パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【男組】昭和を代表するマンガの、とってもコンパクトな実写化

知る人ぞ知る、昭和の男気マンガの実写化、それが今回見た「男組」(1975)。

原作は全25巻の長編で、主人公を中心に正義を貫こうとする若者たちの物語。

中学生の時に、遊びに行った兄の仕事場に全巻あって、むさぼるように読みました。

まだ実家には全巻あります。

 

調べたら僕が熱くなったマンガが、僕が読む少し前に実写化されていました。

 

でも、マンガの実写化、それも昭和の実写化・・・

見たような見たくないような・・・

でも、ここは勇気を振り絞って見ることにしました!

 

(あらすじ)

父親殺しで少年刑務所に収監されている主人公・流全次郎は、特別許可により、手錠をしたまま、名門私立高校・青雲学園に転入した。しかし青雲学園は組織化した不良生徒を従える神竜剛次が恐怖で支配していた。彼を追い出す最後の切り札として、校長が読んだのが主人公だった・・・

 

これ、YouTubeで予告編が見つかりませんでした。

東映アーカイブにもないのかも。

 

この頃のマンガの映画化なので、登場人物を無理やりマンガのキャラに似せるのが当たり前。

たとえ笑われようがやっています。

 

男組 DVDジャケット

野球狂の詩」(1977)の岩田鉄五郎を演じた小池朝雄さんなんて、マンガと全然似てないのに、メイクで無理やり似せてました。

(反対に木之内みどりさんの水原勇気は、髪型とか違ってましたけど、可愛らしい雰囲気が最高に合ってました。投げ方はアレでしたけど)

 

この映画でも主人公の五家宝連と呼ばれる仲間たちは、頑張ってマンガに似せてました。

やや「???」というところもありますが、この映画ではマンガの1/100も活躍しないし、見せ場のない超脇役扱いなので、見ている僕らもスルーです。

 

主人公の流全次郎は演じた星正人さんは、素のままでマンガの流全次郎そのものでした。欲を言えば、もうちょっと正義感の雰囲気が欲しかったですね。でも、ワザとらしいメイクもなく、ここまで自然に似合っていれば十分に合格です。

またヒロインの山口智子さんも、雰囲気がマンガのヒロイン・山際涼子そのものでした。

終始、主人公を目の敵にする大田原源蔵は、一番昭和の実写化っぽいマンガそのまま出で立ちです。

ちょっとマンガのそのままのような演技や演出が多いので、映画的に失笑してしまうところはありますが、イメージ的には悪くなかったと思います。

 

問題は主人公のライバル、神竜剛次

マンガのキャラを再現してるという意味では頑張ってますが、決定的に原作を再現できてない点がありました。

 

悪の魅力に満ちた男になってないんです。

 

カッコだけ大物を装ってますけが、チンピラに毛の生えたレベル

主人公を圧倒する感じがせず、ただの「嫌らしい男」です。

悪役がこのレベルだと、映画が締まらないんてすよねー。

マンガのキャラを自然に再現できていた流全次郎とは、大きな差があります。

 

さて、映画そのものですが、原作が大河長編なのに上映時間は78分

原作は、当初は神竜剛次との対立から始まり、やがて神竜剛次のバックにいる影の総理が操る機動隊や警察、暴力団との正義の戦いにスケールアップしていくドラマなんです。

 

そんな大河ドラマが1時間18分に収まるワケがありません。

 

そこでこの映画は、マンガの最初の数巻部分である学園闘争の部分だけ取り出して、そこで無理矢理完結させてるんです。

勿論、大河ドラマ的な部分はばっさり切ってるので、スケール感はありません。

ただの学園格闘ドラマです。

 

最後に原作を読んでから、随分月日が経っているので、うるおぼえですが、青雲学園編としてはまぁまぁそこそこ、原作通りのような気がします。

主人公達がアメフトのボールを使って攻撃するところ、ヒロインが校舎の屋上から逆釣りになること、大田原が折られた腕に鋼鉄のギブスを嵌めて、主人公の再戦を挑むところ等は、僕の記憶がありました。

 

唯一映画のオリジナルっぽいのは、主人公を捕まえた刑事が登場すること。

原作には出て来ないキャラだと思います。

今は刑事を辞めて、探偵となり、主人公を陰ながら支えようとしているという設定。

出番は短いですが、この元刑事を「スター」にしきのあきらさんが演じてます。

というか、映画に華を添えるために、彼のために作った役だったんじゃないかって気がします。

 

全体的にはマンガの序盤をコンパクトにまとめてるし、最後に主人公と神竜剛次が対決することで、一応完結という形にしているので、達成感はあります。

ここは下手に話が続くような(中途半端な)作りをして、モヤモヤが残るよりはいいんじゃないでしょうか。

(「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」(2017)や「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(2007)みたいに「続く!」って終わってるのに、未だに続編が作られない映画よりはいいですよね)

 

原作マンガを知らない人には、普通の学園闘争物として見れちゃうでしょう。

また原作リスペクトがあるので、原作好きの人も超がっかりはしないと思います。

 

同じ昭和のマンガの実写化でも、「女囚701号/さそり」(1972)のようなカルト性はありませんが、当時としては比較的原作を誠実に実写化した映画と言えます。

ただ出来は普通に昭和の娯楽作レベルなので58ぐらいですけど。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

ちなみに続編「男組 少年刑務所」(1976)というのがあるのですが、何と流全次郎を若き日の舘ひろしさんが演じてます。

写真しか見たことありませんが、これはちょっと違うなー、です。

共演は舘ひろしさんが当時所属ボーカルを務めていたロックバンド・クールスのメンバーらしいです。

だからキャッチコピーが「男<クールス>たち!」なんですね。

男組 少年刑務所 DVDジャケット

「男組」のDVDは発売されてますが、廉価版ではないので、それなりの値段です。