パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ブルークリスマス】SFは特撮じゃない、アイディアだ!

東京湾炎上】の時に、ちょこっと題名を出したブルークリスマス(1978)。

侵略物のSF映画ですが、特撮らしい特撮は一切出てきません。

でもれっきとしたSF映画です。

そして政治スリラーでもあります。

 

(あらすじ)

世界各地でUFOが出現し、目撃者の血液が青くなるという事象が発生。各国政府は秘密裏に血液が青い人間を収容し、事態の隠蔽を図っていた。この事実を公表した科学者を負う報道記者と、青い血の人間対策の任を帯びた国防軍の兵士を軸に、物語はクリスマスイブの夜へと突き進んでいく・・・

 

物語は至ってシンプル。

UFOの目撃者の血が青くなる人間と、それを「処分」しようとする政府、ただそれだけ。

 

「今は何事もないからと言って、将来何事もない保証にはならない。いつか宇宙人の手先となって人類を支配しようとする日が来るかもしれない」

それだけの理由で権力者は処分をしようとします。

劇中でもナチスユダヤ人虐殺と重ねられるますが、この映画は「人は常にこういう暴走をする」という寓話劇でもあるんですね。

 

脚本は「北の国から」の倉本聰さん。

SFを作りたかったんじゃなくて、自分の考えた政治スリラーを作るために、舞台設定としてSFを選んだんじゃないかと思います。

観客が理解し易いシンプルなプロットに、群像劇を絡めて、話に厚みを持たせる構成はさすがです。いろんな話が平行で進みますが、きれいに整理されていて分かり難さはありません。

 

監督は名匠、岡本喜八さん。こちらはSF映画とは全然無縁に見える監督ですが、実はUFOが大好きだとか。適材適所です。

 

さて上映時間は2時間を超えるんですが、ダレるところはありません。

普通こういう映画って、最初の1/3ぐらいは思わせぶりな展開だったり、本質を仄めかすだけって多いじゃないですか。

そこが、かったるかったりしますよね?

だって僕らは予告編とかで、大体何が起こるか知ってるわけですから、そういうのが無駄な時間稼ぎに見えちゃうんですよ。

 

でもこの映画、冒頭から「UFOいますよ」「各国が秘密裏に動いてますよ」「血が青くなるんですよ」と飛ばします。そこまで僅か7分。いきなり本題に入ってきます。

倉本聰さんは「脚本をいじることはまかりならん」と言ってたそうなので、この素早い展開は脚本の力ですね。きっと1分1秒早く政治スリラーを描き出したかったんだと思います。そこに何も知らない民衆が描かれるんですが、無駄が少ないです。

 

唯一、???となったのはビートルズ並みの世界的な人気を誇るロックバンド「ヒューマノイド」のくだり。

ビートルズ人気を受けて、若者文化を反映させたかったのでしょうけど、これは的外れでした。マリファナパーティーのシーン以外は、なくても良かったんじゃないでしょうか。

 

前半は仲代達矢さん扮する報道記者が、冒頭の学会で「UFOは自在する」と爆弾発言して行方不明になった科学者を追う話がメイン。

こういう政府の陰謀を追う記者っていうと、熱血系のタフガイを思い浮かべそうですが、仲代達矢さんはそんなものからは程遠い、いつも感情があるんだかないんだか分からない、眠そうな表情で記者を演じます。彼は盲信的な勢いじゃなく、冷静に「本当なのか?」という疑問から物事を追っていくうちに、自分が大変な事実に接近していることを悟って、徐々にのめり込んでいくんです。この冷静さが実にいいです。

 

もう一人の主人公は国防軍の兵士である勝野洋さん。TV「太陽にほえろ」では熱血刑事でしたが、やはりここでは感情を殺したような演技で通します。竹下景子さんとの恋愛シーンもすごく抑えてあって、この頃の日本映画にしては珍しいんじゃないんでしょうか。

 

ちなみに竹下景子さんが、めちゃくちゃ可愛いです。

外見も可愛いですが、キャラとして可愛い。ヲタクを萌えさせるレベルの「隣のお姉さん的可愛さ」。

このヒロイン役は彼女を念頭に書かれたんじゃないかっていうぐらい適役です。

 

後半は彼女が青い血であることが判明して、この二人の話がメインになることで、テーマが大きな政府の陰謀話から、市井の人々の苦悩に変わります。

青い血になったことで動揺はするものの、二人とも泣き叫んだりはしません。淡々と事実を受け入れていきます。

 

とにかく出てくる人物がみんな淡々としてます。

みんな、感情を抑えて現実と戦っている。

そして政府も感情を排除して冷徹に青い血の排除を遂行していく。

それが余計に「怖さ」を引き立ててます。

 

そんな登場人物の中で、最後の最後に感情を爆発させるのが勝野洋さん。

防衛隊から恋人の「処分」を命じられ、感情を抑えて彼女を撃つんです。

しかし家から出て、自分を待ち構える部隊に叫びながら突入していきます。

こで初めて、登場人物が「人間性」を取り戻します。

そんな彼もあっけなく銃弾に倒れます。

人間性は政治の力の前では無力だ、ということなんでしょう。

無常観タップリのラストシーンです。

 

展開といい、クライマックスの持って行き方といい、登場人物のキャラの描き方といい、ドラマとしてここまで煮詰められるのか、と唸るような作品でした。

 

カネのかかった特撮がないと立派なSF映画にならないというのは嘘です。

この映画みたいに、アイディアと脚本力、そしてそれを画面に出来る監督力があれば、立派なSF映画は出来ます。

日本には、クォリティーの低いCGを使ったSFより、こういう話で見せるSFをもっと作ってもらいたいものです。(「散歩する侵略者」とか、このカテゴリーに入るのかもしれませんね)

 

そう言えば昭和の映画らしいポイントがありました。

登場人物がやたらと、いろんなところでタバコを吸うんです。

そんなところに気がいくのは、僕も現代のタバコ吸わない文化に慣れてきたんでしょうね・・・

 

今回はAMAZON PRIMEで見ました。

公開当時はチラシは持っていたものの、見れませんでした。

ずっと見たいなぁと思っていて、20代の頃、名画座の上映をチェックしまくってました。

ついに川崎にある今は亡き名画座(商店街を抜けた先にあった)で上映するのを見つけて、仕事帰りに駆け付けたんですが、上映予定が変更されていてショボンとなった記憶があります。結局、更に10年後ぐらいにスカパーで見ました。

こんな隠れた名作なのに、DVDは新品では入手出来ないようです・・・

残念。