今回レビューするのは「ガンヘッド」(1989)。
日本発の本格巨大ロボットSF、らしいです。
裏設定も含めてハードSFってことで、マニアの間ではそこそこ有名な作品。
実はこの映画、今まで見たことがないんです。
正直に言えば何となく避けていました。
見たいような、見るのが怖いような・・・
さてどうだったんでしょうか。
(あらすじ)
人類に宣戦布告した巨大コンピュータが支配する島に、トレジャーハンターが潜入。敵の襲撃を受け、唯一残った主人公は破棄されていた巨大ロボット・ガンヘッドを修理し、巨大コンピュータに戦いを挑む。
この映画のことが大好きなコアなファンがいるのは分かっています。
でもね、ハッキリ言います。
SUPER ガッカリです。
久しぶりにヒドい映画を見ました。
「スターウォーズ」から12年も経ってるのに、これかー--
この映画が作られた80年代の日本SF映画って、一番ヤバい時期だったと思ってます。
77年の「スターウォーズ」公開以来、海外のSF映画はどんどんリアル&ハード路線にシフト。
それ以前のリアルさがないSFは、ノスタルジーの彼方に追いやられていく、そんな時代でした。
日本のSF好きの観客の嗜好も、その傾向に沿ってました。
だけど、日本のSF映画製作側は違ってました。
この映画も「リアル」を導入しています。
でも作り手が考えるリアルと、観客が期待するリアルが違い過ぎるんです。
この映画は裏設定はかなりハードに、リアルに作ってあるようですが、映画で見える部分はお粗末。
かっこいい戦闘隊員ではなく、小汚いトレジャーハンターがリアルなのか?
「宇宙からのメッセージ」から変わってないんじゃないのか?
今時のスーパーコンピューターに支配されたディストピアがリアルなのか?
とにかく小手先の用語や設定ばかりです。
これじゃ、SF好きの高校生ですらガッカリですよ。
人類を押し返すだけの力のあるスーパーコンピュータが守る島に、トレジャーハンターたちが忍び込むっていうのはまぁ、いいとしましょう。
そんな難攻不落の島に潜入するトレジャーハンターって、きっと軍隊以上にキレ者じゃなきゃいけないと思いますよね。
でも出てくるのは、ボロボロの恰好をした無法者ちっくな人たち。
それもガサツで、コンピューターの裏をかけるような知性が感じられないんです。
こいつらが易々と入れるなら、とうの昔に軍隊のエリート部隊がスーパーコンピューターを制圧してますよね?
「エイリアン」(1979)やスターウォーズでも「ボロボロだけど、超凄腕」っていうキャラは出てきますが、彼らは「プロ」を感じさせるんです。「あいつはプロだ」っていう薄っぺらいセリフで説明されるんじゃなくて、立ち居振る舞いとかでその雰囲気を作る。
そんなワケでトレジャーハンターがプロに見えません。ハイテク自動車泥棒ってレベル。
島内の施設もボロボロ。
コンピューターがこんな不衛生なところにあるワケないじゃん。基本中の基本。
映画のタイトルにもなってる巨大兵器ガンヘッドもちょっとなぁ。
当時新進気鋭だったスタジオぬえの河森正治さんをデザインに起用したのはなかなかいいと思います。
でもそのガンヘッドが自動車整備工の道具みたいなので直せちゃうのってどうでしょう?
更にガンヘッドが体当たりで巨大なドアを壊す場面なんても、とっても60年代っぽいです。今ならそんな機体が壊れそうななことはやらないでしょうね。
そもそもアングルやミニチュアの見せ方が60-70年代の特撮をグレードアップしたレベル。
特にアングルや画面作りが昔のSFと変わりません。
だから画面を見てると70年代の特撮TVとダブるところがあるんですね。
要は「頭の中にある構図を何とか視覚化したい」っていう発想じゃなく、「今までのやり方や構図を、より精緻にやろう」っていう感じです。
反対に初代「ゴジラ」や「ウルトラセブン」の方「頭の中にある構図を何とか視覚化したい」という気概に溢れてた気がします。
「リアルな構図ありき」に完全に舵を切ったのは、平成の「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995)からでしょうか。
少なくとも同じ東宝の「さよならジュピター」(1984)がリアルな特撮を追求していたので、その姿勢は参考にして欲しかったです。
話もロールプレイングゲームみたいで、高揚感は得られません。
とにかく人間関係がグダグダ気味、というか各人のキャラの描き方が月並み過ぎ。
中学生のSFf好きが集まって、「SF冒険活劇を考えようぜ!」ってノートに書きだしたキャラをそのまま使ったような、深みもヒネリもないキャラばかりです。
じゃ、本格巨大ロボット映画と謳っているんだったら、血沸き肉躍るようなロボットアクションを期待しするのは当然ですよね。
でも画面で繰り広げられるのは、巨大戦車の爆走シーン。
これ、変形ロボットである必然性ありませんよね?
またガンヘッドに搭載されている人工知能と主人公が会話をするんですが、妙に人間臭くて、思わず「機械の中に小さい妖精のおじさんが入ってますよね?」と言いたくなるレベル。
高性能の戦闘ロボットにあんなAIが積まれるわけないじゃないですか。
スターウォーズのC3POは軽口をたたきますが、彼は「翻訳ロボット」です。
「人間臭い方が高性能っぽくない?」っていう発想がとっても残念。
シリアスなミッションを託されたコンピュータのふるまいは、「2001年宇宙の旅」のHALを参考にして欲しかったです。
ただし「日本だからハード&リアルSF映画は無理」ということはありません。
日本映画界は定期的に良質なハード&リアルSF映画を作ってきました。
初代「ゴジラ」(1954)や「美女と液体人間」(1958)などの変身人間シリーズ、「世界大戦争」(1961)、「日本沈没」(1973)、「ブルークリスマス」(1978)、「復活の日」(1980)です。
中にはそんなに特撮を使わなくても、脚本がしかっりしていればハード&リアルSF映画は作れるのです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
名作と言われるSF映画は、戦争体験が反映されてたり、当時の世相や人間ドラマがしっかり書き込まれてました。
この映画はガジェットに傾倒し過ぎていて、話を煮詰めてないのがダメです。
役者さんについても、主演の高島政宏さんの演技はお世辞にも上手とは言えません。
本人的にはぶっきらぼうの一匹オオカミを演じてるつもりですが、それにしては何とも頼りない雰囲気。特にセリフ回しが妙に隣のお兄さんっぽくて、この映画に求められるヒーロー像にあってません。
ちなみに他のキャストもハードSFには全く向いてないです。
外国人キャストで国際色を出してるんでしょうが、あまり効果なし。
これだったら極東の島を舞台にして、日本人しか参加できないような設定(例えば世界が寸断されて、人の交流が出来ないなど)にしてしまえば良かったんじゃないでしょうか。
ともかく、残念ながら僕的には褒めるところも、笑えるところもない映画でした。
コアなファンの方、ごめんなさい。
さて、この映画はAMAZON PRIMEやNextlixのサブスクにはありませんでしたが、U-nextのサブスクにはありました。
新品のブルーレイが手に入るようですが、ちと高価です。