パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【スペースバンパイア】一生懸命作ったんだけど、美女に全部持ってかれてしまいました

スペースバンパイア(1985)

名前が安易ですよね。中学生でも分かる簡単な単語をつなげただけの、B級映画臭がプンプンするタイトル。

原題は「Lifeforce」なので、日本で付けられたタイトルです。

ややこしいのは、原作の本のタイトルが「the Space Vampires」なんです。

そういう意味でタイトルを付けた日本の配給会社に罪はなさそうです。

が、この映画は「名(日本語タイトル)は体を表す」みたいに、大作なのにB級映画みたいな扱いになっちゃいました。

 

(あらすじ)

ハレー彗星を探査するために飛び立った宇宙船「チャーチル号」は、彗星の近くで巨大な宇宙船を発見する。その中には美しい男女が機械の中で眠っていた。

暫く後、チャーチル号は船内が火災で焼け焦げ、クルーは死んで状態で発見される。倉庫には、あの美しい男女が収納されていた。チャーチル号を発見したシャトルはその男女を地球に移送する。彼らが「宇宙吸血鬼」とは知らずに・・・


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この映画はきちんとお金とスタッフをかけてます。

そしてきちんと作られてます。

 

監督は「悪魔のいけにえ」で名を挙げ、スピルバーグに認められ「ポルターガイスト」でヒットを飛ばしたトビー・フーパー

この映画でもきっちりと弛みのない演出が冴えてます。「悪魔のいけにえ」から変わらないB級娯楽作のツボを押さえつつ、安っぽくしない緊迫感のある絵作りは上手いです。「ポルターガイスト」で身に着けた(?)「光がピカピカ飛びまくる」演出も見せてくれます。

 

脚本は「ダークスター」「エイリアン」のダン・オバノン、音楽は大御所のヘンリー・マンシーニ

ダン・オバノンはSF好き、ゾンビ好き、娯楽映画好きなので、この映画のスタッフであることは全く違和感ないんですが、ヘンリー・マンシーニは別。

60年代に「ピンクパンサー」や「シャレード」「ティファニーで朝食を」とおしゃれなサントラでヒットを飛ばした方ですよ。

 

違和感バリバリ

 

オードリー・ヘップバーンの都会的な大人の恋愛映画と、現代風のSF吸血鬼映画では差があり過ぎて心配でした。

しかし、そこはさすがのプロです。ちゃんと映画にマッチした音楽を作り上げてました。特にテーマやアクションシーンの音楽はかっこよかったです。

(でも、この映画の後、ヘンリー・マンシーニは亡くなるまで本来のおしゃれ路線に戻っていました。やはりお金を積まれてもこういうのは違うってことだったんでしょう)

 

話はあまり奇をてらってなく、死亡フラグ、イベントフラグも含めて、分かりやすいです。

クライマックスは「ゾンビ物が好き」ってダン・オバノンの趣味炸裂。あれ?吸血鬼モノじゃなかったっけ?と目を疑う程、ゾンビ度が高い吸血鬼達。ロンドン中がゾンビ状態になります。

そして意味不明に街の至るところでドッカン、ドッカンと爆発。

え?吸血鬼が人を襲ってるだけなのに、何で爆発???でも、盛り上がるからま、いいっかと、こっちも思ってしまいます。

(あとで吸い取った生命エネルギーを巨大宇宙船に送るときに爆発が起こるっていうことが分かりました)

 

ダン・オバノンの脚本とトビー・フーパーの演出が、B級娯楽作品という点で親和性が高すぎたせいか、純粋に「見ていて飽きない、超B級の娯楽作」になってます。

 

余談ですけど、舞台がイギリスっていうのも高級感がありました。

B級映画って大体、アメリカで制作されるじゃないですか。そうなると、必然的に予算の関係もあって現代劇の舞台はアメリカが多くなるんです。

だから現代のロンドンっていうだけで、B級映画好きの僕からしたら「おおお」となります。

 

さてロンドンが舞台なので、出演者も基本は「イギリス英語」。

これもB級映画にはない香りです。

 

そしてこの映画を見たら、絶対に誰もが忘れられないのが、女バンパイアを演じるマチルダ・メイ

セリフはほとんどありません。

表情も無表情。

出演シーンは基本、全裸。

そのスタイルが完璧&エロい!

前回レビューした「フレッシュゴードン」にはただ脱いでるだけが山ほど出てきますが、美しさは勿論、エロさで彼女一人に敵いません。

リアルに美しいヌードなんです。

 

実はこの映画、彼女が敗因なんです。

 

演出や話なんてものを吹き飛ばしてしまうのは、

 

マチルダ・メイの美しいヌード。

 

そして見終わった後に、観客の頭に残ってるのは、

 

マチルダ・メイの美しいヌード。

 

だけ。

 

世間一般ではスペースバンパイアと言えばマチルダ・メイの裸」となってしまいました。

 

一生懸命、お金をかけて、良いスタッフを集めて丁寧に作ったのにこれかよ・・・

 

きっと製作者はそう言って涙を流してるハズです。

 

まぁ、トビー・フーパーダン・オバノンがなまじよく出来たB級娯楽作にしちゃったんで、映画自体が完全に彼女を引き立てるだけの脇役になっちゃってるんですねー。

 

そんなワケで裸の女性だけしか印象に残らない映画は、歴史の中に埋もれちゃいますよね。

 

ほとんどのSFファンでさえ、嫌いな映画じゃないけど、もう一回見るんだったら、マチルダ・メイのシーンだけでいいや、っていうのがほとんどじゃないでしょうか。

 

この映画、サブスク(AmazonNetflix、U-Next)にはありません。

近所のTSUTAYAには置いてあるようです。

(私は大昔にスカパーで録画したものを発見したので、それで見ました)

ただAmazonで新品のDVDをお手軽に入手できるみたいです。