パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ステイン・アライブ】散々な前評判よりもマシだった?

世の中には大ヒットした映画の続編なのに、ひっそりと忘れられてしまった作品が幾つもあります。

「ポセンドン・アドベンチャー2」(1979)、「サイコ2」(1983)、「グリース2」(1982)等など。

今回はそんなそんな作品の一つです。その名は・・・

 

「ステイン・アライブ」(1983)

 

「2」とついてないんですが、続編です。

勘のいい方はすぐに分かるんじゃないでしょうか。

この題名は超有名作品「サタディー・ナイト・フィーバー」(1977)の主題歌のタイトル。ってことで、「サタディー・ナイト・フィーバー」の続編がこの映画。

「サタディー・ナイト・フィーバー」は今でもネタにされるぐらい70年代を飾る映画でしたが、この映画の存在は「なかったこと」になってるんじゃないんでしょうかね。

そんな映画をレビューします。

 

(あらすじ)

ブルックリンのディスコキングだった主人公は、今はブロードウェイ出演の夢を見て、オーディションを受けたり、芸能事務所に売り込んだりする日々を過ごしている。そんな中、恋人のダンサーのステージで、主役を演じる女性の演技に目を奪われる・・・


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前作「サタディー・ナイト・フィーバー」はジョン・トラボルタ出世作で、BEE GEESの音楽とディスコのダンスシーンで有名でした。

主題歌の「Stayin’ Alive」は78年に4週連続全米ナンバー1になっています。

Stayin' Alive

Stayin' Alive

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ディスコが舞台で、ジョン・トラボルタの有名なキメポーズ(白いスーツに、右手を垂直に上げて指さすポーズ)もあって、薄っぺらくてチャラい青春映画かと思いがちですが、意外としっかりとした一人の青年の成長談でした。

トラボルタだけでなく、監督のジョン・バダムもこれで有名になって、のちに「ドラキュア」(1979)、「ブルーサンダー」(1983)、「ショートサーキット」(1986)とキャリアを積み重ねていきます。

(「ブルーサンダー」は面白かった)

 

そういう意味では、一作目は「ちょっと捻りの効いた青春映画」だったんですが、この続編はいたって普通の映画でした。

 

本当に普通。

 

普通過ぎて、忘れられたのも仕方ないって感じです。

 

まぁ、公開当時は、

 

「トラボルタをロッキーみたいに筋肉ムキムキにしてしまった」

「ダンス映画じゃなくて、格闘映画」

 

ってコキ下ろされまくってました。

まぁ、監督が音楽映画とは無縁だった(今も無縁だけど)シルベスター・スタローンっていうのも色眼鏡で見られた一因でしょう。

監督としてはまだ4本目だし、自分が主演しない映画を演出するのはこれが初めて。

(っていうか、自分が出演しない映画を監督した唯一の作品。もう懲りたんですかね?)

 

当時のポスターも「サタディー・ナイト・フィーバー」のナンパなオシャレさからかけ離れた、バンダナに汗だくなトラボルタの顔のアップ。

ちなみにDVDのジャケットを見てもらえば、筋肉ムキムキの意味が分かると思います。

 

「ステイン・アライブ」DVDジャケット


でも見てみましたが、「そこまで酷いか?」っというのが正直な感想。

 

筋肉ムキムキのビジュアルイメージは「えっ?!」と思うけど、今回の舞台はディスコではなく、ブロードウェイ。踊りも激しいので、ダンサーが筋肉ムキムキには違和感なし。

「格闘映画」っていう批評については、何でそんな意見が出てくるのか分かりません。

それぐらいちゃんとしたブロードウェイを舞台としたダンサーの映画でした。

批判の半分ぐらいはスタローンのイメージにとらわれた思い込みじゃないの?と思いました。

 

じゃ、完成度が高いかと言われれば、それは別。

 

極めて平凡な映画でした。

(大切なことなので二回書きました)

 

話の展開、撮影、役者の使い方、どれをとっても正攻法だし、ダンスシーンもよく撮れてると思います。この辺りの臨場感は、「ロッキー」シリーズのボクシングシーンで培ったノウハウがあったのかもしれません。

 

ジョン・トラボルタは、完全に「今のジョン・トラボルタ」になってました。

独特のしゃべり方と、ちょっと人をおちょくったような態度。

僕の好きなトラボルタがそこにいました。

そういう意味では「パルプ・フィクション」(1994)のヴィンセント・ベガ役から彼を好きになった人でも楽しめると思います。

この映画では体を鍛えただけあって、体形もスリムでかっこいいです。

「サタディー・ナイト・フィーバー」の頃のかっこよさを持ったまま、内面が今のトラボルタという、美味しい組み合わせが見られます(笑)

 

ここまでは良いのですが、ダメなところもそこそこあります。

 

サタデー・ナイト・フィーバー」では、大人の階段を一つ上ったことを悟らせるラストシーン終わってたのに、この映画じゃダンスのレベルアップしたけど、中身は退化しているというキャラに見えてしまうのが超残念。

 

前作の余韻をぶち壊してます。

 

だってブロードウェイの舞台と並行して進むのが、スタローンと女性二人の三角関係。

一人は美人でダンスも超絶上手く、主役級のスター、もう一人はダンサーとして二流で、地味だけどトラボルタを本当に愛してる女性。

お約束です。

もうトラボルタが、もともとの彼女を裏切りまくって、美人の方にフラフラするのが構図。

もう中身は子供です。

「愛のない女の子は抱かない」と言ったり、最後のコンテストで自分たちが優勝したにも関わらず、自分たちより上手かったと思った準優勝したペアにトロフィーを渡し、「君たちがチャンピオンだ」って去っていく、前作の方が男前です。

 

だから今回は退化ですよね?

大人の階段上るどころが、下がってますよね?

 

このドラマが相当にイラっとさせられました。

確かにこの映画のトラボルタはカッコいいけど、こんな中身の男がもてるのが不思議。女性二人ともダメンズ好き、という設定なんでしょうか。

とにかく、そんなワケで主人公になかなか思い入れ出来ないのが、この映画の残念なところ。

 

ここは脚本の失敗でしょう。

あ、脚本もスタローンなんで、やっぱり彼の責任ってことですかね?

 

中身も大人になった主人公が、真面目に苦悩しながらディスコキングからブロードウェイで成功する話を、ストレートに作った方が良かった気がします。

 

あと、前作では主人公が自信を持って、優雅にディスコで踊るシーンが印象的でした。

そのシーンは唯一無二で、今でも語り継がれるぐらいです。

 

それに対して今回のダンスシーンは「真剣勝負」「必死さ」が全面に出てます。

あ、この「真剣勝負」「必死さ」っていうところが格闘映画っぽいって言われるんでしょうか?

僕的には「少年ジャンプ」っぽいフレーズですが・・・

繰り返しになりますが、スタローンの演出自体は臨場感があるし、ちゃんとダンスシーンになってます。

 

ただ二つを比較すると、やはり前作のディスコシーンに圧倒的に軍配が上がります。

 

っていうか、この映画のダンスシーンは1年の経ったら印象に残ってないでしょう。

よくあるシーンだったなぁ、程度。

 

つまりこの映画は内面の成長&ダンスシーンで、前作に及ばず、普通の映画止まりになってしまってます。

多分、普通の人からは「可もなく不可もなく」という評価になるでしょうし、「サタディー・ナイト・フィーバー」のファンからが「前作のキャラを借りてるけど、続編じゃなくて、全く別の映画を見てるみたい」と思われてそうです。

 

これじゃ、当時低迷していたトラボルタを救うことが出来なかったのも納得。

 

最後は全てを「すっきり」させたトラボルタが、マンハッタンの街を軽やかに歩いていくシーンですが、そんな時に「浮かれて、昔のディスコダンスのステップを踏む」ぐらいの演出があっても良かったんじゃないでしょうか。

 

そういえばそのラストシーンはタイムズスクエアなんですが、周りのビルに「AIWA」「CASIO」「SONY」「PANASONIC」を日本企業の看板がいっぱい出てました。

まさに「JAPAN AS No1」と言われてた時代です。

そんな時代も遠くなりにけりです。

 

今回もPRIME VIDEOの100円セールで見ました。

最近、マニアックな映画を100円セールに出してくれるので助かってます。

 

この映画のDVDはお手頃に手に入るようです。