっていうよりも、ラスボス弱すぎないか???
そしたら案の定、実はまだ生きていてました。
いよいよ手裏剣の奥義発動か?!!!と思ったら、念力でも戻ってこない手裏剣は放棄し、嫁さん(お姫様)との愛の力で、手から火炎放射が出るようになり、相手を焼き殺します。
これなら伝説の武器いらなくね?
苦労して取る必要なかったんじゃね?
ここだけは王道ではありませんでした。
ちなみにクルールというのは、この伝説の武器の名前ではありません。
彼らが住んでいる惑星の名前ということになってますが、これも出てくるのは最初のナレーションだけ。それも英語では「われらの世界、クルール」って言うだけです。
惑星なんて言ってません。どっかの国の名前だと思いますよね。
そもそも、それだけしか出てこないのに映画の名前を「クルール」ってする意味あるんでしょうか?
ちなみにラスボスの怪獣は、妙に昭和の日本の妖怪映画に出てくるような容姿(作り)をしていて、ファンタジーモノっていうより、妖怪大決戦っぽかったです。
総論としてはファンタジー映画としては、無難。
全体的に明るいトーンで話が進むので、話の起伏が乏しい感じがします。
若い頃のジェームズ・ホーナーの曲も全体的に明るめで、「そこは暗めの音楽で緊張感を盛り上げるゆだろ?」っていうところ、能天気な音楽が流れることが多かったのも、明るいトーンの原因の一つかも。
劇中に悲しみや絶望感がゼロなので、総じて子供向けってところかな。
大人がわざわざ見ることはないなー、っていうのが正直な感想です。
そんなワケで話は凡庸で、個性も刺激なく、真面目に作ってあるだけが取り柄みたいな映画なので、記憶から忘れ去られるのも仕方ないことです。
それでも、あの「ネバーエンディングストーリー」(1984)より大分マシです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
そう言えば、この映画を監督したのはピーター・イエーツ。
娯楽作を主戦場とし、硬派な現代劇を得意としている監督なので、この映画を担当したのはちょっと驚きでした。その後、この手の映画を作ってないので、さすがに場違いだと思ったのでしょうか。
ただ、繰り返しになりますけど、そんなに違和感のある演出もなく、ファンタジー映画としてソツなくまとめていたと思います。
現在はDVDは入手困難のようです。