パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【悪魔の沼】ザラついた画面の、ザラついた質感のスプラッター

悪魔のいけにえ」(1974)で、従来にないソリッド且つ直線的な残酷描写で、一躍有名になったトビー・フーバー監督。

彼が「悪魔のいけにえ」の次に撮ったのが、今回レビューする「悪魔の沼」(1977)。

ま、タイトルから分かる通り、これもホラー系映画です。

今回、この映画の初見となります!

 

(あらすじ)

田舎町の娼館から、新人の女性が逃げ出した。彼女がたどり着いたのは、沼地に建つうらぶれたモーテル。最初は愛想の良かった主人だったが、彼女が娼館から逃げてきたと知ると、豹変し・・・


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まぁ、確かに沼は出てきますが、沼がメインじゃないです。

あとポスターには大鎌が全面に出てますが、これもメインじゃないです。

そして、ネタバレになりますが、悪魔も出てきません。

 

そんな身も蓋もない邦題がとっても70年代です。

ちなみにwikipediaによれば、原題は「Eaten Alive」「Death Trap」「 Horror Hotel」等、複数あるみたいです。

製作中にタイトルがコロコロ変わったか、何度もタイトルを変えて、その都度「新作」っぽく公開していたのかもしれませんね。

悪魔の沼 チラシ

「ハロウィン」(1978)と同様に、悪魔でも、幽霊でも、妖怪でもなく、ただのサイコな殺人鬼の話。

これも「悪魔のいけにえ」に続いて、実話がベース。

寂れたモーテルを経営している女好きおやじが、自分の思う通りにならなかったり、邪魔するやつがいると直情的に殺しちゃうだけ。

ホント、それだけの映画です。

ちょっとアルフレッド・ヒッチコックの名作「サイコ」(1960)にプロットが似てるっていや、似てますね。

 

このおやじ、一人でブツブツ言ってるなど、完全にアッチの世界にいってる人という設定のようです。

だから殺し方も「バレないように」とか「気づかれないように」なんていう奥ゆかしさはゼロ

「あー、もう殺すしかねぇ」と思ったら、即実行

有言実行の漢です。

 

ホント、それだけの映画。

その点では「悪魔のいけにえ」と一緒。

当時、「また同じような映画を作った」みたいな扱いをされてた記憶が薄らとあるんですが、あながち的外れではない感じです。

お陰でトビー・フーパーと言えば、こういう残酷ホラー映画の職人という印象が付きました。

実際、その後は「ポルターガイスト」(1982)や「スペースバンパイア」(1985)みたいな映画も撮ってるんですけどね。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

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さて、そんなシンプルなプロットですが、91分間、まぁまぁ飽きずに見られます。

その理由として一つはあまりの直線的な展開が多いので、グダグダ感がないこと。

作る方も映画的完成度を求めるより、勢いをそのまま持ち込んで作り上げたんじゃないでしょうか。

そのためかまったくと言っていい程、洗練されてないので、見ている間ザラザラした、粗削りな感じがします。

このザラザラ感は前作「悪魔のいけにえ」より上かもしれません。

 

次に犠牲者を含む登場人物の大半は頭のネジが飛んでることです。

犠牲者の中にも一人でブツブツ妄想の世界に入ってる人がいたります。

こういう人物描写を見ているだけでも、楽しいですね。

(普通の楽しみ方ではないですけど)

 

ちなみに「エルム街の悪夢」シリーズでフレディを演じたロバート・イングランドが、ちゃんと素顔で出ています。

出演シーンも長いし、セリフもいっぱいあるので、彼のファンは必見です。

 

今回はPRIME VIDEOのサブスクで見ることが出来ました。

ただ昨今流行りのレストアされたモノではないです。

そのせいもあるのか、画面が妙にザラザラして、残酷描写の多い映画の雰囲気に合ってました。

 

悪魔のいけにえ」で手腕を買われたトビー・フーパー監督のハリウッド進出第一弾らしいんですが、それにしては全体的に安っぽさ漂います。

(ハリウッドといってもピンキリなんだろうなぁ、と妙に納得)

舞台となるモーテルも、もろにセット。

リアルさには欠けますが、寧ろ、舞台劇を見てるみたいな雰囲気になって悪くありません。

この映画、前述のようにネジが飛んだ人がいっぱい登場することもあって、「非現実的なお笑い要素」があるので、舞台劇っぽい、いい意味でのニセモノ感が似合うんじゃないでしょうか。

「8時だよ、全員集合」の前半のドタバタ劇に通じるものがあると思ったのは僕だけでしょうか?)

 

赤い強調したライティングが目立つんですが、この映画は舞台みたいなもんだと思って見てるので、不自然さは感じなかったです。

ただ「赤色で照らしてだけ」という雰囲気が強く、原色ライティングの王様、ダリオ・アルジェントのような芸術性も効果もなかったのは残念。

 

殺人鬼の映画だけど、ポイントポイントでモーテルに隣接する沼からワニが襲ってくるのは、ちょっとジョーズっぽくて、いいアクセントになってました。

 

ラストが余韻のない、ブチ切のような終わり方ですけど、この情緒を挟まない作風に似合ってて、僕は好きでした。

 

そういえばトビー・フーパーが音楽を担当しているんですけど、才能はない感じ。

そこはジョン・カーペンター監督(自作映画の音楽は基本担当)を見習って欲しいです。(ジョン・カーペンターの音楽も、いつも似てますが)

 

結構褒めましたが、じゃ、普通の人に勧められるか、と言われれば、「勧められません」。

やっぱりこの手の映画のマニア、それも古典的な映画も見ておこうというマニア向けの映画だと思います。

っていか、そういう目で見ないと、最後まで見届けられないっていうのが正直なとこかも。

 

この映画は現時点ではDVD、Blu-ray共に入手が難しいようです。