パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【がんばれ!ベアーズ】少年野球だけど、大人の成長談

いつの間にか世の中から消えてましたね。

家族映画っていうジャンル。

親も子も楽しめる映画。

その代表作ががんばれ!ベアーズ(1976)。

僕らの世代はみんなが知ってる映画でした。

数十年ぶりに楽しみたいと思います!

 

(あらすじ)

問題児ばかり集めた弱小チーム「ベアーズ」の監督を引き受けることになった元マイナーリーグプロ野球選手。最初は全くやる気がなかったが、ぼろ負けしたチームを見て、奮起する。天才野球少女や野球センス抜群の不良少年を入れ、真剣に指導をしたことで、チームは快進撃を始める・・・


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家族映画(ファミリー映画)っていうのは、子供向け映画のことではないんです。

子供と大人、両方の視点で楽しめる映画。

 

昭和の時代って家族で映画館に行くってことが普通でした。

子供がある程度の年齢になったら、親や映画が好きな大人が「大人の映画」に連れていってくれるんです。

 

大人映画デビュー

 

僕は、無類の映画好きだった母親に、小学校の低学年で戦争映画に連れて行かれました。

母親が自分の見たい戦争映画に、僕を無理やり連れてったんですけどね。

 

大人映画デビューでは、いきなりゴリゴリの大人映画ではなく、子供でもそこそこ楽しめる映画が好まれました。

 

そんな時に、大人映画への橋渡し役を担ったのが家族映画です。

まぁ、男の子ならSF映画パニック映画香港映画っていう「橋渡し」もアリでしたが、そういう映画の洗礼を受けた奴って、ほぼ100%アクション映画ヲタク、SFヲタク、B級映画ヲタクと、普通じゃない映画好きになってしまう難点がありました。

(こんなB級映画ヲタクに導いた母嫌のことを怒ってるワケではないです)

 

今は娯楽の種類も増え、映画も家でサブスクで好きなものが見れるようなったことで、世界的に大人映画デビューっていうのがなくなったから、家族映画も消えたんでしょうね。

 

がんばれ!ベアーズ」は家族映画の末期に登場した大ヒット作です。

 

僕は劇場では見てません。

だって、その頃にはもうどうしようもないSFとか、意味不明に殺伐とした映画が好きだったからです。

 

ノホホンとした家族映画なんて見てられるか~

 

そう思ってたからです。

 

だから初見はTV放映。

その時もまだちょっと小馬鹿にしてました

 

どうせ、緩い、軽い映画だろ、って。

やっぱり映画は殺伐としてないと。

 

でも見終わった時は素直に面白い!と思いました。

 

そして今回見直しても、やっぱり面白い!

ただ当時思った面白さとちょっと違うんですね。

 

「弱小球団が決勝まで行く」っていう筋立てから、普通は子供の成長談を想像しますよね。こういう映画って「情熱的なコーチが、反発する子供たちを成長させ、チームを強くする」っていうのが王道じゃないですか。

 

でも、この映画では子供たちはそんなに成長しないんですよ。

 

むしろ成長するのはコーチたち。

 

特に主人公の監督は最初はチームの子供たち以上にダメ人間

やる気ゼロだった彼が、子供たちと接しているうちに「勝つことよりも、彼らに野球をやらせてあげることが大切」と変わってくんですね。

それに合わせてチームも強くなっていく。

だからこの映画は「大人が子供を成長させる話」じゃなくて「子供が大人を成長させる」話なんです

 

普通と逆の構造にしたアイディアには感心しました。

 

前回は勝手に子供の成長談だと思って見てたんですが、今回はこれに気が付いたんです。

 

勿論、野球の話がメインですが、選手同士のいがみ合いがあったり、強豪チームから嫌味を言われたり、大人の事情があったりと、チームの子供たちそれぞれにエピソードがあります。

 

その中で、この映画をグイグイ引っ張ったのは、ウォルター・マッソー演じる監督と、テータム・オニールの天才野球少女。

 

ウォルター・マッソーは真面目な顔して、いい加減なんだか、真剣なんだか分からない微妙な気持ちの揺れを、見事に演じています。人間味の出し方、タイミングも絶妙。

この人の、相手を食ったような演技は「サブウェイパニック」(1974)、「マシンガンパニック/笑う警官」(1973)でも証明済み。

彼以上にこの役を演じられる役者を思い浮かべられません。

 

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そしてその相棒役ともいうべき天才野球少女を演じるテータム・オニール。

 

とにかく可愛いし、演技が上手い。

 

いつもは大人っぽい、ちょっとマセた口調なのに、時々子供らしさを見せる演技が抜群です。

特に監督と自分の母親によりを戻してもらいたくて、「優勝したらお母さんと3人でご飯に行こう」って一生懸命誘うんだけど、監督に「もうお前のお母さんとは終わったんだ」と突き放され、涙を流すシーンはジーンと来ます。

更にこのシーンは少女に背を向けて去っていくウォルター・マッソーも泣いているんですよ。こんなやりとりをできるのは、この二人しかいません。

 

こんなエピソードをサラリと入れるなんて、脚本上手すぎ。

 

不良との淡い初恋みたいな話もあり、この映画のテータム・オニールは天才子役と言われる才能を全開にしています。

これだけ上手かったのに、この後3作で一旦映画界を去ってしまったのは残念。

あと、お姉ちゃんがこんなに上手いのに、弟(グリフィン・オニール)に同じような演技力がなかったのも残念です。

 

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そしてこの映画の一番憎いところが、最後の優勝決定戦を勝ちで終わらないところ

 

ランニングホームランで同点か?と思ったら、アウト。

ゲームセット、ベアーズの負け。

 

でも、一番下手な子がホームラン性の当たりをキャッチ出来たり、ずっと出番のなかった子たちが最後に全員出場したり、監督がみんなの信頼を取り戻して、チームが一つにまとまったりと「勝つ」以外の全てを手に入れたっていう満足感に溢れたラストはスカっとします。

 

アメリカのスポーツ映画ってこういう「勝負には勝てなかったけど、スポーツ精神では勝者になった」っていう作りが本当に上手い。

ディズニーの「カーズ」のラストのレースも同じだったなぁ、と思い出しました。

 

そう言えばチームの主軸になる不良少年がタバコを吸ったり、バイクに乗ってるんですが、今ならコンプライアンス上の問題で揉めるんじゃないかって心配しました。

(絶対にコンプライアンスはやり過ぎだと思う)

 

良質な脚本を適材適所の俳優たちが演じた、まさに家族全員で楽しめる映画でした。

特にスポーツ好きに限らず、多くの人には見て貰いたいです。

 

がんばれ!ベアーズ」はその後、「がんばれ!ベアーズ 特訓中」(1977)、「がんばれ!ベアーズ 大旋風 - 日本遠征」(1978)と二本の続編が作られましたが、肝であるウォルター・マッソ-とテータム・オニールは出演してません。

 

この映画もPRIME VIDEO、Netflix、U-Nextのサブスクにはなかったので、DVDレンタル屋で借りました。

新品のDVDは手に入るようです。