パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ポルターガイスト(1982)】ディズニーランド風お化け屋敷?

当時、ポルターガイスト(1982)を観た時は、めっちゃ面白くて、満足したおぼえがあります。

 

そんな映画を今回、PRIME VIDEOの100円レンタルで見ました。これも実に40年ぶりです!

(あらすじ)

大規模開発の新興住宅地。開発会社のトップ営業マン一家は、率先してそこに住宅を購入し、引っ越してきた。しかし夜中に次女が何も映っていないTVに向かって話しかけたことをきっかけに、家の中で不思議な現象が起こり始める。そして嵐の夜、次女は「TVの向側」に連れていかれてしまう・・・

 


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公開時に見たのは岐阜のロイヤル劇場。

昭和の岐阜市の映画館で、今での残っている唯一の映画館です。(アダルト映画館を含めると、もう一つあるみたいです)

同時上映はナスターシャ・キンスキー主演の「キャットピープル」(1982)。

万人が楽しめる「ポルターガイスト」と、ナスターシャ・キンスキーのヌードが話題の「キャットピープル」の組み合わせって、さすが昭和です。(きっとホラーっぽい映画の組み合わせって、だけで深く考えてないんだと思う)

とにかく面白い映画でした。

あまりに面白かったから、「キャットピープル」が不当に面白くなく感じたぐらいです。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

さて、その時の感想が正しかったのか、改めて鑑賞。

 

ダラダラとした前ふりみたいな、思わせぶりの部分はなく、始まってすぐに直球で騒霊騒ぎが始まります。

 

そこからは飽きることない、ノンストップ2時間です。

 

ただね、監督が「悪魔のいけにえ」(1974)のトビー・フーパーだから、殺伐、無慈悲、ぐちゃぐちゃ、血がビュービューを期待するじゃないですか。

でもね、この映画は「悪魔のいけにえ」の1/100も怖くないんですよ。

ゾっとするようなシーンもなければ、観客の神経を逆なでするような場面もないです。

 

はっきり言えば、「怖さ」がない。

 

ここはホラーファンの僕からしたらがっかりポイントです。

 

そして、この映画、とにかく明るいんですよ。

大御所ILMが特撮を担当してるんですが、キラキラっぽくて怖くないんです。

庭の木が襲ってくるシーンも、ホラーっていうより、ディズニーランドのアトラクションみたい。

幽霊もおどろおどろしさはなく、光でキラキラしてるし。

だから全体の印象はファンタジーっぽい。

 

きっと、この映画のイニシアティブを握ってるのは、製作・原案・脚本を担当しているスティーブン・スピルバーグなんでしょうね。

映画の雰囲気も、彼が製作・(一部)監督をしたオムニバス映画「トワイライト・ゾーン/超次元の体験」(1983)に近いです。

 

そんなわけで、ハラハラすることはあっても、目を閉じたくなるようなことはありません。

唯一、不気味シーンは、冒頭で女の子が放送の終わってるテレビ(画面が砂嵐←死語?)に話しかけてるところ。

お母さんが誰と話してるの?って聞くと、TVピープルって答えるんですよ。

明らかに霊と話してるのに、無邪気に「TVの人たち」って表現するのが印象的です。

ポルターガイスト パンフレット表紙

 

話自体もひねりはなく、とっても王道。

大体、想像通りの展開が続きます。

スピルバーグが子供の時に観たホラー映画を、自分の(明るい)テイストで再現した感じでしょうか。

特に前半の台所でポルターガイスト現象(椅子が勝手の動いたり、積み上がったりする)シーンで、家族がまるで家の中にアトラクションが出来たみたいに、はしゃぐシーンがコミカルで、まったくホラー映画にそぐわない感じでした。

 

この映画、主人公は幽霊に取りつかれた家族のお父さんとお母さんですが、残念ながらキャラとしてとっても魅力が薄いです。

特に役に立たない雰囲気満載のお父さんは、「いない方がよくない?」って誰もが思うだろうし、お母さんもホラー映画に出てくるステレオタイプレベル。

 

全般的に主役は心霊現象(アトラクション)であり、主人公夫婦は引き立て役というか、狂言回しっていう扱いなんでしょう。

 

キャラが立っているのは、幽霊に連れ去られる女の子や、心霊学者チーム。

特に超能力者のおばちゃんが最高です。

一番頼りがいがあって、しかもチャーミング。

「これでこの家は清められました」って宣言したあとに、カメラを向けられてポーズを取るシーンはおちゃめです。こういうところも既存のホラー映画にない、明るいキャラ作りです。

 

難癖をつけるとしたら、クライマックスのどんでん返しは気に入りません。

もう大丈夫ってみんなが安心した後に、もう一度幽霊が大暴れして、家が崩壊。

家族はなんとか逃げ出して、終わりなんですが、それって、あの超能力者のおばちゃんの徐霊は失敗だったってことですよね。

彼女の活躍が帳消しっぽくなっちゃってます。

(女の子をTVピープルから取り返した功績はありますが)

この終わり方は、当時も今回も「なんだかなー」と思いました。

ひと捻りしたかった気持ちは分かりますが、安易過ぎて、単に後付けの蛇足に見えます。

 

ただ最後に這う這うの体でモーテルに逃げ込んだ家族が、モーテルの部屋からテレビを外に出して終わるラストシーンはしゃれてると思いました。

 

まさに大人も子供も楽しめる家族向けのホラー風味のアトラクション映画です。

全編スピルバーグ印。彼が全権をふるってなかったら、ここまで明るい雰囲気で突き通せなかったんじゃないかと思います。

そういう意味では唯一無二の怖くなくても面白いホラーです。

 

最近知ったんですが、この映画は2015年にリメイクされてるんですね。それも日本ではビデオスルー。多分、見ることはなさそうです。

 

本家「ポルターガイスト」のBlu-rayはお手頃な値段で手に入るようです。